面倒臭そうなことをマメにして情報収集

堀新一郎氏(以下、堀):それでちょっと、思い出したんですけど。けっこう佐藤さんは、情報収集はマメにやってらっしゃると思います。今日の話から本筋がズレちゃうんですけど、ふだんどうやって情報収集されてるんですか?

佐藤裕介氏(以下、佐藤):そんな特殊なことはあんまりしてないと思いますけどね。

:いわゆる流行るものが見えるところじゃないところから、引っ張ってきている印象がすごくあるんですけど。

佐藤:でもやっぱり登記簿はタブレットで申請してすぐ取れるようにして、その会社の株主の構成とか調達状況とかは見れるようにしていますね。なんか……ちょっと面倒くさいことはやろうっていうのはあります。ちょっとお金はかかるけど別に小銭なんですよ。

:なるほど。

佐藤:はい(笑)。めっちゃ取ります。登記簿。官報見るとか。

:けっこう情報取得にお金かけて取ってるケース多いですよね?

佐藤:お金はかけてますね。あと、Elanceとか。海外のクラウドワークスみたいなサービスを使って、リサーチはすぐやりますね。数十ドルでめっちゃ安いんで。

利用すらできないものってけっこうあるじゃないですか? 現地のカードと銀行口座がないと、とかSMSの認証できないと、とか。そういうのは全部頼みますね。もう何人か、常に頼んでる。わりと女性が多いんですけど、その人たちにすぐ依頼してます。

成田修造氏(以下、成田):気になるサービスがあったらメモっといて。

佐藤:そうです。

成田:自分でもやるんだけどやれないときや時間ないときに調べて、みたいな。

佐藤:そうです。

成田:へえー。

:スクショ送って、みたいな感じですか?

佐藤:そうですね。中国とか、わりとそういうのが多いですね。

:それめっちゃいいですね。

少額を払えば有用な情報が取れる

佐藤:あとはエンタープライズ版とかで、どうしても法人じゃないと触れないものは全部お願いしてやってもらってますね。

:すげえ。

佐藤:とはいえ、それはお金かかんない……なんて言うだろう。

:数十ドルでできるんだったらね。

佐藤:そうそう。リサーチ会社のごっつい、何十万ぐらいするような資料買うのに比べると、ぜんぜん安いし、気軽にできる。基本は、小銭払うっていうのと英語を書くっていうのだけがだるくてみんなやらないんで。それだったらぜんぜん、難しくもないから。

:それ参考になるな。話しちゃって大丈夫でした? ありがとうございます(笑)。

(一同笑)

成田:実際に行動する人はほとんどいないですからね(笑)。

佐藤:そうなんですよ。言っても、そうなんですよね。

:けっこう、アメリカのスタートアップのサービスで、これ日本でやったらいいんじゃないの? って思うことがあるんですけど、そこでけっこう詰まっちゃうことがあって。

成田:調べきれずに。

:調べきれないことがあって。

成田:ありますね。

:ありますよね?(笑)。

衛藤バタラ氏(以下、衛藤):サービスとして出したいんですよね。

(一同笑)

本業の調子によって、投資のしにくい時期はあるのか

:残り時間が迫ってきたので、会場から質問をいくつか受け付けたいと思います。先に質問を受け付けてあとでまとめてバーッて答えるので、質問がある方は挙手をお願いします。

(会場挙手)

質問者1:エンジェル投資家になりたい場合は、どうすればいいですか?

:エンジェル投資家になりたい場合。はい。あとで答えますね。はい、ほかの方質問、どうぞ。

質問者2:エンジェル投資をしてコゲついてしまって、なかなかうまくいかないときのまわりとの向き合い方や、事業的に合う起業家のメンタルですとか。実際にそこはどう向き合ったらいいか、事例はありますか?

:うまくいかないときの向き合い方や、メンタルをどうコーチングしてるのか、みたいな話ですね。

起業家が投資家を選ぶケースも増えている

質問者3:エンジェルとしてお金は入れてないけど、定期的に会ってる人がいるか、ということと、いる場合、どういうケースでそういうことが起こり得るかを聞きたいです。

:なるほど(笑)。出資していないけど仲良くしてる起業家ってことですね?

質問者3:そうです。

:そういう方は、どういうケースのときか。はい。あと2、3個あれば。どうぞ。

質問者4:エンジェルの投資家の方が、みんなで投資をする理由と、そのメリットとデメリットを教えていただきたいです。

:理由と、メリット・デメリット。はい、あともう1つ。

質問者5:最初会ったときはそのチームと事業に興味なかったけど、次会ったときにめちゃくちゃ、ぜんぜん違う領域にピボットしてて興味持つ、みたいなことってあり得るのでしょうか?

