銘柄探しのコツは「青い鳥の理論」

藤野英人氏(以下、藤野):その(「長期的には利益と株価は一致する」という考え方の)中で、個人投資家が実践したい3つの習慣です。まず、「他人の目になりきる」ということです。「自分が」(どう思うか)よりも「多くの人が」どう思うかを、見るといいと思います。そこから、「関心事を増やす」ということですね。足を使う、肌感覚を大切にする。それから、「物事を複合的かつ立体的に見る」という習慣があると、いいのではないかなと思います。

じゃあ、明日からできる会社を見るときのポイントを3つ紹介しましょう、ということで。まず、「青い鳥の理論」についてお話をしたいと思います。収益の基は、自分の足下に転がっていることが多いということです。自分の会社とかね。自分の会社って、過小評価しがちなんですよ。なんでかと言うと、全部わかってるから。全部わかってるものってミステリアスじゃないので、過小評価しやすいんですね。持株会がある人は、自分の足下にチャンスがあると思った方がいいんですね。

(収益の基になるものは)あとは、仕入れ先・お客様・地域・親兄弟・親戚・近くのお店・自分の趣味・子どものおもちゃとかです。これは、「インサイダー情報を取れ」ということではありません。「インサイダー情報」というのは、決算情報とか合併とか、そういう情報を先に取って投資をするということです。これは、やってはいけないことなんですけれども。でも、お店が流行っている。この「流行っている」というところを知ることは、公開情報なんですね。だって、誰でも知ることができるわけじゃないですか。決算の情報ではなくて。

こっちの情報(「お店が流行っていること」を知ること)の方が、本当の意味で儲かるインサイダー情報なんですね。だってそうでしょう。逮捕されない、インサイドインフォメーションです。というのは、その会社の本当の力を見ることができるのは、現場ですからね。そうすると、現場で行列ができているようなことがあれば、必ずそれは、決算の数字にしばらくおいて反映されます。

「決算の数値が出てから、業績がよくなること」はないです。「業績がよくなってから、決算の数字がよくなる」わけですね。ということは、現場に行くということが大事です。現場・お店で、行列ができているのを(実際に)見て投資をするということは、ぜんぜん(本来の意味の)インサイダー情報でもないけれども、これ以上の(実質的な)インサイダー情報は、ないんです。決算を締めた情報があって、それをどこかで盗み見て「あ、上方修正するみたいだ」というのは、ずいぶん時間が経ってからですよね。

そうじゃなくて、それぞれの人がお店に行く。(例えば、ラーメン屋で)ラーメンの種類が変わった。野菜ラーメンの野菜が、5割増しに変わった。野菜が5割増したことによって、店に行列がついた会社があった場合、必ずそれは業績に反映されるわけですよね。そういう会社を見つけていくことが、大事です。だから、自分の足下のものを見つめていくということが、すごく大切です。その時に、他人の目を見るということも大事ですけど、自分のこととして考えるっていうことも、大事なことじゃないかなというように思います。

実際に私が成功したことで言うと、だいぶ前の話ですが。もちろん細かい成功をした話は、たくさんありますが。大昔の話で言うと、私が大学を卒業して現役のファンドマネージャーをしているときに、親戚というか、知り合いの子どもに勉強を教えていたんです。会って、たまに勉強を教えていました。そしたら、ちっちゃいおもちゃをいつもいじっているんです。ものすごく。それはなにかっていうと、「たまごっち」というおもちゃなんですね。「これなに? おもしろいの?」「めちゃくちゃおもしろい」と。

これを入手するために、お父さんとかが徹夜して並んでるみたいな話も聞くわけですね。実際に(お店を)見てみると、その「たまごっち」を買うために行列を作っているんです。これはすごいなと思って。それは(販売元は)バンダイという会社だったんです。今は、バンダイナムコエンターテインメントという会社になってますが。(バンダイの)株価を見てみたら、まったく反応していないんです。要するに「たまごっち」ブームというのが起きてるんだけれども、まだそれが株式市場の中に、反映されていなかったんです。

