“しくじり先生”として2年間を振り返る

片岡達也氏(以下、片岡):会場のみなさま、こんにちは。私、SOMPOシステムズの片岡達也と申します。本日非常に多くの方々にこの会場に席を運んでいただきまして、本当にありがとうございます。

本気で感動していまして、先ほどからヘッドマイクを付けて準備をしていたんですけれど、だんだんテンションが上がってくるのが自分でもすごくわかってですね(笑)。今日はぜひともみなさんとできるだけ一体感を持ちながら、私たちも楽しみながらお話をさせていただきたいなと思っています。

私はけっこう緊張しないほうなんですけど、今日はかなり緊張感を持って今やっています。緊張する人っていろいろな仕草が出たり、手に汗をかいたり、膝が震えたりする方がいらっしゃると思うんですけれども、私はあまり膝が震えるようなことはないので、少し前に立って話をさせていただきたいと思います。

緊張して膝が震えたり……私は大丈夫ですね? 震えてます?(笑)。

(会場笑)

早めに突っ込んでいただかないと、ずっと膝を動かしてしまうことになりますので(笑)。仕込みオッケーということで始めさせていただきたいと思います。

(会場笑)

今日の内容ですが、大きく5点ございます。一番みなさまにきちんと説明をしたいと思っているのは、我々SOMPOシステムズが取り組んできた2年間です。この振り返りをしたいと思いますので、みなさまが新しい気づきやなんらか考えていただくことを今日この会場からお持ち帰りいただければ、我々はすごく嬉しいなと思っております。

私たちは機能会社ということで、売上のデータや店舗の稼働数といった値動きの激しい数字はあまり持ち合わせていません。BIツールを用いて見える化に取り組んでいらっしゃる企業様は、比較的、事業会社様が多いのではないかと思います。

そんな我々機能会社が、なぜBIツールを使って見える化をしてきたかをお話しさせていただきます。非常に値動きが少ない、わりと固定的なデータを使いますけれども、その中でなにが見える化につながったのかをみなさんと共有させていただきたいと思います。

我々はIT会社ですので、できるだけ実装・検討も内製化をしてやっていこうというコンセプトで、2年前からウイングアークさんと話を進めてまいりました。そのときから、ぜひこういったフォーラムでSOMPOシステムズには機能会社としての実績を華々しく話してほしいと言っていただいたんですけれども、なかなかそうはいかなかったなというのがこの2年間の振り返りです。

今日はそういったことを踏まえながら、働き方改革への可能性やウイングアークさんへの期待を込めて、我々なりにみなさまにお伝えしたいことというのは「事例から学ぼう」。いわゆる“しくじり先生”としてしっかりみなさんに……我々が全部しくじっているわけではないんですけども、すごく苦労したことや地道にやってきたことをこのセッションで愚直にお話したいと思います。

ようやく「見える化」のスタート地点に

片岡:少し短い時間ですけれども、我々SOMPOシステムズのご紹介をさせてください。私たちは二度の合併およびシステム統合を経て、今現在約1,500名の社員およびそれを超える、非常に長くお付き合いのある信頼できるパートナーのみなさまに支えられております。

損保ジャパン日本興亜の合併から早3年、その当時とは違う新しい課題に直面している状況だと思います。我々SOMPOホールディングスが掲げるブランドスローガン「保険の先へ、挑む」、そして「より多くのお客様に安心・安全・健康、これに資するITサービスを提供する」。こういったことにチャレンジしている会社です。

それでは、私たちSOMPOシステムズがIT企業として悩んでいたところを少しお話ししたいと思っております。最近「VUCAの時代」(注:不確実性が高まる時代=Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字)なんて言葉を聞くようになりました。我々IT会社からすると、IT活用の多様化とこれを激変するようなスピード感、いろいろなものが出て行くといったことがすごく世の中に広まっているのかなと。

そんななかで、私もそうですけどもスピードアップ、「早くやっていこう」「早く展開していこう」「いつ出せるんだ?」とみなさんの会社の中でも囁かれることが多いのかなと思います。

