55ヶ国で展開するルンドベック社

司会者:それでは、このまま第2部に移りたいと思います。このスライドを見ながら、企業の久保田さま、小林さま、渡辺さまから、それぞれの所属していらっしゃる会社のことについて、まずはご説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

久保田恵理氏(以下、久保田):私たちは在日デンマーク商工会議所に所属している企業の人事のメンバーです。

外国から進出している企業の集まりが国ごとにありますが、デンマークも個人を含め約70社が所属しています。日本でのビジネスを日本の人たちと一緒に円滑に進めていくためのさまざまな活動をしています。

今日は、企業チームとしてはこの3人でお届けしたいと思います。

渡辺文世氏(以下、渡辺):それではまずはじめに、ルンドベック・ジャパンの紹介から簡単にさせていただきます。

ルンドベック・ジャパンは製薬会社です。デンマーク、コペンハーゲンに本社がございまして、精神科領域・神経内科領域に特化した製薬会社です。なかでも精神科領域ではうつ病と統合失調症、神経内科領域ではアルツハイマー病とパーキンソン病の薬の開発・製造・販売を行っております。

従業員は、グローバル全体で約5,000名です。(スライドの)真ん中に製薬会社と書いてありますが、製薬会社の機能はすべて有しておりまして、研究から開発、製造・販売まで、すべてLundbeck社が担っております。

今現在は、グローバル55ヶ国で展開をしております。日本もその1つです。日本は2001年に設立されています。Lundbeck社の創業は1915年で、100年を超える企業でございます。

次に、70という数字が2つ並んでいますが、1つ目の70というのは、新薬の開発を始めてから70年間経っているということです。70年間ずっと、ほぼ精神科・神経内科領域に特化した薬の開発を行っています。

次の70は、デンマークの株式市場に上場しているのですが、その株式の70パーセントはThe Lundbeck Foundation(ルンドベック財団)が保有しているということを表しています。ですので、長期的な視野に立って、会社経営を行う環境が整っているかなと思います。

私個人のお話を少しさせていただきますと、Lundbeck社は4年間、スカンジナビア系の企業の経験は合計6年間です。最初は公務員からスタートして、日系のベンチャー、それから外資というキャリアを積んでいますので、私がデンマークの会社に入って感じたことなどを共有させていただけたらと思っております。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

年間7,000億円の売上があるレゴ社

小林実加氏(以下、小林):レゴジャパンよりまいりました小林と申します。よろしくお願いします。

まず簡単にLEGOという会社を紹介させていただきます。「LEGOを知らないよ」という方、いらっしゃいますでしょうか?(笑)。

(会場笑)

ありがとうございます。今日ここに座らせていただいてるのでおわかりかと思いますが、LEGOはデンマークが発祥です。どこの国でも株式を上場していないオーナーが資本を持っていて、LEGOのビジネスを世界中でサポートしているというビジネス形態をとっております。

今、全世界で7,000億円ほどの売上があって、こういったお金の話をすると、お父さん、お母さんとしてレゴを買ってくださっている方、もしくはファンとして買ってくださっている方が、「えっ?」と思っちゃうかもしれないですけれども、利益率が3割を超えてくるということで、利益を正しくだし、より良い商品開発できるようなビジネスのスタイルを確保するということは、他の企業同様に目指していることです。

LEGOは、実はもともとおもちゃの会社ではありません。一番最初にオーナーがやっていたビジネスは木工、大工さんです。それで、デンマークが大変な不況に陥った時に、家も建ちません、大工もできませんということで、「木を使ってなにかできないか?」とおもちゃをつくり始めたのがLEGOのスタートになります。

オーナーがビジネスをし始めてから85年、おもちゃ屋になってから60年。日本に入ってきてからは今年が40年目になりますので、意外と日本でも腰を据えてビジネスをさせていただいています。10年以上連続、日本の市場としても成長させていただいていて、みなさんにレゴを使って遊んでいただいています。

世界では140ヶ国で展開をさせていただいておりますが、全140ヶ国にオフィスがあるわけではなくて、オフィスがある場所は絞ってビジネスをしているので、日本はそのなかでもLEGO社としては注目をしている市場で、オフィスも置いてビジネスをしております。

