ニコ論壇時評の時間です

乙君氏(以下、乙君):毎度お馴染みご機嫌な番組『山田玲司のヤングサンデー』月に1度のニコ論壇時評の時間がやってまいりました。

山田玲司氏(以下、山田):はい、どうもこんにちは! 山田玲司です。乙君です。しみちゃんです。

乙君:この番組は巷で話題のニュースをざっくりと切るゆったりとしたワイドショー番組の予定です。この番組の内容はニコニコニュースオリジナルで記事化されると思いますので。

山田:誰?(笑)。

しみちゃん氏(以下、しみちゃん):(口調を)急に変えたな。

乙君:(モノマネをしながら)麻生(太郎)です。

(一同笑)

山田:そうなんだ!(笑)。漫画好きな人?

乙君:自然と出てしまいましてね。

山田:あ~そうですか。どうも、どうも。

乙君:出鼻くじかれた(笑)。

山田:いえ、麻生さんどうぞ。

しみちゃん:お願いします。

乙君:みなさん、こんばんは。元気ですか? 玲司さんの体調が大丈夫か、大丈夫かっていうお便りがいっぱい届きまして。どうですか?

山田:いやもう(『魔法少女まどか☆マギカ』の)ワルプルギスがきてたね。先週まで。

乙君:え、先週まで?

山田:先週まで俺ワルプルギスの夜だったんだと思って。

乙君:あら~。それで。

山田:そうそう。もう大丈夫! 今日は元気です。ありがとうございます。みなさんにご心配おかけしました。大丈夫です。

まどマギ解説から体調崩れました

乙君:確かに『まどマギ』解説始めてからどんどん体調がこう(下がるジェスチャー)。

しみちゃん:ソウルジェムが……?

山田:やったじゃないですか。『まどマギ』解説で、(美樹)さやかは水力だ、(巴)マミは太陽光だ、(佐倉)杏子は火力じゃねぇのとかって言って。(鹿目)まどかは再エネって言ったら、(暁美)ほむらは原子力なんじゃねぇのみたいな。

だから、ほむらの呪いが無限ループなんじゃねーのみたいなことを言ってたらだんだん疲れてきちゃってさ。

乙君・しみちゃん:(笑)。

山田:いや~『まどマギ』すげぇよ。年末やりますね。ちゃんとね。

乙君:先週でテレビ版はすべて終わりましたので、まだ見てない方はぜひぜひご覧になっていただいて。年末年越しヤンサンでやりますので。叛逆ですかね。『まどマギ』の劇場版をやりますので、ぜひぜひ楽しみにしていてください。

山田:いいもの見せてもらったね。『まどか☆マギカ』ね。

乙君:さあ! そんなこんなでもう年末ですな。今日のラインナップというか。今日は今年1年のアニメ・マンガ業界で起こった出来事を振り返りつつ、今年はどういう年だったのかなということを玲司さんの個人的な見解をお聞きしたいなという感じですね。

そしてみんなお馴染みアニメ探偵からも今年のニューストピックを選んでいただいて。

山田:アニメ探偵ね! あの忙しいアニメ探偵から!

乙君:ブラック企業に勤める。これは後半で紹介したいなと思っておりますので、そちらもお楽しみにしていてください。

山田:わざわざすみませんね。ありがとうございます。アニメ探偵Twitter出てるな。

しみちゃん:すごい(笑)。

乙君:アニメ探偵Twitter(笑)。もういきなりいっちゃいますかね。

2017年に大ヒットしたのは…

山田:あ、そうそう。そうですね。とりあえずいっちゃいますか。後半の話はまた後にして。後半、映画評論家を評論とするという話をやりますけど、とりあえずは漫画のほうからいきます。

乙君:わかりました。1月からいっちゃいますか?

山田:いきましょう!

乙君:はーい。じゃあちょっと出していただいて。

まず1月、もうかなり前ですね。『けものフレンズ』が大ヒットしました。これ今年だったんですね!

山田:思った! 本当に。ずいぶん昔な気がしてたけど、そんなことないですね。

乙君:さらに同時期に東宝過去最高益『君の名は。』で1月中旬に爆上げ。まだこの話がガーッと盛り上がってたんですね。

山田:『君の名は。』は去年の夏くらいだったんじゃない? 『シン・ゴジラ』とぶつかったでしょ。

乙君:それがずーっと1月までロングランだったっていうのがまずすごいですよね。

山田:そうね~。

乙君:さらに漫画界ではうつ病脱出漫画、田中圭一先生の『うつヌケ』が大ヒット。

山田:実はこれが今年のトピックの1つですね。

乙君:お、そうですか。

山田:あとで詳しく話しますけど。

乙君:わかりました。そんな感じの1月がありまして。2月、宮崎駿監督が新作タイトル発表。『君たちはどう生きるか』ということで。

『風立ちぬ』で引退すると言ってたんですけど(笑)。またしてもですけど、引退を撤回しまして長編新作アニメ『君たちはどう生きるか』というのを作るという発表がありました。

「辞める辞める詐欺」がコメントに出ておりますけれども。

山田:毛虫じゃないのね? 毛虫やめたのね。

乙君:毛虫って何ですか?