「この場に来てまたスピードアップという単語を聞くのも嫌だな」と思うんでしょうけれども、私もその1人です。会社に戻りますと、「いつできるの?」「早くやろう」という単語がすごく多くなってきていると実感しているところです。

そして私たちSOMPOシステムズが期待を込められているなかで、どんなことを実現していこうかと考えた大きなポイントとしては、「人の配置を適正に」。これがスピードにつながっていくのではないかということで、最適にこれを実現するためにITリソースや人を見える化していく必要性がある。これが私たち機能会社として抱えている大きな課題でございます。

人に関する私たちの事例を1つ申し上げますと、2015年にSOMPOシステムイノベーションズという会社を設立しました。この会社では私たちSOMPOシステムズの既存のシステムを刷新するプロジェクトを進めています。

このなかで私たちが直面した課題は、SOMPOシステムズから刷新プロジェクトに人を送り出さなければいけないということ。このあたりについては、こういう絵で表すと簡単なんですけれども、やはり業務量に応じた最適な人が移せているのかに関しては、現場のマネージャーとの思いの違いなどが私たちの課題でした。

そんな中で、私たちは見える化をしっかりと実現していこうと踏み込んでまいりました。私たちの課題はさまざまありますけれども、2015年に人と組織の成長・変革に向けた全社施策の推進を掲げまして、その中で本日ご紹介する、業務の見える化や人材の見える化に着手してきました。

目指してきた全体のロードマップですが、私たちなりの振り返りでは、インプット整備ということで見える化の前提となるのは「データをしっかりと集めること」。

そして2点目として、集めたデータをしっかりと見える化する土壌を作っていくこと。その先には見えてきた材料からどこを効率化すべきなのか、ファクトベースでものを見ていく。その先にようやく私たちが目指していく開発力強化という成果が出てくるのかなと思っております。

道半ばではありますけれども、私たちは今見える化のスタート地点にようやく立てたかなというところです。

それでは2年間の振り返りということで、現場を一生懸命リードして来た北岸テクニカルリーダーにバトンタッチしたいと思います。北岸さん、どうぞ。

業務の見える化の2つのポイント

北岸享氏(以下、北岸):それではここからは、私、北岸が当社での2年間を愚直に、まじめに、振り返ってまいりたいと思います。

私はこの2年間、BIの利活用、見える化の企画推進という業務に携わってきました。携わった中で、しくじりという話も先ほどありましたが、いろいろな経験をお話していきたいと思います。

ガクブルの話がさっきありましたけど、私は本当にガクブルでございますので、ちょっとそれを隠すため、一応偉そうに見えるようにこういう台上からお話をさせていただきたいと思います(笑)。

まずインプット整備というところでお話をさせていただきましたけれども、私たちは見える化の大前提として「業務の見える化」をやろうということで、その基幹になるデータの入れ方をまず見直す、整備するということに取り組んでおります。

ポイントは2つあります。1つは、わかりやすくする。この業務実績報告と言われるもののコード体系が非常に複雑で、それを簡素化しないことには立ち行かないだろうということで、「まず、わかりやすくしよう」と。

2つ目、入れやすくする。従来PPMツールと呼ばれるものを使って従業員一人ひとりが入れていたわけなんですけれども、やはり海外製品はなじみにくく、「使いづらい」「入れにくい」という怨嗟の声をもらっていたものですから、「じゃあ毎度おなじみのExcelだったら入れやすくなるよね」ということで、その取り組みをしております。

この2つの取り組みにかかった期間は6ヶ月です。これが長いか短いかは人によっていろいろあるかと思うんですけれども。この2つの取り組みは、たった2つですがいろいろな調整事、確認事というものは非常に時間がかかる。すなわちインプット整備にはこれだけの時間がかかるということをお伝えしたくて、この数字を出しています。

