寒さと利尿作用の関係

ハンク・グリーン氏:インターネットをご覧のみなさん、私たちは冬に屋外で起こるとても深刻な問題を話し合わなけばなりません。それは絶えず起こる尿意に邪魔されることについてです。

出かける時に、コートを着て、マフラーを巻いて、パンツを穿いて、2枚目のパンツ重ね着して、その上3枚目のパンツも穿く前にトイレに行ったところでまったく意味がありません。

冬のワンダーランドを散歩していると最大でも1時間くらいしかもたずに尿意を覚え、体が「ほら、早くトイレ探して」と言ってきます。

それはただの思い過ごしではありません。これは「寒冷利尿」と呼ばれるもので、とても自然な作用であり、寒いとより多くの尿が作られるのです。

その仕組みについてはいろいろな議論があるのですが、多くの生理学者は私たちが体を暖かく保とうとすることの副作用であると考えています。

多くの動物は、むき出しになっている体の部分の血の流れを減少させることにより、寒さに対抗しています。私たち人間は、肌の毛細血管を収縮させることで寒さで冷えた血の流れを最小限に抑えるようにして、体の大事な部分を温かく保つためにエネルギーをあまり使わないようにしています。

しかしそれによって、水風船の一端を掴むとそれ以外の部分が膨れ上がるように、血管が収縮すると私たちの体幹の血管と動脈により多くの血液を送り込みます。

より多くの血液を送り込むということは、これらの血管の血圧が上昇するということですが、高い血圧も体によいとはいえません。

血圧が上がると、体は尿の中の水の量を増やすことで総合的な液量を減らし、釣り合いをとろうとします。この説明は筋が通っていますが、完全に当てはまるとはいえません。

寒さにさらされた人々や他の動物にも血圧の上昇がみられますが、とくにより長く寒い環境に身を置く動物たちの中にはそれが見られないと言う科学者もいます。

研究者は、尿の生成に伴う通常のホルモンの変化を常に見出したわけではありません。絶えず起こる尿意は、もっと“塩”に関係しているのではないかと考えている生理学者もいます。

少なくとも寒い日に出歩いた後に感じる尿意はそれに関係しているのではないかということです。

腎臓は冷えるとうまく機能せず、尿が作られている時の塩の再生成を防ぎ、科学者たちが「浸透圧利尿」と呼んでいる現象を引き起こすのです。そして塩気が血液から水分を尿に引き入れ、何度もトイレに行かざる得ない状況になるのです。

しかし、寒さの中で腎臓が奮闘し始めるまでには時間がかかるので、家を出た直後に尿意が起こるわけではありません。実際にこれは北極圏環境に配置された部隊など、寒い地域で生活している人にとっては大きな問題です。

しかし、私たちの多くにとっては、寒冷利尿は冬に何度もトイレ休憩を取らなければならないということに過ぎませんし、失った水分を補給をすることを忘れなければそんなに悪いことではありません。