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人は「間違った成功体験」に縛られる 医師が明かす、習慣を変えられない人の心理

人は「間違った成功体験」に縛られる 医師が明かす、習慣を変えられない人の心理

老若男女を問わず、多忙でストレスフルな生活を送る人が多い現代。疲労や不調の原因は「脳」にあるかもしれません。2018年2月28日、紀伊國屋書店新宿本店にて、『脳神経外科医が教える 一生疲れない人の「脳」の休め方』(実務教育出版)刊行記念イベントが開催されました。菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁氏が登壇し、現代人の抱えるさまざまな悩みや疲れと「脳」の関係を解説。本パートでは、引き続き菅原氏がイベント参加者からの質問に回答。職場の困った同僚との接し方や、ストレスの受け止め方などについてアドバイスしました。

シリーズ
『脳神経外科医が教える 一生疲れない人の「脳」の休め方』(実務教育出版)刊行記念 「寝ても疲れの抜けないアナタへ。今年こそ「脳内休息革命」で人生を変えましょう!」
2018年2月28日のログ
スピーカー
菅原脳神経外科クリニック 院長 菅原道仁 氏
株式会社実務教育出版 第1編集部 編集課 小谷俊介 氏
医療&美容ライター/ブックライター 小松田久美 氏

仕事を覚えられない人への接し方

小谷俊介氏(以下、小谷) ありがとうございます。次はなかなか長文で、ちょっと要約していくと。「職場で一緒に働いている20代前半の人がいます。ちょっとテンパリすぎています。」 菅原道仁氏(以下、菅原) なるほど、なるほど。いらっしゃいますよね。 小谷 「なかなか同じことを教えても覚えてくれないので、メモを取ったらいいんじゃない、というふうに伝えると、メモを取るんですけども、次に同じことをしても忘れてしまいます。」 菅原 いる、いる。います、います。 小松田久美氏(以下、小松田) うっかりさん。 小谷 「覚えてもらうにはどうしたらいいでしょう。」 菅原 そうですね。荒治療かもしれないですけど。僕は思うには、これ難しいんですけど。 小谷 絶対いますもんね。 菅原 大前提は、「人は変わらない」ということなんですね(笑)。 (会場笑) 菅原 やはり自分で気づかせないと。必要だから人間って変わるわけです。先ほどのダイエットの話もそうですけど、コレステロールが高いのも自分で気づいて、自分で「変わる」って思わないといけないわけです。医者がいっくら言ったって変わらない。 IMG_7293 だけど、この人がこういうことを繰り返すのは、たぶん間違った成功体験がある方だと思います。例えばどういうことかというと、僕もそうだったんですけども、夏休みの宿題があるじゃないですか。早くやる人もいるし、ぎりぎりでやる人もいる。僕はずっとぎりぎりで出す。後半でやる人だったんですけど、間に合っちゃうんです。 小松田 はい。なんとかなっちゃう。 小谷 気合いで。 菅原 そう。なんとかなっちゃったんです。だから「それでいいや」っていうのが、誰でも続くわけです。間違った成功体験ですよね。 小松田 頭のいい方で、いっぱい、いらっしゃると思います。

「アメとムチ」ではなく「アメと無視」

菅原 なので、それで落第をするとか、「本気でまずい」ということがあったら、絶対翌年から変わるはずです。 小谷 ああ。 小松田 ああ。 菅原 その方が職場で変わらないのは、会社自体はうまくまわってしまっているからなんです。だけど、そうとも言っていられないので。意外といい方法は、心理学者の植木理恵さんの著作にあるんですが、「アメとムチ」じゃなくて「アメと無視」することなんです。 小松田 無視! 小谷 「アメと無視」(笑)。ほお。 菅原 どういうことかというと、「よくできたね」と言うことと「叱る」ことよりも、「よくできたね」はいいんだけども、できなかったら無視する。 小谷 無視。 小松田 失敗してもほっとく。 菅原 はい。例えば、われわれ男性が家族のところに帰る時に飲み過ぎて帰ってしまったら、小言を言われるわけです。 小松田 はい。 菅原 なんで遅いの、あなた飲み過ぎじゃないのって言われるじゃないですか。 小谷 めちゃめちゃ言われます。 菅原 それはわれわれ男性はすぐに忘れてしまうことが多い。 小松田 そうなんですか! 菅原 言われたら、「ごめんな」ってその時は思うわけです。だけど一番恐いのは何かっていうと無視されることなんです。何にも言われないことなの。 小松田 今、すごく頷いていらっしゃる。 小谷 ああ! そういうことか。 菅原 うん。何にも言われないとなんか怒ってんじゃないかって思うので、次から気をつけよう、と思うわけです。 小谷 ああ。 小松田 いいことを聞きました。