そういった2つの取り組みを続けて、ちょっと自慢話なんですけれども、私たちは「業務実績報告と言われるものを、当社の従業員だけではなく業務の委託先のすべての会社様から、契約内容を問わず全部出してください、お願いします」というところにこぎ着けています。

今や期間にして1年7ヶ月分、量にして65,000人月分の業務実績を貯め込むに至っています。先ほどの基調講演の中にも「データは財産です」というお話がありましたけれども、私たちもまさに財産だとこれから実感していくに至ります。

ここでみなさんにお聞きしてみたいんですけれども、すべての業務の委託先のみなさまにデータをいただくということを調整、依頼あるいは展開、準備するなど、いろいろな作業にかかった時間はどれくらいだと思われます? ここで聞くとなかなか手が挙がらないので答えを言ってしまいますね。

1年かかっています。当初は6ヶ月くらいでやるつもりだったんですけれども、諸般の事情により延ばさざるを得なくなり、いろいろ調整した結果、1年という時間をかけてようやくこれだけのデータを貯められる端緒についたということをお話ししておきたいと思います。

なぜMotionBoardに決めたのか

北岸:インプット整備と並行して、アウトプット整備というフェーズに入ってまいります。見える化のプラットフォームをどうしようかという話ですね。ここで、またガクブルしながら前に出たいと思うんですけど。

このなかでMotionBoardを入れようと思っていて今検討中、悩み中という方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

ポツポツと手が挙がりました。ご協力ありがとうございます。よかった、話がつながって。これから弊社がなぜMotionBoardに決めたかというお話をしていきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

やはり国産ならではの使い勝手の良さ、日本人の思考に合うようなものの作り方、使い方ができるので、MotionBoardという製品は非常によくできているなというのが実感でございます。

もう1回ご協力いただきたいんですけれども、「もともと海外のBIを入れていたんだけれども、なじめずにMotionBoardに切り替えた」というお客様はいらっしゃいますか?

……あ、これはなかったですね。国産がいいねという話の裏付けにしようと思ったんですけど、ちょっと目論見が外れちゃいました(笑)。

私たちは、導入を検討し始めて3ヶ月で導入を果たしております。社内でこういうものを入れるのは意外と時間がかかりますよね。ですけども、そういったスピード導入を果たした背景には、ウイングアークさんの熱意、後押しがあり、ここに至ったということを、この場を借りて熱く御礼を申し上げたいと思います。

ですので、先ほど手を挙げていただいたように「これから入れようか?」と考えている方がいらっしゃいましたけれども、ぜひウイングアークの営業部隊の方はじめみなさまは非常に熱意溢れる方たちですので、ぜひ使い倒してあげてほしいなと思います。

営業の方、嫌ですか?(笑)。そうですか(笑)。

スピード導入のあとの社内展開と仕組み構築

北岸:スピード導入を果たしたあと1~2ヶ月くらいの動きのお話をいたします。すぐに社内展開のスタートをかけました。IDを配り、研修を受けてもらいました。そこでダッシュボードは、簡単なものであれば30分もあればちゃんとできるという実感を得るにいたります。やはりMotionBoardの機能って強力ですね。

その勢いで展開したのはよかったんですけれども、残念ながら、ダッシュボードを社内展開しても使われる仕組みにはなっていませんでした。

少し例え話をしたいと思います。ここに紙袋があります。私がおもむろになにか取り出します。みかん。これは単純にみかんというものを見える化しただけです。みかんを見える化しただけで食べてみたいと思われる方、いらっしゃいます?

手が挙がらないですね。ただのみかんじゃ手は挙がらないんです。これが、無農薬で手間暇かけて育てられ、昨日我が家に届いたみかんです、かつ私の妹が今和歌山にいるんですけれども、旦那さんが丹精込めて作ったみかんだ、と言ったら、食べてみたい人はいらっしゃいます?

