元ブラック企業社員を交えてのトークセッション

ひろゆき氏(以下、ひろゆき):じゃあ、ようやく1時間ぐらいたったところで、今日のゲストをお呼びしましょう。

(元ブラック企業の社員2名が登場)

では、自己紹介お願いします。コメントでは「またおまえか」とか書かれていますけど(笑)。

豊田義弘氏(以下、豊田):リピーターがいっぱいいるんですね。

ひろゆき:ブラック企業の人に来てもらったんですけど。今までの話を聞いていてどうでしたか?

元ブラック企業社員1(以下、社員1):よくわからなかったです(笑)。

ひろゆき:はい。では、どういうことをやってきましたか。

社員1:アニメーションの制作進行をやっていました。

ひろゆき:辞めた理由とか言わなくていい感じですか?

社員1:この間、ちょっとペラペラ言いすぎたみたいで……。

ひろゆき:怒られたんですか? 遠慮しているんだ。

社員1:いえ、ちょっと(笑)。怒られちゃいました。

ひろゆき:こちらいろいろあって辞めた人です。

元ブラック企業社員2(以下、社員2):僕は中途採用で、営業マンとして入ったんですけど、ブラック企業で、パワハラなどを受けた末、退職したんですけど、法律知識を駆使して残業代などを全部取り返して再就職できました。

ひろゆき:おめでとうございます。

就職活動をして諦めた理由

ひろゆき:就職活動をした組じゃないですか。一生懸命頑張ったけど会社に入ってみて思い通りじゃなかったということがあったわけじゃないですか。そこら辺は想定していたかどうか? 入る前に。

社員1:いや、まったく想定していなかったです。取りあえず入ってみなくてはわからないと思っていたんで。不満もなかったです。

豊田:想定していなかったというか、想定できないだろうと思っていたんですよね。

社員1:そうです。

豊田:想定できないだろうと思っている方が健全かもしれないな、と思うんです。逆に想定を強くしすぎてしまうからギャップにすごく苦しんだりする。

元ブラック企業社員2:僕はやっぱり中途で入ったということで、前の会社でどんな経験をしましたとか、今の会社でどう活かせるかみたいな感じで、前の会社での経験とか営業成績だけで判断されたので、今の新卒での採用で出てきたような、会社に恋愛してしまうような変な分析とか自分に対する細かい分析とか全然なかったんです。

ひろゆき:新卒の時はどうだったんですか?

社員2:僕はバイトとかを経験しながら出たので、学生の時は就職活動はしていないんです。

豊田:いわゆる就活はしていないということですね。

社員2:大学生が普通にやっているような就活は体験していないんです。

ひろゆき:新卒の就職活動はしていたんですか?

社員1:していましたね。適当にやっていたんであまり身が入らなかったというか。

ひろゆき:その時入った会社とアニメ会社は別?

社員1:別です。

ひろゆき:その時はどんな会社に入ったの?

社員1:その時は諦めて結局就職しなかったんです。

ひろゆき:就職活動をして諦めたの。

社員1:はい、そうです。

ひろゆき:諦めた理由は?

社員1:なんでこの会社に入りたいのか、と聞かれて特に思いつかなかったんです。

(会場笑)

スゴイ強い想いがないと入っちゃいけないのかなと思って。

就職活動をしてもいい会社に巡り会えないという不幸

ひろゆき:適当に嘘つけばいいじゃないですか。しなかったんですか?

社員1:適当に最初は嘘をついていたんですけど、もっと上手く嘘をつかないといけないのかなと思って。結局軽い嘘をついて入れなかったんで。俺はまだ無理なのかなと思って。

ひろゆき:嘘をつき続ける方向にはいかなかったんですか?

社員1:そうですね。そこまでどうしても社会人になりたいと思わなかったんで。

ひろゆき:バイトよりは正社員の方が待遇が良いじゃないですか。その短時間だけちょっと我慢して嘘をつけば後の人生が楽ちんじゃないですか。あれ?(笑)

社員1:そうだと思うんですけど。美術大学を出たんですけど、その時ちょうど就活よりも卒業制作に力を入れた方が人生が楽しいかなと思って。就活って時間とられるじゃないですか。その分の時間がもったいなく感じたんです。

ひろゆき:ほー。だったら好きなことをした方が良いやと。それはありますよね。どうですか? 2人の話を聞いて。

豊田:さっきの例えば4層で言うと、この方は就活諦観層に入りますね。

ひろゆき:諦めちゃった層ですね。

豊田:「別にいいじゃない」と、別の生き方もあると割り切っちゃっている人たちもいる。就職活動で今何万人も就職できないとか、内定率が6割を切っているとか言ったときに、確かに一生懸命活動してもなかなかいい会社に巡り会えないという大きな不幸もあると思うんですけど、ワンパターンのやり方にはまっている人が6割しかいないことが問題なんじゃなくて、彼みたいな生き方があっても全然いいわけですよね。

いわゆる新卒の時、大学3年生から4年生にかけて一生懸命いわゆるマニュアル的な就職活動をやらないと会社に入れないということは全然ないわけです。そういうことがもっと普通にあってもいいと思うんです。

例えば、知り合いの会社に入ったとか、昔は普通に新卒でもありました。でも今はそういう部分が多くの人たちに見えなくなっちゃっている感じがするんです。

就職活動はマニュアルに捉われるべきではない

豊田:普通の就職っていうマニュアルに乗って、こうことをやって、こういうことをしゃべってという、そうではないルートが見えなくなってしまっている。でも彼のような生き方もありだし、色んなマッチングの仕方というか、見つけ方もあるんだぞということがすごく大切だと思うんです。

ひろゆき:「リクナビ使わなくていいよ宣言」でもいいんですか?

