スポーツビジネスに携わるには

岩本義弘氏(以下、岩本):そろそろ質問受けた方がいいですか?

仲島修平氏(以下、仲島):そうですね。事前にみなさんからご質問をたくさん頂戴してます。今日改めてみなさんからお話しいただいたことに対してご質問が届くと思いますので、お答えいただきたいと思います。

岩本:仲島さんが読んで、答えたい人が答える感じですか?

仲島:そうですね。まずはスポーツビジネス人材関連です。業界未経験からスポーツ業界に参画できますか?

岩本:これはまず、岡部さんが答えてください。

岡部恭英氏(以下、岡部):(質問者が)何をやっているのか知りませんが、圧倒的な業績を残したり、スキルやネットワークがあるのか? そこのところじゃないですかね。

スポーツの業界にきて、Aという会社、もしくはBという会社があって、そこに対してバリュー、価値を出せるか? それであればどこでも大丈夫だと思います。

弁護士かもしれない。会計士、営業、マーケティングかもしれない。さっき言った現場の試合をコンペティション、運営する人間かもしれない。

何でもいいけど、そこに対して自分が圧倒的に力があって価値を出せるのであれば、逆に未経験でもいいわけです。違う業界にいったっていい。僕もそうですし、斎藤聡もそうですし、酒井さんもそうです。岩本さんだってある意味、最初サッカーじゃないですよね?

岩本:最初(のキャリア)はメディア全般です。

岡部:そうですよね。ということは、玉乃選手以外はみんなスポーツ以外からきていますから、そう考えたらアンサーはイエスですよね。

岩本:さっきの飛び込みに行くのは日本の企業では難しいんじゃないかとか、学生はそう思っている方が多いと思いますけど、日本の企業の中で比較的行きやすいのはスポーツ業界の中でどういうものですか?

1人1人未経験でも入りやすいところってどこだろうと。考えてもすぐ思いつかなかったですけど。

時代の転換点がきている

岡部:今、パラダイムシフトが起きていると思います。要するにメディアの放映権とか、スポーツマーケティングで言うとメディアが、どんどん変わってきている。

最初は電通の伝説の高橋治之さんとか、ジャック坂崎さん。彼らが最初に広告、看板セールスをやったジェネレーション(世代)です。スタジアムの周りにある看板に広告を出して、それが第1の流れ。

次に地上波に放映権を見出した。BスカイBというころが有料テレビを始めてサブスクリプション(有料テレビなど)のビジネスを始めた。それを見たテレコムが、シンガポール・テレコム、ブリティッシュ・テレコムとかに食指を広げた。

そして今、来ているのがOTT、動画・音声などのコンテンツ・サービスをサービス)です。ここのOTTが5つ目の波とすると、ここは誰にとっても新しいものです。僕らにとっても新しいし、サッカークラブ、リーグにとっても新しいです。 また、ソーシャルメディアも非常に今大事になってきているので、ここを押さえている人はどこのスポーツでもいける気がします。そこの専門家はまだ少ない。

岩本:確かにラグビーの組織委員会の募集でもSNS用でありましたね。これは一瞬応募しようと思ったんですけど、残念ながら常駐しなきゃダメって言われたので、あきらめました。常駐で来なきゃいけないと。

スポーツ業界に必要なエキスパート

仲島:2つ目の質問よろしいですか? スポーツ業界に足りていない、いわゆる各専門家やスペシャリスト、経営者というお話がありました。日系企業で働いていた人だと思いますが、斎藤さんにお聞きしたいです。

岩本:これ、俺の例でしゃべっていいですか?

仲島:どうぞ。

岩本:圧倒的にはお金を稼ぐ才能はないです。お金持ちに本当にお金をポジティブに出させる能力はないと思います。さっきみなさんだいぶそれに近いことをおっしゃいましたけれども、世の中でお金を稼げるようになったら、どこでも入れる。

どの企業でも一緒だと思います。そのためにはやっぱり学ぶことだと思います。自分で経験しなくても世の中にはいろんな本も、ウェブもいっぱいある。

あといろんな人の話を聞いたり、本当にパターンをつかんじゃえばいい。だから常にそれを頭の片一方で考えながら自分のやりたいスポーツをやることがいいんじゃないかな。

斎藤聡 氏(以下、斎藤):おっしゃっるように大事なスキル、能力は実はどれぐらい好きかも純粋にあると思います。要はそのスポーツ業界で働いてネガティブなことを並べると、週末もないわけです。

