人の感情をテクノロジーを使って解析する

今西良光氏(以下、今西):Emotion Techの今西と申します。みなさんも本当は聞きたいんだけど、聞いちゃまずいかなぁみたいなお話をバンバン挙げていただいて、ラインのギリギリのところを攻めていく、ぶっこんでいく役割を私のほうでやらせていただければと思います。

最初に簡単に、(私が)何者かというご説明をさせていただく時間をちょっといただいています。その間に、「sli.do」のほうにどんどん質問を挙げていただいて、私のスライドはさっと流しながら、聞きたいことを考えていただければと思います。

簡単に何者かという自己紹介だけさせていただきますと、私、Emotion Techという会社の代表をやっていまして、「すべての人がイキイキと働ける社会を創る」というミッションのもとで、人の感情をテクノロジーを使って解析するという仕事をやってる会社の代表でございます。

今までに200社さんぐらいサービスをご活用いただいていまして、いわゆる企業のCX(カスタマーエクスペリエンス)やEX(エンプロイーエクスペリエンス)です。

さっき沢木さんのプレゼンテーションの中でEXという話がありましたが、カスタマーエクスペリエンスとか、エンプロイーエクスペリエンスをサポートしている会社でございまして、そういった事業をサポートするクラウドツールを提供しております。

私自身、働く環境にはちょっと思いがあって起業をしました。もともと新卒で日立、その後はユニクロで現場のマネジメントを経験していく中で、サービス業の現場ってめちゃめちゃアナログで、気合いと根性と勘みたいな世界で運営が行われていて。

そこに対して何か仕組みを作っていくことで、世の中を変えようということで、この事業をやっているといます。(今日のイベントと)テーマ感がちょっと近しいということで、本日はファシリテーションをさせていただくかたちでございます。

働く環境の中での憤りと無力感

今西:簡単に自己紹介させていただくと、サラリーマン時代の働く環境の中で、憤りと無力感みたいなものを感じていまして。さっき言っちゃったんですけど、新卒時代に日立に入って、官公庁向けの営業をやっていたんです。ゴリゴリの軍隊系の厳しい部署に配属されまして、ここは(株式会社おかんの代表取締役の)沢木さんとかなり似ているような環境でした。

僕も、日曜の夜に終電で出社する同僚とかが、けっこういまして。部門の雰囲気も「俺もやれてきたからお前もだ」という中で、同僚や後輩が鬱などで病むというのが続出しました。

属人的に(仕事をさせて)、マネージャーとか組織がこういうところに対して向き合わないのがまずいんじゃないかと憤りを感じて、それを変えようと会社の大きな組織の中で模索したんですけれども、ぜんぜん変えられずに、自分が変える側に回って勉強しようということでユニクロに入りました。店舗の管理業務をやって、マネジメントされる側から(マネジメントを)する側になりました。

リーダーがちゃんと意識を持って組織変革をしていこうと思えば変わるんじゃないか、それを変えてやるという思いでやっていました。ところが、やり始めて早々の3ヶ月目のアルバイトの面談で、「今西さんは、ぜんぜん私のことを見てくれてないじゃないですか」と女の子に号泣されました。A子ちゃんという子なんですけれども、その同僚のB子ちゃんを昇給させて、A子ちゃんをステイにしたんですね。

実はあとでわかったのは、このA子ちゃんは、めちゃくちゃ接客とかがんばる子で、社内に対するコミュニケーションがあんまりうまくないというか、カラ元気とか表面的なコミュニケーションをしない子だったんです。僕はその断片的なところしか見られなくて、その子に号泣されて、ハッと気付くわけです。

自分はマネジメントを勉強しようと思ってユニクロに入ったのに、ぜんぜんできてないじゃないかと。日立にいた時に、自分が上司に対して思っていたようなこととまったく同じことを言われてしまったなということにショックを受けまして。

