自社生産でQRが可能になった背景は?

質問者1:ドイツ証券のカサハヤでございます。いつもありがとうございます。質問を4つお願いします。まず1点目なのですが、今回(通期業績予想を)修正していただいて、結果下期は据え置きということでした。

上期は販売が苦戦してかなり売上が落ちているということで、下期はそれに対して、大きく状況が変わるような前提になっています。

あらためて、終わった期の販売が苦戦した背景を整理していただいて、下期は据え置きで大丈夫な理由を、もう少し説得力をもってご説明いただきたいです。

2点目は、先ほど海外についてのご説明の中で、香港と中国については戦略の見直しが必要であると伺いました。具体的にどのようなことが必要だとお考えか、教えてください。

3点目は、自社生産のところで、計画生産が中止になったが、QR(クイックレスポンス)ができるようになってきたと伺いました。これができるようになっている背景を、内部要因・外部要因を含めて教えてください。

4点目は、今回新本社に移転ということで、従前から(代表取締役会長兼CEOの)福田(三千男)さまも、この移転は会社にとって極めて重要なものであるとおっしゃっていました。コストもかかっていると思いますが、実際に移転されてみて、定性的・定量的に、どのようないいことが起こっているのかをくわしく教えてください。

松下正氏(以下、松下):まず、下期を据え置きの理由について。上期の振り返りとしまして、ブランドとしては「グローバルワーク」「ローリーズファーム」が、なかなか厳しい戦いをしました。

グローバルワークにつきましては、差別化された商品ですとか、前年までにない新しい商品の積極展開を進めたのですが、そのあたりがうまくお客さまに受け入れられなかった部分もありました。

とくに夏から晩夏にかけての商品については、厳しい値引きということで、粗利も下がってきたというところがあるかなと思っております。

また、ローリーズファームも状況は若干違うかもしれませんが、積極的な商品投入というところでうまく機能しなかったところもありまして、そういうような計画自体がよくなかったというところが、主な要因です。

組織的な背景があってどうのこうのではなく、簡単に言うと今シーズンの季節的なMD(商品政策)を外したということです。そういう意味ではその点を反省して、今年(2017年)の秋冬に取り組んでいくことによって、十分、まだ期初予想どおりの数値を達成できるのではないかなと思っております。

他方、好調なブランドも引き続き推移しておりますので、そのあたりも含めて、可能性もまだあると思っております。

そして、海外の中国・香港につきましては、従来は「COLLECT POINT」(現在の「BLISS POINT」)という業態で成功していた部分があるのですけれども、香港について申し上げますと、中国からのインバウンドが相当なくなっている。香港自体の社会構造・経済構造に変化があるかなと思っております。

いろいろなファストファッションの会社が香港に入っていく中で、ブランドとしてより強い個性のあるブランドの価値観・世界観を伝えながら、ビジネスを回していくというところに、もっと軸足をもっていくとよいのではないかというところが、我々の今考えている大きな方向です。

中国では、屋号としては一部ローリーズファームも使っておりますが、基本的にはCOLLECT POINTの業態でやっております。先ほど「ニコアンド」でもお話ししたように、ブランドとしてきちんと価値観がお客さまに伝わるような業態というように、中国でもこれから推し進めていくべく、まず体制を整備していくことを考えております。

そして、自社生産のQRについてお答えします。従来の計画生産ですと、糸や生機(きばた)から調達して工場のキャパを抑えて、そこでじっくりと長期にわたって、閑散期も使いながら生産していき、安い値段で作っていくということを、1つの典型例としてやっておりました。

ここ数年、いろいろな工場さんの集約も進めました。とくに、主力工場の方々とは信頼関係も築いてまいりましたので、いろいろな情報の共有も進んでおります。例えば、生機を一部工場さんに持っていただくとか、我々が(生機を)持って、どこかに置いておくとか。