試合が夜7時や8時からの興行だったら、みんながエンターテイメントを楽しむ、家で余暇を楽しむときに働いているわけです。サッカー大好きなのにサッカーなんてスポンサー対応や運営で見ている暇がない。

週末もない、夜もいないので、家族団らんも父親がいないけど別にやっていける。そうすると、家族の仲もだんだん悪くなってくる。そういうあまり知られていない中で、どれだけスポーツを好きでいられるか。

岩本:今斎藤さんが言われたのは事実で、実際そういう人が日本のスポーツ業界を支えている部分もある。

要素分解をどんどんやるべし

岡部:ちょっと付け足そうと思います。この業界にいる人に足りてない能力やスキル、考え方。小澤(隆生)さんが言っていたのは「要素分解」です。

スポーツビジネスに行きたいのであれば、Jリーグないしプロ野球でも、要素分解を自分ですればいい。

例えばどういう売り上げ、利益、売り上げの構成があるのか? それをやればいい。自分が行きたいクラブや野球チームに入るのに、どんなディビジョン、部分があるのか?

それに対して自分の能力やスキルがどう活きるのか? そういう面で言うと、いろんなサッカーや野球のスポーツの仕事がある。

僕は岩本さんを10年ぐらい前から知っていて、UEFAのイベントによく来られていたし、聡も大学のサッカー部時代から腐れ縁でよく知っています。でも、例えば2人は全然違うことをやっています。

聡はバルセロナに行って、その後アジアサッカー協会、JFAに行った。岩本さんは自分でコメンテーターもやっているし、編集長もインタビュアーもやっている。

サッカーとかスポーツ業界っていろんな仕事があるわけで、さっきの聡のポイントに戻ってじゃあ、何がしたいんですか?と。

自分のゴールはどこで何がしたいんですかというのを突き詰めないといけない。一般的にどんな能力、スキルが必要なんですか?

って非常にオープンクエスチョンになってしまって、自分の質問がクリアじゃない。だからそれに対する答えもピンポイントにならない。

仲島:ありがとうございます。まだまだたくさんご質問をいただいておりますので次いきたいと思います。

玉乃氏、引退してからの心の空白

スポーツビジネスならではの課題とは? そしてこれも多かったです。これまでの仕事で最も達成感を感じた仕事は? なぜその仕事を選んだのか? 大変だったことは? 

岩本:(スライドにある)「業界未経験からスポーツ業界に参画できる?」はさっきの斎藤さんの答えがそれに近いので、いいじゃないですか。

やっぱりビジネスが好きなんだけど、その分だけスポーツが見れなくなると。仕事で帰ることによる苦しさもあると思うので。

「スポーツ業界にいる人に足りてない能力やスキル、考え方」はちょっとタマジュンに聞いとけばいいんじゃないかな。

仲島:玉乃さんお願いできますか。

玉乃淳氏(以下、玉乃):やっぱり選手をやってると試合に勝つとか、単純に試合に出る喜びや快感が凄すぎて。

それに勝る楽しさって中々見つけられないですよね。だからすごくそこには苦労するし、プレッシャーをかけられるんです。

「お前、今日、何やればいいんだ?」「何やりたいんだ?」。岡部さんに言われるわけです。もがかないといけないのかなと。

たぶん何やりたいの? って一人ひとりに聞いても、「これ」っていう答えが出ない方が多いと思う。「決まっていたらとっくにやってるよ」って。その中でも、もがきながら歩んでいけば正しい道が見つかるんじゃないかなとわかりました。

なんでこの仕事を選んだのか? 一生こういう思いを持って仕事をやっていきたいなというものが、現時点でお恥ずかしながらないですが、絶対に選手を目指したいと思ったときと同じ感覚が見つかると信じて今でも活動してます。

仲島:よろしいですか?

