いろいろな側面を持つ「まち」神戸

司会者:神戸市では「新しい産業政策」ということで取り組んでいこうと思っておりまして、都市型創造産業の神戸における現状、それから今後の方向性といったことにつきまして、簡単にご紹介をさせていただきたいと思っております。

では、説明のほうに入らせていただきます。簡単に神戸市の概要についてお話しいたします。

(スライドを指して)神戸市ですがこちらにあるとおり、人口が今153万人ということで非常に大都市ではあるんですけれども、神戸市の中央に六甲山系という山が東西にあります。その南側には瀬戸内海・大阪湾、北側には有馬温泉あるいは里山が広がっているということで、大都市でありながら非常に自然環境が豊かなところです。

あともう1つの特徴としましては、こちらにあるとおり、高速道路であるとか、あるいは神戸空港という、そういう陸・海・空のそれぞれの交通インフラの結節点になっておりまして、東京に行く、あるいは北海道であるとか九州であるとか、どこに行くにしても非常に便利であるという特徴がございます。

(スライドを指して)神戸の街並みをいくつかピックアップしてきたものです。この上の2枚は、よく神戸で使われるといいますか代表するもので、異人館街と夜景です。普通は山の上からが多いんですけれども、これは神戸港のほうから写し出したようなものですね。

こういうようなところがよく紹介されるんですが、それ以外でもこちらにあるような有馬温泉の温泉街の路地、あるいは神戸の西北に広がっております農村地帯。こういうようなハイカラなイメージと、それから和のイメージ、あるいは自然豊かなイメージと、神戸はいろんな側面を持ったまちでございます。

神戸市の都市型創造産業、その現状

では続きまして、ここから神戸市の都市型創造産業の現状ということでご説明をさせていただきます。まず「都市型創造産業」という言葉なんですが、こちらあまり耳慣れない言葉なのではないかと思います。実際、産業分類表でも位置づけられていない産業分野なんです。

私ども神戸市としては、ここにあるとおり「創造性を持った人的資本の集積によって、既存産業の高付加価値化、あるいはイノベーションを誘発することができる産業分野」というように定義づけております。具体的には、情報サービス産業、インターネット関連産業、あるいはデザイン業であるとか、そういったものをイメージしています。

(スライドを指して)あと、こちらのグラフでございますが、特化係数というものを用いまして、神戸市の産業を分析したものでございます。

特化係数というのは、当該地域の付加価値構成比を全国の付加価値構成比で割ったものなんですが、基本的にこの数字が1を超えてると、その産業が当該地域に集積していることを表す数字でございます。

これで見ますと、こちらの暖色系で示したところがいわゆる鉄鋼とか機械とか食品製造あるいは飲食店といったもので、重工系の製造業や食関連の産業が神戸は集積しているということがわかります。

一方で、(スライドを指して)この寒色系の色で示したところ、これが情報サービスやインターネット、あと専門サービス業です。こういったところを見ますと、ほかの大阪、福岡、東京といったいわゆる大都市に比べて(神戸は)かなり低いと。1も下回っているというような状況で、この分野が我々の弱みであるという分析をしているところでございます。

こちらは先ほどの都市型創造産業をさらに詳しく分析したものでございます。全部で8分野あるんですけれども、これは先行する大阪市のほうで位置づけられている分野でございまして、今回は便宜的にこちらのほうを使わせていただいております。

これを見ますともう一目瞭然でして、東京は別格なんですけれども、例えば隣接する大阪市、あるいは人口規模・経済規模がほとんど似たような福岡市と比べましても(神戸市は)低いという状況になっております。

その要因として考えられるのは何かということですが、基本的に都市型創造産業の性質というものが「集積が集積を呼ぶ」産業であると我々は考えておりまして。こうした都市というのは地域のブロックの中核都市であり、やはりその地域における求心力を持っている。そういったところと関連性があるのではないかと分析をしています。