レゴというと、みなさん、バケツにいろいろなブロックがグチャッと入っているようなものを想像してくださるのかと思うんですけれども、実は1年間に販売しているものの約6割が新製品です。その年しか買えない、もしくは特別につくらせていただいているものですので、ぜひお気に入りのものを見つけられたら、お買い上げいただきたいと思います(笑)。

私個人のキャリアとしましては、レゴに入って3年になります。日系企業も外資系企業も両方とも経験をしていて、物をつくっていて有形商材を扱っているようなところをメインに、ずっと人事をやってまいりました。

今日は、私個人の経験として、日系企業や外資系企業、もしくはデンマークの企業とほかの国の企業で働いてきたものと比較したりして、個人的な経験も含めてシェアできればと思っております。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

世界で初めて粘着式ストーマ装具を作ったコロプラスト社

久保田:コロプラストの久保田です。最近はゲームの会社と間違われることが多いのですが……。

(会場笑)

久保田:コロプラストは結腸(大腸の一部)という意味の“Colon”とプラスチック製、この2つを合わせた言葉が社名の由来です。

デンマークの看護師が、結腸がんにかかった妹のために、世界で初めて粘着式ストーマ装具を作り、これがスタートになっています。誕生ヒストリーについては、コロプラストのホームページに素敵な4分の動画がありますので、ぜひご覧になってください。

どのような方が使われるかというと、例えば、がんのために肛門を切除することになった場合、腸の端をお腹から出して人工肛門が作られ、排泄物を受ける袋が必要となります。これがストーマ装具です。(スライドを指して)今は斜め上のこのような形に発展しています。それ以外にも自己導尿カテーテル等、ニッチな分野で、必要とされている方に必要な製品をお届けしています。

その技術が Johnson & Johnson「キズパワーパッド」にも使われています。実はコロプラストが製造していて、箱の横を見ていただくと「Made in Denmark」と書いてあります。

日本のコロプラストは設立30年。コーポレートカラーがターコイズで、先日社員旅行でお揃いのポロシャツを着て写真を撮りました。

日本法人の経営会議メンバーはダイバーシティに富んでいます。年齢は30代から50代。社歴は一番短い人が2年、長い人は25年。前職も日系企業、外資系、デンマーク本社からの転籍。社長は日本留学中にインターンとして日本のコロプラストに入社しました。5年前に36歳で社長に抜擢された素晴らしいリーダーです。

右下の写真はデンマーク出張中のものです。デンマークには金曜日の朝食をオフィスで一緒に食べる習慣があり、担当になった人がデニッシュを買って来て、みんなでつまみます。ちょうど出張中に参加する機会を得ました。このような環境で働いています。

私自身はコロプラスト歴10年で、その前はアメリカ企業で働いていました。よろしくお願いします。

(会場拍手)

デンマーク企業は相手を尊重する姿勢がある

司会者:それでは、この後はディスカッション形式で、デンマーク企業のカルチャー、ジェンダー平等、ワークライフバランスの3つのテーマをメインに、みなさんでお話をいただきたいと思います。

久保田:ぜひこのキャラクターの紹介をさせてください。

司会者:あ、はい(笑)。

久保田:デンマーク人なら誰でも知っている、ラスムス クルンプというキャラクターです。大体キャラクターは名前しか持っていませんが、クルンプという名字もあるんです。

参加者:ドラえもんみたいな?

久保田:そんな感じです。大人も子どもも知っているそうです。

司会者:ええと……クマさんでいいんですね? はい(笑)。

小林:サルじゃないです(笑)。

(会場笑)

司会者:ありがとうございます(笑)。では、まずカルチャーの部分から、みなさんでテーマに沿ってお話しいただきたいと思います。何点か質問を挙げて、それにお答えいただくかたちで進めたいと思います。

最初に、「これまでの職場と違っていた点は?」ということで、久保田さん、なにかございますか?