人間力ではなく仕組みで変える

今西:ただ、一人ひとりとのコミュニケーションを取っていこうと思った時に、仕事は山積みになっていまして。自分は変えたいんだけれども、目の前には山積みの仕事があるという狭間の中で四苦八苦していました。なにか変えよう、変えようといろんなプロジェクトを立てようと思ったんですが、まったく変わらずに、無力感に打ちひしがれまして。

これは、中から変えるとか属人的な力じゃなくて、仕組みとか環境を変えないと変わっていかないんだなと、はたと感じました。人間力ではなく、仕組みを変えるためのシステムとして、顧客や従業員の体験を向上させることで、みんなが生き生きと働ける世の中をつくろうとしている会社です。

そんな思いを持ってやっておりますので、今日、2人の経営者の方の取り組みは非常に勉強になるとともに、いろいろプライベートでも仲良くさせていただいているので、今日はどしどしと突っ込んで、いろいろお話を聞きたいと思っております。ぜひsli.doでいろいろご意見をいただければと思います。

では、宮田社長と沢木社長、お願いします。先ほど見たところ、けっこう「いいね」が付いている質問をバンバン挙げていただいておりますので、最初は答えやすいところからやんわりと入っていきながら、徐々に際どい質問に入っていきたいと思います。「一番の修羅場はなんですか」とかありますけれども。

今「いいね」が一番付いているのは、リファラル採用ですね。お二人ともリファラル採用をやられていらっしゃいますよね。これからいってみましょう。「リファラル採用を進めていて、起こった問題や壁はありますか。どう解決しましたか」ということで、宮田さんからお願いします。

いい会社だなあと思ってもらえないと紹介してもらえない

宮田昇始氏(以下、宮田):パッと思い浮かんだものが2つあります。1つが、紹介したはいいものの、紹介した人が選考に落ちちゃって気まずいというもの。従業員から言われたこともありました。

さっきもちらっとご紹介したんですけれども、もしダメだった場合にも、「ごめんねご飯制度」というものがありまして、選考に落ちちゃった場合にもご飯に行くお金を、1回につき2万円補助して、それで少し気まずさを解消してくださいということはやっています。

もう1つが、リファラル採用をけっこうバンバンやってくれているメンバーが会社にいたんです。ただ一時期、「ちょっと今の状態だと紹介しにくいです」ということは、やっぱりあったんですよね。その彼から見ると、会社のこのへんが不満みたいなことがあったり。

(まわりの人に)お勧めできるぐらい、いい会社だなあと思ってもらえないと紹介してもらえないので、彼が不満に思うところで、会社的にも「それは改善したほうがいいね」という課題をなるべく潰していくみたいな。今では、前と同じぐらいに人を紹介してくれるようになったんですが、会社をいい状態でキープしていかないとですね。

今西:ちなみに、(選考に落ちた場合も)2万円支給しますと。それ、すごくいい仕組みだと思います。さっき裏で、沢木さんと「そんなのあるんだ」って話していたんですけど。最初からやろうと思ったんですか? それとも、失敗したりなにかの経験を通して、途中からやり始めたんですか?

宮田:けっこう最初の頃からやっています。たぶん、うちが8名ぐらいの時に作った制度なんですけど。当時は8名中7名がリファラル採用というような感じだったので。8名中7名は言いすぎか。8名中5名ぐらいですかね。

今後も引き続きやっていきましょうみたいなかたちで。採用したい友人とご飯行くお金をリファラルご飯制度として、1回につき2万円支給、紹介して入社してくれたら30万円プラス、もし不採用なら「ごめんねご飯制度」を上限2万円で支給といったようにしていました

