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【全文】芥川賞の若竹千佐子氏「人生の終盤でこんな晴れがましいことが起きるとは」 63歳での受賞に喜びの声

【全文】芥川賞の若竹千佐子氏「人生の終盤でこんな晴れがましいことが起きるとは」 63歳での受賞に喜びの声

2018年1月16日に第158回芥川賞の選考会が行われ、若竹千佐子氏の『おらおらでひとりいぐも』が受賞しました。当日に行われた受賞会見の全文書き起こしです。

シリーズ
第158回 芥川賞・直木賞発表&受賞者記者会見
2018年1月16日のログ
スピーカー
作家 若竹千佐子 氏
参照動画
第158回 芥川賞・直木賞発表&受賞者記者会見 生放送

人生の終盤でこんな晴れがましいことが起きるとは

司会者 それでは記者会見と質疑応答に移らせていただきます。芥川賞の若竹千佐子様、受賞の第一声をお願いいたします。 若竹千佐子氏(以下、若竹) そうですね。もう、人生の終盤でこんな晴れがましいことが私に起こるなんて、もう信じられないというのが、最初の気持ちです。 司会者 よろしいですか。では、質疑応答に移らせていただきます。ご質問のある方、挙手をお願いいたします。 記者1 共同通信のタムラです。おめでとうございます。 若竹 ありがとうございます。 記者1 芥川賞史上で言いますと、今回63歳での受賞というのは、史上2番目に年長だということなんですけれども、とくに若竹さんの小説は、「老い」というものをテーマにしていらっしゃると思うんですが、それに引っかけて2番目ということについて思う部分があれば。 若竹 そうですね。まだ……そうですね(笑)。ちょっとまだ言葉にならないんですけれども、「老い」ということをテーマにしましたが、実はこないだ坐骨神経痛になって、もう足が痛くて、そこで初めて「これは大変なことなんだ」と。 それまでは私は「老い」を書いていても、それはやっぱり頭の上だけのことで、まだまだ本当の老いの大変さっていうのを本当はまだ知らないんだなということを痛切に感じまして、で……これからです。 63歳ですけれども、これから私は老いていくので、それを同時進行でこれから書いていこうと思っています。

「千佐子、いがったな」

司会者 ほかにご質問のある方、挙手を願います。 記者2 読売新聞のウカイです。おめでとうございます。 若竹 ありがとうございます。 記者2 今のお気持ちを、心の内部の声ではどんな言葉になるのか。方言でもけっこうですけれども。 若竹 そうですね……。「千佐子、いがったな」ですね(笑)。 記者2 「いがった」? 若竹 はい。「よかった」っていうことなんですけど。 記者2 これは誰の言葉ですか? 若竹 そうですね。私のなかの父親のような言葉だと思います。 記者2 それと、小説を書き始めたきっかけがご主人が亡くなった直後に小説講座に通われていますけれども、ご主人がご存命のときに書き物をされていると「千佐ちゃんは芥川賞かな、直木賞かな」とおっしゃっていたそうですね。 今ご主人には心の中でなにか報告されたりとか、思っていることがあれば教えていただければと思います。 若竹 はい。「カズミさん私やったよ」っていうことですかね。 記者2 カズフミさん? 若竹 はい。カズミと言いまして。 記者2 もう1つおうかがいしたいんですけれども、若竹さんは実際に、前から小説家になりたいとおっしゃってましたけれども、実際に初めて小説がまとまったのは何歳になるんですかね。 若竹 それは……今読めば恥ずかしいような小説でしたら、学生の頃に書いてたんですけれども、みなさんに出して恥ずかしくないようなのは、やはり小説講座に入ってからの小説だと思います。 記者2 じゃあ55歳? 若竹 はい。 記者2 わかりました。ありがとうございます。

方言を通して自分を語ること

司会者 ありがとうございました。ほかにご質問のある方、挙手を願います。 記者3 朝日新聞のヨシムラです。このたびはおめでとうございます。 若竹 ありがとうございます。 記者3 先ほど選考委員の堀江敏幸さんが選評されまして、「年齢に関係なく、言葉にすごくパワーがあった」というふうに評されてまして。 あと方言に、「詩文的な表現が方言と相まって、かぎりなく語り手と語っている人が近いエネルギーを感じた」ということをおっしゃってたんですが。 方言を通して自分を語るということについて、若竹さんは今どのように思っておられるのか。また、選考員の選評についてのご感想をうかがえればと思います。 若竹 そうですね、方言は、私にとっては一番自分に正直な言葉です。だから方言で自分を語るときに、一番自分の底の思いを語るのに適した言葉で。やっぱり標準語だと、逆に着飾ってちょっと体裁を繕ってという言葉なんですけれども、方言で表現することで、本当に私の思いが直接、なんのてらいもなく言葉として表れてくるのだと思います。 「エネルギーがある」と言われたら本当にうれしいことです。ありがとうございます。 記者4 岩手日報のサトウと申します。おめでとうございます。 若竹 ありがとうございます。 記者4 故郷の岩手、遠野への思いをお聞かせください。 若竹 遠野で同級生や親戚、知人が「みんな、楽しみにしているよ」って言ってくれてたので、こんないい結果をもたらして、本当に私もホッとしています。ありがとうございました。