:最初に会ったときは……わかりました。じゃあ、最初の質問からいきましょうか。エンジェル投資家になりたい場合。

(一同笑)

:どうしたらいいですか?

衛藤:儲かれば。

成田:儲かる必要はありそうですね(笑)。まずは元手がないとだめですもんね。元手をどうつくるかは重要です。あと、エンジェル投資って、そんな簡単にできるんですかね? 最近は「起業家が投資家を選ぶ」ケースが増えてるような気がしていて。

多分、投資家が多すぎるんですよね。いい起業家に対して投資家が多すぎる。投資量が多すぎて、結局は起業家がいい投資家を選んでいる傾向があると思っています。なので、実はそれなりにいい会社に入れるのは、けっこう大変なんじゃないかなと感じてます。

自分は最近やりはじめたので、「あーこんな感じなんだな」っていうのはよくわかりましたね。佐藤さんとか、本当に限られた人たちが、起業家に対してどんどんすごい投資している印象が、あるんですよね。どうですか?

佐藤:よくも悪くも、アメリカも日本もすっごいインナーサークルっていうか、村みたいになっちゃってます。その外側にいて、いい案件を取っていくとなると、村の人たちが持っていないビューやスコープがないと、なかなか最初は厳しいかもしれないですね。

とにかく独自のスコープ、独自のソーシングのチャネルがなければ、もう村に入るしかない。

そうすると、もうばら撒くしかない、と。今はもう全部イエスって言って。10社入れたらくるようになるから、10社入れて、全部プレスとかで名前出して、とか。

最初のお布施みたいなのがあるか、もしくはそうやって成田さんみたいに、実績があって起業家から直接連絡がくる、みたいな感じになんないと、最初は面倒くさいかもしれないですね。

:ありがとうございます。次の質問、佐藤さんに質問でしたね。思想として好き。

競合先には投資しない

:逆に、ビジネスモデル、起業家以外でそういう、バリュエーション条件で投資を見送っているケースってあるんですか?

成田:ありますね。

:あるんですか。ありますか?

成田:この前話した有望スタートアップは高すぎてだめでした。

佐藤:ははは(笑)。

成田:もう次のラウンドにいっちゃってて。ビジネスモデルはぜんぜんよかったんですけど、さすがにエンジェルが出す金額じゃないと思いました。

佐藤:僕は、自分がテーマとかセクターを決めて、ここって思ったところはあんまりバリュエーションは関係ないですね。ただ、バリュエーションが高いほうが、当然ロットを大きくして乗れるかどうか、みたいな。バリュエーションが高いのに500万円とか1,000万円ですって言われると、ちょっとどうしようもないって感じになるんで。

順調にいかない事例は死ぬほどある

:エンジェル投資して、うまくいかないときの向き合い方。どうしてますかね?(笑)。

佐藤:どうですかね?

:放置ですか?

佐藤:うーん、結局その人の、そのときのメンタリティの問題なので、外部がやいやい言おうが、その人の元気が出ないときは元気出ない。逃げたくなるときも、そりゃあるでしょうから。僕の場合で言うと40社あって、1社逃亡したって言うか、行方知れずみたいな会社があります。

1社フラットラウンドでM&Aされたケースがあるぐらいで、それ以外はサバイブしていて、なんとか次のラウンドにいけていたり、事業として伸びているっていうところが多いです。

基本はやっぱり、事業が伸びなくなる、計画を大幅にビハインドするっていうのは、よくあることなんですよね。創業者同士がけんかするとか、既存の株主とすごく揉めて買取になった、とか。死ぬほどよくある事例なんで、それを言うぐらいですか。「よくあるやつ、起こったね」みたいな。

君が思ってるほど深刻じゃなくて、別にまわりの100人もその目に遭ってるから(笑)。別に大丈夫だよっていう話をするぐらいじゃないですかね。あるある、みたいな。やっぱり自分のことだとどうしても、こうなっちゃう(思いつめちゃう)んで。それがよくある事例で、心も安らぐのであればそういう話をします。

:基本リアクティブだから、メンタルとしてっていうか、何か言われたらアドバイスするけど。

佐藤:そうです。だからそれで、いなくなった人が1社っていう。

起業家と投資家のコミュニティは広い

:これ、キャラがぜんぜん違うんですね。成田さんの場合はさっき、「元気?」って自分から聞いちゃうって。

成田:あまりにも不穏なときは聞きますね。若くて、不穏な匂いがする時は聞きますけど、この前確認した時はぜんぜん不穏じゃなくて、単純に、普通に忙しくてぜんぜん何も連絡がなかったっていうだけなんです。それはいいんですけど、自分の投資先でも焦げ付いたとか、全然だめあみたいなのは、今のところはないですね。