(会場挙手)

ありがとうございます。ぜひこの会が終わりましたら、私はこの紙袋をぶら下げてそのへんを歩いているので「そのみかんちょうだい」と声を掛けてもらえるとありがたいです。

今の例え話ならすっと入ってくるかなと思って話しました。平たく言うと、さっきのみかんじゃないですけど、「みかんです」と言っても誰にも使ってもらえないんですよ。

そのみかんに「無農薬です。私の妹の旦那が一生懸命作りました。採れたてです」というストーリーを加えてあげると、なにかしらアクションにつながると思うんですね。「食べたい」とか「買いたい」とか。こういうことが見える化には大事なことなんじゃないかと思います。

私たちはこの悩みにぶち当たり、6ヶ月以上の停滞期、冬の時代を迎えます。「冬来りなば春遠からじ」と申しますが、春を目指して少しずつ対策を打ってまいります。

「自分たちでどうしていいかわからない」「有効な見える化の仕組みをどう構築すればいいかわからない」という方がいらっしゃると思いますが、私たちは残念ながら自分たちで突破できませんでした。

どうしたかと申しますと、経験ある人に教えを請うしかないということで、お金をかき集めました。そのなけなしのお金で、ウイングアークさんのBIコンサルと言われる方々に来ていただいた次第でございます。今ここの前で聞いてもらっている方、後ろで聞いていただいている方、本当にお世話になりました。

このコンサルは精力的です。来るなりインタビュー責めなんです。インタビューをし、仮説を立て、仮設の立証をする、ということをぐるぐる、何回も私たちと一緒に真摯に向き合っていただいて、いろいろな会話、検討をしました。

この期間が3ヶ月。この3ヶ月で私たちは非常に大きな財産を得ます。なにかと申しますと、先ほど一番悩んでいた「BIとして見える化をやるとき、どう見せれば効果的ですか?」という悩みに答えていただきましたし、「MotionBoardとしてそれをやるとき、どう実装すればいいですか?」ということにも答えてもらいました。

さらに「MotionBoardでこういうことをやるには、あらかじめデータはこういうふうに作っておくと便利ですよ」と、この3つをまず教えていただきました。

再度強調しておきたいのが、ここにも出ているデータの価値の見方、見極め方というものでございます。

先ほどインタビュー責めにあったというお話をさせていただきましたが、何度も何度も聞かれるんですよ。

「北岸さん、ここにデータがあります。御社にとってこのデータの価値を考えてみたことがありますか? 私たちはここにこういう価値があると思います」。もう何回もですね。しまいには、そのコンサルさんの顔が夢に出てくるんですよ(笑)。嫁にあとで聞いたら、「もういい加減にしろ」と怒ってたよと。寝言で言っていたらしいです(笑)。

それくらい一生懸命いろいろなことを一緒に考えてくださる3ヶ月でした。この3ヶ月で見える化の仕組みとして、次にこういうものを世の中に出したら効果があるのではないかというプロトタイプまで作り終えました。

見える化の検討体制、ひとつの解

北岸:そのプロトタイプを引っさげながら、私たちは経営課題対策へ踏み込んでまいります。2016年4月頃のお話でございます。なにに踏み込んだかと申しますと、2017年度計画の見える化と言われるものでございます。

ここで「なんのこっちゃ?」と言われる方に簡単にご説明させていただきます。私たちはシステム開発あるいはシステムの保守ということをやってナンボの会社です。その開発保守を毎月「何人月でやりますか?」「何億円でやりますか?」ということを計画として立てて、年度が入ればその計画にしたがって執行していくことを生業にしている会社です。まさに計画と執行の精度をいかに高めていくかということを課題として持っていました。

その課題に踏み込みんで、10ヶ月という時間をかけ年度計画の見える化の仕組み構築までを行うことになります。

ここでお話ししておきたいのは2点です。なにかと申しますと、BIの推進、見える化の企画といったことをどういう体制でやっていくといいのか、悩まれている方がいらっしゃるかと思います。

1つの解として、私どものケースでいきますと、年度計画を計画策定する部門がちゃんとありまして、この部門の人がこれまでの反省や経験からしっかり物事をキャッチしたうえで、「見える化して計画にあたらなきゃだめだ」という問題意識をしっかり持っていただいたこと。その問題意識にしたがって見える化の構築をリードしていただいたこと。この2点が非常に大きかったと思います。

