logmi・ログミーファイナンス

投資・IR情報の書き起こしメディア

マネーフォワード瀧氏が語る、2017年のFintech 「“本当に使えるか”の議論が多かった」

マネーフォワード瀧氏が語る、2017年のFintech 「“本当に使えるか”の議論が多かった」

2017年12月22日に、株式会社マネーフォワードが「Fintech 2017年ふりかえりと2018年の予想」と題して、メディア向け勉強会を行いました。「2017年はFintechの実証期に入った1年」だと言われ、さまざまな新サービス・取り組みが展開されました。勉強会の前半では、株式会社マネーフォワード取締役・Fintech研究所長の瀧俊雄氏が登壇。2017年の「答え合わせ」から、銀行法改正の影響などを解説しました。

シリーズ
Fintech 2017年ふりかえりと2018年予想 > Fintech 2017年ふりかえり
2017年12月22日のログ
スピーカー
株式会社マネーフォワード 取締役 Fintech 研究所長 瀧俊雄 氏

「2017年のFintech予想」の答え合わせ

瀧俊雄氏 それでは、開始させていただきます。本日はみなさま、師走のたいへんお忙しいところにご参集いただきまして、ありがとうございます。 去年(2016年)に引き続いて、毎年の振り返りを当研究所(マネーフォワードFintech研究所)で行っております。私は最近、研究所としてお話しさせていただくことが少ないのですけれども。いろいろなことがある1年の中で、「来年のインプリケーションが強いのは、このあたりだよね」「後世から見たときに、このあたりは重要なイベントだったよね」というような、かなり主観的なセレクションを、本日はお持ちしております。 去年(この振り返りを)やったときは、プレイヤー編・制度編で国内外の重大ニュースを40個ぐらいを取り上げてみたんですけど、「流石にそれだとユーザビリティに欠けるかな?」と思っていたので、今日はもう少し記事にしやすく、わかりやすいように仕立ててみました。このあたりはまだ試行錯誤の過程でございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。 本日の全体的な構成は、まず私から20分ぐらい今年(2017年)の振り返りを行い、そのあと当社の神田(潤一氏)とともに、「来年(2018年)の展望をキーワードに分けて考える」ということを行います。そして最後の30分ほどを、Q&Aに割けるようにしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。 fintech (2) ちゃんと(去年の発言に関して)説明責任を果たそうと思っていまして、去年の答え合わせから入ります。(スライドを見て)去年のこの場(2017年のFintechの展望)で、「こういうものがテーマになるんじゃないか?」と言っていました。 結論からすると、「当時から、いかにも取り上げられそうなテーマを挙げていたのもあって、けっこう話題になっていたよね」ということがありました。例えば、銀行API・カードAPIって、(2016年)当時はあまり立ち上がっていませんでした。(2017年は)そのあたりが少しテーマになったよねとか、当社もご多分に漏れず、(予想トピックスにある)おつり貯金をするサービスを出すとか。 一方で、「それほど実現しなかったね」というものもありました。例えば、政府の目標に「生産性の改善」というテーマが挙げられた一方で、保険とか不動産の領域は、少しずつベンチャーが出てきたとはいえ、多分来年(2018年)以降のテーマになってますよね、ということです。 去年からの答えあわせでは、4勝2敗ぐらいだったのかなと思っています。 このあたり(の予想)を、今年も引き継いでいるところがあります。ぜひ、そういう(予想をしている)人間が喋っているんだというバイアスのもとで、見ていただければと思います。 fintech (3) Fintechの検索数が、マクロ的・メタ概念として大事だなと思っています。日本での検索数は、2016年の初め頃の……1回目の銀行法改正の直前ぐらいがピークでした。 このときは、言葉として「『Fintech』とはなんだ?」みたいなニーズが強かったので、我々もそういう意図があって、研究所を作ったところがあります。 fintech (4) 日本での検索数のグラフと対比して見せているのが、こちらのグラフです。ハイプ・サイクルと呼ばれるものです。ハイプ・サイクル的には、「そろそろ、全盛期の2割ぐらいまで盛り下がるんじゃないか」と思っていたんです。ただ、検索数だけでいうと、(値は)5割から6割ぐらいのところです。 ずーっとトピックとしては下がり続けているので、私は去年(2016年)も一昨年(2015年)の暮れも、「Fintechは、そろそろ終わるんじゃないか」と言い続けているんですけど……無事、2回連続で外しているところでございます。 これは「FIN/SUM WEEK 2017」でも、お見せした資料です。当初なにがあったかというと、ある意味二重の外圧がありました。 1つは、JPモルガンのダイモンCEOが、2014年の暮れに「シリコンバレーがやってくる」と述べていました。また、これは国内の話ですけども、MTGOXという仮想通貨取引所で、ある意味非常に大きな「盗難」が起きたという話(ビットコインの消失)があったわけです。なので、まずその外圧ドリブンが、こういうテーマでは常にあるなと思っております。