山田:毛虫CGをやるのかなと思ったらやんないのね。

乙君:ああ、あの! やらないっぽいですね。

山田:毛虫がどう生きるのかってやってたらおもしろいけどね(笑)。結局毛虫がしゃべってる! とかいうのが見たいけど、本当は。

乙君:もうオウムじゃないですか(笑)。

『CICADA』第1巻も発売してました

乙君:そんなことより山田玲司『CICADA』第1巻が、なんと2月に発売してました! まだ買ってない方は……

山田:そうですね。漫画の世界が滅んでから150年後のSFを描いてますけど、作品の中で。なんかね、いろんなことが重なりますね。今年は本当にそういう年だったので、予言的な感じですよ。

実はこの『君たちはどう生きるか』というテーマですけど、これと同じタイトルのもの、要するにこのネタ本が同じ岩波の昔の本ですけど。ある偉い先生が講演したやつの本ですけど。

あれを我らがカッキー(注:柿内芳文氏。星海社新書編集長)が漫画にして大ヒットしてますね。あれはおそらく100万部、もうちょっといくんじゃないかという。

乙君:ちょっと具体的に。何の話かわからない(笑)。

山田:この『君たちはどう生きるか』っていう漫画が。

乙君:漫画があるんですか?

山田:あるんです。

乙君:へー。

山田:それはこの宮崎さんがやろうとした本の岩波新書の同じ元ネタで、すでに漫画にしてあって。宮崎さんがやる前にすでに先行して2年前からやってたんですよ。

乙君:あ~、たまたま2年前に出してたものが宮崎駿さんが……

山田:後追いのかたちになってます。しかもこの『君たちはどう生きるか』というのを仕掛けたのは我らが柿内君、カッキーですから。

乙君:編集者の柿内君という方がいまして。

山田:柿内君が仕掛けたもののプロモーションを宮崎駿がするみたいな感じになりますよ。

乙君:すごい! 大御所(笑)。

山田:すごいことになる、これって。

乙君:Amazonでベストセラーになってるって。

山田:そうそう、今ベストセラー。1番売れてる本なの。実は『CICADA』のテーマはまさに『君たちはどう生きるか』ということについて描いてある漫画なので。

乙君:元は小説なんだ。

山田:そっか、小説か。『CICADA』も同じことを言ってるので、ぜひ読んでもらいたいなと思いますね。

シン・ゴジラ問題とは

乙君:そして3月、『この世界の片隅に』が日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞に選ばれました。これはもう文句ないですね。

山田:これもちょっと『うつヌケ』の流れと似たところがあって。

乙君:あら、そうなんですね。

山田:インディーズ的なかたちで立ち上がったアニメがここまできたというので。

乙君:はいはいはい。

山田:要するにデカいところが倒れて、陽の当たらないところにいた人、まさにこの世界の片隅にいた人たちに陽が当たるようになってきたっていう。そのトピックがこのへんそうです。今年の前半の話ですね。

乙君:ちなみに『シン・ゴジラ』が最優秀作品賞だったということで。

山田:シンゴジ問題があるんですよ。

乙君:ん?

山田:シンゴジ問題もちょっと話します。

乙君:わかりました。

山田:まずざっくり言いますけども、前半の問題ですが。モルヒネアニメ3種盛りっつーのがありましてですね。

しみちゃん:(笑)。

山田:もうね、この世界は地獄ですから。みなさん普通に生きてたら死にますから、モルヒネが必要なわけですよ。

乙君:ほぉ。

山田:「すっごーい」とか「楽しい~」とか。

乙君:あ~。

「異世界モルヒネ」が大ブーム

山田:そういうモルヒネアニメが1発目『けもフレ』でバーンとぶつかりますけども、実を言うとこの並びでちょっとおもしろいなと思ってるのがこれですかね。

言ってみれば異世界モルヒネが今大ブームです。

乙君:あ~、ファンタジーってこと?

山田:「異世界行っちゃえば嫁だらけ!」みたいな(笑)。モルヒネというのはいわゆるケシの実から精製したヘロインと同じもので。それを医療に使うとモルヒネ、ドラッグに使うとヘロインになります!

乙君:はいはい(笑)。そうなんですね。

山田:ダウナー系の最強ドラッグと言って、死ぬから手を出すなでお馴染みのヘロインですね。いろんな有名人が死んでますけどね。モルヒネというのは鎮静作用があるみたいなね。

俺の思う、最近のモルヒネ3種盛りっつーのがあって、今年の前半の3種盛り。異世界モルヒネと、『君の名は。』は赤い糸モルヒネですね。ここでやりましたね。「赤い糸は本当はあるんだい!」っていう。

乙君:なるほど。やりましたね。

山田:「恋愛とか終わってますよ」「ないっすよ」とか。お互いに男子も女子も「生きてる人間となんか恋愛しませんよ」っていう顔していながら、本当はどこかで「赤い糸があるといいな」っていう圧がかかってたところに新海マジックがかかりまして。この新海マジックで大ヒットという流れがありました。

「スイーツ大盛りモルヒネ」ってなに?

