エクイティとデット、どちらが良いか?

石井健一氏(以下、石井):萩谷さんには一番難しい質問をさせていただきたいと思います。

普通、事業をやろうと思ったら銀行からお金を借りようとすると思います。先ほどスタートアップを定義していただきましたが、まず創業してビジネスモデルを作ろうと思ったら、銀行さんからお金を借りることを考えると思うんです。

いわゆるエクイティの世界とデットの世界の考え方はどのように違うのか、今日ここで定義させてもらえればと思います。

萩谷聡氏(以下、萩谷):なるほど。難しいですね。

そもそもデットファイナンスというのは銀行さんからの融資のように、借りたお金をあとから返さなければならない資金調達方法です。エクイティファイナンスは第三者割当増資ということで、新しく株を発行して会社の株を一部外部へ放出して資金調達、という感じです。

スタートアップの定義というのはあんまりされてないんですが「短期間で急成長する」というのが1つの定義になっています。そこに対してVCは、低い株価で入って高い株価で売り抜ける、というのが基本的なビジネスモデルです。

銀行さんの融資の幅もある程度限られますし、スタートアップにとってはスピード感のほうが大事だったりするので、ベンチャーキャピタルの意思決定が金融機関からの融資よりも早いという側面もあります。

また、やはりVCというのは、スタートアップをグロースさせるプロでもあるので、支援者としての活躍も組み込まれていたりすると思います。

どちらがいいかというのはありませんが、シードでプロダクトを作る前であれば株はできるだけ放出しないほうがいいです。1,000万とか2,000万融資でしっかり立ち上げてプロダクト作って、プロダクトマーケットフィットを目指してからエクイティでガツンと大きく集めるというのもぜんぜん手だと思います。

そこは資本政策のやり方次第という感じです。柔軟性があってやるべきかなと思います。それはビジネスモデルによっても違うので、そのあたりはVCに気軽に相談してもらうといいかなと思います。

シード期にエクイティを選ぶということ

梅澤:一言補足すると、おそらくどんな会社を作っていきたいかというビジョンのもとで決めるのが1番いいのかなと思っています。VCもお金を集めて投資をしているのでリターンを出さないといけないわけです。

例えば社員に対して1人100万ずつ福利厚生で使っていきたいというビジョンとか、社会貢献事業に将来的につなげたいとかだと、VCからだとけっこう厳しめに「投資しているので、株主に還元して」という話になるケースもあります。なので、どんな事業をやっていきたいかとか、フェーズを見分けながら選んでいくのはすごく重要だと思います。

萩谷:大前提として、スタートアップの成長の仕方って「Jカーブ」って言われていて、1回潜るんですよね。すごく赤字を出す形になるので、そうなってくると融資であとから返していくという調達はやりにくいというのが大前提です。そこを理解したうえでリスクを負って投資するのがVCの考え方です。

石井:岩田さんはどうお考えですか?

岩田諒祐氏(以下、岩田):デットかエクイティかって、お二方が話したように答えはないんですよね。答えはない前提なんですけど、僕は基本的にシードでエクイティファイナンスを入れるならちゃんと考えてほしいと考えています。

先ほどお話したようにバリュエーションが低い中でエクイティファイナンスをすると少ない金額でけっこうな比率を持っていかれるケースは正直あります。例えばこの前断った方で、けっこう話進めてたんですけど、ハード系の会社さんで研究開発に時間がかかるんですよ。プロトタイプかかるのにエクイティファイナンス入れようがデット入れようが同じ期間かかる。

デットのほうが決まってたんですよね。そのデットの金額で次のプロトタイプ作成までいけちゃっていたんですよ。でもサムライに入れてほしいみたいな話があって。

「そのデットファイナンスで資金的余裕もあるから、プロトタイプを作ってからのほうがVCへの説明もやりやすいし、どう考えてもバリュエーションも上がるのでそれからエクイティファイナンスを入れる方が絶対いいですよと」言って断りました。

やはり事業計画と資本政策でセットで考えて、1番いいかたちで持っていくのがいいですね。僕としてはプレシードとかシードでエクイティファイナンスを入れるべきだよね、とお互いに腹落ちしないと進めません。僕らがおいしい思いしようがそこは関係ないですね。

