製造業の生産管理手法をマーケティングにあてはめる

三木雄信氏(以下、三木):結局ソフトバンクがやっていることは、「すごいPDCA」と「数値化」です。製造業の生産管理手法をマーケティングやオペレーションにあてはめたら、ということだと思うんですね。

例えば、トヨタ生産方式はもちろん、世界に冠たる生産方式としてそれぞれのプロセスで歩留まりを見ていて。逆算式に看板で、後ろの工程から前の工程へ指示がいく。ゴールから逆算してやっていくやり方なんですね。

これは、先ほど言った、孫社長の目標を達成する方法と一緒ですね。実はそれがプロセスごとにも効果あるんです。先ほどの例で言うと、月に3件契約を取るというずっと手前の目標として、1日5分3人と話すというのを一番最初の工程の目標として設定したわけです。

実は最近、『すごいPDCA』のAmazonのレビューを読むんです。へこむこともあったりするんですよ。「こいつは本当はたいしたことない」とか書かれていて、ガーンとなることもあるわけなんですけど。

そこに書かれていてなるほどな、と思ったのが、最近アメリカでスタートアップを成功させる方法として、「リーンスタートアップ」というのが提唱されています。リーンスタートアップは、アメリカでは非常に普及していて、ベンチャー企業がどんどん成長する方法として語られているわけなんですが。

実は、リーン生産方式というのが、リーンスタートアップの前にあるんです。リーンスタートアップの前がリーン生産方式で、リーン生産方式のそのまた前というのが、実はBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)と言われていたものです。さらにBPRをもっとさかのぼれば、トヨタ生産方式を現場の知恵ではなくてシステムでやりきっちゃおう、と。これがBPRとかリーン生産方式だったわけです。

そういう意味では、ありとあらゆることに使えるということなんですね。いわゆる製造業や事業立ち上げ期のスタートアップには、普通に考えるとまるっきり関係ないじゃない、と思われます。

しかし本当は、本質は同じなんだ、ということですね。それは、先ほど話した、ソフトバンクで言うとゴールを明確にする・数値化する・PDCAをまわす。この3つの要素が、ありとあらゆることに共通する、1つの成功法則みたいなものなのかな、と思っていたりします。

ここから少しだけ数値化をお話すると、数値は与えられるものではなくて、自分で取りにいくものだと思うんです。とくに、今日ここにおられる方はマーケターの方だと思うんですけど。今、アドテクのツールをはじめとして、いろいろなツールがあると思うんですね。

代理店もいろいろ持ってくると思います。でも、1個1個のツールやサービスの説明って、めっちゃ詳しく持ってくると思うんです。それはもともと標準機能でついているからです。でもそれが、自社のほかの、例えばイベントでもいいですけど。そういうものも含めて、統合的に数値として、最後の売上まで一貫して管理できているかというと、そうじゃないところが非常に多いと思ったんです。

これは、けっこう日本特有のところがあります。海外だと、基本的にツール自体をそれぞれの会社のマーケターの人たちが自分でいじっていたりするわけです。日本の場合は、代理店に出しちゃいますから。さらに日本の場合はとくに、デジタルの代理店、いわゆる既存のメディアの電通みたいな代理店に分かれてたりします。

どんどん分かれて、それを統合する機能が実はあまりないままに、いろんな数字が1人歩きしていると思います。

ここにおられるような方は、非常に意識の高い方だと思われますので、そういう人こそが、いろいろなものを繋ぎ合わせて、車の生産で言うと最初の鉄鋼の板がきたところから、色がついて走って港まで行くまでのプロセスを全部管理できるようにするのが、たぶん一番重要なことなんじゃないかな、と思います。

数値化のファーストステップはプロセスに分けること

2つ目、数値化の目的は、とにかく数値化、数値管理で、結果論で「どうなんだ?」ということが非常に多いと思います。これは怒られるだけでしかなくて。そういう数値化ならしないほうがいいんじゃないか、と思ったりするぐらいです。