また、キャパの情報を融通していただくこともあります。工場さんの空いているキャパを、我々の都合でずらしていただくとか。そのようなことも、信頼関係を積み重ねることによってできるようになってまいりましたし、QRも糸や生機で持っていき追加分を短い納期で作ることが、実際に可能になってまいりました。

そして、新社屋についてお答えします。これは会長からお話しいただくべきかと思いますが、私としては、やはり1つの場所になったことによって、従来よその建物にいた、生産・営業などの「丸の内側」にいる、今まで見たことのない人たちと顔を見合わせることになったり、月に1回就業時間後に私がカフェに立って、皆さんと自由にお酒を飲んだりするようになりました。

ふだん経営陣と話をしない社員の人たちとのコミュニケーションが高まったり、あるいは、部署同士の社員のコミュニケーションも、明らかに高まったりしていると思っております。また、そのカフェを利用することによって社内のイベントを行うなど、いろいろな社内外のコミュニケーションが増えているかなというところを、定性的な実感として思っております。

質問者1:ありがとうございます。追加の質問なのですが、とくに1問目の質問については、松下さまは達成できるというコメントですが、非常に不安を感じてしまいます。短期的な話になりますが、この(2017年の)春夏、また去年(2016年)の秋冬でも似たような問題がありました。

この次の秋冬では、しっかりと数字が変えられるという手応えはある、という理解でよいでしょうか? とくに、営業をやってらっしゃる木村(治)さまからも、お答えいただきたいです。

木村治氏(以下、木村):はい。松下が言ったとおり、基本的には我々はこの春夏、グローバルワークもローリーズファームも、商品的・営業的には攻めたものの、ちょっと外れたというところが結果だったかなと思っております。

これはやはり、もちろん我々はいろいろなデータをもって、「こういうトレンドでいこう」「グローバルワークはこういう計画でいこう」「ローリーズファームはこれでいこう」と実行しておりましたが、当たり外れはありますので。なかなか、全部はうまくいかないなと思っております。

そういう意味では、数字は(目標値まで)いかなかったのですけれども、この秋冬もきちんと攻めておりますので、我々はこれでしっかりと挽回できると思っております。先ほど報告があったとおり、例えば「everyday CORDU-ROY 毎日気軽にコーデュロイ」キャンペーンのような、我々が開発した素材を全ブランドが使って商品を開発・売っていく、ということもやっております。

こういうことを考えて、この秋冬も、もう1回チャレンジしていきたいなと思っております。

あとは、インナー・ジュエリー・バッグ・シューズ・コスメなど、このあたりも昨日今日(2017年9月28日・9月29日)、実は社内で展示会をやっているのですけれども。こういうことで、我々はこの(売上高が)2,000億円の(規模の企業の)メリットというところに基づいて、できているなと思っております。

シューズや雑貨など、我々の社内で生産本部が展示会を開いて、各ブランドで発注していくといったことはできておりますので、先ほど言った素材を持ちながら、いかにコストを下げて物を作っていくかというところも、かなり進んできております。

この秋冬は各ブランド、もちろん好調であるニコアンドも「ベイフロー」等ももっと攻めようということで施策を売っておりますので、そのあたりは期待していただければと思います。

EC比率の最適値は?

質問者2:ゴールドマン・サックスの者です。3つ質問があります。

1点目は、去年の上期に在庫が膨らんだ状況から、商品も当たらなくなってきて値下げが1年続いたなという印象があります。単体ベースで見ると、この(2017年)8月末で1.5パーセント減という水準というのは、ある程度秋冬で展開しやすい状況になっているのでしょうか?

2点目は、店舗とECとの関係です。ECのウェイトがかなり上がってきています。ここでもう一度、リアル(店舗)のあるべき店舗数というか。ECが20パーセント、25パーセントになる世界において、この17ブランドの最適水準をどう考えているのでしょうか?