銀行法改正とFintech

一昨年から去年ぐらいに、銀行法改正が2回行われました。また、とくに去年は「日本再興戦略2016」の中で、Fintechが初めて取り上げられました。それが、例えばFIN/SUM開催のキーになりましたし、産業戦略として「Fintechをなんとかしなきゃいけない」と動く官庁が、金融庁以外にも非常に広がっていきました。これが2016年にありました。 今年(2017年)は、もともと去年の予想でお伝えしていた内容としては、「(Fintechは)実用期に入るだろう」ということです。 要は、(スライドの2015年・2016年を指して)技術が取り上げられたあと、1回減滅するんです。そのあと、「実際の社会に、どういう適用が図られるのか?」を見ていく過程で、今年(2017年)があったのかな。今年は、そういう意味で非常に真面目な……「本当に使えるの?」みたいな議論が、非常に多かった印象を受けています。 fintech (5) 当社に関わりがあることから、まず最初に取り上げるトピックが、銀行法改正です。 「2年連続(の改正)」と、よく言われています。1回目の銀行法改正は、「5パーセントルールの緩和」が、主なトピックでした。これにより、Fintech企業に5パーセント以上出資できる会社が出てきました。 具体的な事例でいうと、NECさんと三井住友銀行さんの間に、認証系のベンチャーを作るという話がありました。「みずほ銀行さんの『Blue Lab』が、それじゃないか?」という質問を受けることがあります。あれは確か、「グループ会社として15パーセントの規制の範疇に収まっているので、該当しない」というのが、みなさんの見解です。ジョイントベンチャーを作りやすくなるという話が、去年の改正でした。 fintech (14) 今年の改正は、オープンバンクAPIです。ご存じの方が多いかもしれませんが、そもそも「オープンバンクAPI」とはなにかというと、銀行のデータや、銀行の決済機能に対して、合鍵を(信頼できる)サードパーティに渡す機能を指しています。 「合鍵」という表現がいちばんいいのかなと、いつも思っています。要は、我々のような家計簿の事業者であれば、ユーザーさんの代わりに通帳を記帳して、家計簿をつけてあげるようなアプリを作ってあげたいと考えます。 また、EC事業者であれば、ユーザーの代わりに銀行に振り込みを行うことができれば、EC取引のときにも、クレジットカードのように銀行を使うことができます。こういうことができる観点が、非常に重要でございます。 もともと、私どもが社会的にオープンバンクという話を言い始めたのは、2014年末頃なんです。 (当社と)住信SBIネット銀行さんの接続が可能になる・ならないぐらいのタイミングで、やっと外向けにこの話ができるようになったところです。そのため、世の中では、このテーマにまだ2年ちょっとしか触れていません。 そもそも、「なんでそういうもの(オープンバンクAPI)が必要なんだ?」という話もよく言われるところです。なぜかというと、いきなり結論から入って恐縮なのですが……ビル・ゲイツの言葉で「Banking is necessary, banks are not.(銀行機能は必要だけど、銀行はいらない)」という、20年ぐらい前の格言がありました。 実際に我々は、例えばAmazonで買い物するときには、「どのカードを使おうか?」「どういう支払いをしようか?」って、あまり考えないですよね。 そうではなくて、「欲しいものが目の前にあって、発注する機能があれば、それでいい」。