むしろ過去の数字じゃなくて、毎日走っているなかで、「自分はまっすぐ進んでいるかな?」「ちょっと速度が遅いかな?」とか。そういう速度を調整したり、方向を調整したりするのに役立つような数値化をしていかなければ、苦しくなるばっかりだろうな、と思います。

3つ目は、数値化のファーストステップはとにかくプロセスに分ける、ということですね。プロセスに分けるというのはどういうことか。

プロセスってそもそも何かというと、先ほど製造現場も一緒だというお話をした通り、あるプロセスというのは、インプットとアウトプットが定義されているはずなんですね。これに気を付けないと、会社のなかで定義されてないことがけっこうあります。

例えば、あんまり他社の製品を言うのもなんですが。Criteoを使われている方、すごい多いと思います。リターゲティングのサービスです。

あれって、そもそも刈り取りはできるけれども、クッキーというかリストというか、リーチというか。触っているユーザーに対してどのぐらいの率でどうなっているのかは完全にブラックボックスなんですね。

そういうことも含めて、きちんと自分で定義しなければ、ただただ出てきた数字を見て、数字でなにかやっているような気がする、となりがちです。そこをきちんと自分で定義して、インプットとアウトプットを管理するっていうことが非常に重要だ、ということですね。

結局、製造現場で見ているものは品質であったり、歩留まりだったりするわけです。ある工程で100入ったら60出て、40が不良品でした、ということ。どうなっていくのかというと、その不良率を下げて良品率を高めるのが、製造現場がやっている品質管理なわけです。

これは我々マーケティングをやる人間と同じなわけです。インプットとアウトプットを数字で表現して、その不良品をできるだけ下げて良品率を高めて、工程ごとには物価価値をできるだけ安くしていく。

買い方のプロセスも、アウトプットにくっつけていくという作業を、どう効率的にやっていくかということが重要なんだろうな、と思います。

プロセスを分けるというと、だいたい既存の事業でも昔からすごく分かれていたりするのに、デジタルのほうが急に新しいところとくっついたりして。どこがどう繋がっているのかわからないということもたくさんあります。

まったく新しい新規サービスの場合は、そもそも切れ目がないんです。入り組みすぎてしまっていて、どこが出入り口で、どこが入り口かもわからないということがあったりするんだと思うんですね。

ソフトバンクも、最初はめちゃくちゃ大混乱してたんですね。結局、入り口と出口をきちんと決めたあとに、そのあとまた切っていって、プロセスとして作っていくわけです。工場だとすぐわかりますよね。ここがタイヤをつけるところ、ここはハンドルをつけるところ、ここは色塗るところとか。わかるから、分かれるわけです。

でも、マーケティングやオペレーションの場合は、ある程度意図的にそこを決めこまなければ、なかなかわからないということがあります。

プロセスを分けると見えてくる“断崖”

決めこむ方法はいくつかあります。

1つは責任分界点。ある部門から、ある部門へ渡る。ある会社から第一事業者に変わるとか。そこが1つの切れ目なのは間違いないですね。原価をそこでチャージされる可能性は極めて高いからです。

そこまでの責任分界点で、「あなたがやっている付加価値はこういうもののはずだから、原価はこうですよ」「じゃあ1処理あたり、1アイテムあたり、1ユーザーあたり、こうですよ」と計算できるということですね。

2つ目は場所ですね。場所は具体的にレターを処理すると言われれば、当然そこで測定されるんですよ。そこは非常にわかりやすいですね。あともう1つは、1日単位でどのくらいコストが発生したかを管理できるような職場の場合は、1日という単位で処理をしていくということが、非常に重要だったりします。

これはみなさんも言われているかもしれません。場合によっては週とか月とか、日でもいいんですけど。群管理で、あるところに、ある10月1日に入ったお客さんが今、どう遷移しているかとかいうのは、実はそのときのキャンペーンであったり獲得状況によって、そのあとのプロセスの歩留まりもぜんぶ変わってくるので。

