クラウドファンディングでマンガ続編

乙君氏(以下、乙君):続いてのニュース行きます。10年以上前に未完のまま終了した漫画『刻の大地』。制作再開に向けてクラウドファンディングをして塔の戦い」編完結へということでの漫画家の夜麻みゆきさんって言うの?

山田玲司氏(以下、山田):何か人気シリーズで、それが打ち切りになっちゃって続きが読みたい人たちがいっぱいいたんだよね。それでクラウドをやったらあっというまに400万ぐらい集まったんだって?

乙君:はい。

山田:それで何か動いたっていう話ですよ。この話何が言いたいかって、いい話だとは思うわけ。ただ、これっていろいろなことがあって売れないからもうダメだってことで出版社から見切りつけられたんだよ。

なのにビジネスとして成立しますよって話になってくるじゃん。これって大手の出版社がダメみたいな感じになるじゃない? だからここで1つ大きな何かが起こっちゃったよなっていう。

乙君:一応過労による体調不良から漫画を描くことができない状態に陥ってしまった連載終了ということなんですよね。「ガンガン」で連載されてた作品で、そこからGファンタジーというとこに移籍して完結しないまま。

山田:じゃ、打ち切りじゃないの?

乙君:過労で。体調不良で。

山田:ああ。それで。でもそこもあれだよな、編集主導だったら元気になったらやればいいわけでしょう? 

乙君:まあそうなんですけど。

山田:クラウドをやらざるを得ない状況にあったっていうことで。

乙君:切られたってことでしょうね。

山田:これはすごくいいよね。これってどういうことかっつうと、基本、ポピュリズムで動くっていう。人気があれば続く。人気がなかったら終わる。それでじゃあクラウドでやれるだけの人気があるのかどうかっていうところのラインの探り合いになってて。

潜在的にはマニアはいる。だけど、「どれぐらいいるかわかんないから試しに聞いてみましょう」というのを結構いたっていうふうにして、いくつかの漫画が盛り上がってくだろうなと思うんだけど。

これってそもそもの話で言うと。

乙君:そもそも論。

山田:一番の変化は雑誌からスマホに変わった瞬間に起こったことの流れにあるよねっていう話です。これって結構大きくて、少年ジャンプに載れば甲子園出ちゃったからしばらく食えるよみたいな。

もちろんそれは幻想なんだよ。打ち切られて忘れられる作家のほうが多いから。ただ、とりあえずの甲子園はあったっていう話なんだよ。

乙君:みんなが目指すところがあったと。

山田:そう。だから歌ってたら紅白、武道館みたいな。要するにここに行けばっていう聖地があったんだけど、とうとうここへきて、力を失ってきたなという感じがあって。今日(収録に)何で遅れたかって話、ちょっとあるんですよ。

乙君:はい。言い訳始まります。

中国でのマンガ需要

山田:違う。この話、実を言うと中国市場の話の打ち合わせをしてたんです。

乙君:チャイナ?

山田:チャイナ。今、中国では7億人の人が漫画を読みたいと思ってる。

乙君:へえ。ほうほう。

山田:数がちょっとおかしい。その誤差が1億人なんだって。だから約7億から6億の間ぐらいじゃんみたいな。

乙君:すごいね。さすが中国。

山田:もうぼんやりしとるんじゃの世界じゃん。

乙君:ぼんやりというかもうざっくりしとるんじゃの。

山田:日本は漫画読む人の数も減るし、お金のある人も減っちゃったし、そもそも漫画を買う人がいなくなっちゃった。それまでは漫画を読むっていうことは漫画を買って読むということだったんだけど基本的に今タダで読めちゃう。

タダで読めちゃうって時代になったときに、どうやって漫画を売ったらいいのかっていうのの中国のほうが先に行っちゃってるらしい。で、俺たちはどうしたらいいかって話をしてました。

で、来週ですよ。公式でがっつりやります。スピリッツと小学館の偉い人も呼んで。その辺りどうすんのって話。要するに底が抜けちゃってるんだよ。中国のほうが対応できちゃってる。市場に関して。

ただしあの人たちは漫画描けないんです。

乙君:なるほど。クリエイターがいないんだ。

山田:何でかと言うと俺たち何十年、(手塚)治虫からのラインを持ってるわけじゃないですか。治虫からの遺産があって生まれながらにして漫画ネイティブなんだよ、俺たちは。そこで俺なんかだと30年以上やってるみたいなこういう人がごろごろいるのがジャパンなわけ。

これがまた甲子園なくなっちゃったから食えなくなってんだけど、こいつらを使って中国に殴り込みに行かねえかみたいな。

乙君:おおー!