玉乃:すげー、いいこと言った。

(会場笑)

岩本:すごく良かったと思うよ。みんな「確かにそうだよな」と思っている。

玉乃:岡部さんだってコンプレックスを持っていて、何をしたいかもふんわりとしかアジアに居る時にはわかっていなくて。その後、目標にしていたアメリカに行って、「あれ? 何か違うな」と思いながら、それでも現在、スポーツビジネスの第一線であるチャンピオンズリーグ放映権に関われているのは、全部奥様のおかげですからね。

(会場笑)

玉乃:自分はなにをやっているんだと、コンプレックスの塊です。でもコンプレックスを感じられる人生を歩んでいる。チャレンジしまくってるから。

気持ち悪いですけど、岡部さんと出会えて、すごくうれしかった。今はチャレンジをしまくりたいと思えるようになったので、人生変わったなって気がしています。

岩本:今のちょっと情熱大陸っぽかった。

レアル優勝時の歓喜の輪

仲島:結構団体のお話が多かったかと思いますが、団体とメーカーに近い酒井さんのお話をぜひお聞きしてみたいなと思います。

酒井浩之氏(以下、酒井):そうですね。最も達成感を感じた仕事は学生時代、アルバイトに関わっていた日韓のワールドカップ。

あと、みなさんちょっと大きな話が多かったので、細かい話をさせていただくと、昨年のレアル・マドリードのチャンピオンズリーグ11回目の優勝です。あれは現場で思いっきり関わらせていただきました。

どう表現していいかわからないことがスタジアムの中、オフィスの中で起こってました。これは、変に自慢話をするわけではないですが、ツイッターとかで試合をアップデートしていく中で特に最後のPK戦です。

アトレティコ・マドリードと最後にPK戦になったときです。現場にいる人間からインカムで、最初のキッカーが(セルヒオ・)ラモスだと。みなさん決めたバージョンと、外したバージョンをタイピングして用意するわけです。

決めた瞬間に決まったやつを、決まったとツイート。外したら外したってポストするんですけど、何パターンか画面に6種類ぐらい出す。みんな蹴った瞬間にゴーサインを出すと世界各国の言葉で一気にクリックする。

その時にラモス、ラモス、なのにちょっと待て。ルーカス・バスケス⁉

キッカーが変わったと。もう現場凍りつきました。最初のキッカーがバスケス⁉︎

若手でこの大事な最初のキッカーで大丈夫かと。でも理にはかなっている。途中から出てきて一番動けるし、足もつっていない。

よく考えればそういうのはあるんでしょうけど、画面見ると、ジダンがバスケスと肩組んでしゃべっている。

最初のキッカーって一番大切じゃないですか。もう社員一同バクバクです。このままガタガタといっちゃったらどうしようと。決まった瞬間、クリックしないで喜んでいました。スタジアムもワーってなってますよ。みんな喜んで写メールとっている。

みんなクリックしようよと。そういう現場の臨場感と自分の置かれていることと、世界を相手にいろいろやってる選手の熱狂、このいろんなことがリンクするスポーツの最高峰の仕事は、すごく簡単には味わえないものではありました。最後にロナウドが出てきたとき、本当に社員がみんな泣きながら。

「頼むぞ」と。これが決まれば来年の契約が決まる社員がいっぱいいる。単純にスーパースターだからやってるんじゃないんです。

岩本:人生が懸かっているわけですね。

酒井:そう。気持ちがのっかった、ああいう仕事は日本では経験できなかった。サッカーのビジネスならではの臨場感だと思います。大変でしたけど。

玉乃:普段、トップチームと関わり合いってあるんですか?

酒井:基本はトップチームがメインです。

玉乃:チームに帯同している?

酒井:社員としてですか?

玉乃:はい。

酒井:私はソーシャルメディア中心に仕事をしていますけど、実は試合をよく見るとグラウンドの周りに、ピッチの周りに社員が6、7人自分のiPhoneで撮っています。あれ、権利の問題があるので、時間をはかって権利が解消された段階でポストできるんです。

やっぱりブレることもありますし、ちょうどいい角度で撮れたものもあります。それを判別する人間がいて、同時進行で協会に確認する人間がいる。

ピッチもピッチサイドもそうですし、同時に裏側でも判別する人がいる。その日その日の試合ごとにローテーションで回るかたちです。

岩本:じゃあこのぐらいにして。

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