どうやって「好きか嫌いか」を振り分けているの?

井上皓史氏(以下、井上):はい、ありがとうございます。そうしたら、後ろの男性の方。

質問者2:おはようございます、○○と申します。

尾原和啓氏(以下、尾原):○○さん、よろしくお願いします。

質問者2:よろしくお願いします。先ほどの最後の返答に近いものになるかと思うんですけれども。尾原さん本のなかで、震災のなかで議事録をとった経験がご自身にとって「好き」の原体験になったというお話がすごく印象的だったんですけれども。

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人生、いろんな生きてきた経験があるなかで、働き続けてたら「これが好きがどうかがわからない」というような、案外好きかどうかの取捨選択のほうが難しいんじゃないかな、というふうに思ったんですけど。

いろんな経験があるなかで、好きか嫌いかを振り分けていくために、尾原さんが大切にされていらっしゃることや、こんな本がおすすめだよ、ということがあったら教えていただきたいです。

尾原:はい。好きかどうかとか、自分がそれを愛してやまないのかどうかって、一番簡単なのは、それをやってる間の時間を忘れるかどうか、です。

井上:没頭というところですかね。

尾原:没頭の手前なんですよ。一橋大学の楠木健さんが言っているんですけれども、彼は「努力の娯楽化」という言い方をしています。

井上:おぉ、努力の娯楽化。

尾原:人って、好きなことをやっているときに、苦痛を感じることも含めて楽しいと思ってやっているはずなんですよ。なにか努力をするときに「つらい、やめたい」と思っていたら、それは好きじゃないんですよ。

だから、そういうのはとっととやめて、別のことをやったほうがいい。ないしは、それは「ライスワークだ」と割り切って、いかに効率よく、最低限の努力で、お客さんの求めるものをきっちりやって、それでお金もらうか。

そのなかで、自分が努力を努力と感じないような場所を少しずつ探していったらいいんですよ。

井上:なるほど。僕も昨日、Peatix(ピーティックス)でみなさんにリマインドメールしたんですけれども。好きでやってますから。普通、みんなにメール送るのは面倒くさいじゃないですか。苦しいと思ってやってないのが、これは好きってことなんですかね、やっぱり。

尾原:はい。

ストレングスファインダーの「強み」がヒントになる

尾原:実は没頭の特徴って、やってる途中には幸福感ってあんまりないんですよ。どちらかというと、気付いたら「あっ、時間経ってた」と。で、あとからじわっと「あ~楽しかったな」なんですよ。

井上:時間を忘れるっていうことですね。

尾原:うん。みなさんのなかにも、絶対にそういう経験ってあるはずなんですよ。それは自分の大切にしているお客さんに対して、資料をつくることかもしれないし、人によっては社内でいろいろ揉めてることを調整することかもしれないし。

そういう、時間を忘れるところを探す。それをやるためには、いろんなことをやってみる。もし、多少ヒントがあるとすると、本のなかで挙げたストレングスファインダーというやつの「強み」。気付いたら時間を忘れてるということが、そのストレングスファインダーの強みを発動してるときに、どうも多いということが統計的に言われてるので。

そのなかに見つけやすい。だから僕の場合は、たまたま「着想」が、ストレングスファインダーでずーーーっと、1位なんですよ。

井上:へえ。ストレングスファインダーって、けっこう変わるという話も聞きますけれども。

尾原:ああ、だから、4番目とか5番目は入れ替わったりするんですけど。着想とコミュニケーションと自己確信性だけずーっと残ってて。僕の場合、たまたま着想というのが、僕にとって時間を忘れる強みなんだって気付けたのが、議事録だったんですよね。

人が言ってることをまとめているようで、実は、その場で言ってる言葉よりわかりやすい言葉でまとめてあげるっていう。

井上:その強みであったり、好きなことを探す。すぐに好きなことは見つからないかもしれないので、そこのPDCAというか。どんどん新しいことにチャレンジして「これ好きかもしれない」みたいなものを探す時間を、ライスワーク以外でつくるというのが、大事かもしれないですね。