かなり流行りものの好きな子どもは、「たまごっち」でフィーバーし始めていました。そのときに(私が)「たまごっち」を発見し、「これは大きくブームになる」と。実際に(店に)行列がついていることを確認して、投資をしたら、結果的に(バンダイの)株価が3倍とか4倍になりました。なんでかというと、「たまごっち」で業績が激変したからなんですよね。

意外に、そういうことがあるんです。なんでか? 日本の個人投資家というのは、(本来なら)これはチャンスだと思った方がいいんだけれども、株式投資に対して不案内な人が多いんですね。アメリカとかだったら、「たまごっち」が売れている、となったら「おー、株を買おう!」ということになるんだけれども、日本の場合だと、「(決算の数値を見て)いや、株は悪いことでしょ」みたいに思っている人が多いので。

だから(実際に)何かが売れているという情報が、反映されません。だからその面で見ると、フィールドで歩くということが、ものすごくチャンスになるんですよね。そういうものが世の中にはたくさんありますので、そういうことを見ていくといいと思います。

消費の「今」は家電量販店でわかる

「街を歩いて情報収集!」ということで、決算書情報はワンテンポ遅れますので、現場の「今」を感じることが大事です。私がいつも、学生さんにおすすめしていることがあります。家電量販店を毎月、地下から上まで歩いて、思ってること・感じてることをメモにとってください。これを、ひと月に1回でいいです。1年間やるだけで、けっこう消費の「今」がわかります。

今、百貨店よりも多くのものが売られているのは、家電量販店なんですね。百貨店というのは、服と食品と化粧品しかありません。「百貨」というのは、「いろいろなものが売っている」という意味だけれども、この20年間ぐらいで百貨店は、実は「三貨店」ぐらいになっていると。

百貨店の機能も持っているのが、実は家電量販店。とくにビックカメラとかヤマダ電機に行くと、おもちゃも売っているし、それから宝飾品も売っているし、スポーツ用品も売っていますよね。そうすると、消費の「今」を見ることができる一番いい場所というのは、家電量販店です。

ヨドバシカメラとかに行ってみて、半日くらいかけてゆっくりと見るんですね。お客さんとして見ながら、全部見ます。今買うつもりがないものも、全部見るんですね。冷蔵庫も見るし、カメラも見るし、ゴルフクラブも見るし、美顔器も見るわけですよ。

だからできれば、カップルとかご夫婦で行くといいです。なんでかというと、興味のあるものが性別で違ってくるので。男女で行けば、それぞれ会話になります。「こういうものが売れてるね」ということで、話が合うので。それをこう1年くらいやっていると、消費の現場がわかるようになります。

例えば、就活をこれからするという時に、「実は私は、家電量販店をまわっていて、今の消費のトレンドについて知ってます。例えば、今はテレビがいくらくらいで売られていて、今こういうものが売ってます」とかいうことを言って(みてください)。(採用担当者に)「なんでそんなことを知ってんの?」って言われたら「いや、家電量販店をずっとまわって調べ続けていて。(それをまとめた)このノートがあります!」って言ったら、採用担当者が採用したいに人なるんです、そういう人はね。

だから要するに、儲かるか・儲からないかということを知る。投資で儲かる情報っていうのは、けっこう街中に転がっているということです。この街中で転がってるところを見るということは、実は株式投資だけでなくて、ビジネスマンとして成功する可能性があるということです。

だって、「今はこのようなものが売れているから、こういう消費のトレンドなんですよ」ということを、「僕は(実際に)家電量販店をまわっていて、こういうことを知ってますよ」と上司に言ったら、「ああ、こういうことは知らなかったなあ」となるわけなので。ビジネスにも、役に立つということになります。

「ラーメン屋で成功しそうな社長」の会社に投資

銘柄探しのコツで、「タテヨコ展開」というのがあります。それはなにかというと、1つの会社を調べる時に、「同業他社はどうなっているか」「お客様はどうなのか」「取引先はどうなのか」というところを、考えてみるということですね。それはすごく大事な習慣じゃないかなあと思います。

