A子さんは「見守っている」

記者11:リポーターのシマダです。よろしくお願いします。今回のことで「A子さんとも連絡をとっている」とおっしゃっていましたが、A子さんはなんておっしゃってましたか?

小室哲哉氏(以下、小室):「見守っている」と。「今日の会見を見守っている」ということだけが最後です。

記者11:引退のことはお話になりましたか?

小室:はい。しました。

記者11:それについては?

小室:「もったいない」と言っていました。

記者11:KEIKOさんとは直接まだ会ってはいないということですね。LINEだけですか?

小室:そうです。

記者11:まだいつ会うとかも、予定は?

小室:急ぎます。

記者11:じゃあ今後は60歳……まだ60歳じゃないですけれども、今後、定年を迎えての引退後、どういう生活をしたいと思っていますか?

小室:そうですね、同じ答えになってしまうんですけど、本当にまだ決断してからが短くて、まとまって「こうやっていくんで、よろしくお願いします」みたいなことが言える状況では今まったくないです。

なので、こういう席に座らせてもらってるのが最後なのかな、ということぐらいしかわかってなくて。この時代、高齢社会、それから介護の問題とかであったりとか、ストレスの問題とかっていう、そういったものがたまたま全部なんか、それに関わってしまったのかな。病気も含めてですけど。という感じなので、答えがいまちょっとないです。申し訳ありません。

90年代のブームは越えられない

記者12:朝日新聞のカワムラといいます。よろしくお願いします。お話の途中で、期待に応える音楽制作のレベルにいたらないということが何度かあって、それで苦しまれたということなんですけれども。

具体的に、2010年に活動再開されてからなのか、具体的にどういったレベルで? 例えば、いいメロディが作れないだったりとか、サウンドが生まれないとか、どういう感じだったのでしょうか?

小室:つい最近もテレビの番組の収録があったんですけれども、その時にもやっぱり「ブーム」という言葉があってですね。流行ですよね。流行歌ということじゃないですけど、流行というかいろいろなブームの中での。

みなさんのなんとなくイメージは93、94年から2000年ギリギリぐらいまで、そのぐらいがブームだったと思うんですけど。

それが今思うと、すごすぎた。音楽という意味では影響がありすぎたというところの、それが一番の基準になりまして。それを超えることはもちろんできないですし、それを下回ると、レベルが下がったか、枯渇したりとか、それから期待に応えられないものなのかとか、という感覚ですね。

なので、「あの時がよかったよね」って言う方がほとんどなので、「あの時代の曲はすばらしいよね」と言ってくださる方がいるなかでは、一番そこが多いので、そのレベルというのが、時代の流れもありますが、やっぱりあれを基準にしてしまうというか、そこから上じゃないと。

今は枚数ではないんですが、それと同じようなものを比較というものが、なにかこの時代まだ定まっていないので、なにをもってミリオンセラーというようなことを言うという数字が定まっていない時代に、そこにさまよって模索するというのが難しいんですけど。先ほども言いましたように、今、「まだやれよ」と期待をしていただいている方の制作に関しては、随時対応していこうと思っています。

記者12:宇多田ヒカルさんが出てきた時も、新しい才能に非常に驚かれてですね。例えば2010年代とかで、今、自分を上回る才能が出てきたとか、新しい才能に驚かれているということもあるのでしょうか?

小室:現在、日本って考えると、そこまでは思わないです。

記者12:自分自身との闘い?

小室:はい。

KEIKOさんへの「愛」のかたち

記者13:週刊女性のアラキダです。よろしくお願いします。

小室:よろしくお願いします。

記者13:小室さんの35年間の音楽人生は非常に波乱万丈だったと思うんですけれども、この35年の中で一番うれしかったこと、一番つらかったことはなんでしょうか?

