元気な高齢者が集う場所が少ない

平松佑介氏(以下、平松):では、質問・提案があればみなさんからどんどん受け付けたいなと思っていますので、ぜひ質問していただけるとうれしいです。質問ある人はどうぞ。あれ? あっ、よかった(笑)。ありがとうございます。

質問者1:最近、けっこう銭湯で見かける風景なんですけれども、お年寄りがヘルパーさんと一緒に銭湯に入りに来ていて。

平松:お年寄りの方がヘルパーさんと一緒に銭湯に行く。はい。

質問者1:たまに銭湯でみるんですが、そういうのってなにかサービスとかで銭湯と協力しているとかあるんですか?

平松:ああ、それは、僕、わからないですね。

質問者1:東京の銭湯全体でやっているわけではないんだろうなとは思うんですけれど。ヘルパーさん、デイサービスさんが個々でやっていることなんでしょうか?

平松:行政とのやりとりはすごく多くて。やはりご高齢の方々の施設が足りていないという状況があるなかで、なにが足りていないかというと、小杉湯でいうと、アクティブなシニアの方ですね。要は、介護認定を受けている方々の施設はあるんだけれども、逆に高齢者の方が増えてしまって、元気な方たちが集う場所が少ないという課題を行政として抱えていて。

そういう意味では、銭湯の空き時間を使って高齢者の方を呼んだ健康体操とか、その後にお風呂に入ってもらうとか、週に1回100円でお風呂に入れるとか、そういう施策は杉並区ではやっています。けっこう各行政ごとにも違いがあると思いますね。

質問者1:うらやましいなぁ。家でお風呂入るのって、事件が起こるじゃないですか。入ってる時。

平松:まぁ、そうですよね。はい。

質問者1:だから、逆に私が年をとって本当に1人になっちゃったら、お金を払って銭湯に連れていってもらえるんだったらすごくうれしいなと思って。今は導入をしてるのかなと思って聞いてみました。

エリアによって求められる銭湯は違う

平松:でも、それはすごく大事な要素だと思いますし、当然福祉とか銭湯の掛け合いというのは、今もやられていますけれども、これから新たなデザインとかアイデアでできることはすごくあると思いますし、大事な要素だと思いますね。

でも、それは町と銭湯という相関関係があって、やっぱりそこの町になにがあるかによって求められる銭湯は違うと思うんですよ。だからその近くにそういう施設があったから、その銭湯がそういう役割を担ったみたいなところはあると思います。

質問者1:すごく楽しそうでした。

平松:ありがとうございます。今みたいなかたちで、今は福祉と銭湯みたいなかけあわせになるんですけれども、それ以外にもなにか質問とか話したいこととかありましたら、ぜひどなたか……ありがとうございます。どうぞ。

質問者2:業界の中でのつながりについてちょっと興味があるんですけれども。今、銭湯ぐらしさんが法人化するという、いろいろ新しいものをつくるなかで、ほかの新しい世代交代した銭湯のオーナーさんとか、なにか、世代交代をしなくてもおもしろい取り組みをやっている銭湯はありますか?

僕、台東区出身で、好きな銭湯があったりとか、自分はもともと銭湯の上のマンションに住んでいて馴染みがあるんですが。そういうのを見ていて、銭湯の業界内の密なつながりがあったり、コミュニケーションをとれる場とかあったらもっとおもしろいし、そうあるべきだなと思うんですけど。

平松:ああ、なるほど。

質問者2:そういう業界の中での横のつながりとかコミュニティづくり、お客さんとオーナーさんとかじゃなく、銭湯の業界内でのコミュニティづくりみたいな、なにかは考えられていますか?