VCと銀行に違う事業計画書を提出したら…

石井:ありがとうございます。ちなみにうちの会社は同じように最初は日本政策金融公庫さんから借り入れをして、小さく検証して、そのあとエクイティに行きました。

ベンチャーキャピタリストさんって、出した事業計画書をいい意味できれいに直してくださるんです。「自分たちはこういう数字が欲しい」とか、「できるはずだからここを見直せ」というかたちで整えていっていただくと、確かに萩谷さんが言ったようにきれいなJカーブのモデルになっていきます。

でも、このモデルをそのまま銀行に事業計画書で出したら通りません。なので銀行さんに出す際の事業計画書はどちらかというと堅くて、2年か3年くらいキャッシュが尽きるまでの間に黒字に立ち上がっていくという堀の浅いモデルになっています。

投資家さんたちに出すときはJカーブモデルで、2つ事業計画書があったのが去年の話です。井上さんのところも両方やられたという話でしたが、事業計画書はどうやって作りましたか?

井上真大氏(以下、井上):まさにおっしゃる通りで、銀行さんは「まず赤字を掘って、その代わりあとですごく儲かるんですよ」というビジネスに共感されるというよりは、きちんと融資した金額が戻ってきてほしいというビジネスなので、あまり赤字を掘ってほしくない傾向があります。

まさにおっしゃる通りで僕たちもあまり赤を出さずに着々とビジネスを積み上げていく事業計画書と、かなりアグレッシブに攻めていく事業計画書を作って、アグレッシブなほうをVCにお出しして、コンサバなほうを銀行さんにお出ししました。

ですが、実はたまたまその銀行さんとVCさんが裏でつながってて(笑)。それでうまくいくケースもあると思うんですけど、僕らのケースは1つの会社で2つ事業計画書があるのはやめてほしいと言われました。

僕らとしては当然アグレッシブにいきたいという思惑があったので、銀行さんにお出しするほうもアグレッシブに変えました。でもその銀行さんはすごく理解があったので、結局それでもご融資していただいたという形になりましたね。

石井:ありがとうございます。赤澤さんはどうですか?

赤澤夏郎氏(以下、赤澤):うちの場合は公庫からの融資ですが、そのときにVCさんに出すような緻密な事業計画や資本政策はそもそも必要ありませんでした。それはなぜかと言うと前年の売上で特需がありましたので、それを見て大丈夫だろうということで融資を受けました。そういう意味ではちょっと特殊なパターンかもしれないですね。

事業計画書、どこを見てる?

石井:ありがとうございます。今度VC側に戻りますが、事業計画書を見るときはどこを見ているんでしょうか?

萩谷:これもまビジネスモデルにもよりますが、たまにあるのが売上と販管費、営業利益だけ書いて、みたいなパターンです。

石井:銀行提出モデルですね。

萩谷:そうですね。大事なのはどちらかと言うと、事業のKPIなんです。そのKPIもしっかり事業計画に組み込んだうえで売上を要素分解して、その要素分解というのを事業計画に織り込んでもらって、そしてそれがどうやって増えていくか。なんで増えていくのかをしっかり事業計画に落としてもらうというのが大事だと思っています。それをボトムアップで作ってもらうのがポイントです。

シードの資金調達で、そもそもいくら必要なのかが大事だと思っています。シリーズAというタイミングは、ユーザー獲得コストはこれぐらいで、1人あたりのお客さんからお金がどれぐらい取れるのかがある程度見積もれた上で「じゃあこれぐらいの広告出せばすごいグロースします」というのを証明できた段階で大型調達がやっとできるのが前提だったりします。

シードの場合は「じゃあそのフェーズまでいくにはいくら必要なの?」というのが大事で、それは5,000万なのか1億なのかを綿密に引いて、経営者とすり合わせるという感じです。

絶対に細かい事業計画が必要なのかというと、僕らのデューデリジェンスでは絶対ではないんですが、ただ、しっかり考えているのは経営者にとって信頼につながると思います。

ピボットが可能かどうか

石井:ありがとうございます。梅澤さんはどうでしょうか?

