聴力がない人を助ける人工内耳の科学

オリビア・ゴードン氏:私たちのファンであるキャプテンニックがある質問をしました。「人工内耳では世界はどう聞こえるか」というものです。そしてこれは非常に興味深く人気のある質問になりました。なぜなら人工内耳をつけていない人にとってそれは未知の世界だからです。

人工内耳は耳の聞こえない人や難聴の人にとって、話を聞いて理解するための1つのツールです。どう聞こえるかを聞くためには、集中してマイクに近寄らなければいけないと思うかもしれません。しかし実際は何も聞こえてきません。なぜなら人工内耳は音を出さないからです。ややこしいですよね。説明しましょう。

聞き取りを助ける装置は2つあります。人工内耳と補聴器です。補聴器はいわば小さなアンプとスピーカーです。聴力に問題がない人が聞こえるように聞こえます。これが機能するためには、ある程度の聴覚がなければいけません。

人工内耳は耳の大部分をバイパスすることによって、全く耳の聞こえない人でも話が聞こえるようになります。それは音の振動ではなく電流を流しています。音がしない理由がこれです。

人工内耳は電極アレイにマイク、プロセッサー、受信機がついたものです。電極は蝸牛に外科手術で埋め込まれます。蝸牛は音の振動を電気信号に変換する内部の耳の装置で、聴神経に送られます。空洞の渦巻きのチューブでカタツムリのような形にも見えます。有毛細胞という特別な細胞が備わっており、これが音を感知した時に神経信号を起動させるのです。

この有毛細胞がなかったり壊れたりすると、どんなに大声で話したとしても聞くことはできません。つまり人工内耳は有毛細胞の代わりのような役割を果たすのです。

電極アレイのインプラントで蝸牛を直接刺激します。マイクが音を取ってプロセッサーに送り、データにして約24通りのチャンネルに変換するのです。それぞれがそれぞれの周波数に対応しています。

それぞれのチャンネルには電極があり、蝸牛の特定の部分を刺激します。これによって聞こえるものは、信号を脳が変換したものなのです。しかしこれらの音はマイクが拾った音と同じというわけではありません。

完全な蝸牛には何千という有毛細胞があります。これによって耳が聞こえる人はあらゆる周波を聞き取れます。しかし人工内耳には約24しかないため、脳が聞き取りに慣れるための訓練が不可欠です。完全な代価とはなりえませんが、壊れかけのしゃべるおもちゃのように聞こえるといったところでしょうか。

人工内耳は人間の会話に特化しています。しかし世界に存在する複雑で多様な音を完全に感知できるには至っていません。

NPRに説明したある人工内耳利用者によると、ピッチと音色の聞き取りにかなり苦戦するそうです。それが原因で、中国語のようなトーンが特徴的な言語や、人混みの中の特定の話し声の聞き取りはかなり難しくなります。

科学者は人工内耳をよりクリアにしようとしています。しかし現段階では、最高品質の人工内耳をもってしても、実際の音とはかなり違うという状況です。しかし必要な人からすると、音が少し変でも、話を聞くためのツールなのです。