週群単位で管理をしていく、ということも必要だったりします。累積だけ見てるとわからなくなったりするので、そういう意味では細かく週群と考える場合もあるということです。

こうやってプロセスを分けると、だんだんやっているうちに、すごい断崖があるということがわかったんです。結局、品質管理をするところの測定ポイントというのは、工場でもそうなんですけど、めちゃくちゃ増やせばいいというものでもないんですよ。

結局、品質を管理するために、例えば抜き取り検査をして壊さなきゃいけない。電球とかもそうかもしれないですけど、壊さなきゃいけないというものだったら、その分コストがかかるのんで。あくまでも自分の管理したい品質のレベルと、品質管理のためのコストのバランスのなかで決まってくるものなわけです。

そういう意味では、断崖がなくて少しずつしか差がないっていうことは、あんまり管理しなくていいんですよ。断崖があるところこそ、そこがコストをあげたりする悪い原因だということなので。そこでもっと細かく見ましょうと。

例えば、このプロセスに分けて、断崖がまだあると思ったら、じゃあもう1回ここをブレイクダウンしたなかで見ましょう、ということでプロセスをもっと細かく分けたり、代理店別で分けたり、ということをしたりします。

実際ソフトバンクでやっていたのは、代理店がけっこうあったんですけど、申込書の最初に代理店コードをつけて、さらにキャンペーンコードをつけて、どういうマトリックスでやっても獲得した顧客はどのくらいのライフタイムバリューでどのくらいクレームを起こす人なのか、ということを全部管理していました。

それを見ながら、いろいろ代理店とキャンペーンの実行をしたり、そういうことをやっていました。

こうやって歩留まりを見ていくことが極めて大事で、イメージとして見れば、製造業で言われているような品質管理を1つ念頭に置いてもらえればいいのかな、と思います。

実行とプランが相互に依存しながらPDCAが回っていく

次は、こうやって数字で管理する枠組みを、まず作るわけです。これは最初から、ずっと網を張っておかないとわからないので、最初はめちゃくちゃなワーフクロー、めちゃくちゃなプロセスでまわっていたりします。代理店が持ってきているバラバラの資料を繋ぎ合わされないものだったとしても、なんとか繋ぎ合わせて。

完璧じゃないけど、とりあえず網をかけたという状態までいったら、そこからPDCAをまわしていくわけです。

まず最初、通常のPDCAだとPlanがあってDoがあって、CheckがあってActionがある。当然ですね、みなさんよくご存知のPDCAですね。ただ、実は私の会社も今公開準備をしていたりしていて、事業計画を証券会社にやかましく言われたりするんですけど。

そのPDCAの考え方だったら、まず計画は完璧なものがなければいけない。その完璧なものに合わせて、事業のどの要素もずれてはいけないという感じの管理を要求されてですね。

みなさんの会社も場合によってはそうかもしれないと思います。でも、そんな簡単にいくんだったら苦労しないですよね。世の中どんどん変わっていくし、競合あるしキャンペーンもできる。先ほど言ったように、ジェットコースターみたいな世の中でそんな硬直的だったら、むしろ達成できないですよ。

相手が何かの手を打ってきたからそれに対応するというように、打ち手を変えていかないといけません。デジタルのマーケティングも、みなさん入札単価の変化なんて月ごとに「なぜ起きてるかよくわかんないけど変わる」ということだってよくありますよね。

それにどう応えていくか、常にどう考えていくかという意味では、ソフトバンク的なイメージでいうと、まずは本当はDoからなんです。Doをたくさんやって、それを見ていくなかでどれがいいのかチェックしていくということをやっています。

アクションで直していきながら、結果をフィードバックしながら徐々に直していくということで、落とし所を探していく、という動的なものなんですよね。

プランがあってそれに従って実行があるのではなくて、実行とプランの間が相互に依存しながらぐるぐるPDCAが何回もまわりながら是正されていく、ということで正しい落とし所に落ちていくのが特徴だと思います。