梅澤亮氏(以下、梅澤):似たような回答になるので。あとはマーケットの部分ですね。どのマーケットを見ていて、どれだけ差別化ができているかなど。

おそらく我々3社は基本的に同じかたちだと思いますが、ピボットは絶対1回2回はするだろうなと思っていて、そのときに心強さとか、心が折れないこと。先ほどルックスという話もありましたが、心が折れず、そのまま新たにチームを作り直すとか、勇気持って全く違うマーケットを取りにいくことができるマインドセットが、重要になるポイントかなと思っています。

石井:ありがとうございます。先ほど萩谷さんが言っていたKPIやマーケットの数字というのが、岩田さんがおっしゃっていたロジックにつながっていくということなんでしょうか?

岩田諒祐氏(以下、岩田):そうですね。我々の場合は前提としてKPI、数字は一切ない状態からスタートでした。

萩谷:プレシードとシードはちょっと違うんですよね。

岩田:そうですね。僕らは「こういう事業をやります」っていうときは、どこの市場を狙って、誰向けの製品で、どういう価値があるのかを、ちょっとしたフレームワークを使って見てました。その上で「この事業だったらこういうKPIがありますよね」とロジカルに考えてきてくれたというところです。

石井:なるほど。

岩田:もちろんその設定は大事なんですが、それに加えて、「ここまで考え抜いたよね」というところが1つの軸として大事になってくるイメージです。

VCが話を聞きたくなる起業家の特徴

石井:ありがとうございます。せっかくなので、質問を頂きたいと思います。手を挙げてしゃべるのってめちゃくちゃ緊張しますよね。なので、私が1人目の方に強制的にマイクを渡したいと思います。なんでもいいので質問してください。ということで、よろしくおねがいします。

質問者1:ベンチャー起業家としてお聞きしたいのが、どれぐらいよく考えてるかで話を聞いてもらえる・聞いてもらえない、ということがあると思うんですけど。

そもそも我々のようなベンチャー起業家の者がVCの人に出会うタイミングというのはこうした場ぐらいしかないと思うんですが、そのときに「この人だったら話を聞いてやろう」とか、そう思ってもらえるにはどうしたらいいのか、というのをちょっと知りたいなと。すいません、今まで聞いた話とちょっと違うんですけれども。

石井:ありがとうございます。

梅澤:おそらく自分より知識豊富だと思ったらまた話を聞きたいと思います。我々もいろいろな領域の事業を見てきていて、いろんな会社さんとお話させていただいているなかで、今まで聞いたことがないことや今まで聞いてきたことより深く知識を持たれていると思ったら、今まで会った人よりさらに上ということに自動的に定義されると思うので「もう1回お話を聞かせてください」と。

そもそもベンチャーキャピタルのメンバーというのは、起業家に会うのが仕事なので、基本はお話は聞かせていただくところはあると思いますが、知識が豊富な人のほうがいいと思います。それがコアなビジネスになるので。

でも下手すると、もしかしたらすで投資先が類似企業で、そのノウハウだけもらってそっちにインプットするというケースもあるかもしれないですけど(笑)。

投資家とファーストコンタクトする方法

石井:ファーストコンタクトはどうですか?

梅澤:ファーストコンタクトは問い合わせページからでもぜんぜん対応しますし、弊社は9名いるので、インフォ宛に来たら振り分けられて、担当領域で一番近しいとか、あとは年齢が一番近しい人にいってもらうとか。

私は今34歳なんですが、20歳の起業家が来たら、自分が行くより22歳のアソシエイトを送ったほうが話が合うよねという部分です。見ているマーケットとかは自分が22歳の人と接すると化石と思われて、「Snapchat使ってますよね」みたいなことを言われてもわからないので、近しい人を送るケースはよくあると思います。

萩谷:テクニック論の話なんですが、本当につてがないときは、ホームページの問い合わせはもちろん、検索すればベンチャーキャピタルの名前はバーって出てくるので、そのホームページに行って、そのキャピタリストの名前をFacebookで見つけて直接メッセージ送ってもいいし、Twitterアカウントを見つけて直接メッセージするのも可能です。

でも、いきなりホームページから問い合わせしても返信しないベンチャーキャピタルもいる可能性もあります。毎日たくさんの起業家に会っているので。だから、紹介ベースのほうが会える、面談に行く確率はいいのかなと思います。

