保毛尾田保毛男の炎上問題

乙君氏(以下、乙君):とんねるず石橋貴明「保毛尾田保毛男」猛抗議。まさかの番組終了からの引退も? みたいなニュースがあるんですけれども。先日放送された「とんねるずのみなさんのおかげでした30周年記念スペシャル」ということで……30周年!? 

山田玲司氏(以下、山田):うん。

しみちゃん氏(以下、しみちゃん):すごいね。

乙君:すごいな。昔、だいぶ話題になった、人気になったキャラクター「保毛尾田保毛男」というキャラクターがいまして。

それが、男性の同性愛者を揶揄しているとの批判があり、ネット上でも物議をかもしていると。それを受け、フジテレビの社長が、ごめんなさいと。時代はもう違ったのに、不快な思いをされた方には大変申し訳ないと。

山田:謝ったと。

乙君:謝ったり、とか、そのLGBTとかリベラル系芸能人がBPOに働きかけるとか。そういうので、まあワーッと、炎上したっていうことなんですけれども。

山田:何か言いたいことあるらしいじゃないですか、奥野さん。

乙君:いや、俺は後半に。

山田:保毛尾田保毛男論を?

乙君:保毛尾田保毛男論っていうか、抗議するやつは、ちょっと待てと。言う派なんですよ。

山田:それじゃあ、後半ちょっとやりますか。

乙君:後半に、うん。

とんねるずが起こした革命

山田:俺ね、このコメントでね、みんなも言ってくれてますけども、今さらだって話もありまして。たしかに今さらだっていうのと(笑)。とんねるずってまだいたんだみたいな(笑)。

そんな空気をニコ生で、この話をするのは何かって思うんだけど。とんねるずっていう革命についてちょと話したいんですよ。

乙君:はい。

山田:とんねるずっていうのが、何がおもしろいかっていうと、この人たちって、実を言うとお笑いの歴史上の革命家なんですよ。俺はそれをリアルタイムで見てたから、とてもおもしろかった。

だから、浅草の演芸を(明石家)さんまが倒した瞬間というのも、すごいおもしろかったんだけど。欽ちゃん劇場を、明石家さんまが倒して『ひょうきん族』時代になるんだけど。

そのあとに、ひょうきん族を倒すのがとんねるずなんだよね。それは、すごくざっくり言うと、今までの演芸、プロの演芸というものから、それをぶっ潰すアマチュアっていう。プロ対アマチュアの戦いになっていくっていう。

そしてプロの逆襲、M-1(グランプリ)がスタートしてっていう、そしてカオス、混沌の時代がやってくるっていうのがあって。

『笑っていいとも!』の終わりでお笑いみたいなもの、演芸的なものがは、ある種終わるんだけど。おもしろかったのが、だから、そもそもが、芸能プロっていうのは、進駐軍のジャズ。

ジャズバンドからスタートして、みんなプロフェッショナルなんだよ。だから、ドリフターズはドラム叩けるわけで。フルバンドできるんだよ。

乙君:一芸が必ずあって。

山田:みんな、だからできる人がおちゃらけてるっていうのがあって。しかも演芸のほうからいくと、落語家からで弟子について、切磋琢磨してようやく得られるのがテレビだ。みたいなところはあったんだけど。

それがいきなり、部室で悪ふざけしているやつが、いきなり「お笑いスター誕生」で入ってきたっていう。その1つのクーデターがとんねるずっていうやつだった。

それから30年経って、いよいよその時代が終わろうとしているっていう背景がおもしろいと。なぜかっていうと、その素人時代っていうものにも、変化があったと。

2014年の年末に、いいとも!」が終わるときにちょっと話したんだけど。「いいとも!」が終わるときの最終回に出てきたメンツが、実はスクールカーストの上から下に流れて行ったっていう話をしたことがあるじゃん。