平松:銭湯の横のつながりを活かして、新しいことがなにかできるんじゃないか。

質問者2:単純に情報交換とかをしたり。

銭湯の業界内でのコミュニティづくり

平松:今、銭湯は転換期に来ていて、さっき言ったみたいにどんどん減っていっているんですが、意志のある人が継ぐケースも出てきています。そういう人たちはいろんなところで思いを発信しているので、やっぱりSNSを通して非常につながりやすいかたちになっています。

今日は『東京銭湯』のメディアの人も来てくれていますけど。そういうメディアを通して横のつながりは生まれているので、銭湯の経営者同士の横のつながりというのは、すごく大事になってくるなと思っています。

あとは、「歌う銭湯」でライブをやってくれている江本君なんかは、やっぱり銭湯で歌う楽しさとか、アーティスト、ミュージシャンとして一番歌っている喜びが感じられるそうなんですよ。いろんな銭湯を、本当に全国をツアーで回りたいとか。

けっこうこっち側の銭湯ぐらしでいくと、「小杉湯だけの企画にはしていきたいくないよね」みたいなところを、当然みんな言ってくれていて。「どう銭湯業界につなげていくか?」みたいなのはけっこう話しているので、なにかそのへん、銭湯業界にどうつなげていくかとか、加藤ちゃん、なにか思っていることとかありますか?(笑)。

加藤優一氏(以下、加藤):そうですね、けっこう核心をついた問題だと思うんですけれども。

平松:そうだよね。核心をついた問題(笑)。

加藤:この前、僕のところに東京都の人が来て同じ話になったんですね。やっぱり公衆衛生上、行政としては銭湯はなくせないんですね。でも一番問題なのは……ちょっとこれ、ログに残るんだよね? 言い方が悪いんですけど、あの、うーん……なんて言えば…… ?

平松:(笑)。

加藤:向上心を失いつつある銭湯みたいなほうが多いんですね。そこをどう底上げしていくかというのは、けっこう悩ましいところで。でも、やっぱり「銭湯は儲かる」「銭湯は楽しい」というのを、我々とかやる気がある人が発信していくしかないかなと思っていて。

結局は、経営者の方のやる気次第だと思うんですよね。佑介さんみたいな方がいて、我々もそこにサポートに入って、しっかりちゃんと事業として成り立つモデルとか、楽しそうな風景というのをしっかり作り上げていくことが、結果的につながっていくんじゃないかなとは思っていますね。

平松:はい。でも、やっぱり僕はすごく外との世界のつながりは重要だと思っています。僕はみんなから銭湯の価値を教えてもらったので、そういう動きもすごく大事だと思います。はい、大丈夫ですか?

質問者2:はい。

平松:ありがとうございます。はい、あと、ぜひメンバーとかも含めてなにか聞いて……あ、ありがとうございます。じゃあ後ろの方。

銭湯に行けない人に対してどういった提供ができるか

質問者3:僕も福祉業界でなんでも屋をやっていまして。

平松:福祉業界でなんでも屋をやるってなんですか?(笑)。

質問者3:保険外サービスでいろんなことをやっているので。

平松:ああ、そうなんですか。はい。

質問者3:健常な人に憧れている体の不自由な人と会うことが多くて。そのなかで、銭湯に行くことに憧れる人がすごく多くて。あの楽しそうな雰囲気が、やっぱりものすごくあるみたいで、その需要がすごく感じています。

なにかのネットのニュースで見たんですが、京都で三助さんがいる銭湯があって、そこに体の不自由な人が集っているというネットニュースを見て。これ、クラウドファンディングだったら期間限定で三助さんがいるということができるんじゃないかなというのがあって。そういう貸し切りの情報が、どこかのポータルサイトに銭湯の貸し切り情報が集まってないのかなっていうのが、すごく知りたくて。

平松:それは銭湯の貸し切り情報を含めて、要は、銭湯に憧れているとか銭湯に行きたいと思ってるけれども、なかなか行けないという現実的な問題の人に対して、どう提供できるかということですよね。

質問者3:そうですね。それに向けた情報発信も含めて。

平松:誰か……。

宮早希枝氏(以下、宮):えっ? 福祉?