久保田:そうですね。びっくりしたことが2つあります。

本社の人たちと電話会議などでやりとりをすることが多いのですが、その時に言われる締め切り設定がけっこう先で。「本社の役割は、各国がうまくいくようにサポートすること」という姿勢がいつも前面に出ています。

アメリカ企業はどちらかと言うとトップダウン色が強く、例えば「明日のお昼までにこれを出すように」等のメールがしょっちゅう飛んできて、自分の優先順位が変わってしまったりしていたのですが、デンマーク企業にはそれがなく、相手を尊重する姿勢があります。

もう1つびっくりしたのが、あまり偉ぶらないというか、格好をつけない。例えば、グローバルの大きい人事の会議で、トップの女性がシュミーズみたいな……家の中でしか着ないような格好で出てきて、すごくびっくりしました。

あまり外見や体裁というものにとらわれない。でも人間性が素晴らしく、「あ、こういうのもありなんだ」と思いました。

休むときはしっかり休むデンマークのカルチャー

小林:私も今回このレゴに来て3年になりますが、ここが初めてのデンマーク企業だったんですけれども、一番最初にびっくりしたことは、オンオフの切り替えがすごくはっきりしているということです。

デンマークって夏が時期的にすごく限られているので、みんな夏休みをとる時期がものすごく集中していて。少し言い過ぎかもしれないですけど、7月はほとんど会社に人がいないという状況が、本社で起こるんですね。

いろいろなことを日本の現地法人から本社とやりとりをして進めるなかで、7月が来るとAさんもBさんもCさんも部門全員いない、みたいな状況があって。「誰かに引き継いで代わりにやります」「交代に休みます」ということでもなくて、みんな休んでしまうということが当たり前に起こっていて。

それが日本で日本人らしく働いてた自分の感覚と大きく違ったところだったので、1つびっくりした点でした。

渡辺:私もお休みに関しては、かなり驚いたことがあります。2015年にグローバルのCEOが変わりました。それまで半年ぐらいCEO不在で、「うちの会社、CEOはいつ決まるんだろう?」と思ってようやく待ち望んで来たCEOだったんですが、5月に着任して、7月には夏休みを3週間とっていたんですよね。

でも、周りも別に驚かない。先ほど小林さんがおっしゃっていたように夏は限られているので、夏休みは必ず6月か7月には3週間、4週間休むのが当たり前だと思っているので。会社のトップが、着任したてだろうがなんだろうが、とにかく夏休みはとるというのには、すごく驚きました。

同じようなエピソードで言うと、グローバルのエグゼキュティブ・マネジメントの直下の人が休みをとるときに関係者全員にメールがビロンと入りまして、「関係各位 いつからいつまで休みを取ります。本当の緊急以外は連絡しないように」と。「メールも電話もするな」という連絡が来た(笑)。そこまで徹底して休むということには、本当に驚きました。

司会者:寺田さんはなにかございますか?

寺田:去年、日本とデンマークの外交関係150周年だったんです。それで、10月にデンマークから皇太子、皇太子妃が日本に来ました。事前に、9月頃だったかな、デンマーク大使館のスタッフが日本の宮内庁に行って打ち合わせをしたんですが、デンマーク人の外交官がTシャツで行きました(笑)。

(会場笑)

日本の9月は暑いから、着任したてということもあったんですけど、まあ日本人だと考えられないことだなと思いました。

司会者:ネクタイとか、めったにしているイメージがないですね。

寺田:そうですね。私も今日はさすがに(ネクタイを)してきましたけど、普段はここまでの格好は必要もないし、しないです。

司会者:大使館でもそうなんですね。

デンマーク人から見た日本人の不思議なところ

司会者:では、次のテーマにいってみたいと思います。「日本支社で働く外国人に言われた日本人の不思議って?」。なにかありますか?

久保田:3つあります。1つ目は全員から言われるのですが、「有給休暇の消化率が低すぎる」「みんなが休まなすぎる」ということです。

あとは、営業部門を中心に「飲み会が多い」。デンマークでは平日夜は家族との時間のようで、「すごく多いね」と言われます。

それから、先ほどの寺田さんのプレゼンにもありました通り、男女とも働きますので、日本人の専業主婦率の高さにびっくりされます。「よく1人の収入で賄えるね」と言われたこともあります。

小林:私は今聞いているのは2つぐらいで、「ルールがないと不安になる社会だよね」と。「『決められてないことはやっちゃダメ』って、日本人は思うんじゃないの?」と指摘をされたことがあります。