ライスワークでも求められることをきっちりやっていると自由度が増す

尾原:そうですね。あとはもう 1個あえて言うとすると、ライスワークも、求められることをきっちりやりきると、だんだんやり方って任せられるようになるわけですよ。だから最初、僕も議事録とかいい加減な書き方だったので、人に聞いて回ったりしていました。やっぱりクオリティを上げる努力っているわけですよね。

井上:はい。

尾原:でも、そのクオリティが担保してくると、議事録を一人ひとりの発言の進行毎に書いてなくて僕がサマリーしたものを提供しても、誰も文句を言わなくなるわけです。つまり、お客さんに対して求められるものをきっちりやっていくと、自由度が増えるんですよ。

そうすると、その自由度のなかに、さりげなく「ここが議論されてなかったですよね」みたいなことを混ぜてみよう、とか。

井上:自分の色を出してみたりとか。

尾原:そう。「議事録役ですけど、僭越ながら」と言って。「今この議論ってすごくいい議論をしてるんですけど。この1個前に議論してた話から少しズレ始めてるんで、この議論をこのぐらいにとめて。

こっちにステップバックしませんか?」と言っても、「あ、議事録役として、あいつこんなにいい議事録してくれてるから、それはそうだね」と。まわりがそう思ってくれるから自分の強みとか自分の色を乗っけやすくできるんですよ。

井上:そうやって、一つひとつ信頼を重ねていくことが、すごく大事だと思いました。(質問者に向かって)大丈夫ですか?

質問者2:はい、ありがとうございました。

教育で大事なのは、コンフォートゾーンから抜け出せる子に育てること

井上:そしたら最後。はい、早かった……。

質問者3:今日はありがとうございました、〇〇と申します。栃木県足利市という地方で、学習塾をしておりまして。

尾原:はい、○○さん。……え!?︎ 今日はわざわざこのために来てくれてるの?

質問者3:はい、暇だったんで(笑)。

尾原:えっ、だって前泊でしょ!? 

質問者3:学習塾をやっておりまして。学習とフィジカルと、あと体験という、3つの分野から総合教育を提供しています。僕、2児の父でもあるんですが。もし尾原さんが、今後子どもに教育をしていく場合、どういうゴール設定をしてそれを目指してやっていくのでしょうか。参考にさせていただきたいと思って、今日は参加させていただきました。

尾原:はい。2つですね。

質問者3:はい。

尾原:僕自身も、いろんな教育を見てきてますけど。やっぱり変化する時代に大事なことって1個で。自分のコンフォートゾーン(注:不安を感じることなく過ごせる環境の領域)から抜け出すことを楽しめる人にどうやってなれるか。そこが、教育のなかでけっこう大事だと言われるんですね。

コンフォートゾーンって何かというと、当たり前だけど、今、自分の生活が、少なくとも安心、安全な環境だったら変わらないほうがいいに決まってるわけですよ。ヌクヌクと暮らせるから。まわりにいい仲間がいて、美味しいご飯を食べられて。

でも世の中、変化するから。変化するときって、自分が変化しないことが一番のリスクなんですよね。だけど自分のコンフォートゾーンにとどまっていたほうが、今は安心だから自分が変化したくなくなっちゃう。

このバランスが大事で、今の教育のなかだと、コンフォートゾーンを抜け出すことを楽しめる子どもたちにどうやってなれるか、ということが大事なんです。

それをやるためには2つなんですよね。1つはさっきの没頭の話と一緒です。自分がそれ好きだから、気付いたら世間と違うことしてたけど、ぜんぜん気付かずに、「あれ? 気付いたらコンフォートゾーン抜け出してたな」って。

井上:没頭型ですね。

絶対的安心感を子どもにもたせてあげる周囲の姿勢が大事

尾原:あともう1つは、まわりとの繋がりのなかでコンフォートゾーンを抜け出そうが何しようが「君は君だからいいんだよ」「人と違うことをやろうが新しいことをやってようが、あなたがコンフォートゾーンを一歩抜け出したことを誇りに思うよ」と、むしろまわりが言えるかどうか。

