C2Cやシェアエコノミーの未来

原田大作氏(以下、原田):みなさんじゃあ、これ行こうかな。今後の難しいテーマですね。「C2Cやシェアリングエコノミーの未来」。そうですね、誰か「私が話したい」って方いますか?

中村貴一氏(以下、中村):僕、若干持論あるので、いいですか?

原田:じゃあ行きましょうか。

中村:僕、互助組織は作っているんですけど、一応C2Cマーケットの保険とかクラウドファンディングとか作っていくようなプラットフォームになるんですね。それやってて思ったんですけど、今後、C2C領域で保険のニーズって来るんじゃないかなと。

というのも、今メルカリさんみたいなところで一応、C2Cサービスが展開されていってるんですけれども、今後の分散化の流れのなかでそういった仲介者がいなくなってくるんじゃないかと思ってるんですね。本当に純粋なPeer to Peer(注:複数で通信を行う際のアーキテクチャの一つ)が来るんじゃないかと思っています。

個人間のやり取りでの保証をどうするか

中村:そういったときになにが問題になるかというと、信頼性の担保というものと、なにかあったときの補償をどうするかという問題なんですね。

要は個人間で完全にやりとりしたときに、どうやって補償するんだという問題が出てくる。今はそれはメルカリさん、Uberさん、Airbnbさんなどが担保してるんですけれども。

そうしたときに、そのユーザーのKYCの状況、個人情報と、あとなにかあったときに補償してもらう仕組みが必要になってくる。おそらくそういったときにブロックチェーンが入ってくる。そこにこういうKYCの情報を格納しておくと。

あと、なにか買ったときに、これまでやってたように仲介事業者に対して手数料を払うんじゃなくて、なにかあったときの保証料を払っていくことになるんじゃないかなと思っていて。

僕の会社は、一応そのブロックチェーン周りの仕事も、僕がやっていてナレッジがあったりしたので、今、大手の保険会社と一緒にそのへんのプラットフォームを作っていこうみたいな共同研究の話もあったりするんですね。

たぶん直近はそんなに食いついてくるとは思わないんですけれども、たぶん向こう5年ぐらいでそういう世界が来るのかなというところで、それに備えて保険のプラットフォームを前もって準備しておくのがけっこう大事なのかなと思ったりしますね。

既存の業界にどう入り込むか

原田:僕もブロックチェーンは、C2Cの今後テーマの1つなのかなとは思っていますね。

中村:そうですね。

原田:この4人、もう1個テーマがあるかなと思っています。法令とか、そこの既存の業界とかがわりと大きいじゃないですか。戦うというとあれですけど、そことどう手を組みつつ一緒に作っていくか。そこの話をお聞きしたいですね。保険も確か法律とかで、僕調べたんですけど、めんどくさそうだなとかって。

中村:めちゃめちゃというか、一応保険業法というのがあって、今FinTechブームによって金融庁がかなり育成させていってくれてるんですね。僕のところもチームメンバー10人ぐらいついてもらって。

出資法とか金商法とか、あるいはみんなでお金貯めて行うときには、法律が大きく分けて4つあります。1つ目は出資法。2つ目が投信法。3つ目が保険業法で、4つ目が無尽業法というのがあるんですね。

C2Cサービスがどこかで当たる壁

中村:僕たちが保険やる場合には、保険業法の範疇になってくるということなんですけれども、保険の定義がめちゃめちゃ曖昧なんですね。相互扶助するとか、不測の事態に備えてお金を出し合うこととかっていう、具体的などういったことが保険にあたるのかは書かれていなくて。

原田:難しいですね。

中村:ケースバイケースらしいんですね。僕たちも今揉めているというか、すごくフィフティ・フィフティな状態で、どっちにも取れるみたいな条文があったりするんですね。前提として、僕たちはIT会社なので保険ライセンス取っていないので、保険業法の中で保険業法にあたらない条項がないんですね。

ただ、そこがいろいろ条件が書かれているんですけれども、例えば「1,000人以下じゃないとダメですよ」「会社の中で従業員に対して保険を提供するときはあたりませんよ」とかいろいろ書かれていたりするんですね。その中の1つのパラメーターとして、「1人が複数の団体のお金を管理してはいけませんよ」と。というのがあるんですね。

今回は、僕たちの口座のところにお金が入って来る想定なんですけど、その口座を準備してあげることが、その管理に該当するか否かが金融庁的にわからないらしいんですね。だから「どうしましょうか?」っていうところでずっと話が続いていて。

今は僕の顧問弁護士とともに、管理にあたらないというロジックを金融庁に提出して、それで判子をもらおうかなと思ってるんですけれども、半年間ぐらい、そこを話していますね。

原田:これはもうC2Cがどこかで当たる壁かもしれないですね。

「食」専門のC2Cが直面する課題

原田:スムーズにすることによってやっぱりこれまでの仕組みが壊れてしまうと。「食」はとくにありそうだと思うんですけど。農協だったりとか、あと衛生法とかなんですかね?