ベンチャーキャピタルの世界って村社会なんです。というか、まだまだスタートアップのエコシステムが小さいので、スタートアップ業界含め、まだまだ村社会で、ベンチャーキャピタルも横でつながっています。

なので、まずは地の利を生かして、NVCCさんや大阪のジャフコさんでもいいですが、そうしたところでキャピタリストと会って。そうしたら「東京行くのでVCさんを紹介してもらえませんか?」でもいいし。そうやってどんどんつなげていったら、もう絶対会えるのではないか、というのがテクニック的な話です。

めげない大切さ

岩田:僕は事業進捗がない企業さんが相手なので、基本的には会いたいです。なので全部会っていますね。

でも、その中で絞るとしたら、投資条件が合わない人。例えば僕らは10億とか20億のバリュエーションはやらないので、そういう方は「僕らのところ来ていただいても……」ということになりますし、「ITまったく使いません」みたいなところも僕らはやらないので、そういうところはお断りしています。

ですが、基本は少なくとも会いたい。こちらとしては会いたいです。そういう前提なので、いろいろなところに問い合わせして無視されてもめげないで、どんどん問い合わせればというのが正直なところですね。

その上で、お二方も話してますが、やはり紹介ベースが一番会えます。僕らもすごくピンポイントで連絡が来ますし、その連絡は埋もれないので。かつ紹介となると期待値も上がるんですよね。そういうところで会っていけますので、紹介ベースは一番強いと思います。

石井:ありがとうございます。せっかくなので、井上さんはどうやってVCさんに会いに行ったんでしょうか? どこで見つけたんですか?

井上:最初は本当にたまたま人づてです。友人で起業した人がいたので、彼の知り合いの投資家の方を紹介していただいて。おっしゃるとおりで、本当に今の日本の投資家さんって村社会、横社会なので、その投資家さんからまた別の投資家さんを紹介いただいたという感じですね。

よくその話が出てきてますが、「めげない」というのは起業家としてすごく大切な要素だと思っています。とくにシード期なんて、合う合わないとかフィーリングで決められることが多いので、どれほど「僕たちこれだけ魅力的な事業をやります」と言っても、「いや、僕、興味ないから」ということで断られることがすごく多いんです。

今だから言えますが、実はシードの時にNVCCさんのところから入れていただいているんですが、15社ぐらい回って、唯一NVCCさんだけが「お前らのところおもしろそうだから出すわ」とおっしゃってくれて。とにかくめげずに、自分たちの可能性を信じて、いろんな投資家さんをアタックしてお話しすることがすごく大事だと思います。

赤澤:そうですね。逆にまだ資金需要がなかった頃に、「OSAKA INNOVATION HUB」でハッカソンイベントがありました。

我々が運営側に入った時に、そこにベンチャーキャピタルの方がボランティアでお手伝いに来られていました。お互い「どんなことやってるの?」みたいな感じで友達になったところからスタートをしていると思います。そのあとはもう紹介、紹介、紹介で今の状態になっています。

石井:ありがとうございます。今、話が出ましたが、僕も紹介がありました。うちは大阪市がやられている「OSAP(注:大阪市によるベンチャー企業育成プログラム)」というプロジェクトに参加させていただいた時に、1日にベンチャーキャピタル5、6社にピッチをする日がありました。そこで「ベンチャーキャピタルさんってこんなにたくさんいらっしゃるんだ」と思いました。そこで、「うちは早い時期やるよ」とか「うちはもっとバリュエーションが上がってからやるけど、今日は話だけ聞かせてね」とおっしゃる方っていらっしゃって。

おっしゃるように、こういうインキュベーションする施設に出入りをすると、必然的にそこはチャンネルになると思います。VCさんから見たときも。ということはあると思います。

VC同士はライバルか?

赤澤:今お話あったように、VCさんたちにとってほかのVCはライバルになるんでしょうか? ならないんです? ここにトヨタの人がいたらごめんなさいね。例えばトヨタのディーラさんに行って、「いや、これは日産のほうがいいよ」ってアポ取ってくれる人って普通はいないと思うんですが、VCさんというのはそういう世界なんですよね?