また、「私が『瀧』(という人)だ。『瀧』に支払う意志があると示せれば、それでいいんだ」という世界観があります。その世界の中に銀行振込を連れていくとしたら、どうすればいいんだろう? というわけです。 fintech (5) (こちらのスライドに)いろいろと書いちゃってますけど、まず「何が可能となったのか」というと、実際にシステム投資をして、合鍵を発行できるシステムを作りました。 あとは、「その合鍵システムを使っていいですよ」という契約をすることで、ベンチャー企業は、家計簿を作ったり、EC決済をしたり……ということが、可能になるわけです。 実は従来の銀行のあり方の中で言うと、なんの制度的措置もいらないものです。ないしは、「銀行代理業の資格を取ってね」という、それぐらいの販売制度的な変化だったわけです。 ただ、「こういった事業者をもっといっぱい増やしていかないと、そもそも銀行が便利にならないよね」という、そういうモチベーションがあります。それを世の中では、「オープンイノベーションを銀行に当てはめる」という表現をしています。 法律的(制度的)には何をするのかというと、まずマネーフォワードが、金融庁に登録します。これは、起業当初はまったく想像していなかった事態です。私も辻(庸介氏)も、ずっと金融庁の証券課のお世話になっていた会社の出身ですが、「金融庁に行かなくて済むような会社を作ろう」と昔は思っていたんですけれども……今では日参しておりまして。 それはなぜかと言うと、大切なデータを預かる部分と、決済を代行する部分があり、そこにエラーがあってはいけないからなんです。 なので、世間が銀行に対して思っているセキュリティと、表側(決済代行部分)が合わない側面も出てきかねないので、「ちゃんとある程度のバリア・セキュリティができるような会社にしましょう」と。(銀行APIにアクセスする企業が)そういう人たちになっていることを確認して、金融庁さんが登録をしています。 登録を受けたAPI接続企業は、「使わせてください」と、銀行と契約します。APIの接続をしながら、合鍵を利用して……今まさに「発足(予定)」と書いていますけれど、「そういう事業者団体として、セキュリティをちゃんとしましょう」という自主規制をしていくことが、全体像です。 私が常々申し上げていることは、おもしろいアプリが銀行単体からどかどか出るという状態は、世界的にあまり見られたことがありません。なぜなら、銀行自体にはセキュアであってほしいからです。 でもその一方で、おもしろいアプリやおもしろい経済取引は、(銀行の)外でいっぱい生まれます。API公開によって、そういう(おもしろい経済)取引の近くまで、銀行を連れてくることができるんじゃないかと考えています。 あと、今の日本人は、金融機関を選択する理由の8割ぐらいが、「ATMの近さ」になっています。政府が、キャッシュレス決済比率を20パーセントから40パーセントにするという目標を掲げています。この流れの中で、いずれ80パーセントの世の中になったときには、ATMがいらなくなる。そのとき、「どうやって銀行を選ぶんだっけ?」という話があるわけです。一説によると、スウェーデンなどは(キャッシュレス決済比率が)90パーセントもあるようです。 私はそういう話の中で、「APIで組んでいる相手(接続企業)が、銀行を選ぶ理由になるんだ」ということを、いつも申し上げています。こういう方向性で銀行のあり方を定義するものが、今年の銀行法改正のいちばんのポイントなのかなと思っております。