平松:まぁ、外国人とか。

:私の個人的な考え方になってしまうんですけど、もともと私はお風呂ライターをやっていて、東京銭湯さんともいろいろお仕事をさせていただいていて。いろんな銭湯や温泉を回るなかで思ったのが、さっきちょっと加藤ちゃんも言ったんですけど、やっぱりオーナーさんの考え方というのがすごく大事で。銭湯業界をまるっと底上げするのは、私は個人的には無理だと思うんですね。

ニーズを銭湯側に伝えることが大事

:みんな自分の思いがあって、「こういう銭湯にしたい」とか「こういう温泉にしたい」と思ってやっている人たちを一元化して、「みんなでがんばっていこう!」というのはなんか失礼な話だし、やる必要もないし、無理かなと思っていて。

ただ、そういうニーズを銭湯の人に伝えるということはすごく必要なことです。例えば、福祉の人がそうやって貸切風呂をしたいというのを知らないオーナーさんもいると思うので、そういうのを佑介さんが持っている横連携のつながりで発信をしていくとか、そういうことをやれる銭湯を私たちが探して、そういうところを集めてイベントをやるとか、というかたちだったらできるんじゃないかなとは思っています。

銭湯業界に期待することというか、全部を変えるというのはなかなか難しいんじゃないかなというのが私の考え方です。

ただ、そういういろんな新しい場所としての活用の方法はすごくあると思っていて。福祉もそうだし、さっき言った福利厚生もそうだし、マーケティングの場にもなるだろうし。ニーズをちゃんと銭湯側が理解していない状況なので、「こんなことをやりたいよ」という声をもっと届けられるような仕組みができたら、それはそれでまた新しい事ができると思います。

加藤:補足。ちなみに、小杉湯は親子風呂をやってますよね?

平松:親子風呂やってる。

加藤:時間外。あれもその観点というか。

平松:まぁ、そうだね。僕、銭湯に憧れているけど入れない方がいるというのは初めて知ったんですよ。だから今、みやべえが言ったように、そういうニーズがあるというのを伝えて、意外と銭湯経営者は知らないので、それをまず知ってもらうというのがすごく大事なことだと思います。

今の親子の話というのは、僕が今子育てをしているので、娘が2人いるんですけど、4ヶ月から銭湯に入れてるんですよ。それが僕は一番の教育だと思って入れていて。その結果、地域のおばちゃんたちにすごくかわいがられていて、娘5歳と2歳なんですけど、それぞれ担当のおばちゃんがいるんですね。

(会場笑)

僕の奥さんがお風呂に入らなくても、お風呂に入れてくれるんですよ。だから、僕の奥さんは1人でゆっくりお風呂に入れるんですね。それって、地域のつながりじゃないですか。

地域のつながりで課題を解決していく

平松:さっきの第2次世界大戦後の一気に人口が増えた時というのは、当然あれだけ人口が増えているというのは出生率が高かったという状態なので、子供が3人も4人も生まれていたわけですよね。でも、家にお風呂がないということで、子供を抱えて銭湯に来ていて。

小杉湯にも女中さんが3人ぐらい住み込みでいて、女中さんが子供を見てくれるんです。その間にお母さんはお風呂に入るんですよ。そういう地域のつながりで課題を解決していたというところが、すごくあったんですね。

今はプールですらおむつを履いていると入れてくれないんですよ。温泉旅行に行ったのに、「おむつがあると温泉に入れません」って言われて、ユニットバスみたいなところに僕は子供と入って、「なんなんだ、これは」とか思ったんですけど。

そういう状況で、けっこう子育て世代はおむつがあるとお風呂にいけないと思ってるんですよ。でも、小杉湯はそんなことないので、開店前に貸切で赤ちゃんや小さいお子さんと銭湯に入れる機会を提供して、銭湯って子供と入りに来て大丈夫な場所であることを知ってもらいたくて開催しました。身近な課題を銭湯で解決するというのはすごく大事な要素だと思うので、可能性はすごくあると思います。

ありがとうございます。すごくすてきな質問をしていただきました。