いろいろな進め方や体制はあるかと思うんですけれども、1つのスタイルとしてこういった3者体制、さらにそこにBIコンサルが加わるとよりよくなるということでご紹介をさせていただきました。

「三方良し」の見える化の企画

対策その3をお話しさせていただきます。冬の時代を迎えた私たちは、何とかMotionBoardを使ってもらえないかなといろいろ考えを巡らせます。それで打った対策がこちらです。

「リーダー職が業務を行っていくにあたって、なくてはならない資料をMotionBoardでしかない状態にしてしまえ」ということです。そのデータを持っていた人事部門を巻き込んで主体になってもらって、こんなことを行いました。

もともとリーダー職に必要な資料を人事部門がデータを切り出してメールでピュンピュン飛ばすということを毎月やっていたんですね。先ほどお話しした通り、MotionBoardにデータを一括でバーンと入れてしまい、そこで今までExcelなどで作っていた資料をダッシュボードに置き換えて、業務管理やモニタリングをやるということにしています。

これをやった結果、何がよかったかと言うと、当然のことながら人事部門の負荷軽減、業務効率化に寄与していますし、使ってもらうという意味でいくと、これでリーダー職もMotionBoardに慣れてくれました。

見える化を推進企画する私としては「使ってもらってよかった」ということで、私の生まれ故郷・滋賀をルーツとする近江商人の言葉を借りれば、まさに「三方良し」の状況を作り出したのがこの取り組みでございます。

見える化によって生まれた気づき

北岸:こういったアウトプット整備の取り組みを経まして、プロセス適用へとフェーズを上げてまいります。先ほどご説明した年度計画の見える化を展開します。

当初は計画ができた段階で計画値だけを見せていたんですけれども、2017年の5月の本格展開するに至り計画執行段階に入ってくると実績があがってきますので、計画と実績を並べ立てて見えるようにしています。

こうすると何が起きたかと言うと、現場の開発保守を預かっている部門のマネージャーやリーダー職が振り返ってくれたんですよね。「なんかいいのできたぞ」と。さらに、見てくれるようになっただけでなくて、データの精度というものに気づいてくれました。

並べ立てたことによって「あれ、これ計画の立て方いい加減なんじゃない?」「もっとちゃんと計画立てようよ」「俺たちもっと仕事してるはずだからちゃんと実績入れようよ」というところに気づき始めます。

さらに「せっかくいいダッシュボードで作ってくれたところ申し訳ないんだけれども、残念ながら現場のマネジメント単位に合ってない」「私たちはもう1つ細かいルールでやってるから、それでわかるようにしてくれ」というような要望も出てまいりました。

先ほど冬の時代というお話をさせていただきましたけれども、その冬の時代を過ごしてきた私、あるいは企画推進業務に携わった同僚からすると「やっと春が来たか!」という実感を得るに至ります。

そういったことで、いよいよ現場を巻き込み始めた流れができつつあります。現在の状況としては、見える化の仕組みを使い始めております。

ここで大事なのが、先ほど申し上げたインプット整備。「1回やっておしまい」では絶対にダメです。何かと言うと、データをよりよくしていくという取り組みは終わりがありません。先ほど申し上げたコードの簡素化や業務実績報告をよりわかりやすくすることは、前回のインプット整備の取り組み以降、2回改訂をかけていますし、直近では10月分からやっています。

さらに「入れろ入れろ」「精度を上げろ」だけでは現場はついて来ないので、「どこのデータがダメか」ということをわかってもらうためにダッシュボードをわざわざ作りまして、そのダッシュボードを見ながら現場自らチェックしてもらう取り組みも11月から始めています。

そういった地道なデータ整備の努力を続けていると、いいことがあります。データを見ることがだんだん当たり前になってきます。当たり前になってくると本当に風向きがよくなりますね。いよいよデータを見るだけでなくて、そこから気づきを得たことを業務の効率化につなげるという流れができてまいります。