豊田:リクナビはリクナビでひとつあるんです。でもリクナビじゃなくたって就職はできるはずだと思うんです。リクナビを全員が使わなかったら就職できないという状態ではないんです。全員が全員本当に使い勝手がいいものにはなっていない、そうでない部分が実際あるんですね。もっと別の探し方をした方がいい人も絶対いると思います。

ひろゆき:ちなみに、大企業ってリクナビとか毎日コミュニケーションのやつを使わないで応募ってできるんですか?

豊田:企業によってはそこがゲートウェイになっている企業はあります。「全部登録はあそこね」とかいう企業は少なくはないと思います。ただ、ゲートウェイの部分なので、登録をしてそこを通らないと登録はできないという企業も一部あります。

内定率の2つの側面

ひろゆき:てなわけで、Q&Aにいってみましょう。

司会者:お話、ありがとうございます。ユーザーからの質問をいくつか読みます。群馬県の男性21歳の方「先日、大学生の就職内定率が68%というニュースが発表されました。しかし、これだけ大学も学生も増えた現状を見れば、内定率が下がるのは当たり前じゃないでしょうか? また、東大と偏差値30クラスの大学を同じ土俵で議論するのはナンセンスだと思います。なぜ大学別の内定率をもとに議論しないのでしょうか? 教えてください」。

ひろゆき:内定率の低い大学は内定率を出したくないからじゃないですか? この大学卒業したら内定率10%です! と言ったら絶対学生が入ってこないじゃないですか。東大とか早稲田だったら平気で出してくるんだと思います。下がったとしても。「うちはこんなもんでしたよ」と言って。ていう問題だと思います。

豊田:そうですね。内定率という数字はいくつかの側面があるので、気を付けなくてはいけないんです。全大学生のうち実際に民間企業に入ったか、どれぐらいの企業に就職したかを表す数字と、民間企業に就職をしたいですという分母があって、それに対してどれぐらいが内定しているのかという2つの数字を内定率と呼んでいて、どっちを呼んでいるかによってすごく誤解をすることがあるんです。

今の68%という数字は、いわゆる就職をしたいですという中で68%ができているという数字ですね。例年それくらいの数字で、最終的には9割は手が届くんじゃないかと思うんですね。

ひろゆき:渡辺さんみたいに途中で諦めちゃった人は、それには入らないんですか?

豊田:これが面白いことに、入らないんですよ。

5人に1人が新卒でニートに

ひろゆき:渡辺さんは就職できていたら、就職する気で就職活動していたわけじゃないですか。でも途中で「俺無理だわ」って諦めちゃった。本当は就職したかったという層を含めると、学生全体の中で就職した比率になると40%とか50%になる可能性があるんですか?

豊田:学生全体の就職率で言うと6割を切っているところが就職率ですね。院に進学するとか、専門学校に行くとかの比率を割り引いて、就職も進学もできない人が2割弱いるという、それぐらいの構造になっていると思います。

ひろゆき:5人に1人はニート。

豊田:そういう形で新卒だけど職に就いていない、あるいは短期的なフリーターだとか単発バイトだとかを、さっきの内定率でいうと「君は就職活動していないよね」という人を分母からはじくことができるんです。

その結果、見かけの内定率が上がっちゃうということが起こるんですね。「そうか、君はもう今回の就職活動諦めたんだね」と言って、その数をはじけば数字が上がる。

ひろゆき:それをやれば大学の内定率も上がりますからね。

豊田:あの内定率は、きちっと見ないとミスリードしがちな数字だなということがあります。先ほどの群馬の21歳の方のコメントは、私もおっしゃるとおりだなという気がします。

今の日本の採用の中でも大学名不問採用とか、すべての大学に機会を均等にだとか、かなり公平均等を求める声が多いですけど、でも普通にグローバルに良い大学じゃないと色んな良い企業の良い求人が来ないというのは当たり前なんですね。

日本だとどの大学も受け入れろと社会が言っている部分がありますからね。ある種間違った公平願望というか。

「偏差値が低くてもチャンスがある」のウソ

ひろゆき:「受け入れるよ」って言って応募しても、絶対受からないじゃないですか。

豊田:実態はそうですね。

ひろゆき:それだったら初めから「受け入れません」って言った方が親切だと思うんです。

豊田:私もそう思っていて。外資系の一部では、「はい、この10大学だけですよ。それ以外の方は中途採用の時に来てください」と、言うわけですよ。その方が全然合理的だと思うんです。

民間企業って営利を目的としている。すべての人間をすべて受け入れるという義務があるわけではない。ある種の効率性を重視しようと思ったら……。

ひろゆき:逆に、絶対入れないのに、入れると思って努力してエントリーシート書いて、面接行ってという学校の人がかわいそうじゃないですか。どう頑張っても絶対に入れないのに、時間の無駄じゃないですか。そういう考えにはならないんですか?

豊田:それでいうと一部の大学の本当に心ある人は、「いや、そうじゃない。君たちの行くべきなのは中堅中小企業なんだ」と、一生懸命に中堅中小企業の良さを説いたり、色々なところを紹介して、そういう所に送り込むということをやっている人たちがいます。

本当にそうだと思うんです。現実を知らせるということもすごく必要なんだけど、今は、偏差値が低くてもチャンスがある、頑張れば何とかなるというか、ちょっとまやかしにも近いようなきれいごとの言葉が世の中の中心にあるなと思います。