絶対音感を手に入れるために

ハンク・グリーン氏:あなたはランダムに音程を聞いて、そのキーが何であるかわかりますか? 例えばそれがDであるとか、絶対Aフラットだとか。

もしかしたら予想するのが得意なだけかもしれませんし、絶対音感という珍しい才能を持っているのかもしれません。そうなるとあなたはモーツァルトと同類ということになります。

絶対音感は、楽譜を見なくても音の高さがわかる能力ですから、音楽家にとっては特に助けとなります。ほとんどの研究者は、子供の頃からそれを学ばなければならないようですが、たくさん訓練をすれば、大人であってもまずまずの絶対音感を培うことは可能なようです。

多くの研究結果は、絶対音感を手に入れるために、発育の非常に重要な時期である6歳頃から音楽の訓練を始める必要があると勧めています。この期間に、人の脳は、どの神経経路が有効であり、どれが不要であるかを決めます。

キーには音の意味が付されます。例えば「これはCである」といった具合にです。ちょうど、自分の隣にいる、ふわふわでヨダレを垂らしているものが「犬」である、と学習するのと同じです。

また、中国語のような声調言語という、声調で言葉の意味が変化してしまう言語を話す場合、絶対音感を習得する可能性が高くなります。なぜなら生まれた時から脳が異なる音調と異なる意味の組み合わせに触れているからです。

しかし、わざわざ音符を学ぶということがないなら、脳は効率的に機能するために余分な、音を判別する神経回路を削除してしまうのです。この研究のほとんどが相関的、つまり科学者が可変性のものを何もコントロールせずに研究したものとなっています。

例えば赤ちゃんに特定の言語と音調の組み合わせを教える、といったことはしていません。しかしどのように脳が発達するのかといった既知のことを考慮に入れると、筋の通った推論と言えます。

もしあなたが一番重要な発育の時期を逃してしまったとしたら、研究者はあなたが本当の絶対音感を習得することができるかどうかは定かではないとしていますが、いくつかの研究によれば、成人でも音高を判別する訓練をすることができ、その結果は何ヶ月も続くそうです。

「Cognition」誌に載せられた2015年の論文によれば、絶対音感を持ってはいないものの、さまざまな音楽経験のある17人の大学生を対象に研究が行われました。

まず、どれくらい彼らがさまざまな音高の名前を言えるかどうか、聞いた音を再現できるかという基準値を調査しました。そして被験者は180のピアノのキーを聴くトレーニングをし、それが何であるか答え、間違っていれば正されるという訓練をしました。

それが終わった後被験者が再び基準値を測るテストを行なったところ、少なくとも8パーセントも結果が良くなりました。半年後に再テストをしたところ、彼らのうちの6人のスコアはまだ高いままでした。

この研究と他の研究はまだ規模が小さく、被験者たちも子供の頃から絶対音感を培ったような、正確な対象ではありませんでした。しかし、あなたも懸命に努力すれば、正しい方向に少しくらいは近づけるというわけです。