SIMロック解除には抵抗しないが、売れないだろう

記者:毎日新聞のヨコヤマと申します。国内の通信の話なんですけれども、総務省がSIMロックを原則解除しましょう、というガイドライン案を出されているんですけれども、ソフトバンクとしてはこれにどう対応していくお考えか、ということ。

また仮に総務省の指針通りにやるとすると、日本の大手3社のキャリア間の競争であるとか、MVNOとの競争であるとか、この通信競争がどう変わっていくかというところを教えて下さい。

:SIMロックについては何年も前からずっと議論されていることで、総務省としてもSIMロック外しをしたいという意向を持っておられますので、いま我々だけではなくドコモさんKDDIさん含めて、また新たな新規参入の会社を含めて、議論を高めているところです。

我々は最終的に決まった方針に従う、ということであります。その内容については今各社、プラスマイナスいろいろと調整をしているところで、その調整の結果に我々は従うということだと思っています。

競争環境は、例えばiPhoneが日本が一番売れている端末ですけれども、すでにSIMロックのかかっていないiPhoneがApple Storeでいくらでも売っているわけです。今日現在もいくらでも、無制限に売っています。でも、大して売れていない。SIMロックのかかっていないAppleのiPhoneはほとんど売れていない、というのが実情です。

で、そのなかでも多くの部分の台数は、中国とか他の国に持って帰られている端末が多い、というふうに聞いております。それはたまたま発売時期が日本のほうが先だった、ということも関係しているのかもしれません。

つまり、日本のユーザでSIMロックのかかっていないiPhoneをApple Storeに買いに行ったお客さんはほとんどいなかった、というのが実態ですね。ですから、SIMロックが外れれば極端に端末の流れが変わる、というのではなくて。以前はSIMロックのかかっていないAppleのiPhoneが欲しい、という意見もたくさんありましたが、現にそれを売りだしても対して売れていない。

つまり、大手3社が多くの獲得費用として補填をしてお客様に売っているというのが実態ですから、SIMロックがかかっていないものは、Appleから仕入れたままの値段で売る。つまり高いんですね。SIMロックがかかっていないからという理由だけでわざわざ7万円、10万円出してiPhoneを買うユーザは、ほとんどいなかったというのが実態だというふうにご理解いただいたらいいんじゃないかなと思います。

でも我々は、総務省さんの意向には従うと。なんらそれを抵抗勢力としてやるつもりはないということです。

ハリウッド進出はあるのか?

記者:ハリウッド・リポーターのケビン・ブレアーと申します。海外での投資についてお伺いします。

直近で2億5000万ドル(約270億円)のレジェンダリー・ピクチャーズの買収を発表されました。これはソフトバンクにとっては少し小さめ(の買収規模)かなと思っていますが、今後さらにコンテンツ会社などの買収を含めたハリウッド進出、または再度ドリームワークスと話をする、また他のスタジオなどについて買収を検討されている、というような事はあるのでしょうか?

:これは全てケースバイケースだと思っておりまして、特別なコメントは差し控えたいと思います。我々はインターネットカンパニーであります。我々の視点はよりインターネット側にあるというふうに考えていただければと思います。もちろんケースバイケースなので、なにかチャンスがあれば、それがインターネットプラットフォーム全体にシナジーをもたらすようなものであればわかりませんが、特定のコメントは差し控えたいと思います。

記者:そうすると、今後のコンテンツ会社の買収を特に否定しない、ということで宜しいでしょうか?

:否定もしませんが肯定もしない、焦点ではない、そのように考えていただければと思います。

「ドコモ光」が公平な競争を阻害しないよう監視する

記者:フリーライターのサノと申します。先日、ドコモさんが「ドコモ光」という固定通信のサービスを開始されたと思いますが、NTT東西から元の回線の卸を受けて提供されると思うんですが、こちらに関してソフトバンクグループとしてけっこう否定的な対応を取られていたと思うんですが、ドコモ光の提供についてコメントいただけますでしょうか。

:我々も、光ファイバーの卸売りがなされるということについては、前向きに対応していきたいと考えております。ただ一方、NTT東西さんは光で7割以上のマーケットシェアを持っていて、もともと国が作った会社で、未だに国が筆頭株主でと、マーケットのドミナンシーを持っていという状況にあります。

かつ、ドコモさんは日本の携帯事業のなかでも圧倒的に最大のお客さんを持っている。そういう会社が、優位的立場を利用してアンフェアな形で、いわゆる一般の民業のところにその過度に活用して競争を妨げるというのは良くない、というのは日本の法律でも定められてることで。KDDIさんも強く反発しておられますね。

ですから是非、これは注意深く見守って、注意深く脱法行為が行われていないか、行われようとしていないか、というところについては我々も、また監督官庁の総務省の皆さんも、またメディアの皆さんも、みんなで注意深くこれを監視しながら管理していくべきであろうと思います。

まあ、我々としては光ファイバーと携帯をバンドルしてセット販売すると、結果的にドコモさんの親会社であるNTTさんに利することになるというのは、やや悲しい気はします。やや悲しい気はするけれども、お客さんにサービスを提供するのにそれが必要とあらば、それはそれとして現実を見ながら対応すると。

