ライム+日光は危険?

オリビア・ゴードン氏:ビーチでのんびりしながらビールを飲んでいる場面を想像してみてください。日光を浴びながら飲み物にライムを絞ろうとすると、汁が飛び散ってしまいます。ありそうなことですよね?

ですがライムに含まれる化学物質と日光の紫外線で、肌は大変なことになってしまうのです。

症状は1日から2日後に表れます。まるで日焼けをしすぎたような、かゆみを伴う水ぶくれができるのです。

これはマルゲリータ皮膚炎と呼ばれる、ある意味本当の「ライム病」(感染症のライム病とかけている)です。「メキシコビール皮膚炎」とか、旅行会社の名前をもじった「クラブメッド皮膚炎」などとも呼ばれ、バカンスから帰ってきた時に起こることがある発疹です。

医学用語では「植物性光線皮膚炎」と呼ばれ、その名前の通り植物と光に関係した病気です。とくに日光に含まれる紫外線のような、高いエネルギーを持つ光と関係があります。

こうした皮膚の過剰な反応は、「フラノクマリン」という物質によって引き起こされます。これは植物が自らを、お腹をすかせた動物などから守るために生成しています。

この物質はセロリ、パセリ、パースニップ(人参に似た白い根菜)といった仲間の植物や、レモンやライムといった柑橘系の果物にも含まれているものがあります。

フラノクマリン自体は、植物に含まれている間は細胞にダメージを与える毒ではありません。植物の細胞が破壊されて外に飛び出し、日光にさらされると影響が表れるのです。

日光に含まれる紫外線のエネルギーによって、フラノクマリンは化学反応を起こして別の生物の細胞内にあるDNAと結合、そのDNA構造をめちゃくちゃにしてしまいます。

DNAがダメージを受けると、細胞は本来の役割を果たせなくなり、時には死んでしまいます。

こうした反応は動物や虫に食べられないようにするためで、毒の存在によって「食感」を最悪にするのです。

学習した結果、こうした毒を含む植物を避ける動物もいますが、中には栄養素を求めて食べられるように進化したものもいます。

例えばある毛虫は、食べ方を変えることで植物の防御を回避しました。

葉っぱを丸めて、その内側で食べるのです。こうすればフラノクマリンがたくさん含まれていても暗い所で食べることになり、紫外線によって毒の成分が活性化することもないのです。

別のイモムシは、体内で特別なタンパク質を合成し、フラノクマリンの成分を解毒するのでDNAなどにダメージを受けることはありません。

人間の場合、向かい合った親指や料理の技術を活かして、植物の防御機構をかいくぐってきました。ですが、フラノクマリンは注意していなければ今でも影響を受けてしまいます。

例えばライム含まれている3種類のフラノクマリンは、果汁や皮に濃縮されているので、かじったり、浜辺で好みのドリンクに絞ったりすれば活性化されてしまうのです。

フラノクマリンはベルガモットというミカンにも含まれています。

ベルガモットは紅茶のアールグレイの香り付けや、香水の材料にも一般的に使われています。香水の調合師がベルガモットオイルの代替品を見つけるまでは、「クラブメッド皮膚炎」のように、ベルガモットの香水を屋外でつけた人が水ぶくれや発疹を引き起こすことがありました。

日焼けをした時に香水の成分が肌に付着していて、そこに紫外線が当たって皮膚細胞のDNAにダメージを与える化学反応が起こったわけです。そう、植物性光線皮膚炎ですね。

見た目はひどい皮膚炎に見えるこの症状の原因は、皮膚へのダメージという点では日焼けとよく似ています。日焼けの場合、特定の紫外線がDNAにダメージを与えます。すると免疫システムが細胞の損傷を修復し始め、細胞がガン化するのを防ぐのです。

もし発疹ができたら、一般的には「コルチコステロイド」という、ホルモンと同じ効果を持ち、免疫システムにはたらきかけて炎症を抑える薬が用いられます。大抵症状は2週間程度で収まります。

ですが予防に1番いいのは、ライムの果汁などの原因となる物質が付着したらすぐに洗い流すことです。ビーチでライム果汁が付着して、しかもシャワーもないなら、シトラスの香りがするドラキュラになって日陰に潜んでいましょう。

ですがインターネットは病院ではありません。もし不安な発疹があれば病院に行くようにしてくださいね。