方言には生活の匂いがする

記者5 河北新報のアソウです。おめでとうございます。若竹さんの受賞作はご自身の故郷の言葉で書かれたわけですけど、とても印象的な方言小説だったと思います。今回、東北の方言で書かれた小説が評価されたことへのご感想をお願いします。 若竹 方言というのは、東北弁にかぎらずどこの言葉でも、なにかそこにすごく味があるというか、九州の言葉だろうが大阪弁だろうが、方言というのは、なにかそこに生きてきた人たちの生活の匂いというか、味わいがある言葉で。 どの言葉であれ、私大好きなんですけれども、たまたま私は東北に生まれて、誰に教わったわけじゃないのに、やっぱり自分の中では東北人としての誇りというか、喜びというか、あります。 震災でひどい目に遭ってるので、私は私なりに、私も含めて、がんばろうという、「一緒にがんばっていきましょう」というような、おこがましいですけれども、そういう気持ちもなんとか表現したいものだと思っています。 記者6 時事通信の石丸と申します。このたびは、おめでとうございます。 若竹 ありがとうございます。 記者6 若竹さん、今回の作品の中でもおっしゃっているとおり、主婦の仕事というのは非常に細切れで、非常に多様であるというようなところ。そういった細切れの思考が、今回の小説を生んだとも言えるかと思うんですけども。 若竹 あぁ。 記者6 これまで主婦を続けてこられたことを振り返って、なにか率直にお思いになることがあれば教えてください。 若竹 確かに主婦の仕事は、本当に細切れだけれども多様で、そして1番生活に密着したところで生きているわけで。そこで感じるものっていうのは、小さな世界だけれども、いっぱいの窓が外に、世界に広がっているんだと思います。 だから私は、今思えば私、家庭にいた時は悔しくて。外に出て、本当は社会に……。私の時には「職業婦人」って言ったんですけども。「『職業婦人』」になりたかったな」という思いを心の中で持ち続けつつ(笑)、家庭の主婦だったんですが。 でも今思えば、だからこそ私は、さまざまなことを考えていけたのかなっていうことも。だから決して、どんな世界に生きてても、無駄なことって1つもないんだなって、今思ってます。

おばあさんの「哲学」を書いてみたかった

記者7 ニコニコの高橋です。今、ニコニコ生放送で生中継をしているんですけれども「ニコ動」、ご存知でしょうか。 若竹 はい(笑)。 記者7 あっ、ありがとうございます。ではですね、今この生放送を見ているユーザーの方から寄せられた質問を代読したいと思います。 若竹 はい。 記者7 埼玉県、40代・女性の方からの質問です。 「芥川賞おめでとうございます。読んでいて、桃子さんにはかなりの割合で、若竹さんの人生が織り込まれているのだろうと感じました。そこで、先ほど若竹さんの年齢の話を聞き、桃子さんが74歳であるという部分が気になりました。桃子さんの年齢には、どのような思いが込められているのでしょうか?」。 若竹 はい。まず1つは私、私小説を書いてるつもりはなくて。やはり私の人生に取材はしているんだけども、でも桃子さんは、まったく新たに造形した人物で。決して私小説ではない、というつもりです。 それからもう1つは、主人公が74歳で、私とは10歳くらい年が離れてるんですけれども……。私は小説でずっと、この『おらおらで』に限らず、「おばあさんの小説を書きたい」と思っていて。ずっと、主人公はおばあさんです。 なぜそうなのかと言うと、なんか「おばあさん、魅力的だな」と思うんですよ。なぜ魅力的かって言うと、人生のいろんな経験を経て、いろいろ考えてきて、ある意味役割を終えて、妻の役割、親の役割を終えて、すごく自由な立場におばあさんはいるんじゃないか。 そこで何を考えているのか、っていうおばあさんの「哲学」を書いてみたいっていうのが、私の一貫した小説のテーマです。 だから、桃子さんに限らず、私もどんどん年をとっていくわけなんだけども、そこでわかった「老年」っていうのはどういうことなのか。「老いを生きる」ということはどういうことなのか、ということを考えつつ、同時並行で小説を書いていきたいと思っています。 記者7 ありがとうございます。 司会者 では、ご質問はここまでとさせていただきます。若竹さん、何か言い残したようなことがあれば。 若竹 (笑)。 司会者 よろしいですか? じゃあ、立ち上がってちょっと撮影を。

  
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