「広告プランナー自身がいいと思った商品をおすすめする」

高山達哉氏(以下、高山):新商品が出たから、その露出を最大化させる。キャンペーンがあるからそれを多くの人に知ってもらうための取り組みよりも、1つの商品の体験価値などを常に記事のなかで提案しています。1年後にその記事をお客さんに読んでもらっても、すごく新鮮な気付きを得ていただくことができる。だから、BRAND BOOSTをやる。

今年12月も、実は去年やったBRAND NOTEをもう1回再投稿する企業さんとの取り組みも、今はやっています。

筒井あい子氏(以下、筒井):どんな企業さんたちかというところも。

高山:そうですね。(スライドを指して)ちょうど今までで、企業さんの会社の数で言うと32社ですかね。46ブランド、コンテンツの数としては144本のブランデッドコンテンツ(2017年11月時点)と呼ばれるものの企画、制作、配信をやってきました。

今までのクライアント企業さんの実績の一部なんですけれども、本当に幅広いです。「北欧、暮らしの道具店」なんで、北欧系のプロダクトをつくっている企業さんとしか合わないんじゃないかという懸念をいただくこともあります。

しかし、僕たちのスタンスとしてはそういったものではなくて、より幅広く「僕たちが本当にいいなって思ったクライアントさんの商品をおすすめする」ということで、こんなに幅広い企業さんのラインナップになっているのかなあ、と思います。

筒井:はい。

来期の広告営業利益は4分の1になるイメージ

高山:最後にですね、(スライドを指して)その事業開発グループとして、僕たち広告プランナーの役割も一応、最初に共有しておいたほうがいいかなと思ったので入れています。

けっこうなんでもする職種でして、原稿制作のところをグレーで色をつけています。要は、ここはやはりディレクターやライターが稼働するところなのであえて塗りつぶしていて、それ以外は、自分たちが責任もってやっているかなと。

もちろん取材撮影も編集者と一緒に動くんですけど、取材撮影でも「喉乾いてんちゃうかな?」と思ったらすぐ水を買ってきて「はい!」みたいな(笑)。そういうところまで全部やっています。というところも踏まえて、こんなところかなと思います。

筒井:だからこう「プランナーっていうよりも」って感じですよね。

高山:そうですね。プロデューサー的な肩書きのほうが、実はすごくしっくりくるかな、とも思ってますね。

筒井:先ほど話に出た、クラシコムの前期がだいたい約17億円ぐらい売上があるんですけど、当時の広告と物販での売上の比率はどれぐらいですか?

高山:前期では広告事業だけで1億ですね。なので……売上の6パーセント弱ですね。

ただ、営業利益が占める割合はけっこう増えてきていて、2割ぐらいは広告で利益を上げてます。来期はおそらく、4分の1以上ぐらいは広告で営業利益を上げていくイメージ感になりそうですね。

筒井:利益ベースで言うと8:2みたいな。

青木耕平氏(以下、青木):そうですね。

高山:はい、そうです。

広告事業の想定イメージ、高山氏との出会い

筒井:先ほど「2015年7月からtoBのビジネスを始めた」というお話がありましたが、参加者さんから「『北欧、暮らしの道具店』はなにを根拠に広告事業を始めたんですか?」というご質問をいただいています。

きっかけやタイミング。青木さん、そのときのことをちょっと思い出していただいて。

青木:はい。最初に、僕らはECサイトとしてはけっこうめずらしかった。広告にまわした予算を、コンテンツをつくるほうにシフトしました。売上における広告費の比率を2パーセントぐらいまで引き下げた。

当時、広告やマーケティングに15パーセントぐらいお金を使っていて、それを一気に引き下げたときに……ようするにメディアなので、自分たちが集客できると同時に、当然その集客力を持って、ほかのお客さまの集客もお手伝いすることはでき得る選択肢だろうなと思っていました。2011年ぐらいに方向転換をしたので、そのときにはそれを想定しておりました。

先ほど言ったように、1,000回来て4回しか買わないということは、996回の訪問はまったくマネタイズできてないことでもあるわけです。そうすると、その996回の訪問をなんらかの方法でマネタイズしていくことを考えたときに、やはり1つの試みとして広告はわかりやすいマネタイズの手段だな、と思っていたんです。

広告はそういう意味でも、うまくいくかどうかはわからないけれども、いずれは少なくともトライしなければいけない1つの事業だなあ、という感じでおりました。

なのでわりと、想定し得るスタンプラリーみたいなものがありました。「物販でECやります」「仕入れでやります」「なにかオリジナル商品つくります」……みたいなことのなかで「広報やります」「会員ビジネスやります」みたいな可能性は、誰でも思いつくものがあると思います。そういうスタンプラリーの1つとして、広告事業はもともと本当に5〜6年前から想定はしていました。

筒井:この数字、「これがこれぐらいまできたら広告事業をしてもたぶん大丈夫だな」というのはあったんですか?

青木:一応はね。やはり「PVが1,000万いったらいけるかな」というのはなんとなく思っていて。ちょうど始めたタイミングと、1,000万PVに到達するのがほぼ同時だったので、タイミング的にはそこだなと。

あとはやはり、事業を開発していく上で「広告事業がうまくいきそうだなあ」みたいな話と、実際にそれを立ち上げていく話って、ものすごく大きな差があると思うんですよね。なので、そこに動いていくことで重要なのは、その事業に責任を持って立ち上げてくれる人との出会いがあるか、みたいなところでした。

たまたま高山との出会いがあって、実際問題として、僕はその事業を開発するのになにかしたわけでもないので。本当に中途半端な落書きみたいなものだけがあって、「こういう落書きがあるんだけど、どう?」みたいな感じで、ほぼ彼がそれをかたちにしていったことで言うと、やはり出会いのタイミングもあったかな、と思います。

クラシコムとの出会いは記事広告の出稿

筒井:高山さん、入社されたのはいつでした?