デンマーク人の感覚でいくと、「決まっていないんだったら、自由に判断してやったらいいじゃないか」。だけど、「決められていることがないと、なんとなくどうしていいかわからないから、意見を言えなかったり、やれなかったりということがあるね」というのが、デンマーク人から言われたことですね。

もう1つ、ちょっとおもしろかったのは、テレビでかぜ薬の宣伝で「どうしても休めないあなたに」というのをやっていて、それを見てすごくびっくりしていました。

(会場笑)

「『こんなに熱があって喉が痛かったら休めばいいのに。それでどうしても休めないから薬を飲むのはちょっと違うんじゃないか。日本人はそんなに休んじゃダメなのか』とテレビを観て思った」と言っていたので、たぶん社会的な感覚を表しているようなCMですら、彼らにとってみると、なかなかおもしろい、視点が違うということを気づかされたところでした。

渡辺:また小林さんの話に少しかぶるんですけれども、ルール社会ということについて。私がここに来る前にデンマーク人の同僚と、スウェーデン人の上司にアンケートをとってきて、それに書かれていたことなんですが。

例えば、「フレックス制度があった時に、日本だと5ページぐらいにわたってつらつらと書いてある」と。「デンマークだとたったの2~3行で済まされることが、かなりガッチリ書いてあるのがすごく驚いた」とは言われました。

あと上司が言っているのは、「会社へのコミットがすごい」「『なにを差し置いても会社』というのはものすごいなと感じている」と言っていました。

ただ、「日本人にとって仕事が人生においてかなりのウェイトを占めている」とも言っていて、そこには少し違和感を感じることもあるようでした。

司会者:そうしますと、次のテーマは今のみなさんのお話のなかでお答えが出ている気もするんですが、「ここが一番違う」と思うところは、どこなんでしょうかね?

小林:先ほどのルールの話にも関わるんですけれども、少なくとも今日ここにきている3社のメンバーで話をしている限りは、形式ばったことやいわゆる組織の序列などをまったく気にしない、それが壁にならないというところは、1つ企業風土として見受けられるのかなと思います。

「誰が偉いから、この人には話をしにくい」「自分が言っていいものか」という遠慮がまったくないので、言わなければいけないことは言う、言いたいことは言う。そこにその人の役職だったり、どの部門にいるとか、組織ピラミッド上のどういうレベル感の方かということは、ほとんど問題にならないということがあるかなと思います。

司会者:渡辺さん、なにかありますか?

渡辺:そうですね。人事の立場から言うと、時間の管理の感覚がまったく違うなと思っています。

例えば、デンマークでは、マネージャーの仕事は何かといったら、ビジネスをリードして、部下をコーチして、ビジネスの成功に向かっていくということであって、部下が何時間働いてるかとか、有給をとっているかということは、あまりそこまで細かく時間管理はしていないと思います。みなさん有給を自らとりますし、長時間働くということはあまりないからなんですけど。

日本はやっぱり、非管理職であれ管理職であれ、時間の管理はしていかなければいけないので、そのあたりの感覚は違うなと思います。

デンマークのジェンダーについて

司会者:では、次に進みたいと思います。先ほど寺田さんの資料で、データの部分でご説明もいただきましたけれども、ジェンダー平等が進んでいる国だということで、企業で働いている方もなにか感じるところはございますか?

久保田:そうですね。デンマーク企業の日本支社でも、女性はたぶん日系企業より働きやすいのではないかと思います。女性も役割を持って働いています。残業が少なくて、有給休暇も取りやすいはずです。

育休取得率は100パーセントで、ライフステージに合わせて、役割変更やキャリア選択も実現できているような気がします。例えば、子どもを出産するまでは営業職で、子どもが小さい時は今までの経験を活かしてコールセンター、大きくなったらその都度また選択していく、ということが可能です。

デンマークはさらに進んでいて、産休明けの人がいきなり転職することもよくあります。小さいお子さんがいるということがまったく不利にならないようです。むしろ産休中にゆっくり時間ができるため、これからのキャリアを考える良い機会になるようです。復帰と同時に次の所へキャリアアップしていく例があります。