小室:そうですね……。一番というのは非常に難しいです。90年代のいろいろな方が歌ってくれたヒット曲が、みんなが楽しんでくれている姿を垣間見ることがたぶん一番幸せだったと思います。一番つらいのは、今日です。

記者13:あとA子さんの件なんですけれども、肉体関係はないとおっしゃってましたけれども、やはり非常に支えになってくださったとおっしゃってましたけれども、それは気持ち的には、やっぱり非常に、愛というか、愛情に近いものなんですか?

小室:愛情……どうなのかなぁ。作詞ということでの「愛」という言葉を使うことは多いんですけれども、あまりにもちょっと広すぎて。

例えばですけど、KEIKOの最初の時にも、恋愛感情ではなかった。globeというヴォーカリストとしての愛情だったと思いますし。結婚してからは、恋愛感情というか、そういったものの時期も当然あったと思いますし。病気になってからは、そういった愛情ではなくて、無償の愛という言い方なのかわかりませんけど。

なにがどうあれ、「愛おしいな」とかっていうような愛情だったり、愛という1つの文字でも、1人の人でもそれだけあるので、この短い期間でちょっと限定するのは難しいです。ごめんなさい。

安室奈美恵の引退は、すてきなかたち

記者14:読売新聞のツルタと申します。2つお尋ねしたいと思います。1つ、一時期、ともに時代を築かれた、安室奈美恵さんが昨年引退すると発表されましたが、小室さんも今回の前から引退を考えていらっしゃったというような趣旨のお話ありましたけれども、安室さんの引退の発表がご自身の引退という判断に影響はあったのでしょうか? というのが1つ。

もう1つなんですが、音楽活動を引退されるということなんですけれども、小室さんが今までされてこられた音楽に対する功績、非常に大きいものがあると思うんですが、例えば言論活動とか雑誌で、我々のような新聞でインタビュー受けたりとか、あるいはテレビに出られたりとか、そういった制作以外の活動というのは、もうされないのでしょうか? 2点お尋ねします。

小室:安室さんの引退宣言というのは非常に、理解はすぐできました。美学というか。海外では、ちょっと他界という意味では違いますが、マイケル・ジャクソンであったりとかプリンスであったりとか、僕と同世代ですけれども。

そういう方たち、他界とはまったく違うんですけれども、「美学を貫く」という意味では非常にすてきだなと思いました。自分もいずれ、すてきなかたちで身を引けたらいいなというのは、正直思いました。それが1つですね。

それから、先ほどから申しておりますとおり、まだ1週間足らずの決断ですので、なにまでが許されてなにまでが許されないというのが、ちょっと判断が正直、自分で今できていないんですね。

どこまでなら「いいんじゃないの。これやってよ」って言われるのか、「やっちゃダメだよ」って言われるのかが、まだなに一つ反応を聞いていないので、個人的に線引きがまったくわかっていないんですよね。

最初の僕の勝手なお騒がせした罪、それを償う、退くという。この図式しか今ないです。

「悔いなし」なんて言葉は一言も出てこない

記者15:『Techinsight』編集長のムラカミと申します。よろしくお願いいたします。今日の会見を聞いていますと、本当に小室さんが満身創痍であると。これが公の場で語られる最後の機会ということになりますと、小室さんの音楽に支えられてきた方たちみなさん、とても悲しい思いをされると思うんですけれども。

今後こういうかたちでの引退会見ではありましたけれども、ファンのみなさまはおそらく今後の小室さんに対して「幸せになってほしい」と思ってくださる方がたくさんいらっしゃると思います。

その中でお聞きしたいんですけれども、小室さんはこの先、引退されたあと、自分はKEIKOさんとともに、またはほかの関係者の方とともに幸せになって、この先に引退後を過ごしていく気力はお持ちですか?