今お話しした年度計画の見える化ということだけではなくて、「他の分野にも見える化って有効なんじゃない?」という気づきが生まれてきますので、まさにここが胸突き八丁ではあるんですけれども、がんばってやっていくべきフェーズかなと思います。

先ほど片岡のパートで、当社のロードマップ的なものについて「まだ道半ばです」というお話をさせていただきました。できていないことはまだまだたくさんありますが、私たちは引き続きやっていきたいという思いで続けてまいりたいと思います。

ダッシュボードを作る体制はどうする?

北岸:少し話の趣を変えまして、ダッシュボードを作る要員体制をどう置くといいか悩まれている会社さんがいらっしゃると思うので、そのお話をしたいと思います。あくまで当社の例ではございますが、私たちはこんな取り組みをいたしました。

私たちはBI、ダッシュボードというものは誰でも作れるものだと思っています。SEじゃなきゃ作れないなんて、そんなことは絶対にありません。どんな層でもできます。

どんな層でもできるということが本当に大事で、その層の感性というか、見えるものは違うんですね。だからこそみんなに作れるようになってほしいということで、ウイングアークさんが持っていらっしゃるダッシュボード作成の基礎と言われるものを当社の内容にカスタマイズして、研修をして45名に受けてもらったのが最初の頃の取り組みでございます。

ダッシュボードを作る専任の人をどう置くかというところで、1つのサンプルです。私たちは最初SEクラスで1名を専任としてスタートをかけましたが、じきに足りなくなってきます。

どうしようかなと思ったときに、SEクラスばかりでやっているとお金がかかってしょうがないんですね。なので少し要員単価の構成を下げられるような層をアサインして、その層に対してダッシュボードを作ってもらえるような取り組みを地道にやっています。

さらに、専任部隊の話をさせていただきましたが、決してダッシュボードには専任が必要ということでもないんですが、専任も必要です。何のことかと言いますと、ダッシュボードを作成するうえでの標準化や、運用ルールを整備しておくことが大事で、そこは専任部隊が預かるべきだと思います。逆にダッシュボードそのものは、見える化を必要とする部門自らが作るのが、やはり最短距離だと思うんですね。

その最短距離で作れるようにということで、まさに今、片岡がいる部門なんですが、品質管理や生産性指標を見える化できるように要員を育成しました。

どのようなダッシュボードを作ってきたか

ここからは、この2年間で作ってまいりましたダッシュボードをいくつかご紹介していきたいと思います。1つ目は要員計画ダッシュボードと言われるもので、全体はこんな感じです。

先ほどから再三出てきました、年度計画の見える化の一角を担うダッシュボードです。少し拡大してみたいと思います。

要員数と仕事の乖離というものを気づいてもらいたくて、このダッシュボードを作っています。見せ方のポイント2つです。並べる、重ねる、この2点です。

本当はここでご唱和いただきたいくらいなんですけれども、やめておきます(笑)。

(会場笑)

なかなかこういうのは……笑っていただいてありがとうございます(笑)。本当に助かります。

並べる、重ねるということで、朝の番組でも「並べろ~」とかやっている番組がありますよね。知ってます? 知らないか(笑)。みなさん、通勤時間が大変ですもんね。

並べる、重ねる。どういうことか少し解説させていただきますと、棒グラフがドーンとあります。この棒グラフはなにを示しているかと言うと、工数を示しています。左に予定、右に実績です。さらに上を見ていただきますと折れ線グラフがありますが、これは要員数の予定と実績を上下に並べています。

並べることで計画と実績の乖離というものが一目見たらわかりますよね? さらに重ねるということがどういうことかと申しますと、工数というものに対して要員数を折れ線グラフで重ねた結果、それより上に超えていたらオーバーワークしているということなんですよ。オーバーワークすると残業が発生するわ、一生懸命やっているのに疲弊はしていくわ、ということで。