高山:2015年9月ですね。

筒井:では7月に「BRAND NOTEやtoBのビジネスを始めよう」となって、しばらく経って「俺がBRAND NOTEやってやる!」みたいな感じだったんですか?

高山:なにその感じ(笑)。

(一同笑)

いやでも……それこそ、青木とのきっかけみたいなところから話したほうがいいと思うんですけど。

僕、前職がクライアントさんのオウンドメディア立ち上げや、コンテンツマーケティング支援と言われるところの領域をやっていました。それともう1つ、自社で女性クリエイター向けのオウンドメディアを運営していました。それはWebですね。

ふだんクラシコムでは、基本的には求人は自社サイトでしか出さないんですけど、そういった女性デザイナーとうまくマッチングできたらいいなという狙いもありました。クラシコムのほうから、そのサイトに求人目的として記事広告を出したいという相談があって。そのときに僕が窓口として出てきたというのが、最初の出会いなんですね。

筒井:「求人広告を出したいんですけど」のときに青木さんと出会った。

高山:「いらっしゃいませ」みたいな感じで。

青木:けっこうかわいいサイトだったのに、出てきたのはけっこういかつめの人だったから。

(一同笑)

筒井:たぶんそれ、今でもそうですね。

青木:そう。だから一瞬ひるんだ(笑)。

筒井:それが出会いだったんですね。

「広告事業にコミットした経験はなかった」

高山:「クラシコムの社内に1日体験入社する」みたいな記事だったんですけど、それはいい感じにしっかり記事もつくらせてもらいました。僕自身は北欧のインテリアとかってあまりくわしくなかったんで、おしゃれな会社だな、ってぐらいの感じだったんですけど。

それが案件として終わって。そこから僕自身がいろんな企業さんのオウンドメディアを立ち上げたりしているなかで、青木からいきなり「ちょっとご飯に行かない?」みたいな感じで(笑)。メッセージがきたんですね。そこから不定期に会うようになったんです。

筒井:じゃあもともとのご経験としては、コンテンツは知見があるけど「広告は知ってるよ!」だったのか、それとも「ぜんぜん知らなかった」?

高山:そうですね、はい。なので、広告事業にコミットした経験というのは、今までの職歴のなかではないです。自社メディアの広告担当としてはやっていましたけど、それはどちらかと言えば自分のリソースの本当に3割ぐらい。問い合わせがきたら僕が対応するぐらいの感じだったんで、プッシュで営業していくこともぜんぜんやってなかったんですね。

筒井:「広告のことを全部俺1人で営業やるのかよ、おい!」みたいな。

高山:そうですね。いや、本当そうでしたよ。

筒井:はははは(笑)。

高山:だから、「この広告メニューのこの金額って妥当かな?」みたいなことも最初はわからなかったんです。

3ヶ月間、1日3件ひたすらクライアントの話を聞く

筒井:それを2人でどうやって乗り越えた?

青木:そうですね、まあ……僕も広告ビジネスやった経験もまったく……。そもそも「メディアもやったことなければ小売りもやったことない」で始めてますから。始めるときはやったことない。けれど、そういう経験が少ない分、僕はけっこう素直さには定評が。

高山:ははは(笑)。

筒井:確かに。

高山:自分で言う。

青木:自分で言うのもなんですけど。

筒井:ご兄妹、どちらもね。

青木:はい。45歳なんですけど、初老にしては本当に考えられないぐらい素直さには定評が。

筒井:すぐ言うこと聞く(笑)。

青木:まずこの事業で、知り合いの広告代理店の人がいてですね。その方に「ちょっと申しわけないんだけども、2時間ぐらいうちの会社に来て、御社の新入社員に教えるように『広告とはなんぞや』ってことを俺に語ってくれ」と言う話をしてですね。

2時間ぐらい、親切にすごく教えてくれたんです。最初に、例えばみなさんだとよくご存知かもしれませんけど、代理店やレップなど、そういうことさえも一切知らなかった。「レップってなんすか?」「メディアバイイングってなんですか?」みたいな。

そんな話から全部聞いていくなかで、どういうふうにやってくべきなのかを「こういうプレイヤーがいるとしたら僕らの立ち位置ってこのへんで」「このぐらいの金額感でこういうビジネスができるかも」って仮説はなんとなくそこでできたんですよね。

まだそれは仮説でしかないので、高山が入って最初の3か月ぐらい、とにかく2人で目ぼしいクライアントになりそうな、ツテのある人のところに1日3件ぐらい片っ端から会いに行きました。

筒井:けっこうハードですね。

青木:そうなんですよ。僕けっこう体弱いので、結局3か月目で体を壊すという。

(一同笑)

「あとはよろしく」みたいになっちゃったんですけど。

でも3か月くらいひたすらお客さんに話を聞いていると「お客さんはなにに困っているのかな?」「どうしたらうれしいだろう?」「損か得かで言うと、得なんだけどうれしくないこと、損なんだけどうれしいこともあるんだな」みたいな。わかりやすい言葉で言えば、インサイトみたいなものがだんだん見えてきたんです。