昆虫を捕食するシャクトリムシ

ハンク・グリーン氏:幼虫と聞くと、丸々と太り、葉をムシャムシャと食べる光景を思い浮かべます。しかし、ハワイ・シャクトリムシはそんなイメージを覆します。

このシャクトリムシは楽園ハワイで菜食主義を放棄し、鋭いカギ爪と繊細な触覚を持つ肉食主義者へと変貌を遂げました。なんと生きた昆虫を捕食するのです。

通常、島では平和で穏やかな生態系が形成されます。海洋によって、外界から隔離されているため、天敵が存在しにくく、安全にのんびりと暮らせるからです。まるでサーフィンでも楽しむように暮らせます。

例えば、ハワイのラスベリーは、自らのとげを捨ててしまいました。天敵となる哺乳類がいないため、身を守るとげが必要なくなったからです。

一方、ハワイ・シャクトリムシは異なる道を進みました。生息地に昆虫の捕食者がいないことをチャンスととらえたのです。周りに昆虫がたくさんいるのに、その昆虫を食べるものはいなかったからです。

ハワイ・シャクトリムシは、葉に付着した花粉を食すため、もともとタンパク質の摂食に慣れていました。そして他の幼虫たち同様に、固い植物でも食べられるように強力なアゴを持っています。

このシャクトリムシは、おそらく1億年ほど前に、昆虫を食すようになったのだと思われます。1970年代に、生物学者のスティーブン・モントゴメリー氏が発見するまで、この昆虫の特異な生態は知られていませんでした。

モントゴメリー氏は、シャクトリムシがハエを捕食しているのを見て驚き、そのシャクトリムシを研究室に持ち帰りました。

シャクトリムシは2日経っても、そばにある葉を食べようとはしませんでしたが、ハエを投入すると、くっついてきたハエを食べてしまいました。

幼虫が防衛のために何かに噛みつくことはありますが、このシャクトリムシは、6つあるカギ爪でハエを襲うと、そのままハエを食べてしまいました。ハエは生きたまま、シャクトリムシのご飯になってしまったのです。

他にもいくつか食虫性の幼虫が存在し、そのほとんどはハワイの固有種です。その中でも、ハワイ・シャクトリムシは最も凶暴な種です。

次に凶暴性が高いのは、H・モラスクボラでしょう。この幼虫は口から吐く絹糸でカタツムリを捕え、動けない状態にして、生きたまま食べてしまいます。こちらは凶暴というより、身の毛もよだつような捕食法です。

それでもやはり鋭いカギ爪が飛びかかってくるほうが怖いでしょうね。そんなシャクトリムシのゾッとするお話でした。