しみちゃん:はい。

乙君:あー! してましたね。

とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンの世界観

山田:そう。で、これでおもしろいのが、今回初めてここでやりますけども。論壇ではね。ようするに、とんねるずっていうのは、ジョックス(注:アメリカで言う「人気者の男性」)で、スクールカーストの頂点なんだよ。体育会系で、おもしろいやつ。だからこういうやつらっていうのは、ようするに前提としていじめ芸になるんだよ。

乙君:一番上、ライオンだから。

山田:一番上だから。じゃれるだけでもまわりはもうボロボロ。ただ時代的にはテンションがバブルで高い時代だったから。「ついて行きますよ」って人はいっぱいいたの。で、主にここについて行ったのが、今の団塊ジュニアなんだよ。

乙君:ああー。

山田:今の40代は、そう。みんな、とんねるずについて行って、「兄さん、タカさん!」みたいな。ようするに舎弟っていう。「俺らついて行きますよ。だから女紹介してくださいよ!」みたいな。

乙君:(笑)。

山田:「お前らの気持ちはよーくわかった!」。

しみちゃん:わあ、懐かしい(笑)。

山田:これ、こういうノリがとんねるずだったわけだよ。要するに悪ふざけなんだよ。でもこの人たちと、ダウンタウンはちょっと違うんだよ。この人たち(とんねるず)は、学校だし学校の部室だし部活なんだけど、ダウンタウンは、アウトサイダーなんだよ。学校のなかではなく、本物なんだよ、これ。どちらかと言うと、戦後焼け野原のなかで、ワイルドな少年たちのなかにいた番長、みたいな。

それがダウンタウンで、ここはちょっと差異が。

乙君:愚連隊ってことね。

山田:愚連隊。で、そこで特攻のやつと、知的な参謀のやつに分かれている。だから、突っ込んで行く特攻のやつが浜ちゃんみたいな。参謀が松本っていうふうにわかれてるのがダウンタウンで、まさに下町っていうか。感じなんだけどね。

このあとに、この1個歳の若い、ウッチャンナンチャン登場するんだけど。これは、学校ではなく専門学校なんだよ。

乙君・しみちゃん:(笑)。 

山田:ここがおもしろくって。専門学校に光が当たる時代だったの。それは米米CLUBもそうだったんだよ。だから、時代が豊かになってくと、いろんなところにスポットが当たっていくと……。

乙君:なるほど、裾野が広がったから。

山田:広がってくと、ウッチャンナンチャンは専門学校、レペゼン専門学校で現れるわけ。こういう流れになってきたな、と思ったら、こんどはナイナイ(ナインティナイン)が出てくるんだよ。これは何でかって言ったら、レギュラーになれないサッカー部なんだよな。

乙君:それはこっち(とんねるず)もいっしょですからね。

山田:実を言うと、ここ(とんねるず)から直系なの。

乙君:あー!

山田:ただし、ナイナイはレペゼン吉本なんで。こいつらは演芸の世界に1回入るんだよ。だから、実はこっち、AtoZっていうすごい、インディーズのところからはじまるとんねるずとはぜんぜん違うわけ。

乙君:養成所ですからね、うん。

秋元康という参謀を得た、とんねるず

山田:この人(ナインティナイン)たちは、大きなところに守られて生きていくわけ。だけど、とんねるずっていうのは、大きなところに守られない。

乙君:なるほどねー。

山田:そこで彼らは参謀が必要だったんだよ。そこで見つけたのが、やすす(秋元康)なんだよ。だから、非常に戦略的な、荀彧(注:『三国志』の名参謀)を手にするわけだよ。

乙君:だいぶ肥えた荀彧ですね。

山田:そこの荀彧が、またおもしろいことに、元ハガキ職人で。

乙君:じゃあそっちも、一応素人から……。

山田:ラジオの人間で、ラジオと言えば、何て言うの、1対1の関係。もっとも、視聴者としゃべる距離が近い世界にいたんで、こいつがジョックスなのをコントロールすることができたんだよ。

なぜかっていうと、この人たちジョックスだから、離れていこうとするじゃん。でも、やすすがいたからとまってたんだよね。だから「みなさんのおかげでした」って下に行けってなるわけ。この人たちの芸能界で生き残るためのスキル。ものすごく頑張るんだよ。

乙君:美空ひばり……。

山田:その通りです。それが最大のメソッドだったんです。だからあれ、美空ひばりっていう女王をまず、掴んでしまって、お嬢と呼ぶことによって、まわりに敵がいなくなる。だから武士なの、この人たち。だから今の人みんな、この人むかつくんだよ(笑)。

乙君:そんなことないですよ!