市内外との取引の構造を分析

続きましてこちらの表ですが、神戸市の域内外とありますが、これは神戸市の市内外との取引の構造を分析したものでございます。先ほどの8分野での生産額や需要額などを分析したものです。

神戸市と福岡市、福岡市のほうはこういった都市型創造産業が先行しているということで対比をさせていただいています。神戸市のほうを見ますと、市内需要額が1兆721億円あると。にもかかわらず市内総生産が7,580億円ということです。

ということは、その差額はどうしているかというと、ここにあるとおり、神戸市外からそのサービスを購入しているということになっております。いくらか移出はしているんですけれども、トータルでみますとネットで3,141億円が神戸市から資金が流出しているということがこれでわかります。

一方で福岡市のほうを見ますと、市内需要額が1兆4,588億円に対して、市内総生産が1兆8,000億円あまりということで、こちらのほうは市内需要を賄って、なお外にサービスを提供しているということです。福岡市はこの都市型産業において、外から資金を獲得しているというようなことが言えます。

神戸市としましては、なんとかこの今外に出ているものを域内で循環させるというようなことができないかということで、この都市型創造産業に取り組んでいきたいと考えているところでございます。

「ワクワクするモノや事が生み出されるまち」をめざして

では都市型創造産業の今後の方向性について今の時点で我々が考えていることをご紹介させていただきます。先進事例なども研究をさせていただいて、今まとめているのが、「仕事の創出」「環境の創出」「人材の供給」という、この3つの視点を柱にして施策展開を図っていきたいと考えております。

その前提としまして、こうした施策展開を支援する支援基盤のようなプラットフォームをまずは構築していきたいと考えているところでございます。

では、それぞれの柱を簡単に紹介させていただきますと、まず「仕事の創出」でございますが、例えば、先ほどあった神戸に強みのある製造業であるとか食関連の分野、そういったところの企業さんなどに働きかけを行いまして仕事の掘り起こしをすると。

そういったところからクリエイターの方が貢献できる仕事を探し出して、そのマッチングをするというようなかたちを考えております。

それから「環境の創出」ですが、これが本日のテーマとも結びつくんですが、神戸市内のクリエイターのコミュニティの活性化とネットワーク化ということをまずしていきたい。それから合わせて、そういったクリエイターの方たちが交流できる場を整備していきたいとも考えているところでございます。

「人の循環」が作れないのか

そして3つ目の「人材の供給」のところでございますが、こちらはクリエイターに特化した、そういうインキュベーション機能というものを用いまして、市内の学術機関などとも連携しながら人材の育成、あるいは次世代の担い手、そういった方々を生み出していくと。そういう「人の循環」というものが作れないかと考えているところです。

以上のようなかたちで、今のところこういった取り組みを通じまして、神戸というまちを新鮮でおもしろいもの、それからワクワクするそういうモノやコトが生み出されるまち、あるいはそういった(ものを生み出す)クリエイターや企業がチャレンジしやすいという、そういうまちをなんとか創っていきたいと思っているところでございます。

現在、手探りでその方向性を模索している段階でございますので、本日お集まりいただきましたみなさまから、できるかぎりご意見とアイデアをいただきたいと思っております。

このあとのトークセッションでは、Twitterを通じてみなさまにもご参加いただけるようになっておりますので、ぜひぜひ神戸市のためにご意見・アイデアをたくさん出していただければと思っております。

私からの説明は終わらせていただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

(会場拍手)

ITを使ってエンタメを変えていきたい

山阪佳彦氏(以下、山阪):ありがとうございました。なんとなくわかりましたでしょうか? 難しいお話もありましたが、創造産業で3,000億円が神戸市から外に流出しているということで、そこに神戸市としては少し危機感を持っているというのが簡単な話かなと思ってるんですけれども。

創造産業を集積しようという動きは、他の都市もやってることなのですが、今後いろいろなことに取り組んでいこうということで、じゃあ神戸市として同じことをやってていいのかということもありますし、そういう話も今日いろいろお話うかがえればなと思ってます。