ストレスが溜まると行動を変えなくなる

菅原 はい。なのでこれはネズミの実験であるんです。ただのT字路と、電極があるT字路にエサが置いてあるわけです。エサのある方向にずっと行かせたい時には、電極とエサよりも、エサしか置いてない方が早く餌にたどり着くことができるのです。 小谷 ああ、なるほど。 菅原 電極がある方がいいと思われがちですが、(電極の)ストレスがあるので、行動を変えなくなるんです。その場で動かなくなるんです。ネズミたちがチャレンジしなくなってくるんです。だから、小言をガンガン言うと、変わろうというチャレンジをしなくなってくるので、人間っていうのは良い方向に変わっていかない。 小谷 萎縮しちゃったり、とか。 菅原 はい。そうです。だから「メモを取ったりしたらどう?」というのはすごくいいアドバイスだと思いますし、できるかできないかという結果に対して小言は言わないようにするっていうふうにすればいいんじゃないんですか。あとは長い目で見ていくしかないんです。 小谷 気づかせる。 小松田 自分で考えるまで待つ。 菅原 そうです。なのでこういう、いわゆる「行動を変えたいんですけども」というのはよくある質問なんですけども。例えば、男女の恋愛でもそうじゃないですか。「あの人に好きになってほしい」とか。相手の行動はもう変えることはできないので、変わるのを待つしかないです。もし変えて欲しいんだったら、それは「洗脳」ですから。 小松田 はい。なるほど。 (会場笑) 菅原 相手を変えたいっていう。その人にとっては成功していて、これが仕事のスタイルで大丈夫だと思っているかもしれない。それを少し、リフレーミングと言う心理学のテクニックがあるんですけど、「それはマズいんだよ」と揺るがしてあげるといいんです。けど、時間はやっぱりかかります。 小松田 はい。 小谷 うーん。

期待をかけるなら期限を決めちゃダメ

菅原 ちょっと脱線しますが、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二さんという。早稲田大学ラグビー部でキャプテンもやっていた方が教えてくれた話があるんですけど、「期待をする」ってあるじゃないですか。部下に期待をする。パートナーに期待をする。「期待をするにはかけ方があるんです」という話をしてくださった。 どういうことかっていうと、「この資料を来週までにやってくれ、君には期待しているから」というのはよく使うじゃないですか。それは、期待をするのはいいんですが、期限を決めたりするのはダメだっていう話。なぜかっていうと、期待という字をよく分析すると、時期が来るまで待つって書くんです。 小谷 ああ、そうですね。 小松田 ああ、確かに。 菅原 だから、待つ覚悟がないと期待しちゃいけないんです。 小松田 ほぉ、いいことを聞きました。 小谷 ああ、なるほど。 菅原 だから、期待をかけるというかけ方があるんです。われわれは期待をするんだったら、その人が変わるまで待つ腹づもりじゃないといけない。だけどそれを変えたかったら、それは期待じゃなくて命令なんです。 小谷 ああ。 小松田 確かに、仕事になっちゃいますもんね。 菅原 そうです。なので、「僕が期待しているのにあいつは何も動かねぇ」っていうのは期待のかけ方が違って、うまく命令をしてあげて仕事をする方向に導いてあげないといけない。だから期待というのは、実は期待をする側というのは相当覚悟がいる言葉なんじゃないかなって、教えていただきました。 小谷 ああ、深イイ話ですね。 菅原 こんな感じで大丈夫でしょうか? (質問が)たくさん来ているので、ちょっと読んでいかないと。はい。