山田:「まだ終わったわけじゃね~」っていうやつと「向こう行っちゃお~」というやつと、問題は、スイーツ大盛りモルヒネって何でしょうという話ですよ!

乙君:「何でしょう?」ってコメントでも言ってますよ。

山田:これがね~、映画館に行くととにかくスイーツですわ。

乙君・しみちゃん:え?

山田:要するに少女漫画の王道系。王様のブランチ系みたいな。パンケーキ系っつーか。とにかく甘くておいしくて、甘すぎんじゃねぇのっていうような、壁ドーンみたいなやつですよ。

乙君:(ため息をついて)は~。

山田:おい!(笑)。

しみちゃん:(笑)。

山田:ちなみにですね。言いますけども。

乙君:モルヒネ打ったんですか?

山田:モルヒネ打ったらダラーっとするから。幸せになっちゃって仕事とかもういいやってなっちゃうんで、僕はモルヒネはやらないです。仕事にならないんで。

乙君:だからあれですよね。初恋ものとか。

絶望する前の少女向け映画

山田:『ピーチガール』です! 『PとJK』です! 結婚から始まるピュアラブストーリーですよ。『オオカミ少女と黒王子』ですよ。オーケー?(笑)。

乙君:あ~。

山田:『黒崎くんの言いなりになんてならない』ですよ。奥野さん。これ全部漫画です。あと『好きって言いなよ。』ですよ。

乙君:はい……わかるわかる。わかるというか、それ連呼されたところで。ですよねってなる。

山田:あと今は『覆面系ノイズ』とかね。あと『一礼して、キス』とかね。『兄に愛されすぎて困ってます』とかね。

乙君:あ~。

山田:複合映画館で、もうね、JK狙いなんですよ。

乙君:あれ誰が見てるかって言うと、JKなんですか。

山田:JKですよ。まだ絶望する前の少女たちです。絶望してタラレバになるともう夢は見られなくなるんで、大量のモルヒネが必要となるんですが。

乙君:『世界の中心で、愛をさけぶ』とは違うんですか? 今のそういうのって。

山田:あんまり少女漫画をバカにすると怒られますよ、あなた。

乙君:別にバカにしてない(笑)。

山田:少女漫画はいろいろありまして。『ちはやふる』とかもそうだし。

乙君:あれも!? じゃあ『3月のライオン』も?

山田:全部少女漫画括りですけれども、その中でもスイーツ多めが多いですよっていう流れですね。最近。どこ見てんの? 見てー(笑)。

乙君:なるほどね。うんうん。

イオンシネマに跋扈するコンテンツ

山田:そうなんですよ。ここ!

ここは忘れるなよっていう話ですよ。今の風潮として。本当にイオンシネマに行くと半分くらいこんな感じですよ。という感じが、今どれだけ若者は辛いんだっていう話ですよ。奥野さん。

乙君:なるほど、なるほど。

山田:ちょっと前までは傷口に塩塗っちゃえばもう痛みがなんだかわかんなくなっちゃうじゃないかコンテンツっていうのが流行ってたじゃないですか。『進撃の巨人』とか。

乙君:あぁ。

山田:「世界は地獄!」って言ったら「もっと地獄見せたろか」みたいな。「火星に行って虫と戦かったろか」みたいな。そういういろんな種類の地獄を見せるっていうかさ。「借金地獄に沈めたろか」とか。そういうのがいっぱいあった。

だからあえて地獄のような現実にさらなる地獄を乗っけていくというコンテンツ、もしくは『タラレバ娘』なんかもまさにそうだよ。『東京タラレバ娘』は地獄からのスイーツへいくっていう流れで。あれはなかなかうまい展開をしてますけども。っていうのがだいたい前半にありましたねみたいな感じですね~。

乙君:コメントで、「モルヒネだとしたら副作用は来るんですか?」と。

山田:怖いですね~。

乙君・しみちゃん:(笑)。

山田:副作用は怖いですね~。それは40歳くらいの人に聞いてみたらどうですか?

乙君:(しみちゃんを指して)40歳くらいの人。

山田:そうそう。

しみちゃん:僕そんな投与してない(笑)。

山田:過剰にスイーツを投与した先輩たちがいますから。

乙君:この時代自体がもしそういうトレンドとしてスイーツだったりとか、そういうロマンチックなと言えばいいのかな? わかんないけど。

山田:まぁ現実逃避というか。現実の良い面見ようよみたいなことだよね。

今の時代は生き残ればいい

乙君:そうすると次に来るのは玲司さん的には何なんですか?

山田:俺は次のタームがどうこうというよりは、今の時代は生き残ればいいんです。死ななきゃいいんです! だったらモルヒネ打ってくださいっていう。本物のヘロインで死んでしまうよりはぜんぜんいいんじゃないかっていうのが俺の意見。

『ピーチガール』でいいです。『黒崎くん』でいいです。『黒崎くん』で生き延びて、いつかなにか起こるかもしれないじゃないですか。この先ね。「あなたが私の黒崎くんだったな」みたいなことがあるわけじゃないですか。そういうことです。

しみちゃん:うん、うん。そうですね。

乙君:なるほどね。わかりました。