さっそくゲストをお呼びしてトークセッションを始めたいと思っています。それでは、今日は佐渡島庸平さんと小泉寛明さんに来ていただきました。どうぞ拍手でお迎えください。

(会場拍手)

簡単に、みなさんよくご存じの方だと思いますけれども、ご紹介をさせていただきます。佐渡島さんのほうからですが、佐渡島さん、神戸の灘高校のご出身ですね。現在、株式会社コルクというクリエイターのエージェント会社を立ち上げていらっしゃいます。株式会社講談社に長く勤めていらっしゃいました。

著名作家とエージェント契約を結ばれて、作品の編集、著作権の管理、ファンコミュニティの形成や運営など、いろんなことを行ってらっしゃいます。現在、『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜2』などをはじめ、いろんな漫画の編集に携わっているということです。本日はよろしくお願いします。

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):よろしくお願いします。

山阪:小泉さんは兵庫県の宝塚市にお生まれになりまして、大阪で育ち、その後、ロサンゼルス、東京、大阪、伊豆を経由して、今、神戸に定住されています。

「定住」ってご自身で書いていらっしゃるんです(笑)。まだお若いですが、もう定住と書かれているぐらい神戸に愛着を持っていらっしゃると思うんですけれども。

Lusie Inc. という有限会社の代表であり、「神戸R不動産」の運営を行ってらっしゃいます。一般社団法人「KOBE FARMERS MARKET」の代表理事として「EAT LOCAL KOBE | FARMERS MARKET」の運営なども行っておられます。

Webサイトの企画、各種イベントの企画・運営、コワーキングスペースの運営など、神戸の北野エリア、さっき紹介がありましたが、異人館のある北野エリアを中心にご活躍をされています。

佐渡島氏は神戸の灘高校出身

山阪:あまりにも簡単なので、それぞれご自身のほうからお話をうかがいながら。まずは佐渡島さんのほうから、佐渡島さんの神戸に対する思いとか、神戸ご出身だということも踏まえ、今のお話で神戸市が持っている危機感や感想なども含めて、都市型創造産業の今後についてうかがっていきたいんですけど、まずはご自身のご紹介からお願します。

佐渡島:コルクの佐渡島と申します。今日はよろしくお願いします。もともと講談社という出版社にいて編集者をしてたんですが、6年前ぐらい前ですね、2012年に「コルク」というクリエイターのエージェント会社を立ち上げました。

もともとは編集者だったのもあり、日本にエージェント会社というものがなかったのでそれを立ち上げたんです。自分で経営してるなかで「ITを使ってエンタメを変えていきたいな」と思うようになって、エージェント会社というよりも、しっかりベンチャーとしていろいろなことをやりたいなと思い、今、日々挑戦しているところです。

父親がもともと商社だったので転勤族で、生まれた時は東京だったんですけど、すぐ関西の逆瀬川というところに引っ越しました。それで幼稚園の途中まで行ってたんですけど、また東京に来て。それで小学校6年生まで東京にいて、小6の最後に市立渦が森小学校に転校し神戸に引っ越しました。

そのあと南アフリカへ行きまして、そこから中学3年生でまた戻ってきて、大阪の箕面というところの箕面市立第一中学校を卒業しました。それでそのあと灘高校に行って、高校2年生の時にちょうど灘校のすぐそばに自家が引っ越して、今も実家はそこにあります。

だからもう神戸にいたというのは、ちょうど住吉や御影の辺りなんですけど、それは全体でいうと本当3年間ぐらいだけなんですね。

今はほぼ正月の1週間ぐらいだけ関西に戻るというかたちです。戻って関西で食事したいなと思っても、全部閉まっているので、それでだいたい、神戸空港の近くのほうにあるゴルフ練習場へ行ってゴルフの練習して、実家で飯を食うという正月を、この10年ぐらい過ごしていますという感じです(笑)。今日はよろしくお願いします。

山阪:よろしくお願いします。

(会場拍手)