先ほどお話したことと重複する部分もあるんですけど、この「すごいPDCA」の本質をもう1回お話しします。

「すごいPDCA」の本質

まずはPlanですね。これはソフトバンク流で言うと、とにかく大きな目標を立てる、ということだと思うんですね。ある日、孫社長に「三木。お前は普通の人がたいしたことを成し遂げずに一生が終わってしまうのなぜか知ってるか?」と言われました。「なんでしょうか?」と聞いたら「それは、求めるものをまず決めないからだ」と。「求めるものを決めて、そこにどういけばいいかを見れば自然とわかる」。

確かに私、富士山に登山したことがあるんですけど。富士山って、実際に晴れた日に下から見ると山小屋とかがはっきり見えるんですよね。「俺は7合目のなんとか小屋に、今日とにかく行けばいいんだ」というところがわかっていたら、けっこう登れたりするわけですよ。

それは、そこまで1日目に行っておけば、だいたい翌日ご来光を見て帰って来れる。標準的なプランをプロジェクトとしてわかっている。そのスケジュールにあわせてやっているから、富士山はけっこう高い山なのにみんな登れるわけですね。

これは人生でも、たぶん会社でも、もしかしたらマーケティングやオペレーションでも一緒かもしれません。ゴールが決まっていたら、そこから逆算していけば1つずつ登って行けるということだと思います。

それから、日次で立てる。先ほどの山田くんの例もそうです。結局、あんなに高い山に登ろうと思ってしまうと遭難しちゃうわけですから。毎日、「今日はここまでいこう」という、できる範囲で着実にやれることを積み上げていくことでゴールにいける、ということだと思います。

次にDoですね。ここで非常に協調したいことは、同時にたくさんやるということ。みなさん数字で管理するんだと言って、例えば「春のキャンペーンと夏のキャンペーンどっちが効果的だったんだ?」ということはあると思うんですね。

代理店の比較でもいいです。「ある代理店とある代理店、どっちがいいんだ?」と。すると、「これはたまたま春の季節変動があるからじゃないか」とか、「あの代理店最近、ちょっと業績がいいからな」とか。違う要素について言われたりして、結局どっちのキャンペーンがよかったのか、どっちの代理店がよかったのか、あまりわからなかったりするのが実態だと思うんですね。

数字ですごく管理しているんだけど、結局どっちにするかということは勘で「いいや、うちのキャンペーンで前と同じのでいこう」とて決めたりするのが実はよくあるパターンだと思います。

そういうことを避けるためには、一番わかりやすいのは同時にやることです。同時にやっていれば、いいか悪いかがはっきりわかるわけです。例えばクリエイティブでもそうですね。クリエイティブがいいか悪いかと議論してもやっぱりわからないんですよね。時期によるずれとか、いろいろな要素があってわからない。

とくにデジタルの代理店にお任せしているときは、クリエイティブでいいか悪いかでけっこう差がつくので、けっこう大きいはずなんですけど。

そういうことを超えるためには、同時にやること。その分手間とコストがかかりますけど、それでも規模が大きい会社であれば、十分解消できるんじゃないかなと思います。

とにかく目標と結果の違いをわかるようにする

次にCheckですね。これは、毎日とにかく目標と結果の違いをわかるようにするということが、非常に大事です。先ほどの山田くんの例なんですけど、今日勝ったか負けたかを、明快に認識するということですね。

実は、孫社長も毎日必ず、それをやっています。だいたい朝7時から夜10時ぐらいまでミーティングするんですね。すると、10時ぐらいに急に「もう俺帰る」「よし、見えてきたな!」と言って、すごい勢いで帰っちゃうんですけど。

あまり見えてきていないこともあったりするんですけど、とにかく毎日です。「よし、見えてきたな!」というので、1日の活動を総括しているんですよ。そうするとたぶん、もやもやしたことがなくて、家でぐっすり眠れるんだろうなと思います。