また、シングルマザーの選択もわりと多く、別れた後に妊娠がわかり、そのまま産休・育休というケースがあります。ある一定の年齢以上であれば間違いなくシングルマザーを選ぶということでした。その後の恋愛においても、全然不利にならないそうです。

渡辺:本社で働いている同僚を見ていて感じるのは、とにかく周りのヘルプはできるだけ使う。すべて自分がしなきゃいけないという感覚は、あまりないように思います。

男性だろうが女性だろうが、性別関係なく、料理が嫌いだったり、掃除が苦手だったり、自分の時間がほしいから、例えばこのときはベビーシッターに子どもの面倒を見てもらうなど、積極的に周りのサポートを使っていく。

そういったサポート体制が確立しているからとも言えるんですが、サポートを受けることに抵抗がなくて、当たり前に、周りのサポートや外注を利用しているということは、デンマークの同僚を見ていてすごく思います。

小林:私からはレゴジャパンの日本での運用について、少しご紹介します。もしかしたら項目3つともカバーをしてしまうかもしれないんですけれども。

今、私どもは50名ほどの会社でして、男女比がちょうど50、50です。それで、女性の管理職比率が30パーセントを超えたところですね。

いわゆるご主人がお家にいる、男性がお家にいて女性が働いているというケースも、10パーセントぐらいいます。なので、そういう意味では、デンマークの風土を受け継ぎながら、男女ということがあまり議題にならないような企業文化になっているのかなと思います。

男性の働き方もまた同じ視点で、男性・女性ということがないので、子どもが熱を出したときには、「お父さんが家から働きます」とか、「お父さんが面倒みるので休みます」とか。

そういったことは当たり前のように起こっているので、家事でも業務でも、特定の仕事に対して「女性がやるべきだ」という意識はまったく社内にはないですし、男性側社員の意識も、「自分もそういうことをやっていかなければいけない」「当たり前の責任としてやる」という人たちが集まっているという風土ではあります。

男性社員のワークライフバランス

司会者:男性の働き方について、本社と違って有給取得率が低いというお話も聞くんですけれども、そのあたりはいかがですか?

久保田:「転職して家族との時間が増えた」「人間らしい生活ができるようになった」という感想をもらうことが多いのですが、女性と比較すると男性の有給消化率は少し低いような気がしています。

ただ、子育てのために家族をオーストラリアに移住させ、休みを取って行き来している人もいます。この前の年末年始も17日連続休暇。働く時は思い切り働き、「これが自分のワークライフバランスだ」と話しています。

デンマークでは男性の育休も当たり前で、「ガールフレンドが出産したから、パタニティリーブを2ヶ月とる」という例もありました。

小林:うちは子どものおもちゃのビジネスをやっているので、またデンマークという風土に加えて特殊なところもあるかもしれないんですけれども。12歳までの子どもはオフィスに来てもいいことになっているので、この時期だと「学校が休みになるんだけど、子ども一人で留守番はちょっと」というケースなどがあって、お父さんお母さん社員が子どもを連れてオフィスにきます。

弊社の男性社員で、奥さまの会社にもちろん連れていけない。そうするとパパたちが子どもを連れてきて、一緒に会社で仕事をしたりする。弊社の場合、実は子どもにもレゴのモデルを組み立ててもらうという大事な仕事があるので。

(会場笑)

それをやってもらうと、もう1日でも2日でも「ずっとここにいたい」と言ってくれる(笑)。たぶんそういうところが自由に、お子さんを連れてきてもらってもいい環境を用意しているので、男性としてもお家で責務を果たしやすいというか。そういう意味では評判のいい制度です。

渡辺:弊社は、先ほど久保田さんがおっしゃっていたように、男性のほうが有給の取得率は少し低めのような感じがしています。ただ、とくにマネジメントの男性に、積極的に有給を取得するように言っておりまして、そこはできる限り実行してもらっているので、有給をとりやすい環境にはなっているのではないかなと思います。

管理職比率としては、従業員の構成はだいたい半々で、いわゆるタイムマネジメントの必要のない管理職も半々なんですけど、マネジメント層で言うと、5人中1人が女性という感じなので、少ないかなと思います。

またひるがえって本社のほうも、パーセンテージは把握していないんですけれども中間管理職のところは女性がかなりいます。でもトップのマネジメント層は全員男性なんですね。これは本社の人事と女性が登用されるといいですねと話しているところなんですが。

デンマークはパーセンテージのターゲットを設けてガンガンやるのは好まないところがあるようなので、自然発生的にそのうちトップにも女性が来るのかなと期待はしているところです。

ジェンダー平等が進むデンマークにも課題はある?