3点目は、Eコマースについて。たしかに20パーセント近くまで、売上ベースで伸びています。これはおそらく第1四半期で3割以上伸びていると記憶しておりますので、第2四半期で見ると少し減速しています。

たしかに、システムの影響もあるとのことでしたが、この第2四半期に向けて伸びが鈍化した理由と、下期にかけての展開があれば教えてください。

松下:まず、秋冬の在庫についてお答えします。去年の終わった期末で在庫を整理しましたので、新しいものが入ってくる体制はできております。

次に、EC比率につきましては、現在16パーセントになりまして、今後まだまだあがると我々は認識しております。その最適なところが20パーセントなのか25パーセントなのか、あるいはそれ以上なのかにつきましては、その最適値を探っていく状況であることが、正直なところです。

ブランドによっては30パーセントを超えているところもありますし、10パーセント程度のものもあります。お客さまの購買行動・購買特性であったりとか、店舗ネットワークの大小であったりとか。ブランドによって1つずつそれぞれ違った最適値があって、そのうえで全体の数字が出てくるのではないかなと思っております。

Webの伸びにつきましては、第1四半期は127パーセントで、第2四半期は約113パーセントというかたちです。これは自社とほぼ変わらないのですけれども、第1四半期に比べて第2四半期の伸びが鈍化しているというのは、ご指摘のとおりです。

この先の第3四半期・第4四半期がどうなっているのかということについては、まだ我々としては、当初の目標を維持しながら伸ばしていくということを申し上げられると同時に、[.st]の会員も600万人を超えてまいりました。

あるいは、データ解析チームも社内に作りつつあります。CRMのデータの活用が、今後よりやりやすい体制になってまいりました。今までできていない、単にWebがあって[.st]ポイントが両方で使えて、お客さまに対して[.st]会員を勧誘していくというだけではなく、もっとパーソナライズされたポイントの付け方とか、会員ランクの設定とか、いろいろなお知らせとか。

あるいは今後、インフレされているオムニ(チャネル)とか、受け取り方とか。いろいろとやれる施策がまだたくさんあります。一時的に第2四半期で鈍化しましたけれども、まだこの16パーセント・17パーセントでEC比率が止まるという認識は、我々としては持っておりません。

質問者2:追加の質問です。在庫水準について、木村さんからもご意見をいただきたいです。また、そもそもECが鈍化した背景を教えてください。

木村:在庫に関してお答えします。もちろん値引きもしましたし、毎週毎週、我々執行役員が集まって、各ブランドの在庫を細かく見ております。そういう意味では、この上期に関しては、きれいに収まってきているなと思っております。

もちろん、数字がちょっと厳しかったグローバルワークやローリーズファームには、多少残っておりますが、上期はきれいな数字になると見ています。ECについては、福田(泰己氏)から回答いたします。

福田泰己氏(以下、福田):ECの背景というところについて、お答えします。第2四半期にかけて、何かマーケティング費用を抑えたというような、大きな変更はございません。EC市場は、我々は伸びていると思っております。

先ほど木村からお話ししましたとおり、本業であるグローバルワーク、そしてローリーズファームの商品施策において挑戦した結果、トレンドを外してしまったというところが主要因であり、今は秋冬に向けて、MDの再構築を進めております。その成果として、Web比率の成長も続けていけると判断しております。

システム・物流の基盤整備の進捗は?

質問者3:UBS証券のモリヤです。2点お尋ねします。

1点目は、この上期は「グローバルワークとローリーズファームで攻めて、外した部分もあった」というお話でした。うまくいったブランドもあるかと思いますので、他のブランドとの違いはどういったところにあるのか、教えてください。

この下期で仕掛けていくブランド横断型の素材のキャンペーンは、このグローバルワークとローリーズファームにより効果があるのか、それともほかのブランドにより効果がある可能性があるのか。そのあたりを教えてください。

2点目は、システムや物流の基盤整備は着実に進んでいるというお話がありました。基幹システム・ECシステム・物流周りは、今どのような考えで進捗しているのかを教えてください。