小室:みなさんの前でお話するというこのエネルギーだけで今は精一杯というのが正直なところで。どれくらいこれが、ふと1人になったりする瞬間に涙が溢れ出るのか。

「なんてことをしてしまったんだろうか」とか「なんてことを言ってしまったんだろうか」という悔いが出てくる可能性は十分にあると思います。正直。「悔いなし」なんて言葉は一言も出てこないです。

ただ、その代わり、この日にちとこの環境だから「悔いなし」という言葉が出てこないだけであって。先ほど申しましたように、誕生日であったりとかで、何日をもって、例えばライブをやってとか、そういう計画を立てて楽しく勇退みたいなことができる環境だったら「悔いなし」という言葉を心から言えたのなぁと思いますが。

遅かれ早かれという気持ちが精一杯ですかね。今は。遅かれ早かれ、こういう女々しいというか涙ぐんでいるような、こういった顔を見せる日は来るのかなぁとは思っていました。

その質問で、ファンのみなさまというか、僕はずっとバンドを続けて、東京ドームを一杯にできたりとかそういった人間ではないので。不特定多数というか、どういう方が僕の曲をいいなと言ってくださっているかは正直しっかりはわからないんですが。

このソーシャルな時代ですから、その方たちの声は耳に届いたり、目にすることはできますので、見させていただくというか。読ませていただくというか。声を聞きたいと思っています。その中から答えが出てくるのかなぁという気もしています。

記者15:今後もファンの方となにかしらのつながりという場は持つことを期待をしてもよろしいのでしょうか?

小室:世の中の世論の比率によるかなと思います。51対49みたいなことがありますけれども。その割合が「なんでもいいから、生き恥晒してでもいいから音楽つくれよ」という意見が何割あるのかというところで。

ファンというすごく不特定多数の微妙な表現よりは、この時代ですから数字に如実に全部出てきますので。その数字に従いたいかなぁと今漠然と思っています。

記者15:本当にご体調が大変な中、ありがとうございます。

小室:ありがとうございました。

2017年末に収録した楽曲は世にでるのか

司会者:では、最後の質問。前の男性の方。

記者16:インターネットニュースサイト『THE PAGE』のソウミヤと申します。先ほどの質問とちょっとつながるところもあるかもしれないんですけれども、2つお聞きしたいことがありまして。

1つは会見の中で、年末にすごく気に入った曲があったと。楽曲ができたとおっしゃってたんですけれども、そういったものは今後発表される(ことは)、先ほどおっしゃられたことと重なるかもしれないですけれども、あるのかというお話と。

今日で音楽活動を退かれるということなんですけれども、今の音楽業界とか今後の後進の音楽家とかについてなにか伝えたいこととか言っておきたいことがあったらお願いします。

小室:完全な体調の状況ではないものの、スタッフのおかげで非常に良い環境で音楽制作を年末までできたと思います。その中でまだ発表されていませんが、もし発表していただける状況であれば、多少気に入っていただけるというか。自分の中での基準を超えた曲はあると思います。まずそれが1つです。

これからの若い方たちの音楽業界の進み方は、やはりどうしても欧米が先に進んで引っ張っていく環境だと思いますので、ネットの使い方とかですね。そういうことを非常に勉強されて、日本も必ず、今、欧米が音楽がV字型というかまた盛り返しているというニュースも聞いておりますので、それに沿った活動をされていくといいんじゃないかなと思っています。

そういうことができるのは、例えばアメリカだったら20代のラッパーの方たちだったりとか、そういう方たちが引っ張ってきているので非常に参考になるんじゃないかなと思います。

司会者:みなさん、長時間ありがとうございました。これで会見を終わらせていただきます。

高齢化社会や介護問題に言及

小室:最後に一言だけいいですか。僕たった1人の人間の言動などで、日本であったり社会が動くとはまったく思っておりませんが。

先ほども言いましたように、なんとなくですが、高齢化社会に向けてであったりとか、介護みたいなことの大変さであったりとか、社会のこの時代のストレスであったりとか、そういうことに少しずつですけど、この10年で触れてきたのかなと思っているので。

こういったことを発信することで、みなさんも含めて、日本をいい方向に少しでもみなさんが幸せになる方向に動いてくれたらいいなと心から思っております。微力ですが、少し(でも)なにか響けばいいなと思っております。ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。本人はこちらから退場させていただきます。