毎日見るというのは、結局長期的な目標があるわけです。ソフトバンクにいたっては、時価総額200兆円を30年で達成するという目標がありますから。そこから全部逆算していっているわけなんですけど、これを再度1日単位で、「今日はできた」ということを、日々確認しているわけですね。

これは結局、プロセスごとに管理するということです。山田くんの場合は、とりあえず最初のボトルネックだったところで、例えばアポを取れるようにたくさんお話をしようと話をしていたわけなんですけれども。

このプロセスの1個目のところで、「今日は本来計画がこれだけで、実績はこうでした」というものを、日々リアルタイムで見るということが非常に大事だと思います。

売上だけで見ていくと、例えば月末にならなければわからないということがあったりすると思うんですけど、結局、月末のアウトプットという歩留まりのなかで決まってくることなので。結局入り口なら入り口のところで、「このくらい生産があれば1ヶ月後にこのくらいアウトプットができる」ということは、本当はわかるわけですね。

これは製造業なら当然そういうことはわかるということなんですけど。マーケティングやオペレーションではわからなくなったりするわけなんですけど。

きちんと歩留まりのリードタイムが数値で管理できるようになれば、毎日その数字を見ていると「もう少しここにエンジンふかせたらいいな」ということは自然とわかって、16日以降に「今月もまた大変だ」ということは減るんじゃないかなと思います。

そして、Actionですね。Actionは、例えばある代理店が獲得日がかかりすぎているということであれば、そこの代理店に「獲得日がかかりすぎてますよ、ちょっと改善しましょうね」と数字を見ながら議論をするということになります。

クレームがすごい多いということであれば、(ソフトバンクは)当時クレームがすごかったんです。毎日モデムを配っていたので、極端なことを言うと、小学生にモデムを渡しちゃったとか、おばあさんに渡して、しかもわからないから駅に捨てちゃったとか、不思議な話はたくさんありました。

そういう話も、入ってきた情報を全部集計して、それがどこの代理店か紐づくように紙に書いてあって、それを集計して代理店に「あんたのとこ、今月このくらいクレームありましたよ」ということを全部フィードバックをして、日々改善を進めていきました。

この次に大事なのが、1個1個の方法だけではなくて、どこかに足きりがあるはずなんですよね。たぶん、一顧客あたりの獲得コストはみなさん決まってるはずです。いろいろなことを試すと、数がはけるけど高い獲得方法とか。すごく安価だけど数が取れないとか、いろいろなバランスがあると思うんですよね。

数量と価格のちょうどいいバランスで、期待している数量と期待している単価で取れる面積というものが、本当は事業計画上あるはずなんです。Planのところにあるはずなんですね。ただそこに一足でも行き着いてるかどうかわからないですけれども、そこでうまく獲得数量も達成しながら、獲得単価もいける足切りのラインをどこに引くか、ということやる。

それが先ほどから言っているPDCAのDとPの間で、行ったり来たりしながら、きちんとどう管理していくのか考えるということだと思います。

ゴールに向かっていくために必要な数字を自分で把握する

ソフトバンクの非常に強いところは、孫社長が「ビジネスプランを作れ!」と言うと、だいたい最初に3つは持ってくるわけです。上、中、下みたいなプランをみなさん持ってきますよね。そうすると、すごく怒られるんですよ。「なんだ、上中下だけか!」「1,000通り持ってこい!」と言われる。

言われたことがない事業担当者は誰もいないわけなんですけど。実際、1,000通りなんてきっと作れないと思うじゃないですか。結局どういうことになるかというと、事業をはじめてからもずっと作り続けるんですね。こういう結果が出てきたら、獲得日、実はもうちょっとかかるとか、そういうことを計画に盛り込んでいくうちにどんどん変わっていくわけです。

