建築家・坂 茂氏と石山友美監督の縁

石山友美氏(以下、石山):こんにちは。石山友美と申します。

『だれも知らない建築のはなし』という映画を監督しました。

だれも知らない建築のはなし DVD

この映画は、2年前に渋谷のシアター・イメージフォーラムという映画館で公開していたんですけれども、同じくらいのときに、大分の映画祭でもこの映画を上映したことがありまして。

ゆふいん文化・記録映画祭という映画祭で、私はその映画祭にうかがうことはできなかったんですけれども。ちょうど坂さんが、大分県立美術館のお仕事をなさって、オープンぐらいのときだったんですかね? ご縁があって坂さんに、その映画祭で映画を観ていただいたという経緯がありました。

これが公開時の映画のポスターなんですけれども、建築家や建築関係者にインタビューして、それをまとめた映画です。この映画のDVDが発売されるにあたって、こちらの書店でなにかイベントをしたいということになりました。

それで、坂さんがこの映画に登場するさまざまな方と交流があることはおうかがいしておりましたので、私のほうから、ぜひ坂さんにトークをお願いしたいとお頼みして、快く引き受けてくださったんです。今日はよろしくお願いします。

ちなみに、この映画をご覧になってくださった方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

石山:あ、どうもありがとうございます(笑)。でももちろん、映画をご覧になってない方もいらっしゃると思うので、まず少し、私のほうから映画の説明をさせていただいて、そのあと、この映画にまつわる話を坂さんとトークさせていただきます。

「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」の補足展示のはずが……

この映画はもともと、イタリアの「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」という大きな建築の展覧会で、2014年に展示上映されていたものです。その展示の様子が、この写真です。

この年の「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」全体のコミッショナーを務めたのが、映画の登場人物でもある、レム・コールハースです。彼が「近代建築というものがいったい何だったのか」ということを、反省もふまえて、テーマとして取り上げたいということで。そのテーマのもとに、世界中からの参加国がそれぞれリサーチプロジェクトを立ち上げ、最終的な成果を展示するというものでした。

そのとき日本のチームは、70年代の建築を主に取り上げたんですね。70年代にあらわれてきた「日本の近代の挫折」のようなものを、建築家たちがどうやって克服していこうとしたのか、その試みを展示したいということで、そのようになりました。

それで、「展示の補足的に、映像をつくってくれないか」と言われて、私が映像をつくることになったんです。はじめから、建築家にインタビューをするということは決まっていました。登場人物はほぼ最初から決まっていた状態で、私のところに話がきたわけです。

実ははじめは、「10分程度にまとめてくれ」と言われていたんです。けれども、実際にインタビューに行ってみると、1人2時間も3時間も貴重なお話をしてくださった。10分にまとめてしまうのはもったいないということで、私のほうで、だいたい1時間ぐらいのものをつくったわけですね。

「新国立競技場問題」で世間的な関心が高まるなかの劇場公開

(スライドを指して)撮影の様子です。左側にいるのが、チャールズ・ジェンクスさんという建築理論家で、右下が安藤忠雄さんです。

それで、イタリアで展示上映を半年間くらいしていたんですけれども、そのあと、縁があって「日本の映画館で公開しないか」というお話をいただきまして、劇場公開することになりました。

建築の専門的なところまで踏み込んでいたものだったので、「一般の方が来てくれるのかな?」という不安もあったんですけれども。ふたを開けてみると、けっこう来てくださったんですね。

これが公開時の様子です。

満員になった日もあって自分が思っていたよりも反響は大きかったです。というのは、ちょうど、新国立競技場の問題が世間を騒がせていたときだったので。そういった社会的な関心と、この映画の公開のタイミングが重なって、「建築家っていうのは何を考えているんだろう?」ということを探りに、観客の方が来てくださったという感覚がしております。

映画の原題は『Inside Architecture-A Challenge to Japanese Society』というタイトルをつけていました。これを日本語でどういったタイトルにしようかと、配給の方やいろんな方が考えてくださって、『だれも知らない建築のはなし』というタイトルになりました。

先ほど、もともと「10分間ぐらいの映像をつくってほしい」と言われていたのに、60分ぐらいになってしまったという話をしたんですけれども。なぜ10分間なのかというと、展示を立って見てくださっているお客様に対して、60分はあまりにも長いと。

それで苦肉の策で、チャプターごとに分けて、1個のチャプターを見ただけでも立ち去れるようにしました。1個のチャプターがだいたい10分から15分くらいと言い訳をして、最終的なものにつくりあげていったんです。

「作家性のある住宅」がつくられはじめる70年代

4つの章立てをしまして、第1章では70年代の話を建築家の方にうかがっています。それに続いて、第2章では日本のポストモダン建築。70年代を発端として、80年代、消費社会がだんだん進行していくときに、建築家たちが何を考え、どんな建築が生まれていたのか、ということをフューチャーしました。

第3章では、消費社会のピークといいますか、バブル景気が日本全体を覆っていたとき。そのとき、主に、磯崎新さんが日本の熊本や富山など、いろんな場所でやっていたコミッショナープロジェクトに焦点を当てて描きました。最後、第4章は、バブルがはじけたあとから、現代にいたるまでの流れをインタビューしました。

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