「うちにはまだこの時期入れないから」とか「社内だと自分よりほかの人間のほうが向いているから」というかたちで紹介してくださるのを私も経験しているんですが、ライバルなんですか? どんな位置付けなんでしょうか?

萩谷:紹介のしやすさ的には、フェーズが合わなかったから、よりシードやレイターのベンチャーキャピタルに紹介することは結構あります。僕らの投資も協調投資が多いので。例えば5,000万調達することになったとき、2,000・2,000・1,000で出資などです。それはリスク分散の観点ですが、そういった観点で紹介することも多いかと思います。

ただ、本当によければうち1社でやりたいとなることももちろんあるので、そこは柔軟な感じですね。

梅澤:ステージによると思います。例えばすごく初期の段階だと、いろいろなアクセラレータプログラムがあるので、そこは一番に誰が張るか、みたいな話になってきます。集客とか、起業家を集めるとか、どの大学を押さえにいくか、みたいなところはけっこうバッティングすると思います。

もうちょっとレイターステージのほうだと、全部枠を押さえるのか共同でやっていくのかとか、「この領域のノウハウが足りなくて、あのVCの人はあの会社やっていたから入ってもらえたらありがたいな」みたいなかたちで協力体制もあります。

そこでライバル心を持って1つのディールで揉めてしまうと、ほかのディールにおいても実はお金を一緒に入れていたり、役員会で会ったり株主総会で会ったり、いろいろとつながって。さきほど村社会という話もありましたが、基本的にみんな仲良く、そのスタートアップが成功する確度が高まるようにできるだけみんなで動いてフォーカスしているという感じです。

なので、バチバチやっているということはほとんどないですね。売るときやうまくいっていないときは、方針が違ってめっちゃ揉めるということも多々あったりするかもしれませんが。

チャンスを掴むために必要な姿勢

赤澤:最初、それこそ資金需要がなくて「別に投資はいらんな」と思っていた時にお会いして。でも、なにやってるかって仲良くなって話すじゃないですか。そのあと「いや、とくに大丈夫なんですけど」「いやいや、ピッチイベントあるから1回試しに参加してみれば?」「わりとクローズなピッチイベントだから参加してみれば」みたいなことを誘われて。

まだその頃は、3分でバチと切られるようなピッチイベントはそんなになかったんですけど、それに誘われて試しにやってみて、というきっかけで連鎖していったことがあります。

1つポイントとしては、知り合ったときやイベントに行ったときに、とりあえず元気に話しておくと、「なにかおもしろそうな人やな」とか「うちはちょっと合わへんけど、こんな人おるみたいやから、よかったら紹介しようか」ということに対して「ぜひ! ぜひお願いします!」みたいな。そんなに思ってなかったとしても、「いや、もうぜひお願いします」みたいな感じでやっていると、関係性続いていくような実感がありました。

石井:ありますよね。VCの語ってお金だけじゃなくて、壁打ち感があるんですよ。事業計画を作って、Excelにおいて印刷したときってけっこう満足度が高いんですよね。

言葉を選ばずに言うと、銀行さんはあんまり細かいところは突いてきません。インとアウトが合っていれば、だいたい「じゃあ次いきましょうか」とかなんですけど、VCさんはそれだとぜんぜんダメで。

例えばうちの場合は、ユーザーのリテンションというか、「1年間で何回リピートかかるの?」という数字の根拠を、「僕こう考えています」「いやいや、こういうこともあるんちゃうの?」ってかたちで、会社の中に副社長が1人とか2人いるかのような壁打ち感がすごくあるなと思います。調達はぜんぜん関係なく、ディスカッションさせていただいているVCさんもけっこういるなと思い出してきました。

リードとは何か?

