2020年に新憲法施行を目指す方針に変更はないか

記者1:幹事社、時事通信のミヤザワと申します。よろしくお願いします。まず、憲法改正についてうかがいます。自民党は今般の衆議院選挙で、憲法改正を公約の柱の1つに据え、自衛隊の明記など4項目をあげまして、はじめての憲法改正を目指すとしました。

衆院選の結果を踏まえまして、今年秋に自民党案を国会に提出し、来年の通常国会で発議し、2020年に新憲法施行を目指すという当初の想定通りに進めていく考えはありますでしょうか? また、国民投票のタイミングは、2019年の参院選と同時にすることも選択肢にありますでしょうか?

さらに、憲法改正の論議に前向きな希望の党と、憲法改正に関して連携することについてどうお考えでいらっしゃいますでしょうか? よろしくお願いします。

安倍晋三氏(以下、安倍):はい。憲法改正は自由民主党にとって立党以来の党是であり、これまでも党の公約として掲げてきましたが、今回はじめて公約の柱、主要項目の1つに位置づけました。

また、改正すべき項目として、4つの項目を具体的に掲げました。2020年という目標については、私は5月に議論を活性化するために述べたものでありまして、これまでも申し上げているとおり、スケジュールありきではありません。

今後公約に掲げた基本的な考え方に沿って、具体的な条文案件において、党内で検討・議論を深め、自民党としての案を国会の憲法審査会に提案したいと考えています。その上で、国会における議論、国民的な理解を深めてまいりたいと思っています。

今、希望の党という話がございましたが、希望の党はもちろんのこと、与党野党にかかわらず幅広い合意を形成するように努力を重ねていかなければならないと、こう思っております。

憲法改正については3分の2という高いハードルがあります。与党で3分の2をいただいたのでありますが、与党というだけではなくて、与党野党で幅広い合意を形成することに務めることが必要であり、その上において国民投票において半数を得るべく国民的な理解を得るよう努力をしていきたいと思っています。

新内閣発足のタイミングは?

記者2:続きまして、日本テレビです。特別国会の召集や閣僚党役員人事についてうかがわせてください。11月5日にトランプ大統領の初来日を控えるなかで、特別国会の召集日や会期、それから新内閣の発足の日取りについてどうお考えでおられるでしょうか?

また、来年1月の通常国会までに、臨時国会を開くお考えはあるでしょうか? 総裁は高村(正彦)副総裁については任期中の続投を明言しておられますが、今回の衆院選を受けて、現在の閣僚や党役員を変える考えはあるんでしょうか?

安倍:来月5日には、トランプ大統領が来日する予定であります。その後はAPEC、あるいは東アジアサミットが予定されています。そうした外交日程も踏まえれば、その前に特別国会を召集し、首班指名を行って、速やかに新しい内閣の体制を整えるべきであると考えています。

具体的な召集日については、今後与党とも相談した上で最終的に決定したいと思います。まだ総選挙が終わったばかりでありまして、その後の国会日程については今後与党についてよく検討してもらいたいと思います。

そして人事についても、これもまだ選挙が終わったばかりでして、昨日の夜までは選挙のことばかりが頭を占めておりましたから、これからですね、よく考えたいと思います。

いずれにせよ、今回の選挙で示された国民の負託に応える。お約束した政策を政府与党が一丸となって、一つひとつ実行し、結果を出していくことが重要であり、真摯にそして全力を尽くしてそうした負託に応えていきたいと思います。

森友・加計問題の理解を得られたと思うか

記者3:幹事社、西日本新聞のイトウと申します。森友学園問題や加計学園問題についておうかがいします。

野党は先の臨時国会冒頭での開催について、「森友・加計隠し」と批判してきました。今回の衆議院選挙の結果は、森友・加計学園問題についてすでに十分に説明し、国民から理解を得られたからだと受け止められているんでしょうか。

また各種世論調査では、内閣支持率はなお下回っています。この状況にどう向き合っていくお考えでしょうか。

安倍:この問題については、私の予算委員会、あるいは閉会中審査において、相当時間をかけて、また丁寧に質問にお答えをさせていただきました。そのなかにおいて、前川(喜平)前次官も含めて、私から依頼された、また支持を受けたという方は1人もいなかったということが明確に明らかになりました。

そしてまた、特区のプロセスを進めてこられた民間議員のみなさまは、「プロセスには一点の曇りもない」と述べておられました。

また、ずっとこの獣医学部の新設に信念を持って努力をされてきた、ドアを叩き続けてこられた加戸(守行)前愛媛県知事は、行政が歪められたのではなく、歪められた行政を正したのであると明確に述べておられました。

こうした、あまり報道されなかった部分も含め、公開審議をすべてご覧になった方には、かなりご理解をいただけたものと思っております。

今回の選挙戦においては、テレビ討論会等、また記者クラブ主催の討論会において、この問題についても、私に対して質問が集中いたしましたが、私も丁寧にご説明をさせていただきましたし。