子どもを褒める言葉で、僕が一番好きなのが「Be proud of your stepping out of your comfort zone」なんです。だから大事なことって、そのコンフォートゾーンを一歩抜け出すこともそうだけど、褒めるときに一歩抜け出したという行為を褒めるのではなくて、proud ofなんですよ。「あなたの存在自体がすごいね」だし。

あともう1個はproudなんですね。proudって、あなたと私というものを離れた存在として「あなたがすごいね」じゃなくて。私とあなたは常に繋がっていて、そのあなたのことを自分のように思うから「誇らしい」なんですよね。

コンフォートゾーンから抜け出したとしても、自分とあなたは繋がっている存在で、あなたが外に抜け出そうとしてることを誇らしく思える、と。そういうふうに、いかに子どもに絶対的安心感をもたせてあげるか。それは、Googleでいう絶対的心理安全性みたいな話に繋がってくる。

だからあの辺の話って、子どもの教育論とあまり変わらないんですよ。

井上:それが一番の愛の伝え方だったりするかもしれないですね。

尾原:そうそう。ひと言で言っちゃと陳腐になるんだけど「あなたが何をしてても、あなたはあなただから。あなたは私の一部だから」みたいな感じになるんですけど。こういうことを、子どもが言葉で聞かなくても「それが当たり前でしょ?」と思って生き生きと変化を楽しめる存在にできるか。

子どもはもともと好奇心が満載だから。好奇心という言葉って「奇妙が好き」って書くわけじゃないですか。だから人間は、もともとコンフォートゾーンを抜け出す才能があるんですよ。だけどそれを殺してるのは社会だから。

井上:そのなかで、好きを見つけるであったりとか、安全、安心から飛び出すみたいなところ。

尾原:それをまわりが補強してあげる。

井上:今日、朝渋から行動に移していただきたいな、というふうに思います。(質問者に向かって)大丈夫ですかね?

質問者3:ありがとうございます。

どうやって「4つの円」を広げていくかを自覚的に考えることが大事

井上:はい、ありがとうございます。もう時間があっという間で、もう9時前ということで。質問はこのあとまだロボットは残っていただけるということなので(笑)、適宜質問いただけたらと思うんですけど。

最後に尾原さん、今日の朝渋に来ている70人に向けてメッセージをいただけますでしょうか?

尾原:そうですね。さっき言ったように、すでにここに来ているという時点でみなさん、もうモチベーションある人たちだから。どちらかというと、もっと打算的になっていいと思うんですよ。

どうやって「4つの円」を自覚的に広げていくか。それは人によっては、得意というところから広げていくかもしれないし、人によってはこの朝渋みたいに、人がまだ見つけてないけど世の中が求めてる場所を見つけることかもしれないし。

井上さんは「朝、渋谷で勉強できたらいいじゃん」という、まだ誰も気付いていないワールドニードに気付いたわけですよね。

井上:はい。

尾原:だからそういうふうに、まだ人が気付いてない半径5メートルの獣道を見つけるところからはじめてもいいし。

ちゃんと、Paid for、稼げるっていうところで信頼感を獲得することで自由度をあげてく。その自由度をあげてくなかで自分の好きとの交点を増やしていくというやり方でもいいし。

ないしは僕の中学、高校生時代みたいに、「とにかく俺はLoveしかねぇんだ」と。だからもう中学のときは、1年ぐらいは、ほぼ誰も僕に喋りかけてくれないっていう時代もあったんですけど。僕、そんなの気にならないわけですよ。好きなことしかやってないから。そういう、LoveとGoodだけをとにかく磨く、引きこもるっていうのもあるし。

だから大事なことは、自分の「4つの円」をどうやって自覚的に大きくするかを考える、ということなんですよね。がんばって井上さんみたいに打算的に「世の中からいい人になりましょう」と(笑)。

井上:はは(笑)。

尾原:ということです。

井上:はい、ありがとうございます。今日はバリから、尾原さんと対談をさせていただきました。ありがとうございました!

(会場拍手)