石井:今、梅澤さんおっしゃっていただいたように、僕もわからなかった言葉が1つあります。「リード」。「リードVC」という言葉をよく聞きますが、せっかくなのでリードの役割について説明いただけるとありがたいです。

梅澤:リードというのは、調達のラウンドの話が出てきましたが、そのなかで一番メインにお金を出す人ですね。割合的にもそうですし、時と場合によっては束ねていったり。

あとは、例えば全体で5億円集めます。でもリードは3億しか出しませんといったときに、その起業家が2億集められなかったり周りにつてがなかったら、我々が動いて、そのラウンドでちゃんと集まるようにお手伝いしながらもちゃんとコミットして。

だいたいリードになると株もそれなりの割合で持つので、役員派遣などもして、責任を負って一緒に事業を進めたいという意思表示みたいなかたちですね。

石井:ありがとうございます。先ほど僕がOSAPに行った話なんですが、OSAPのなかでもサポートしているトーマツの方から「リードVCは?」という言葉がいっぱい出るんですが「リードちゅうのはなんなんだろうな?」というのがずっと思っていて。今回自分でやってみて、「あ、リードの方ってこんなことをしていただけるんだな」というのが本当にわかったのと、早い段階でリードが決まると楽ですよね。

梅澤:そうですね。誰が一番そのなかで責任を取るかが一発でわかるので。ちょっと批判的な話になってしまいますが、例えば銀行系とか特定の金融機関とかいろいろあると思いますが、右見て左見て、「え、御社行くの? じゃあ僕も乗りたい。でも責任は取りたくない」みたいなところで、「この会社が責任取ってくれるのであれば、僕たちも全部乗ります」みたいな。

だから、リードが決まると、本当は3社しか探してなかったのにフォローが10社ぐらい集まるというケースは見えたりしますね。

なので、責任を取ってくれる会社が見つからないと、極端な例で言うと金融機関でサラリーマン系の人たちは意思決定が自分でできない。「自分が左遷されるんじゃないか」とか、いろいろと考えてしまうのではと思います。

協調融資におけるリードの重要性

石井:ありがとうございます。逆に、「あいつがリードやるなら俺はやらへん」ということはありますか? 協調融資で「彼がやるならついていこう」というのがあるということは、その逆が絶対あるはずなんですけど。ログミーさんここは出さないでね。

萩谷:いや、もちろん相対の関係とかで悪かったらあるのかもしれないですけど、そんなにないと思いますね。「あそこがリードだったらうちものれる」というのはよくある話かなと思います。

石井:組み合わせっていうことでですか?

萩谷:というか、「リードのあのキャピタリストがしっかり支援してくれるんだったらいいね」というのはある話ですね。またグローバルで見ても、日本にいてアメリカの会社に投資するとなったときに、やはり日本からだとモニタリング含め、なかなか支援もできなかったりするので、アメリカのVCがリードで入ってくれたりするとやりやすい、ということはよくある話ですね。

石井:ありがとうございます。岩田さんは?

岩田:僕らはあんまり額的に共同出資はないんですが。なので僕らはNGはないですね。むしろ「一緒に入れていきましょうよ」と。ただし、あんまり希薄化というか、僕らは小さいので、例えばバリュエーション1億でいきなり最初5,000万を入れちゃうと、起業家さんの割合が減っちゃうじゃないですか。そういったことはNGなので、そこだけ気をつけてやっています。

僕らの投資先がシリーズAで例えば4,000万集めたいときに、先に金融系に回っちゃうと、みんな同じこと言うんですよ。「リードがいれば2,000万出すよ。3,000万出すよ」って。その額だけで合計5,000万とかいっちゃってるんですよね。ただ、リードがいないので1円も入らない。

なので、先にリードを決めてしまうのが一番いいですね。VCさんとか、事業内容によりますが事業会社さんとかCVCとか、そのあたりをちゃんと回ってリードをやってくれるところを先に決めるとポコポコ決まりますね。

逆に言えば、基本的に金融系は、「僕、リードやります」と言ってくれたところはあまりないので、そこを先に回っても、額だけ決まって、投資委員会にもいかないし、リードが決まらないから出資もしてくれないし、という状態になるので、本当にリードから決めるのは鉄則だったりします。逆に言えば、そこが決まればスルッといっちゃいます。

石井:ありがとうございます。井上さん、先ほどNVCCさんから投資が、というお話が出ましたよね。シード期は1社ですか?

井上:そうですね。いわゆるベンチャーキャピタルは1社で、あとはエンジェルの方ですね。

石井:ありがとうございます。ちょうど次にエンジェルの話をしよう思っていたのでファインプレーですね。