今西:なるほどですね。8名中7名はすごいですね。

宮田:8名中5名ですね。盛りすぎました。

今西:5名。いやいや、ありがとうございます。沢木さん、同じ質問でお願いします。

初期メンバーの8名中5名がリファラル採用

沢木恵太氏(以下、沢木):うちも費用負担はしております。(リファラル採用を)すごくがんばってくれた社員がいて、週6とか週7で飲みに行くという感じで、破産してしまうという話が出たので、我々もやっています。我々の場合は1人につき、自分も含めて5,000円というかたちで払っていますので、2人で行くと1万円、3人で行くと1万5,000円ぐらい、そんな感じですね。

そもそも論が、リファラル採用をやりましょうといっても、そんなにワークをしないのが普通だと思っていたんですよ。みんな、そんなに積極的にやらないじゃないですか。最初は弊社の人事のメンバーがすごくがんばって、勝手にリストアップしていましたね。

あなたの友達のこの人がリファラルの対象に良さそうだからということで、いろんな採用媒体のダイレクトリクルーティングとかの検索で探していって、共通の友人が誰かを全部絞り込んでいって、「あなたはこの人とこの人に声をかけてください」みたいなことまで、お膳立てをしたんですね。

意外とそこまでされると、「確かにあの人、いいかもしれない」というので(紹介してもらえたり)。別にやりたくないわけではなく、誰がいいかを探すのが大変とか、そこまでイメージができていなかっただけですので。

それまでは、そんなに(リファラル採用が)ワークしなかったんですよね。お膳立てをし始めてから、みんなが声をかけ始めて、それに慣れてくると、徐々に自分でリストを作り始めるメンバーが出てきたりしました。最初はかなりお膳立てをした部分があります。

今西:初期の乗っけていくのが大変だという。

沢木:逆に宮田さんのとこは、最初からみんなバンバンやってくれたんですか。

宮田:そうですね。

沢木:自分がリファラルでけっこう採用をやっていますものね。

宮田:そうですね。さっきも申し上げたように、初期メンバーが8名中5名リファラルというかたちで、友人と作った会社のようなところがあったので、それはそんなに抵抗がなくというか、当たり前のようにやっていきました。逆にうちは、最初はリストアップはあまりやっていませんでした。リストアップするだけで満足して、とくに使わずという感じだったんで、今はやっていないですね。

今西:なるほど。ありがとうございます。たくさんあるので、どんどんいきましょうか。「働く環境に投資しようと思った理由、きっかけはなんでしょうか」。今度は、沢木さんからどうでしょうか。

育休明けだからこそ採りにいく

沢木:これは難しくて。僕らはそもそもミッションステートメントがここにあるので、自分たちがやっていないとまずいというのはあるんですけれども。ハード面だけじゃなくソフト面のところも含めていくと、私たち正社員の7割ぐらいが女性なんですよ。

私も含め、子どもを育てながらのメンバーが非常に多くいますので、そもそも日本全体の課題もそうですけど、働き手が今減っている中で、僕らもそういうメンバーが働けるような環境をつくっておかないと、働けないですね。

裏を返せば、そういう人たちが働ける環境をつくると、採用がすごくしやすいんですよ。我々がよくやっているのが、他社さんからすると嫌な話かもしれませんが、他社さんで育休に入り、育休が明けるタイミングで採用すると。意外とこれは競合がいないんですよね。

育休明けはどうしても保育園に預け始めとかで、なかなか不安定な状態ですので、みなさんは積極的には採りたがらないですけど、我々はそれが当たり前のように許容できるカルチャーになっています。

そのタイミングだからこそ採りにいこうと。そうすると、要するに我々は自宅でも働ける環境とか、そもそもそういう人たちが入りやすいカルチャーをつくるとか。

あるいは、もちろん子どもを連れてくるようなメンバーもいたりするので。例えば靴を脱いで上がるから走り回れますよとか、そういった環境をつくっていく必要があると思っています。

なので、人材の傾向からも、そこに投資をするほうがいいなあと思いましたし、実際、それが採用に紐付いていくと思うんですけれども。そういった中で改めて、先ほどお話した理由以外のところで突出すべきだなあと思って活動していますね。