1,000通りという本当の意味は、たぶん可変的な変数をたくさん持って、時間の継続にあわせて作り続けろ、ぐらいの言い方ですね。

そういう意味では、いわゆる事業計画も動的なものであって、とにかく最初に決めてしまったら1年間一緒、ということでやっていけるぐらいだったら苦労しないわけですよね。そこをうまくバランスをとりながら、どうしても予算超過をするような場合は、予算がかかりますと言ってコンセンサスをとって会社として正しい落としどころを探していくということも必要かもしれないですけど。

そこをちゃんとやらないと、単にマーケティングが、「お前が悪いからだ」と言われて終わってしまうんです。ここに対して、数字できちんと説明できるということが非常に重要かな、と思います。

あともう1つはですね、6:3:1理論。たいしたことじゃないですけど。磨き上げる必要があるというところですね。

代理店やオペレーションで外にアウトソースして自分で管理できるようなもの。1社に丸投げしてるとだいたい、だんだんだれてくるんですね。正直怒られちゃいます。アウトソースは、最初は選りすぐりのプロジェクトマネージャーとかスーパーバイザーとか連れてきますけど、1年ぐらい経つと異動して、いまいちなやつになったりすることは、よくあることなので。

そういう意味では、6:3:1で6がメインのところ、3がサブのところ、1は新しくて、テクノロジーはいいんだけどよくわけがわからない。だけどなにかチャレンジさせたいところを入れたりしますね。

この6:3:1で基本的にはみんなで競争しながらやってもらう。万が一、1がこけても90パーセントは達成できるわけですね。それで、6と3のなかで競争してもらっていればそれはそれでいし、1が大成功したら、もしかしたら105パーセントとか110パーセントとか達成できたりすることもあるかもしれない。

そういうバランスをとる6:3:1理論なんですけど、非常にいいんじゃないかなと思います。これ以上たくさん増やすと管理コストがかかってしまうので。

磨き上げるということは、具体的に言うと、自分の会社のなかで小さな市場を持って、そこでいつもトライ&エラーをするということがすごく大事じゃないかなと思っています。

最後にお話をしたいことは、いわゆる数字の管理が今どうなっているかというと、トップダウンです。ひたすら上から数字が出てきて、なかなか国内市場も成長しないというなかで、「とにかく売上をあげるんだ」。みなさんもマーケターとして責任を負わされている方ばかりだと思います。そういうなかで、「外部を使っていろいろ数値を管理してるけどなんかいまいちわかんないな」と思われている方も多いと思います。

一番大事なことは、自分自身で、ゴールに向かっていくために必要な数字を自分で把握して、そこで自分で新しいトライ&エラーをやっていくことだと思うんですよね。Doをたくさんやっていく。

そうすると、今までとは違う、新しいアップサイドが見えてくる。同じことばかりやっていけば、どんどん選択肢は狭まっていって、息苦しくなっていくばかりですから。新しいチャレンジは必要なはずです。

そもそも、「会社に行くのがなんで楽しいのかな?」と考えると、例えば私は会社に行くのがめっちゃ楽しいんですよ。それは社長だからだと思われるかもしれない。社長はなぜ楽しいかと言うと、新しいチャレンジをどんどんやったりするから。それは楽しいわけなんです。

でも本当は、誰もが新しいチャレンジを1つやると、たぶん楽しめるんですよ。「今日もまた同じことか」と思うから楽しくないわけで。マーケティングは、今はデジタルでさまざまな新しいツールがあって、新しい展開が見える業界です。本当に月次でも新しいサービスが導入されている業界だと思います。

そういう意味では、みなさんが置かれている立場というのは、非常にチャレンジングで、きっとすごく楽しいことができると思うんです。その楽しいことを実現するために、逆に下から数字を追って、上やほかの部門に説明する。

「こういう新しいことをチャレンジしようよ。失敗してもこのくらいだから」ということを説得しながら、きちんとマーケティングできれば、きっとわくわくしてマーケティングすることができるんじゃないかなと思っています。

時間になりましたので、私の話はここまでで終わらせたいと思います。どうも、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)