「情報銀行」的な立ち位置のJ.Score

fintech (6) 非常にセレクティブですが、「今年の金融機関(の変化)のうち、なにが我々のようなプレイヤーにとって、いちばんのサプライズだったのか」を書いたものが、こちらです。世の中に実際に与えているインパクトは、意外な度合いだと見ていただければと思っています。 私がいちばん驚いたのは、JDDさん(Japan Digital Design)でした。 名前で言うと……忘れちゃいけないですね。LINEに買収された、濱崎(健吾)くんのいた会社(WebPay)でCTOをやっていた人(曾川景介氏)とか、あとはYahoo!にいた楠(正憲)さんとか。こういう人たちがJDDにジョインしているのは、すごいことなんです。 例えば楠さんって、マイナンバー制度を実際に作っている人(の1人)ですから。内閣府とYahoo!の両方を兼任している人として、人間の認証基盤とか、「個人情報はどうあるべきか?」みたいなところで、我々の中でもある種の「心の拠り所」にしていた人なんです。 そういう人がCTOとしてJDDにいるのは、すごいことなんですよ。JDDさんは、もともとMUFGグループと、いろいろな地銀さんの出資でできている会社ですが……やっぱり、これってすごいことなんですよ(笑)。 そういうところで、例えば認証基盤・APIの基準を作ることができるのは、すごいことです。MUFGさんが進めると、いろいろ「進む感」が出るじゃないですか。そういう意味では、(JDDは)非常に期待が大きいです。 続いて、(東京都の)愛宕にある「Blue Lab」です。走らせているプロジェクト数が30を超えてきたのが、おもしろいところです。その周辺のプロジェクトで、「Jコイン」とか「J.Score」の話があります。やっぱりJ.Score(個人向けAIスコア・レンディングサービス)みたいなものって、始めてみることがすごく重要なんですよ。 J.Scoreが「あなたのスコアが変わりました」「もっと情報を入れましょう」とか、毎日メールを送ってきます。これは、Alipayの芝麻信用(ジーマクレジット)にすごく似たことをやっているなという認識があります。 情報を丁寧に与えるとモデルが進化して、自分のスコアが上がる体験って、小さな会社で試したことがある人は、まあまあいるんです。ただ、大きい会社として、情報を集める「情報銀行」みたいなことをやっている人は、あまりいないんです。なので、(J.Scoreで)そういう本格的な試行があったことは、すごく大きいよねというイメージがあります。 あと、(私が)けっこうすごいなと思っているのは、福岡銀行さんが東京でオフィスを作る……みたいなことです。「Diagonal Run Tokyo(ダイアゴナル ラン トウキョウ)」という名前は、完全に作った人の趣味なんです。 作った人が永吉(健一)さんで、サッカー好きなんです。(会社を)サッカーの動きのイメージでやっているんです。だだっ広いオフィススペースが八重洲にあります。そこで、いろいろな他のシステム会社さんとイベントをやっています。 (これは)非常に重要な観点です。金融(に関する人たち)の中だけで会話をすると、Fintechって、縮小銀行の話ばかりになるんです。 というのも、金融はやはり補助産業なので、その中で技術を尖らせようとすると、RPAのような話題が多くなっちゃうんです。そうすると、「銀行員大量就職」などの話題が目立ってしまいます。外にイノベーションを求めはじめると、現実で非常に付加価値を持っている経済圏に決裁・融資が付くかたちで、本来の補助産業の良さが発揮される側面があるんです。 そういう人たちをいっぱい呼び込むという意味で、実は「場を作る」というのは、金融機関にとって、昔から非常に重要な機能なのかなと思っています。

電子マネーで「ワリカン機能」が実体化

(金融機関の変化として、次に)電子マネーの話が出てきました。MUFGコインの画面を見せてくれる人が、だんだん増えてきています。MUFGコインでは、サラリーマンらしい「ワリカン機能」のような、いろいろな機能が付いてきました。ああいうものが実体化してくると、(MUFGコインを使っていない人が)「私も欲しいな」みたいに、だんだん思い始めるところがあります。 多分、これ(ワリカン機能)が一発出るだけですごく変わりますし、Jコインも同様です。ゆうちょさんやりそなさんなどが(電子マネーによるワリカン機能に)乗ってくると、それだけで飲み会の精算が終わる部分があるので。 従来から、LINE Payさんがすごくがんばって本人確認を進めているのですが、(ゆうちょやりそなは)もともとの母数がすごいので、都心部での使われ方は、だいぶ早まるんじゃないかなと思っています。 あと、(技術の本格活用・試行について)一言で「ブロックチェーン」と書くなという感じですが。ブロックチェーンの使われ方でいうと、全銀協(全国銀行協会)さんとデロイト トーマツさんの間で始まっている、KYC(Know Your Customer、本人確認)の試行実験などは、どう考えても価値が大きいところです。 どうしてもブロックチェーンは、言葉や概念が先走るタイプのものです。「分散されたかたちで、信頼された情報を活用したいものは、なんだろうか?」と考えたときに、すごく近い用途が、KYCです。なので、そういうもの(ブロックチェーン)が出てきたことは、大きかったのかなと思います。 あと、「LINE Payのセブン銀行での入出金」ができるようになったことは、地味ながらもすごいことだと思っています。 我々は普通……例えばSuicaにチャージすることはできても、引き出すことはできなかったんです。しかし、セブン銀行のATMでそれ(入出金)ができることは、日本のキャッシュレス化において、すごく重要な転機になるんじゃないかなと思っています。

  
×
この話をシェアしよう!
シェア ツイート はてブ
マネーフォワード瀧氏が語る、2017年のFintech 「“本当に使えるか”の議論が多かった」
注目の決算説明会

おすすめログ

無料で求人掲載できる!エン・ジャパンの採用支援ツール、engage(エンゲージ) PR

人気ログランキング

TOPへ戻る