山田:ヤーヤーヤーですよ。そこはお前、CHAGEになってほしいわけ。まあいいけど。殴りに行こうかなわけですよ。そんな流れがありますよっていう話なんです。

マンガの戦乱期が始まった

今どういうことかっていうと、戦乱期です、はっきり言って。戦国時代です。要するに太平の世が終わったんです。

乙君:終わりましたか。

山田:そう。それで俺が思ったのが、昔はポピュリズムって安心できてたの。要は売れるものはいいもので売れれば何とかなったんだよ。だけどその売れるっていう問題もポピュリズムの話で言うと売れるJ(週刊少年ジャンプ)みたいな。

Jがでかいからこそのマニアックなガロがいられたっていうのがあるわけよ。ポピュリズムの人がいるからみたいな。

乙君:これ、もしかしてトランプですか?

山田:知らないですけど。この人はお金が入ればいいみたいな人らしいじゃないですか。主義主張じゃないらしいじゃないですか。未来がどうなろうとそういうことはどうでもいいらしいじゃないですか。FIRSTなわけ。アメリカさえよければいいと思って。だから地球にはアメリカしかないと思ってるみたいな。

でも地球にはアメリカしかないわけじゃないですよって言ってた人もいたんですよ、ここに。ゴアさんという人なんだけど。俺知ってる人なんです、この人。これがこの間で揺れ動く、要はポピュリズムって市場がでかければここまで含まれてたの。

乙君:そうですね。多様性を担保できますからね。

山田:ただこれ、市場が小さくなってくるとこっち側にスーって寄ってって、非常に質が悪くなってくる。それは政治家の質を見ればわかると。別に誰のこととか言ってるわけじゃないですけど、ポピュリズムの末期というのは非常に貧しいものになってしまうっていう。

そこでこの戦乱期、そのまんま終わっていいのかっていうことをずっと考えてたんですよ。そんで俺の戦略。ルパン三世っているじゃん。俺は仕事とはルパン作戦で行くべきだってよく言ってんじゃん。

乙君:ああ、言ってましたね。

山田:「お前はこの才能がある」とか「お前はこの才能がある。よし、チーム組んで何かやろうぜ」と言って大手の大企業とかそういうものから離れて単独で冴えた連中だけが組んで。名もなき連中たちがみたいな、その作戦に行くべきだと前から言ってて。

これ実際に今元気がいいところはみんなそうだよね。俺もさっきまでカッキー(注:柿内芳文氏、星海社新書編集長)といたんだけど、あいつも脱出組というかみんな大手でいて違うなと思ってパンパンパンって個人でやって、それぞれチーム組んで動き出すみたいな流れなんです。

漫画家って今までは出版社に預けておけば勝手に売ってくれたんだけど、もうそれも終わったと。どうしたらいいかっていうさなかに、俺、絵本出しましたよね。

乙君:出しましたね。

山田:そうなんです。これ、このまんま行ったら本屋さんに並ぶか、並ばないかっつって消えていくんだよ。じゃあ、どうやってこのおもしろさを伝えたらいいか。もうまさにUMAですよ。未確認生物ですよ。未確認絵本ですよ。

未確認絵本を確認させようっていうプロジェクトですよ。そのときに俺が思ったのが未確認才能のやつらだよね。だから本当は才能があるんだけど確認されてないやつっていうのがこのヤンサンやってるといっぱいいるっていうことに気が付いたんで。

乙君:そうですね、もう。

山田:いるんだよ、もう信じられないぐらいいるよな。

乙君:うん。

拡散されるコンテンツつくりました

山田:漫画募集すればマジか、こんなすげーやついるのか。音楽募集すればそんなやつみたいな。それで今回僕が考えたのが、この『UMA水族館』を勝手にPVつくって拡散するプロジェクト。ルパン作戦で。

そして思ったんですけど、この番組の主題歌選手権で俺、ものすごく気に入ってたんだけど入賞できなかった曲あったじゃないですか。ギャラクシーZってやつ。あいつの曲があまりにもよ過ぎる。しかも未確認生命体彼女なんで、タイトルが。未確認生命体系彼女か。何ニコニコしてんだよ!

乙君:未確認生命体系女子ね。大好きだという割にはタイトルもわからないこの、何て言うんでしょうね。

山田:やっぱり混線しておるんです。

乙君:わかります、わかります。7億と6億の差に比べたら全然。

山田:どうでもいいですよ。要するに、ただ「小学館がんばって」って言ってるだけじゃダメじゃんっていうことになっちゃったんだよ。俺みたいなベテランなんかとくにそうだよ。何かあんた、やれることないんですかみたいな。

ありますよ、わかったよ。このPVつくりました。先週話しましたね。この話したの先週だっけ?