一方ですね、本来はメタル回線もアンバンドルされて、ADSLとかアンバンドルされて、物理的なメタル回線を我々はフェアに使うことが出来る形になっております。1回線ごとに回線の卸売りを受けて、サービスと物理回線をアンバンドルして、それを我々が活用することができるようになっております。

光ファイバーについては何故か、8回線ぶん束でしか借りれない。皆さん、新幹線のチケットを買うのに8枚まとめてしか買えない、チケットは誰にでも売りますけど、JRが経営しているみどりの窓口なら1枚ずつ買えるけれども、旅行代理店で買うと8枚まとめてしか買えません、となった時に、旅行代理店が公平に業務が成り立つか、というと、難しい問題がありますよね。

メタル回線においては、ADSLを1回線ごとに我々は買える。なぜ光回線になった瞬間に、8本まとめてでしか買えない、8本まとめてでしか回線を活用できないのかというのは、私は未だに強い疑問を持っております。この部分については是非、継続して多くの皆さんで議論をしていただきたいところだな、と願っております。

iPhone6の売れ行き、またXperiaの販売開始について

記者:時事通信のハシモトです。9月の半ばに発売したiPhone6の販売状況について伺いたいんですけれども。ドコモさんもKDDIさんも結構好調だ、とそれぞれ言われているんですけれども、孫さんから見て今年のiPhone商戦、どのように見られているのか、お願いします。

:世界でもっとも上位機種を数多く売っている会社のひとつがソフトバンクであろうと思います。ソフトバンクとSprintとブライトスターを足すと、Apple社の世界最大のお客がソフトバンクグループじゃないかと私は思いますが(笑)。

日本国内でも我々のiPhone6は非常にたくさん売れております。品切れ状態であるということで、もっとたくさん供給があればもっとたくさん売れるということで、好調に売れていると思います。

記者:ウォール・ストリート・ジャーナルのモチヅキと申します。よろしくお願い致します。ソニーさんのXperia Z3を販売されるとお決めになったかと思うんですけれども、なぜこのタイミングでソニーさんの携帯電話を取り扱うようになったのか、を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

:2年くらい前から話し合いを開始して、1年くらい前に合意をして、そして発売時期が今に至っていると。だいたい2年くらい準備するのに時間かかりますからね。まあ、そういう事です。

対インド1兆円投資は「構え」である

記者:朝日新聞のシムラと申します。よろしくお願いします。先日(孫氏が)インドを訪問された時に、10年で1兆円規模の投資をするという意欲を示された、と現地の政府の声明で出たんですけれども、この実現性というか、どういう業界を狙っているのかとか、お話できることがあればよろしくお願いします。

:我々は10年という単位で1兆円規模の投資をする"構え"がある、ということを発表させていただきました。資金の準備だとか、我々の意欲として1兆円規模の投資をインドで、今からの10年間で行う"構え"があるということです。

構えというのは、構えててもいい球が来なかったら振らないわけです。打席に立つ、いい球がきたらバットを振る、その振る規模としては1兆円規模のものを投資する。その心の準備、資金の準備がある、意欲もあると。

もちろんケースバイケースで、いい投資先でないのに、無理して1兆円ありきということで、高すぎたりあるいは会社が良くないにも関わらず、もう1兆円の予算があるからといって何が何でも、どこかの道路工事みたいに期限がきたから1兆円投資しなきゃいけない、とかそういうスタンスで臨むわけではない、と。

でもいいものが順調にやってくれば、10年で1兆円規模というのを行う準備がある、そういう意味です。

欧米で成功するamazon、中国では大苦戦

記者:ダイヤモンド・オンライン、サシダと申します。今の質問に関連するんですけれども、インドについてsnapdealに投資をして成長させていく、というお話でしたけれども、インドについては外国の企業が直接投資をする(ことに関して)規制があると思うんですけれども、それに対してソフトバンクがインドに投資をする上でのリスクとして考えられると思うんですが。

例えば今、amazonとかeBayっていうのは直接的にインドの消費者に物を売れない状況だと思いますが、これが例えば直接投資(に関する規制)が撤廃されたりすると、amazonもeBayも進出してくる可能性が高い。実際にamazonはすでに、インフラへの巨額投資を始めているというふうにも聞きますけれども、その件に対してソフトバンクとしては投資上のリスクとして考えているのかどうか、お聞きしたいんですけれども。

:amazonさんは例えば中国ですでに積極的に事業をやっているわけです。で、実際に何パーセントのマーケットシェアを取れたか。アリババが80%で、amazonは2番でもない。ということは、amazonは数%のマーケットシェアだということだと思うんですよね。

それが急成長しているかというと、決してそうではないという状況です。ですから、欧米や日本も含めて順調に成長しているamazonさんですけれども、中国だとかインドだとか、そういうところでどれくらい成長できるかというのは、これはamazonさんに聞いていただきたい。別に私に聞いても、彼らの気持ちはよくわからない(笑)。

ただ中国では、直接すでに事業を行っていて、決して大きなマーケットシェアを取れているわけではない、というのも1つの事実であるということです。……他にいかがでしょうか? 宜しいでしょうか? じゃあだいぶ時間になりましたので、ここで終わりたいと思います。ありがとうございました。