年度計画、毎月毎月の開発保守という業務をどう回していくかに考えが及んでほしいなということで、人が足りないなら人をあてる。あるいは業務が調整できるのであれば業務を減らすといった要員計画の見直し。これはまさに我々の会社に必要な現場における業務のマネジメント業務とも言えますけれども、そこに使ってもらえるようにということで、このダッシュボードを作っております。

北岸:もう1つご紹介させてください。保守の見える化ダッシュボード。

これはなにかと言うと単純に、先ほどから言っている業務実績報告の保守だけ積み上げた棒グラフです。でも、ただの棒グラフといって侮るなかれ。

私たちの会社はランニングコストを削減、適正化するという課題を持っています。そこで「適正なラインはどこなの?」ということを把握するためにシンプルなダッシュボードは有効ですし、適正なラインが見えてくるとその体制をどうやっていくといいのかを考えるきっかけになるダッシュボードとして今使ってもらっています。

目的が明確であれば、シンプルなダッシュボードでも十分見える化として役立つということです。先ほどみかんの話をしましたけど、「ここにみかんがあります」と言うだけでも十分です。

なぜかと言うと、そこに喉が乾いている人がいるとか、すっぱいものが欲しいいる人がいれば、「みかんです」でも十分食べたいと思わせることができるじゃないですか。そういうことなんですね。

次のダッシュボードのご紹介ですが、障害管理ダッシュボードです。今日ここにいるオーディエンスの中にもこれに携わった人が来てくれています。

先ほどご紹介した、他の部門でも作れるようになるということで、3名体制で約6ヶ月で作り切っています。障害管理というと、いろいろな切り口のダッシュボードが必要になりますので、本業をやりながら地道に1個1個作っていったというところに特徴があるかなと思っています。

そういった、生産性指標も見える化しましょうというところに現在取り組んでおります。

データのありがたみを痛いほど知った2年間

先ほど片岡のほうから「業務の見える化と人材の見える化という2本柱で進めています」というお話をいたしました。現在の立ち位置をお話しさせてください。だいたい登山で言うと5合目から6合目くらいを一生懸命上がっているというところでございます。

業務の見える化は先ほども課題などお話ししましたので割愛させていただきます。もう1つ人材の見える化というところでございますが、こちらは4合目から5合目で足踏み状態でございます。

ここでやりたいことをお話しさせていただきますと、開発力を質の面で上げていきたいということで、スキルあるいはキャリアを先ほどの要員計画とうまくリンクさせて、質的な面での要員配置ができているかを見極めるような取り組みにつなげていきたいと思っています。

2年間をまとめさせていただきます。インプット整備が大事だというお話をさせていただきました。そこの労力はけっこうかかりますが、乗り越えていきましょうというお話です。

アウトプット整備ということで、見える化インフラ・ノウハウを整備していきましょうという中で、ここには実は落とし穴がありました。見える化ができるようになると業務の効率化、さらにはその先の目標の達成というところの糸口が見えてまいりまして、私たちはまだまだ道半ばです。

今後の課題でございますが、私たちはこの2年間でデータのありがたみというものを痛いほどに知りました。痛いほどのありがたみをベースに、データの整備というのは引き続き続けてまいりたいと思っております。

VUCA時代という話もありましたけれども、求められるデータをすぐ出せる回線を整備していきたいなということで、引き続き見える化の取り組みから経営目標の達成というところにつないでまいりたいと思います。以上、私のほうから2年間を振り返らせていただきました。

(会場拍手)

BIと働き方改革

片岡:もう少しだけお時間ください(笑)。2年間の振り返り、いかがでしたでしょうか? たぶん北岸さんも相当テンションが上がって、昨日17時くらいに1時間ほどこの会場でリハーサルしたんですけれども、時間も全然違いますし、話す内容もけっこう変わっていました。これが1つの現場力なのかなと思っています。

最後に私のほうから、BIと働き方改革を紐付けるような話をしたいと思います。私ものんびりしていたのにまた膝が動いてきそうなんですけれども、あと少しだけお付き合いください。

