コマツに入った後、留学制度を活かしてスタンフォード大学へ

赤羽雄二氏(以下、赤羽):ブレークスルーパートナーズの赤羽です。これから2時間半ほど、よろしくお願いします。

私は、年間60回ほど講演しています。毎回の講演で、20~30回は質疑応答をさせていただいています。

「本当にそうか?」と思われたり、「じゃあこういうのはどうだ」と思われたら、どんどん途中で手を上げて、発言したり質問したりしていただけると大変ありがたいです。

日本人はこういう場ではほとんど質問せず、最後に事務局の方が「あと数分ありますから、一人ふたりご質問を受けたいと思います」と言い、誰もいないので、「じゃあ事務局から質問させていただきます」という感じになりがちですが、ここでは途中でもどんどん質問してください。

私は高校、大学とアメリカンフットボール部で、コマツに入り、8年間エンジニアでした。入社数年後、留学制度ができたので、スタンフォード大学に留学しました。

留学から戻って1年ほどしたところで、マッキンゼーのヘッドハンターから電話があり、それがまたまた私の上司の席でした。上司がランチに行っていなかったので、私が電話を取り、面接を受けることになり、今ここにいるということです。もしあの場に上司がいたら、そのままコマツのままだったかも知れません。

ベンチャーキャピタルではなく共同創業者

マッキンゼーでは14年、うち日本で4年、韓国で10年、経営改革に取り組んできました。ソウルでは「月曜日の朝に行って金曜日の夜に帰る」生活を10年続けました。「水曜日にソウルから香港に飛んで土曜日に帰ってくる」ことや、「木曜日にニューヨークに向かって日曜日に日本に戻り、月曜朝にはまたソウルに行く」ことも時々ありました。

マッキンゼー卒業後、シリコンバレーのベンチャーキャピタルのアジアでの活動に参加し「日本と韓国でのベンチャー育成・投資」に取り組みましたが、すぐスピンアウトし、2002年にブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業しました。

ブレークスルーパートナーズでは起業したい方にお会いし、数週間かけて事業構想を議論します。「これならいける」という事業構想を一緒に作ることができ、意気投合した場合は、共同創業します。通常、10パーセント出資させていただいて共同創業者となり、会社の急成長を支えます。

一方で、大企業の経営改革も支援してきました。大手のアパレル企業を4年、家電メーカーを4年、精密機器メーカーを2年、小売チェーンを2年などです。

今の日本と日本企業の危機について

本日は「日本と日本企業の危機」について、お話しいたします。10年後の未来にどうなるのかというお話も後ほどしたいと思います。

まずは日米企業の時価総額の比較です。この図は若干古いので傾向として見てください。説明は最新の数字でさせていただきます。

Alphabet(注:Googleの持株会社)や、Microsoft、Amazon等の米企業は時価総額が50~80兆ほど、100兆に手が届く可能性もあります。

一方、日本企業はトヨタが25兆と突出していますが、日立、東芝、NEC、ソニー、パナソニックなどの企業は10社以上まとめても20兆円には届きません。

これが日本と米国の決定的なギャップです。Microsoftはビル・ゲイツがインターネットに気づくのが遅れ、出遅れましたがとっくに挽回し急成長しています。次はハードウェアを手に入れたいと考えるかも知れません。そうすると「Microsoftがハードウェアを手に入れるためにグラフ下位の日本企業を買収してしまう」ということが起こりえます。明日の朝刊に「Microsoftが日本企業を一挙買収」と載ってしまうかも知れないわけです。

日本の大手電機メーカーなど企業は数十の事業を保有していますが、その内訳は好調なものが2割、赤字が2割、そのほかはトントンなのではないでしょうか。それも状況が悪化すれば赤字ですから、結果として低い時価総額になります。本来、足を引っ張っている事業を大胆に整理すれば、時価総額がかなり上がります。

例えばMicrosoftなどが数社を買収し、大胆にメスをいれることでハードウェア事業の入手と増収を実現できると考えられます。つまり、時価総額だけで考えれば、「Microsoftソニー」や「Microsoft東芝」が生まれる可能性も十分あるわけで、これは明らかな危機だと認識しています。規制や組織体質、日本人気質があるため日本企業には大胆な経営改革はできないとよく聞きますが、それは本当にそうなのか、というのが私の長年の疑問です。

次に、「日米製造、あるいはIT関連大企業の競争力変化」ですが、横軸は1945年以降の流れです。縦軸は「相対的産業競争力」をとっています。

「敗戦の壊滅的な状況から驚異的な成長を遂げた」ことから大変に尊敬されていた日本は、高度経済成長を経て80年代にピークを迎え、その後は地位が低下したと思います。1人当たりのGDPも、先進国では最下位が続いています。

過去数十年、欧米諸国や中国、インド、アフリカ、インドネシアなど、先進国・発展途上国にかかわらず各国が大きく成長しているなかで、日本は低成長です。

アメリカ経済は1980年代にやや不調な時期がありましたが、その後挽回し、圧倒的な存在感を示しています。トランプ大統領が云々されていますが、産業競争力は非常に強いです。ヨーロッパの一流企業も日本企業より遥かにグローバル競争力があります。

日本企業でITが強いところはほとんどない

AppStoreやFacebook、韓国資本のLINEは、1つのアプリではなく、プラットフォームです。

日本企業はハードウェアに強みがあり、例えばiPhoneなどにも相当部品が使われていますが、実際はiPhoneの付加価値の一部でしかありません。Appleに対して大きな利益貢献をしているわけです。みなさんの感じているなんとなく鬱々した生活や日本経済の息苦しさは、日本企業のITの弱さが背景にあるのです。

私は、日本及び日本企業の競争力は、ITやインターネットの時代になって危機的状況に陥っていると思います。週刊誌的ネタに時間を使っている場合ではありません。

企業は根本的な経営改革に取り組みつつ、新事業を成功させなければなりません。みなさん個人は問題を的確に把握し、解決する能力を高めて生産率を上げ、身を守るしかありません。もう「頑張れば誰もが救われる明るい時代」ではないのです。

それをよく認識していただいた上で、今後の展開と一人ひとりがどう生き延びていくかということをお話いたします。

日本の経営力が優れていたわけではなく、追い風だっただけ

赤羽:ここまでで、ご質問はありますか。

(会場挙手)

赤羽:はい、どうぞ。

質問者1:当時は1980年ぐらいで「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた時代だと思います。アメリカも「日本はいいね、真似しようぜ」という雰囲気で、いつからかダメになりました。その背景をどう捉えていますか?

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