例えばセブンイレブンを調べる時に、当然ファミマも調べるし、それからローソンも調べるし、それからちっちゃい会社だけども、広島のポプラという会社を調べることによって、同業他社との違いを見ることができるし。セブンイレブン調べたい時に、ポプラのホームページを見たり、ローソンのホームページを見たりすると、よりその会社の理解が深まります。

もし投資でうまくいかなかったとしても、こういう会社の知識をつけるということが、みなさんの生活力・消費力・ビジネス力を上げていくんですね。

「経営者をチェック」です。私がすごく重要視してるのは、「『ラーメン屋』で儲けそうな社長の会社に投資する」ということです。今日、あとでスノーピークの山井社長(山井太氏)に出てきてもらいますけどね。めっちゃラーメン屋さんで成功しそうですよ。

(会場笑)

藤野:僕ら、スノーピークにはたくさん投資してるんですけどね。意外と大事なんです。「あ、このおじさん、ラーメン屋さんの店長でエプロンとかを着させても、なんか様になるんじゃないかなあ」というところ。けっこうそれって大事で。やっぱり昔は、(社長は)大企業のサラリーマンって偉そうで「エリートでした」っていうところが、重要だったかもしれませんが。これからの社会は、「ビジネスマンとして、1からビジネスを切り拓いていけますか?」というところの感覚が大事なので。この社長さんが個として立って、「ラーメン屋さんの店長だったとしても、繁盛店を作れる」という人に、賭けたいなと思うんです。

あと、企業サイトの顔写真をよく見てるんですけども。企業サイトに、社長の顔写真だけではなく、役員の個別写真があるかというのは、わりと大事です。それで、株価の差がすごくあるんですよね。

今日本で、(企業サイトに)役員の個別写真が載ってる会社って、全体の9パーセントしかなくて。91パーセントは、個別写真がありません。役員の個別写真がある会社とない会社を比べてみると、(個別写真がある会社の方が)劇的に株価がいいんです。それは、そのとおりで。だって、「自分の会社をちゃんと、全部見せよう」という気持ちが、あるということなんです。

投資界の有名人をチェック

あと、「SNSを活用する」。キュレーターをフォローするとかで。投資の世界で有名な人っていろいろいますから、そういう人をフォローしていると、その人が見たり、シェアしているものを追っていけたりする。それをまたフォローしていけば、情報が広がります。SNSは、発信することよりも見ることが大事です。「SNSは怖いなあ」とか、「Facebookとかをやると、情報が抜き取られるんじゃないか」と思う人もいますが、最低の(個人)情報だけ入れておいて、とにかく見ることに徹するというだけでも、みなさんの世界を広げると思います。なぜなら、ほとんどただで情報を得ることができるからです。

あと、日経電子版。これは有料ですが、キーワード登録がすごく便利で、私は「最高値」「最高益」「増益」「上方修正」「IPO」という言葉を入れています。それを入れると、記事を切り抜きみたいにしてくれるんですね。

これがすごく便利で。わざわざ朝早く起きて、切り抜きをしてくれる秘書さんを雇っているようなものです。それを、(実際に)毎朝秘書さんに来てもらって、切り抜きをしてもらう作業とかを考えると、時給がどのくらいかかりますか? ってことを考えたら、それだけでも、この日経電子版には取る価値があるんですね。

そうすると、僕らにとって有益な情報が簡単に(データ上で)赤枠とかで囲われて、情報を取ることができますので、これで4,000円とか5,000円を払ったとしても、情報収集料としては、すごく安いと思います。

私がやりたいことは、「(株式投資で)日本を根っこから元気にしよう」ということです。株式投資のよさというのは、(日本には)北海道から沖縄までいろんな会社がありますが、(全国の会社に投資をすることで)日本を元気にすることじゃないかなと思います。これからまた、あとでお話しする機会もありますが。ご清聴、どうもありがとうございました。

(会場拍手)