しみちゃん:先週です。

乙君:PV流しましたね。

山田:それでせっかくだから公式でも見てもらいたいんですよ。何でかっていうと映像はファミリーの人がやってくれて、アニメも加藤オズワルド君という。

乙君:全部手づくりなんですね。

山田:だからみんなルパンだよ。チームやって一緒にやろうぜって言ってつくった『UMA水族館』のPVがあるんで勝手につくりました。ちょっとご覧ください。

山田:はい、どうもすいませんでした。でもいい曲でしょ? これちょっとやっぱり曲のほうがいいなって話になっちゃいがちで絵本を忘れてしまいがちなんですけど、本当に曲がすばらしいというか。やっぱりもう本当に買ってください。おもしろい本なんで。それはともかく。

乙君:ともかく。

山田:こういうものをもうつくれるんだったら、単行本作業の中に入れちゃっていいんじゃないかっていう話なんです。

乙君:はいはい。

ファン心理を巧みに突く

山田:だって『蒼天航路』最新刊出るときにPV出ましたっつったら見たいでしょう?

乙君:見たいー! もう終わってるけど見たい。

山田:でしょ?

乙君:うん。

山田:『蒼天航路』続くってなったとするじゃん。あのあとの話書きますっつって。

乙君:欣太さんが?

山田:欣太さんが。欣太さんが始めたとするじゃん。PV見たくね?

乙君:見たいというかもうヤンサンの総力を挙げて勝手につくりますよ。

山田:うるせえよ。勝手につくれよ。

(会場笑)

っていうかファンってそういうもんじゃん。

乙君:そうですね。

山田:それじゃあ作者と一緒にファンと一緒に次の単行本出るときにPVつくってみんなで盛り上げようかみたいな祭りするのもよくないかって話じゃないですか。

乙君:そうですね。ファンの囲い込みって言ったら変ですけど、クラウドファンディングって特典的なものがあるわけじゃないですか。対価として。だけどそういうんじゃなくてもう制作も全部そこまで広げて祭りのようにやるっていうほうが僕はおもしろいなと思いますね。

山田:いや、そう思う。何か1個好きな人が何かをやってたら、ただのお客さんでいたらつまんないって思う人がいて、より好きなんだ、だからできれば俺の力を何とか使って。それこそあれだよ。笑顔にしたいってやつだよね。

乙君:江川?

山田:いや。欣太さんを笑顔にしたいってやつだよ。

乙君:欣太先生を笑顔にしたい。

山田:お前、欣太先生へのTwitterが数少ないとか言うなよ。

乙君:だってあの王欣太が。

山田:そしたら欣太さんのフォロワーを増やしたいじゃん。ファンとしては。

乙君:増やしたい。

山田:それは何か別に罪なことじゃないんだよな。ただ、大企業主体になって今年の売り上げはいくらなければいけないみたいな話からスタートすると気持ちってもんがなくなっちゃうから、コンテンツに魂がなくなってつまんなくなっちゃうんだよ。

次回はマンガの未来がテーマ

逆だって話だよ、この話は。かつてのスーツ野郎、スーツ野郎よと。お前ら、スーツになる前だって漫画好きだろ? と。漫画好きだから編集者になりたかったんだろ? っていう人たちが来てたのに、何で売り上げの話とかばっかりして、みたいな。

という話を来週しましょう。

乙君:来週しましょうか。

山田:つまり来週来るスーツ野郎はスーツ野郎中のスーツ野郎ですから。

乙君:マジで?

山田:ボス格ですから。でも俺とずっと戦友です。だからずっと一緒にやってきた。そしたらあれよあれよという間に編集長になり、さらにもっと偉い人になり。今何とかっていうサイトのボスですよ。

乙君:マンガワンでしょ?

山田:おー、そうそう。

乙君:何で隠すのかなって。

山田:マンガワンのボスですよ。

乙君:今をときめくマンガワンの。

山田:そうそう。でもその人は本当は漫画好きなのよ。俺付き合っててわかるんだけど。小学館の中でもとくに漫画好きなんじゃない? 愛してる人なんじゃない? だからその人と、じゃどうすんだって話を来週したいなって話ですね。予告ですよ。

じゃないと何か漫画ってタダで読めるWebの漫画の特典として紙の本が残るってだけになってしまい、この道のりがもう見えてると。そうすると、昔レコード屋さんってあったよねみたいな時代になっちゃったじゃないですか。マニアのための場所みたいになりがちだな、怖いねという話に。

乙君:そこもどっちが。もうしょうがない部分もありますけどね。ということで来週のヤンサンは7月の12日、『CICADA』第2巻発売記念で。

山田:そうなのよ。『CICADA』出るのよ。

乙君:そうなんですよ。だからそれも含めて漫画の未来を考えるっていう回ですね。皆さんからもどしどし。そしてなんと公式生放送。2週連続。

山田:2週連続で。しょって立つから。

乙君:しょって立ちますか?

(会場笑)

山田:適当なことばっかり。すぐ謝罪するくせに。

乙君:なので、みなさんぜひお楽しみにしててください。では続いてのニュース行きますか。

山田:はい。

制作協力:VoXT