でも創業者で揉めたケースはありましたね。株の買い取りで借金しちゃったとか。それは佐藤さんの話と同じで、よくあることじゃないですか。だからまあ、いいんじゃない? って。「長い目で見ればたいしたことないから大丈夫だよ」って。

あとは、会社の方向性として、最初の考えからこっちにピボットしようと思うんです。あるいはこっちなんです。っていう、事業の選択肢が増えちゃったときに、こっちにいったらこういうリスクがあるよっていう、僕が伝えられるリスクみたいなものは伝えてます。

例えば、ちょっと多角化で変な感じになりそうで、今一点集中の時なんだけど、そこに突き抜けられない起業家の悩みがあるときに、ここは一点突破でもいいんじゃないの? みたいな感じで、後押ししてあげるやり方はしますね。

:わかりました、ありがとうございます。残り3つですね。エンジェルとして出資していないけど、仲良くしてる起業家っていらっしゃいますか? いる場合はどういうケースでしょうか?

成田:そんな事例一杯ありませんか?

:いっぱいいますよね?

成田:それがマジョリティーな気がしますけどね。投資家じゃなくても起業家、経営者の仲間内はいっぱいいますよね。いろんな会社があるので、その会社とは仲良く付き合ってますね。

ただ関係性をよく保っている人って、得られるものがある人だと思うので、それはだいたい絞られていますよね。同じような経験や先の経験をした人たちと付き合うようになるので、そこにいってない人たちとは、どんどん情報がなくなってきますよね。

投資家同士のグループで情報共有

:最初に会ったときと違った場合でも投資しますか? これ、しますよね?

成田:はい。しますね。

:ぜんぜんします。

成田:はい。

:最後の質問です。エンジェルの方がみんなで投資する理由(笑)。なんなんですかね。

成田:佐藤さんと投資したらめっちゃ勉強になりますよね、やっぱり。よく投資家だけのグループとかありません? その会社の投資家グループとか、投資家を集めたミーティングをけっこう開いてくれる企業があるんですよ。

その場は、いろんな経験をもった人たちが、その人たちが持ってる経験とか知見をバンバン喋るじゃないですか。無責任に喋るから(笑)、その知見がけっこう勉強になるし。「そういうのもあるんだ」って思うことはあるし、あと仲良くなれる。それは結構、投資をしているメリットなのかな。

:たまに、けっこうルーズな方いらっしゃいますね?

成田:起業家で? あ、エンジェルで(笑)。いや、エンジェルってだいたいルーズ。

佐藤:ルーズ(笑)。

成田:適当な人が多い(笑)。

:多いと管理が大変かもしれないですね。

くじけずに何度もトライすることが大事

:ありがとうございます。多くの質問に答えていただきましたけど、時間がだいぶ押してきてしまったんで、最後に。本日は起業家の方がたくさんいらっしゃってると思うのでひと言応援というか、何か。

これからエンジェル投資家として、会場のみなさんに投資する可能性もあるかもしれませんので。最後にこれから起業される、もしくは起業してる方たちに対するエールみたいなのありましたら、ひと言ずついただけますでしょうか?

成田:僕からいきましょうか。そうですね、立ち上げのときって、僕も最初学生の時立ち上げたりクラウドワークスを立ち上げたりして、やっぱり最初はしんどい。そこをいっしょに楽しめるような仲間として、僕はやれたらいいなと思って、お手伝いしてます。

何かいい案件があれば、何でも気軽に相談してもらえれば、最初の初期アイデアでも、ぜんぜん相談乗れます。気軽に連絡してください。よろしくお願いします。

:はい。ありがとうございます。

佐藤:そうですね、なんだろう……投資しますんで。

(一同笑)

連絡を、何卒お待ちしてます。けっこう、こうやって言われて連絡する人もめっちゃ少ないし、迷惑みたいな話もまったくなくて。変なハードルを持たずに、ぜひ連絡してもらえれば。そしてレスが返ってこないとすれば、それは忘れてるので。何度も連絡してくれると嬉しいです。

:ありがとうございます。今日はやっぱり、お2人に共通してたのは、会うたびに進化する、みたいな話や、あと……自分のなかでわかってることと、わかってないことをしっかりと認識してて、しかもそこで嘘ついたり自分を大きく見せようとせずに謙虚な人っていうのは、共通して評価してるのかなっていう気がしました。

さっき言っていたみたいに、1回会ってだめでも、2度目、3度目で投資してるケースもある。これ、エンジェルに限らずベンチャーキャピタルもそうなんですけど、くじけずに何度もトライするっていうことが大事だと思います。ぜひここに登壇されている佐藤さんと成田さんから投資していただけるように、みなさんの今後の起業の事業に、糧にしてもらえればなと思います。

今日は、本当にお忙しいなか来ていただいた2人に、盛大な拍手をお願いいたします。ありがとうございました。

(会場拍手)