山田:なぜかっていうと。

乙君:うん。

スクールカースト最底辺の逆襲が始まる

山田:そのあとに出てくるのが爆笑問題なんです。爆笑問題と言えば、スクールカースト最底辺なわけ。

(一同笑)

山田:学校で誰も相手にしてくれないやつが、「昨日たけし見た」って言ってはじまんのが……。だって、太田光は誰も友達いなかったわけ。そんな太田を受け入れる田中っていうのがいたんで成立するっていう。のが、日芸レペゼンで……お前(乙君)の先輩じゃないかよ。

乙君:そうそう。

山田:そうだよな? だからそっからはじまるわけ。ここのあたりから、「上じゃねえ」っていうラインの攻防がはじまって、2000年代になると逆転劇が起こる。

乙君:ああ……。

山田:こっち側(底辺)の方が人が多いぞっていうのがわかってきて。そうすると、アウトデラックス的な人たちが現れる。

そして一番典型的なのが南キャン(南海キャンディーズ)の山ちゃんだと思うんだよ。山里良太っていうのは、プロレスとして、スクールカーストの最低限を、プロレスとして演じるという芸人が登場するわけです。

乙君:なるほどね!

山田:本当はそうじゃない。だけど、お前たちと一緒だよ! っていうのをやるわけだよね。そうすると、今までのちょっと上の世代はどうなるかって言うと、アメトーク芸人でいうここらへんの、漠然としたところから、中学のときにいけてないとかいうところが力づくっていう。どうしてもこうなると、とんねるずいなくなるわけだよね。

なんでかっていうと、こいつ(とんねるず)のせいで学校に行けなかったっていう、みんな憎悪があるんだよ。

こいつについて行けるエネルギーがなくなった時代に、こいつが調子こいてたら、一番叩きたいのはこの人たち。とんねるずが悪いんじゃないんだよ。とんねるずみたいなやつが、学校にいたんだよ。そのせいで学校に行けなくなった人の方が多い。

そのせいで、とんねるずっていうのは、これから居場所がなくなるんだけど。

最底辺のやつらの希望はどこにいったか

山田:人間はそもそも、そうやって「力の強いものが好きだ」っていう原理はどうしてもあるんだよ。そしてできないやつは、笑ってもいいんだっていう流れがあるんですよ。本質的に。どこに行ったか。

乙君:うん、どこに行ったんですか?

山田:ひろゆきなんです。

乙君:ひろゆき?

山田:ひろゆき、ホリエモンのラインにこっちのメンタリティがいくんだけど。あいつらがまさに40代で団塊ジュニアなの。だから、ホリエモンはとんねるずが大好きなんだよ。

ここが直系として、いまいる。そして彼らが何をやってるかっていうと、学校でだけ強者だったやつが、社会に出てでっかい組織に入らないと弱者になるってことを知っちゃうんだよ。

どうするかっていうと、イノベーターになるわけだよ。ジョブズなんだよ。そうやって出て行ったやつらの反乱っていうものが、みんなどっか好きで。そこに希望をもってるから、とんねるずに希望をもった人たちは、今、そっち側。

ようするにベンチャーの企業に、今希望を見出してるというのがあって。実は強者は、お笑いではなく、そっち側に移っちゃったと。ホリエモン、ひろゆき側に移ってしまったっていうのが、私の読みですね。

どうですか。はい、次いきましょうか。44分で(笑)。

乙君:ちょっと、おもしろいんで。あとでもう1回、話しましょう。

山田:うん。後半話しましょう、もう44分になっちゃった。(モニターに)そう、ビジネスっていう意味です。そうです。