久保田:私も比率を共有させていただきます。日本法人の全社員に占める女性比率は3割で、管理職中の女性比率は1割。日本企業よりは少し高いぐらいで、それほど変わらないかもしれないです。グローバルでは、全世界の社員中の女性比率が6割で、管理職中の女性比率は4割ということでした。

今まで「ジェンダー・ダイバーシティ」ということは言われてきませんでしたが、「トップに近い層の率が低い」ということで、最近少し課題化したところです。

日本の管理職比率は男性の方が多いのですが、すべての職種に男女両方いることは特徴なのではないかと思います。営業・マーケティング・IT・経理、コールセンターにも女性スタッフと男性スタッフがいます。「女性の仕事」「男性の仕事」ということがない、ということからスタートするのも、会社として一つできることだと思います。

デンマークでは女性の管理職は当たり前で、本社から転籍してきたある社員はデンマーク時代、コロプラストと前の仕事を合わせて5年間働き、計9人の上司に仕えましたが、そのうち5人が女性だったそうです。過半数が女性だったわけですが、女性が上司であることに何の抵抗もない。日本だと「上司が女性になったら?」なんていうタイトルがついたりしますが、デンマークではまったくそんなことは関係ないということでした。

寺田:先ほど国連から旗をもらった写真をご覧いただいたように、確かにデンマークは進んでいるとは思うんですけど、だからといって本当に問題がないかというとそうではなくて。本当にイコールになってるかというと、そういうわけでもない。現状まだまだ改善の余地があるんだろうと思います。

選挙での投票率のグラフで示したとおり、ペナルティがない、無理矢理ターゲットをクリアさせるということは、デンマーク人はどうしても嫌いで。例えば、政治家、国会議員で言うと、デンマークは女性の割合は37パーセントで、北欧のなかでもノルウェーやスウェーデンに比べると低いんですが、これはやはり問題視をされています。

ただ、だからといって、日本でも議論されているように、女性に一定割合必ず、候補者の割合を例えば25パーセントとか30パーセント与えて、強制的にその割合を達成するというターゲットは、どうしてもデンマーク人のメンタリティには合わない。

自然に37、それでも世界では比較的高いほうなので悪くはないんですけれども、もちろん50パーセントが目標だという理想からすると、まだまだやることが多いと言えると思います。

それから、デンマーク大使館もマネジメント層は全員男性で、どうしてもまだまだ男性優位であるのは、デンマークであっても現実だろうと思います。

女性は比較的、デンマークでは公共の部門が税金をたくさんとって、大きな政府でいろいろな政策をやるという国なので、パブリックセクター、政府それから自治体での雇用はとても多いんですけれども、先ほど示したように、民間企業ではまだまだということは、日本と同じようにこれからどんどん改善していかないといけないところだと思います。

渡辺:寺田さんの今のお話で思い出したんですけれども、デンマーク人の女性でマレーネ・リックスさんという方がいらして、その方は交渉を専門にしているコーチなんですが。

その方が『Women Negotiating(女性の交渉術)』という本を出版されて、それを機に日本に来てワークショップをされたりしていて。例えば上司に対しての賃金交渉や、自分の評価に対する交渉をうまくやっていこうよ、という内容の本なんですね。

そのワークショップを日本で開催された時に、参加させていただいたことがあったんですけど。やはりデンマークでも女性が自分の主張をしないとか、上司に対してあまり交渉しないので、地位が上がっていかなかったり、報酬が男性ほど上がっていかないという実態はあると。

だから、女性をエンパワーメントしていくということは、まだまだデンマークでもやっていかなければいけないことだということは、その女性がおっしゃっていました。今思い出しましたので、お伝えさせていただきました。