心療内科や精神科を受診するのもオススメ

小谷 眠りネタでいきますね。多いですね。 菅原 けっこう睡眠、多いですね。 小谷 「とにかく眠いです。気絶しそう。妊娠中のように眠くてしかたなさすぎて、なんかの病気じゃないか、となっちゃう。」というのが1個ですね。 菅原 はい。 小谷 先にじゃあ。 菅原 そうですね。ですからこれも、昼間の眠気が強いという方の場合は、やはり睡眠障害という治療が必要なことがあって、お薬を適切に使った方がいいことがあるので、もしこういうのが続くようであれば、心療内科なり、精神科というようなところで親身になって話を聞いてくれるところを受診してみるのが1つかもしれませんし。 小谷 ナルコレプシーといった病名がつくかもしれませんし。 菅原 そうなんですよね。そういった病気ではないことを一応、確認した方がいいかもしれない。だから昼間の眠気がある場合は、やはり病院を一度は行かれることをおすすめはします。 小松田 眠気が続くのって、どのくらい様子を見たらいいですか? 1ヶ月とか、1週間とか? 菅原 そうですね。やっぱり1ヶ月、2ヶ月まったく変わりない。昼間もよく運動するようにしたり、寝具をちょっと変えたり、あとは寝る前もいろいろテレビを見ないようにするとか。いろいろ生活を変えたのにもかかわらず、やっぱり1ヶ月くらい同じような状態が続くようであれば、やっぱり一度相談してもいいんじゃないかな、と思います。 小松田 わかりました。 小谷 致命的な病気というのは、ちゃんと服薬すれば回復する。 菅原 そうですね。ただ多くはやっぱり心理的ストレスであったり、やらなければいけないことを思い描いてしまって、ああ明日あれやらなきゃいけないっていう過度のストレスがかかっていることがあるので。 これがポキッと折れてしまうと、やはりいわゆる鬱状態という病気になってしまう場合もありますので。(必ず)なるわけじゃないですけど。一度ご相談に行った方がいいのかな、とは思います。 小谷 なるほど。 菅原 はい。口内炎もそうです。 小松田 口内炎。 小谷 「大きな環境の変化があった次の日から、口内炎ができちゃいました。」 菅原 はい。やはりこの文章から読み解くと、どなたかは存じ上げませんが、大きなストレスをもしかしたら日中抱えていらっしゃるのかもしれません。なので、そのストレスが解決すればいいんですが、ストレスに対する向き合い方というのもすごく大事で。本の方にも1章かけて書かせてもらいましたが。 小谷 そうですね。

ストレスがないと老ける

菅原 人間って、やっぱりどうしてもストレスをゼロにしたいってみなさん思うと思うんですけど、それは大きな間違いで。ゼロには絶対なりませんし、ストレスがない世界というのは老けます。 小松田 老けちゃうんですね。 小谷 逆に。 菅原 どういうことかと言うと、宇宙飛行士さんを見ていただけるとわかるんですけど。(身体に)ストレスがない世界ってどこかっていうと、宇宙空間なんです。 小谷 ああ。 小松田 ああ。 菅原 重力がないですから、楽ちんなわけです。ぴょーんと跳ねたら、ずーっと動いちゃいます。だから、歩いて筋肉を使うということは、ストレスがあるから筋肉がトレーニングされる。だけど宇宙飛行士があんなにトレーニングをして、何年もトレーニングして10日間とか行っても、帰ってきたらもう歩けなくなるくらいなんです。 小松田 ああ。 小谷 って言いますよね。 菅原 はい。だからストレスがゼロな世界というのは、宇宙飛行士の人と同じなので、われわれの成長にはまったくならない、ということなんです。だからある程度ストレスというのがある方がいい。 ストレスというか正確にはストレッサーと言うんですけど、ストレスの元ですね。ストレスというのはストレッサーに対する自分の反応がストレスですから。ストレッサーをゼロにすることはできない。だけどストレスを軽減させることはできる。 それにはストレッサーに対するイメージを変えればいいだけなので、上司がストレッサーだな、ストレスだなって思うんであれば、その上司のいいところを見つけてあげるとか。そういった捉え方を変える。だから小言を言われたとしても、「ああ、自分の成長のためにやってくれるんだ」「ああ、厭味で言われてるんじゃない」って思い込めばいいので。 小谷 ポジティブに。 小松田 自分が変わるんですね。 菅原 はい。そうです。だからそういうふうにしてストレスと向き合うのは非常に大事だし、ストレッサー、一般的にはストレスというものはゼロにする必要もない。 小松田 はい。 菅原 僕はそう思っていますし、自分を成長させるものだというふうに認識を変えていただくといいかなと。

  
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