木村:1点目の質問についてお答えします。ヤングマーケットというものは、やはり苦しかったなと。去年の秋冬ごろから(その状況が)ずっと続いていることは事実です。その中でも「JEANASiS」が最初は悪かったのですけれど、だんだん数字がぐっと伸びてきました。また、「Heather」もよくなってきました。

そのようなシーズンもあるのですけれども、マーケット全体の数字としては、ヤングはやはり苦しかったなと。そういう状況下で、当社の中ではライフスタイルブランドが好調だったなと思います。

これは先ほど会長が言ったとおり、雑貨をやったり家具をやったり、キッチン周りをやったりする、洋服プラスアルファのもの。バッグ・靴といった服飾雑貨もあるのですが、トータルでいくと、洋服だけじゃないものもちゃんとやっているブランドのほうが、結果がよかったなというところです。

また、ライフスタイルブランドですので、客層の幅を広く取れたブランドが好調だったなと見ております。

先ほどお話しした(ブランド横断キャンペーンの)「everyday CORDU-ROY 毎日気軽にコーデュロイ」は、初の試みでして。「グローバルワークとローリーズファームが売れるのか?」と言われると、「売れる!」と信じてけっこう仕込んでいます。

本当に、初の試みでして。いろいろなブランドによって、やりたいかたちを作っておりますので、ちょっとどういう結果が出るかな? というところで、何回かシーズンごとにトレンドの生地を開発しながら、全ブランドで試していきたい。

これは(売上高が)2,000億円(の規模)をやっている、パワーを使えるのかなと思っております。

松下:2点目の質問にお答えします。まず、物流について。今物流の拠点としては、西から福岡・神戸・藤岡・高崎・水戸・茨城西というところがあります。賃貸しているものと自社物件があります。

茨城西の隣の敷地に、現在の茨城西の約1.5倍の倉庫を建てるということで、土地の取得をしました。今は、建築業者さんとの契約を終えたというところです。

今後は、庫内のマテハン(マテリアル・ハンドリング)等を選定していくプロセスにありまして、来年(2018年)の秋から暮れにかけて竣工・運用開始という状況です。結果としまして、賃貸している、あるいはサード・パーティー・ロジティクス(物流業務形態の1つ)よりも、コストとしては安くなります。また、自社の都合に合わせて柔軟な運用が可能になると思っております。

もう1つ、システムの(基盤整備の)ところで、大きなところでは、基幹システムの更新を進めております。従来から元「BLISS POINT」と元「トリティアーツ」のシステムが2つ、並行して走っております。

これを来年(2018年)の3月1日に、新しい基幹システムに置き換えるということを予定しております。それにともなって、POSもマルチベンダーでできますので、いろいろなPOSともきちんと連携できます。

あるいは、一部についてはiPad・iPodを使うようなお店の仕組みにしていくことも考えております。それによって、データベースも一元化・リアルタイム化できますので、在庫を瞬時に把握するとか、ポイントを瞬時にアップデートするといったことも可能になってくると期待しています。

また、ECのシステムにつきましては、現在のシステム・キャパシティ的に、当社のいちばん大きなものとなっております。これ以上のキャパについては、なかなか難しいという状況にあります。

現在は新しいシステムについて、要件定義・基本設計・詳細設計が終わった段階です。今は開発ベンダーの選定に入っているという状況で、そちらにつきましては、来年(2018年)中のゴールデンウィークか夏頃、できればセールを避けた閑散期にカットオフできればいいかなと思っております。

その他にも生産体制では、工場から国際物流倉庫への到着といった、物の動きを見える化することによって、日本の庫内での準備が前倒しできる段階になって、効率化もあがっております。

(動きとして)大きくはないのですけれども、システム系の新しいアプリであるとか、ネットワークのストラクチャーの更新であるとか、そういうかたちで安定性を上げたり、全体のコストを下げたりと、いろいろなことに継続して取り組んでいる状況です。