世界に誇る日本のウォッシュレット
パックン:この中(注:著書『世界と渡り合うためのひとり外交術』)で触れているのは、たとえば日用雑貨です。便利なものがいっぱいあります。しかし、なぜか海外には輸出されていない。トイレなども触れていませんがその例の1つです。
「あったか便座」「ウォシュレット」。今、「ウォシュレット」は洗浄機能付き便座というんだっけ? 洗浄機能付き便所をきれいにする洗浄機能付き洗浄機能付き便所があるんですよ。お尻を洗ったあと、こっち(便器)を洗ってくれる。
(会場笑)
森:ほおーすごいサービスね。
パックン:すごいですよ。これもちょくちょく海外で売られていて、マライア・キャリーが3個も持って帰ったとか、スポーツ新聞に載っていたりするんですが、そうしたところも少しずつ注目されるようになって、アメリカ人の友だちが僕に「まだ日本にいる?」「日本にいるよ」といって。
昔だったら「アニメが好きだ」なんていってね。「日本の車に乗っているよ」などといってくれていたのが、最近は「便所がいい」といったりするんです。
(会場笑)
そういったところの日用雑貨も含めて、製品、商品、サービスを、それこそ改善に改善を重ねてよりいいものにしていく。この国民性も素晴らしい。自信を持って発信してほしい。そうしたようなことも書いてある。
森:そうですねえ。だから本当に我々日本人が意外と気づかないところ、「えっこんなところが?」ということがある。沈黙力もそうですが。これが美徳なのかなと、言われてみると若干わかるところがありますよね。海外に行くと、こういうことが見えてきますね。
パックン:はい、どんなに自分の生活が便利だったのかがわかる。逆に「あっ、こういうところに我々は気づいていないけど、こっちも見よう見まねでもいいから取り入れたほうがいいな」と思うようなところもかなり目につくんです。
海外旅行もすごく大事だし、外国人とひとり外交していくと、自分の生活のためにもなる。自分の国づくりのためにもなる。そう思っているんですね。
画一性は高いが創造力が養われない日本の教育
森:そのときに日本が参考にした方がいい国というのは、アメリカ?
パックン:以外。
(会場笑)
アメリカもいいんですよ。反面教師的な意味もあって。これも今日はいいたい。例えば、日本のいいところ。学校の教育制度。すべての学生が、ほとんど同じ上履きを履いている。同じハンカチとティッシュを毎日持ち込んでいる。同じようなランドセルを持っている。同じような給食用のあれ、白衣じゃなくて何ていうんだっけ? 割烹着。
森:割烹着。
(会場笑)
パックン:みたいなものを持っている。
森:給食当番は必ずアレを持っている。
パックン:そう。そして、ほとんどの運動会が同じ内容をやっている。ほとんどの学芸会で同じような演劇を行っている。全国どこの学校へ行っても、同じ教科書を持って、同じペースで、同じことを勉強している。
すごいですよ。この画一性。これはいいことも悪いこともある。まぁ悪いことからいく。悪いこととしては、「クリエイティビティ=独創力があまり育まれないのではないか?」と思います。
森:そうですね。
パックン:「みんなと違うことを考えろ」といわれても、今までは同じことをやれといわれていた。
森:むしろ「違うことはやっちゃダメだ」といわれていた。
パックン:そう、だから「こっちの身になってみろ!」と。たぶん、これは反論してもいいと思うのだけど、その反論も思い浮かばないでしょ?
森:ハッハッハッハッ。
パックン:難しいですよ。今までまるっと教え込まれたデータをその通りに吐き出せば100点が取れていたのに、社会人になって企業の会議に「それぞれ新しい企画をもってこい」といわれて、「エッ?」と。
(会場笑)
パックン:そうなって当然です。これが日本の教育の弱点だと思います。
常識の共有ができないアメリカの教育
パックン:一方で、そのいい点は何か。アメリカの教育は、みんなそれぞれオリジナリティを持って、みんなそれぞれの価値観がある。全部同等です。みんな平等です。上下はない。みんなエキスパートです。
逆にエキスパートは聞かなくていいというような文化に少しなってきているんですよ。そうなると、それぞれが自分のファクトを持つようになって、自分の好みのメディアを見るようになって、自分の意見に合うような人たちとだけつるんで、エコーチェンバーと呼ばれている反響室のようになって。