一部のテレビ局においては他の政策議論よりも大変多くの時間を割いて、この問題について質問をいただいたと承知をしております。私もそのたびに丁寧にご説明をさせていただいたところであります。

当然これからも国会で質問をいただければ丁寧にお答えをさせていただきたいと思っております。

そしてまた内閣支持率については、私や自由民主党に対して、現在も厳しい目が向けられているというなかで、今まで以上に謙虚でそして真摯な政権運営に務めなければならないと思います。

大きな勝利をいただいたのでありますが、この大きな勝利に対しても、謙虚に向き合っていきたいと、こう考えています。

そしてこの選挙戦でお約束したことを私たちは一つひとつ、実行していかなければならないと。私たちはできることしか言わない。これを我が党の矜持としてまいりました。しっかりと結果を出していきたいと思っております。

選挙期間中、憲法改正に触れなかったのはなぜ?

司会者:ありがとうございました。それでは、他にご質問がございましたら、挙手の上、総裁から指名された方は社名とお名前をお伝えいただいてから、ご質問をお願いいたします。

安倍:(記者を指して)じゃあ、その。

記者4:東京新聞ナカネと申します。憲法に関して質問です。総裁は衆議院選挙の選挙期間中の演説で、憲法改正に関する話題にほとんど触れることがありませんでした。

自民党の公約では、最重点政策の1つとして憲法改正を盛り込んでいましたが、総裁の選挙中の説明は十分でなく、国民の理解も不十分だという印象があります。

総裁が演説で憲法の話題に積極的に触れなかった理由をお聞かせください。それから今後、自民党として憲法に関する政策の説明をどのように行っていくお考えでしょうか。

安倍:それでは2つお話をいたします。まず憲法改正というのは、通常の法案と違って、衆議院で多数、そして参議院の多数を得れば、それで成立するものではありません。

ですから、政権選択に際してはいわば重要な論点として街頭演説で述べるということは当然であろうと思いますが、憲法においては、まさに決めるのは国会ではなく、国会で発議をするわけでありまして、決めるのは国民投票であります。

まさにこの国民投票の場において、具体的な条文について説明する責任があろうと思います。

今回の選挙においては、冒頭で説明させていただいたように、立党以来の我々の党是である憲法改正について、今度は初めて主要項目として掲げさせていただき、そして4項目お示しをさせていただきました。

それを我々がどう考えているかというものをお示しをしたところでございました。これは街頭でもみなさまにお配りをしているものであります。

一方、街頭で述べることは、限られた時間の中で、まさにその地域地域の生活に密着したことに対する政策を述べるものであり。

まさに街頭にお越しをいただいている若いみなさん、あるいはたくさんの小さいお子さんを連れたお母さんたち、お父さんたちにとっては、まず日本の将来について、少子化をどのように乗り越えていくのか。

どのような政策を具体的なものを実行しようとしているのか。あるいはその財源はどうなっているのか。あるいは地方においては、地方をどのように活性化させていくのか。これは切実な行為なんだろうと思います。

また、被災地については、これからどのように復興を加速していくのか、ということをみなさん聞きたいんだろうと思います。当然それに答えていくのが私の責務だろうと、このように考えております。

憲法改正は立憲民主党などと合意形成を図るのか

記者5:朝日新聞のカワグチともうします。今の関連でお尋ねをしたいと思います。先ほど、「憲法改正については幅広い合意」というふうに言及をされておられましたけれども。

これには野党第一党になった立憲民主党は、自衛隊明記については、かなり厳しい立場を取っていますけれども、この立憲民主党も含めたかたちで合意形成を図っていくのか、この点について確認をさせていただきたいのと。

もう1点については先ほどの関連になりますけれども、公約に掲げられた憲法改正について、これについてはある程度民意を得られたと、自民党の憲法改正の方針については民意が得られたと総裁としてはお考えになっているのか。この2点。

安倍:まず第1点でありますが、合意形成をするための努力をしていくと申し上げたわけでありまして、当然その努力は第1党であろうと、第2党であろうと、第3党であろうと、第4党であろうと行っていかなければならないと。

しかし政治でありますから、当然みなさますべてにご理解をいただけるわけではありませんが、そういう努力をはらっていくことは当然のことであろうと考えておりますし、その努力を進めていきたいと思っています。

それと、先ほどの質問とほとんど重なるんですが、民意を得なければいけないのは国民投票であります。それに対して私たちはこう考えているということを、みなさまに公約の中で4項目をお示ししたんですが、条文の、これは書きぶりですからね。

どういう条文になっていくかということは、あれからは大まかに項目について書いただけでありますから、国民のみなさまに1つの判断材料としてお示しをしていたわけでありますが。

どのような書きぶりになっているかということは、まさにこれから憲法審査会で成案を得て、その際にしっかりとご説明をしていかなければならないと。

今回は選挙で、総選挙において民意を得る・得ないというものではないんだろうと、こう思っております。