政府が掲げる働き方改革。これは1億総活躍社会の実現ということだと思います。それに向けてダイバーシティやテレワークといったことが行われまして、さまざまな層の雇用というのが活性化していくということが期待されているんだと思います。

ただ、生産年齢人口あるいは就業者数の見通しといった数字を見ていくと、まだまだ数字を持ち上げていかなければいけない。そんな大きな課題が我々の国にはあるのではないかなと思います。

その1つが「労働生産性の向上」と書いてありますけれども、労働者数の比率を高めていくといったことが求められる社会になってきているのかなと。そことBIを紐付けてみたいんですけれども、やはり人のキャリア・スキルと仕事をくっつけていくというのがますます今後求められてくると思います。

働く人もさまざまですし、働く場所もさまざま。それをスピーディーにパッとくっつけていく。こういったことが生産性向上にもつながりますし、もしかすると私たちがこの2年間取り組んできた業務の見える化や人材の見える化といったところにつながるのかなと考えています。

ヒューマンリソースマネジメントや最近ではタレントマネジメント、あるいはヒューマンキャピタルマネジメントというものが問いただされていますし、ツールも数多く出回っているような時代になってきています。

そして私たちがこの2年間を「見える化に必要なことって何だろう」と振り返ると、常に見える化されている状態とそれをコントロールする、そして簡単に見える仕組みが必要なんだなと。これは私たちがこの2年間MotionBoardを自分たちなりに使ってみて、やはりこういうスピーディーなツールが必要なのかなと感じた次第です。

そしてこれからウイングアークさんに3つお願いしたいことがあります。ウイングアークさん、3つシンプルにお願いします!

1つは、我々のようなしくじりの事例をもっとオープンにもっとわかりやすく知ることができる、そんな環境が必要なのではないかと思います。そのために今日もご参加いただいているような企業様とのコミュニティをもっと活性化していただいて、事例の紹介やテンプレートの交換みたいなこともできたらいいのではないかと思います。そういった提案が今後増えていくということを期待したいと思っています。

BIと働き方改革ということで、今日のセッションでもあると思うんですけれども、人々の状態を表すIoTデータ、あるいは人々のキャリアやスキル、ニーズ、仕事内容。こういったものもどんどんモバイル化されてデータが貯まってきていますし、これがもっともっと活用されるようになってくると思います。 このハンドリングを簡単に気軽にどこの会社さんでもすぐにデータを使える世の中にしていくことが、おそらく生産労働人口を上げていくことになるのではないかと思っています。

最後になりますけれども、各社様たぶんいろいろなデータをお持ちだと思います。ぜひ社にお戻りになりましたら「このデータの価値ってなんだろう?」ということを問いかけてみてください。 そうすることで、もしかしたら今まで使ってなかったデータ、見ていなかったデータ、流れてしまったデータがみなさまの新しい課題や成果につながっていく可能性が出てくるかなと思います。

そんなみなさまの事例と、またコミュニティ活動等を通じてみなさまとお会いしていろいろな事例紹介ができたらと思っている次第でございます。

私たちからの話は以上になります。私たち2年間をなかなか振り返ることがなかったんですけれども、今回のこの振り返りを通じてまた新たに発見できることが多々ありました。こういった貴重な場をご用意いただいてご準備いただきましたウイングアークさん、本当にありがとうございました。

みなさまにとってなにか1つでも気づきやヒントをお持ち帰りいただけたら……私たちの資料を作るにも苦労したんですよね?

北岸:はい(笑)。

片岡:そういった苦労が報われるかなと思います。今日まだ私たち会場におりますので、もし何かございましたらお気軽にお声をかけていただければと思います。希望者はみかんももらえるようですので(笑)。

北岸:みかん、さしあげます。先着5名くらいです。

片岡:以上で私たちの事例トラックを終了したいと思います。最後までご静聴いただきまして、誠にありがとうございました。

北岸:ありがとうございました。

(会場拍手)