本間:そうですね。法令よりもたぶん、おっしゃったような農協とか漁協とかの地縁の組織というか、そことの軋轢の部分がすごい大きいです。基本的に僕らは中抜きモデルなので、敵対するとたぶん思われてしまう。

まず、農協を通じた流通は全体の中のもう半分を切ってたりするんですね。分類によったりするんですけれども。

原田:そうなんですか。

本間:なので、もうすでにそこの流れは起きているというところで。ある地域では嫌がらせがあるとかよくある話で。ただ、最近、独禁法で逆に農協が訴えられたりしてるので、農協が大きな障壁となるという文脈は少ないですね。

漁協といかにうまくやるか

本間:漁協のほうがおもしろいです。農地って個人の資産なんです。大切なのは土地なんです。日本の法律上。なんですけど、海って国の共有資産なんですね。

原田:よくある小学校のとき釣りしてたらね。

本間:はい。ダメなやつですね。

原田:「金払え」って言われますね。あれですね。

本間:つまり、漁協みたいな組織が「勝手なことさせない」って管理しないと逆に乱獲が起きて大変になる。なので、漁協といかにうまくやっていくのかが、僕らみたいなサービスって実はとても重要です。

事例が1個あるんですけど、漁協が漁師をポケマルに登録して売上金を漁協を通して漁師に払われるという事例がもう出てきているんですね。

原田:すごいですね。

本間:なので、僕らは本当に「テクノロジーだ」「効率化だ」と、どんどん取引を増やせばいいものではなくて。とくに海という有限資産をどのように国として守っていって適正に配分するか、価値をつけるかというところなので、むしろ漁協とどうやって一緒にやるかというところが、僕らの知恵の絞りどころという感じですね。

人間は食卓を囲むとすぐに仲良くなる

藤崎祥見氏(以下、藤崎):じゃあ、いいですか。

原田:はい。

藤崎:法律の話はとても興味深いので、その前にシェアエコの未来の話をしますね。1つキーワードとしてあるのは「当事者としての参加」だと思っています。

今年ノーベル経済学賞を受賞した(リチャード・)セイラーは、行動経済学という分野で受賞しました。行動経済学は、簡単いうと心理学と経済学の合わさった学問分野で。1980年代のダニエル・カーネマンのプロスぺクト理論がもとになっているんですけれど。

簡単にいうと、人間は「なにか得る」というモチベーションより「なにかを失う」ということのほうが怖い。「なにかを失う」ということのほうを避けるということがプロスペクト理論で言われていることです。

先ほどの当事者としての参加、我々のKitchHikeというサービスは、料理を作る人と料理を食べる人が現場で会って1つの食卓を囲みます。

人間は不思議なもので、1つの食卓でごはんを囲むとすぐに仲良くなるんですよ。そこで生まれるのが信頼関係。そこで生まれた信頼関係を失うのが怖い。失うのを避けようと行動するというのが人の性質だと思っています。

なので、1つシェアエコの未来として当事者の参加というのがあると思っていて。続きはね、山本から。

山本:そうですね。

C2Cサービスは全員が当事者

山本:C2Cナイトだと思うんですけど、料理を作る人と食べる人がつながって、そこで瞬間的に現れるイベントや現場のことを、KitchHikeでは「Pop-Up」と呼んでるんですね。まさにSnapchatじゃないですけど、「消えてしまうからこそ価値がある」みたいな世界がC2Cの先だと思っていて。

それは例えるなら、ジャズのセッションようなものです。人が集まってみんなでグルーブしてその瞬間が生まれるというのがC2Cの先だと思うんですよね。だからシェアリングの次はセッション。

原田:セッション。なるほど。

山本:セッションですね。全員、当事者。

原田:確かに。C2Cの事業、立ち上げるまでストックしないじゃないですか。フローじゃないですか。それが最初、少しつらかったのを思い出したましたね。

原田:わかりました。ありがとうございます。