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なぜ共食いする生物がいるのか? カニバリズムのメリットとデメリット

なぜ共食いする生物がいるのか? カニバリズムのメリットとデメリット

メスのカマキリがオスを食べたり、ネズミが自分の子供を食べたり、共食いをする動物は多くいます。種の保存を第一に考えるなら、共食いはけっして有効な策とは思えませんが、それをする動物がいるということは、なにかしらのメリットがあるのかもしれません。そして、私たち人間でも、かつては広くカニバリズムの文化があったという事実も存在します。今回のYouTubeのサイエンス系動画チャンネル「SciShow」では、共食いの科学について解説します。

スピーカー
Michael Aranda(マイケル・アランダ)氏
参照動画
The Health Benefits of ... Cannibalism

共食いのメリットとデメリット

マイケル・アランダ氏 自分と同じ種族を食べるというのは気持ちのいい話ではありません。仲間の誰かに食べられるのではないかと心配しながら、日々を過ごしたり子孫を残すのはとても大変です。 ですが、カマキリがオスを食べたり、ネズミが自分の子供を食べたりと、共食いをする動物は多くいます。 Image01 ということは共食いに何かしらのメリットがあるに違いありません。ブラッドハウンド・ギャング(アメリカのロックバンド)の「オレたちは哺乳類でしかないんだ」という有名な歌詞のように、共食いが吐き気を催すほど気持ち悪いものであっても良い面があるのでしょうか。 当然ですが、食人を考えるときには社会的、倫理的な要素が関係します。ですが、そうした要素を抜きにして純粋に生物学的な観点でのみ考えるならば、人肉を食べることには確かにメリットがあるのです。 善悪は別にして、カニバリズムは我々の歴史の一部です。考古学上の発見によれば、旧石器時代の食生活には人肉も含まれており、摂取していたプロテインの10パーセントを占めていた社会もあるようです。 さらに人肉は他の動物の肉より栄養価で優れているようです。人間は同じ大きさの動物と同じカロリーを持っています。人を食べることで、小さな鹿を食べるのと同じぐらいのエネルギーを得られるのです。 ですが、和牛がリブロースより脂質が多い代わりにタンパク質が少ないように、人肉もタンパク質、脂質、その他の栄養素の点で他の肉とは異なっています。自分に近しい生物の肉ほどより必要な栄養価が含まれているので、人肉は他の人間にとって栄養学的には1番の選択になりえます。 カブトムシやカエル、魚まですべての種目の生物で行われた研究では、同じ種目もしくは親しい種目をエサとする共食いのほうが健康的になったようです。 ですが、自分と同じ種目を食べることには大きなデメリットがあります。それは病気です。 近い種目を食べるということは、それだけ自分にかかりやすい病気を運んでくるということです。

フォア族の「クールー病」

その危険性を伝える一番の例が、パプアニューギニアのフォア族です。1920年ごろからフォア族では「クールー病」という病気が広がりを見せていました。フォア族の言葉で「震え」を意味するとおり、この病気の症状の1つに震えがありました。 歩き方がおぼつかなくなったり言葉が不明瞭になったりし、さらには感情も不安定になりわけもなく笑ったりするようになるのです。症状は日に日に悪くなる一方で、ついには死に至ります。クールー病の感染がピークの時は、毎年数百人が亡くなったのです。 研究者たちはクールー病が狂牛病などと同じプリオン病であると突きとめます。プリオンとはタンパク質が間違った形に折りたたまれたもので、体内で分解しづらいということをのぞけば、プリオン自体は必ずしも問題になりません。 Image04 ですが、プリオンが正しく折りたたまれたタンパク質と出会うと、そのタンパク質も間違った形に折りたたまれてしまういます。 こうしたプリオンが脳内に蓄積されると、その人が死ぬまで脳に穴を空けたり神経細胞を破壊し続けたりするのです。 ですが、プリオン病に伝染性はなく、間違って折りたたまれたタンパク質を食べない限り感染しません。 クールー病のプリオンは1950年代まで広がりました。フォア族は葬式の際に、亡くなった愛する人を讃えたり、死を悼むためにその体の一部を食べたのです。 研究者たちによれば、クールー病の伝染を生き延びた長老は、プリオン病への免疫を持つ特殊な遺伝子変異を起こしていたようです。 こうした遺伝子変異は世界中で見られます。これはつまりプリオン病が、そしてそれを広めるカニバリズムが過去の歴史で一般的だったことを示しています。

カニバリズムは病気の広がりを抑える?

ですがプリオン病だけが、人肉を食べるリスクではありません。だんだん話していて気持ち悪くなってきました……。 伝染性の高い病気に感染した人に触れたり、ましてや食べたりするならば病気は一層伝染します。ですが、人間や動物のカニバリズムの実例に比べると、そのせいで病気が伝染していった例は予想以上に少なかったのです。 2017年にAmerican Naturalist誌に載せられた論文によれば、それには理由があるようです。カニバリズムによって細菌がそれ以上に拡散するのを防ぐため、危険な病気から守るというのです。 もちろん人肉を食べるということは病原体に自分を晒すことになります。ですがそれは同時に、コミュニティの他の人たちをその病気から守ることになるのです。 多くの細菌は調理や消化液の中では生き延びられないため、食べることは細菌を死滅させることになるのです。 Image05 さらに、誰かが亡くなってその遺体が取り除かれることで感染者がコミュニティからいなくなることは、病気を広める人が1人減るということです。 つまり、カニバリズムは病気の広がりを抑えたり、時には除き去ることになるかもしれません。プリオン病の心配は確かにありますが、他の病気を抑える効果はそのリスクに見合うとも考えられます。 カニバリズムについての研究が進むにつれて、人肉を食べる行為は健康に対して、少なくとも物理的な意味ではそれほど悪くないようです。 言うまでもありませんが、カニバリズムを勧めているわけではありません。他にも危険が潜んでいるかもしれませんし、病気を抑えるとは言っても、現代医学のほうが人肉を食べるよりはるかに効果的です。 さらに健康的な生活を送る方法もたくさんあり、そちらのほうが精神的にも物理的にも健康でいられますよ。

  

SciShow

Hank Green(ハンク・グリーン)たちがサイエンスに関する話題をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル。

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