重水が身体に与える影響

ハンク・グリーン氏:グラス1杯の冷たい水は爽やかな気分にさせてくれます。私が話しているのは「H2O」のことだと思いますか? その通りです。しかし、重たい水、つまり「D2O」とも呼ばれる「重水」も、このように簡単に飲むことができるのです。

とはいえ、そう簡単に手に入れることはできません。非常に高価ですし、実験用の用品店などでしか手に入りません。重水素は水素の同位体で、ボーナスとして中性子を持つものです。ご存知の通り、それは通常の水素の2倍の重量があります。

それゆえ、水分子中に重水素が入っていると10パーセント重量が増え、私たちはそれを「重たい水」と呼ぶのです。

私たちのPatreon(クリエイター向けのクラウドファンディング)のパトロンのKutsopが、もしグラス1杯の重水を飲んだら人はどうなるかを知りたいと言いました。グラス1杯や2杯の少量であれば、無害であると言えるでしょう。

実際、水素同位体は人体における栄養実験に多く用いられています。なぜならそれは人間がどれくらいのエネルギーを消費したかを知る上で有効な手段だからです。しかし、飲料のボトルに純粋な重水を入れて飲んだりしてはいけません。なぜなら過剰摂取するとほとんどの可能性で死に至ることになってしまうからです。

ネズミの場合、体内の水分のうち3分の1の重水素を含むと死んでしまいます。

植物も重水素は苦手です。それにより成長が止まってしまうのです。

その毒性は速度論的同位体効果というものと関係があります。つまり、同位体の余分な塊が化学反応の速度を緩やかにしてしまうのです。それには人体が死なないようにする重要な反応全ても含まれてしまいます。

重水の場合、重水素と酸素の結びつきは、通常の水に含まれている水素と酸素の結びつきよりも強いのです。そうすると、その結びつきを分解するにはさらなるエネルギーが必要となり、それにより全ての速度が落ちてしまうというわけです。

重水が人体にどれほどの量でどれほどの影響を与えるのかはっきりとわかってはいませんが、専門家はそれが人の水分摂取量の総合の10パーセント以上になると問題を引き起こし始めるのではないかと推測しています。

ですから、少量であれば問題ありませんが、それ以上摂取してはいけません。それに、そんなことをしてもお金がかかるだけで、なんの健康の足しにもなりはしません。そんなことをする意味がわかりません。

重水の中でも危険なトリチウム水

しかし、重水の中でも避けなければいけない種類のものもあります。トリチウム水です。それには水素または重水素の代わりにトリチウムという、中性子を2つ持つ水素の同位体が含まれています。それは放射性です。

放射能の含有量で言えばトリチウム水はそんなに強くはありません。それが放射するエネルギーは少なく、皮膚を貫通できる種類の電子ではありません。しかしそれを飲み込むとなると話は別です。一度体内に入ると、そのベータ粒子は高い可能性でガンを引き起こします。

その可能性はラジウムのようなものから出るハイエネルギーのガンマ線よりも高くなるというデータもあります。

科学者は実際にトリチウム水がどれほど危険なのかというはっきりとしたことを理解しておらず、それをコップに入れて人に飲ませたりはしていませんが、それに触れることはよくないと考えています。

私たちはみな自然と微量のトリチウム水に接触することがあるのですが、それは問題ありません。問題となるのは、トリチウム水が原子炉に用いられていて、原子炉漏れなどの事故が起きた時の話となります。

ですから私はお勧めしませんが、もしあなたがどうしても重水を味見してみたいと思われるようでしたら、それがトリチウム水ではないということだけは確認してください。死にたくはないでしょうからね。

私は職場にあるウォータークーラーの水を飲み続けることにします。なぜなら適度に冷たいですし、自分がわかるものでできているからです。