イベントの価値は、コンテンツよりも「場」

ヒラヤマ:徳力さんがいわれてるところのセミナーっていうのと、皆さんのセミナーっていう単語が合ってるかどうか。どういうイメージですか?

徳力:セミナーは話だけ聴いて帰るイメージです。

小島:インタラクションが全然ない。

徳力:そうですね、具体的な○○さんとかって言う名前を出すのははばかられますが……。

(一同笑)

出版社さんのでかいセミナーとか、本当に話を聴いて帰るだけというやつが私の「セミナー」のイメージです。ただそういう出版社さんでも、カジュアルな勉強会スタイルのもいろいろされてますし、でかいセミナーとかもできるだけネットワーキングの時間を作ろうとかってありますけど、リアルでその場所に行くからにはそういうオフのコミュニケーション、それがプライスレスなんですよね。その場に参加した人しか参加できない。

それを考えると、実はセミナーってなんかいかにも主催者側がすごいこと言わなくちゃいけない、今回の「高広さんのプレゼン」みたいな基調講演的なのを自分たちで作らなきゃって思いがちじゃないですか。

でも、僕は勉強会を繰り返していて思ったのは、プレゼンを自分たちでやらなくても良いんだな、ということで。お客さんにも頼んでプレゼンをしてもらい、質問をさせてもらう。最近は、うちが勉強会やるときは「すいません、僕らが勉強をするためにやらせてください」って先に言い訳しているんですけど。

そのほうが実はお客さん同士にとって役に立つ。当然、必ずしもうちの会社の宣伝にとっては良い話ばかりにはならないんですけど、それによって、場所を提供する側のポジションになることは重要だと思ってます。

ウェブセミナーの使い方

徳力:イベントっていうフレーズが、日本だとどうしても、でかいイベントで高広さんみたいな有名な登壇者を呼び、それをエサにお客さんを集め、名刺を集め、ってなりがちだと思います。でも、実は高広さん目当ての人が自分たちの見込み顧客とは限らないから、「獲得」と「育成」でちょっとずれていく感じはありますよね。

最近僕も、勉強会とかをオープンにしないことにして、育成したいというか、関係軸を深めたい人たちだけをクローズドに集めてるんですね。アンバサダーサミットみたいな大きなイベントはオープンにやりますけど。使い分けをするようにしていますね。

そういう意味で、今日のイベントマーケティングっていうテーマで僕が重要だと思ってるのが、日本だと「イベント」って定義されにくいほうの小規模なイベントのほうが可能性がすごいあるのではという点です。

高広:ウェビナー(ウェブ上で行なわれるセミナー)はどう?

徳力:ウェビナーはあまりピンと来てないんですけど。セミナーはセミナーでありだと思うんですよ。日本全国にこういうイベントに来れない人がたくさんいるのを考えたら、ウェブにも出すべきだと思います。

さっき、コンテンツを二重三重に使うという話がありましたけども、あれはすごい大事だと思います。二毛作三毛作はすごいやるべきで、イベントって、さっき高広さんが言ったように、そこだけにピークを持ってきちゃうと、実際、何も残らないんですよね。

これをネット上に残すのがすごい大事で、ログミーさんみたいに全文起こしするのは大変だと思うのであまりお勧めしないのですけど、レポートを出すとかスライドシェアを出すとか、勉強会に出たコンテンツを表に出すことによって「この会社とつながっとくといろいろありそうだな」という雰囲気を出すのはありですよね。ウェビナー的なやつは日本だと意外に流行らないのは残念だと思うんですけど、海外ではすごい流行ってますよね。

ウェビナーの成否は"コンテキスト"がカギ

小島:ウェビナーは僕も懐疑派だったんですけど、最近考え方を改めつつあるというのが現状で、ウェビナーが通用するコンテキスト、共通の理解があるんですよね。いま、AWSの場合だと、ウェビナーを何に使っているかというと、玄人のためのディープダイブ。誰もが知っているようなやつじゃなくて、あるサービスの深いところを徹底的にエキスパートが話しますよと。

集客数は少ないかもしれないけどコンテキストがあっているので、十分ウェビナーっていうのでできるんですよね。細かいテーマだけだと実際に出かけていってイベントに参加するって難しく、コストが高いのかもしれないけど、30分だけオンラインで繋いで、色んな会とかも聴ける。

集まってるのはみんな深い人なので、質問自体がすごく参考になるっていう、その場はすごく良いと思います。コンテキスト設定ができれば、ウェビナーはいけるんじゃないか。

徳力:サポート代わりかも知れないですね。うちもZendesk使ってて、Zendeskのセミナーにわざわざ出かけていく気にはならなかったんですけど、ウェビナーやってたので、見たらすごい良く理解できて。

高広:意外と、ウェビナーだとschooみたいなのが最近人気なので、ウェビナーのやり方次第で大きな市場があるんじゃないかと。

徳力:可能性はすごい感じます。

デジタル技術とイベントの組み合わせ

高広:マーケティングにウェビナーを使うとなると、たとえば参加者がウェビナーも生放送的なのと録画バージョンとがあって……例えば、録画バージョンとしてのウェビナーはユーザーにとってはオンデマンドで使いやすいくて、一方で何をどこまで見たのかというデータをとるようにしておけば、その数値をもとにコンテンツの見直しができる。

あるいは「この人はここまで見たから、次はこのメールを送ろう」みたいな、クロスチャネルなマーケティングも可能になる。ウェビナーの見られ方によって、セグメントしていくのかどうかっていうのにつながるようになるし、それは興味関心度合いを表すものなので。ウェビナーの使い方って今後、結構重要なんじゃないか。

小島:そういう意味ではうちもウェビナーはまだリードジェンには使えてないんですよね。エンゲージメントを深めるとか、理解を深めてもっとロングセラーにつなげるようなところには使えてるんですけど、新規のところはまだ方法論がうちは分かってないのかもしれないです。でもコンテキストさえあえばウェビナーは使えるので、日本全国リーチできる。可能性を感じますよね。

高広:普通のセミナーだったらできないけど、ウェビナーとかで考えられるのが、さっき、イベントを新規顧客のため以外でどう使うのかと言う話をしましたけれど、既に顧客となってる人のメールアドレスを持ってて、その人たちが商品を買ったあとになぜか商品を見に来ていたとする。ないしはその商品のQ&Aが読みに来ていたとする。それはおそらくその商品に関して何か困ってる事態が生じてる。

そのQ&Aサイトや商品サイトに、商品を買った人たちが見に来てくれるっていう状況をかんがみると、どのページを見たのかというセグメントから、その人たちだけに向けたセミナーをやるとか。ページにきてから半日後に動画セミナーを送ってあげるとか。そういう使い方が今後多様化する気がする。

なので一カ所に人を集めるという考え方だけではなくて、あくまでもセミナーとかイベントはコンテンツのネタというか素材と考えて、それを今後どれだけタイミングをパーソナライズして、このタイミングでセミナーのある部分を送ると、その人が助かるっていう、小島さんの言うところのコンテキストみたいなものを、デジタルな技術と合わせることによって、もっといろいろできるかと思います。

イベントでの効果的な「アンケート」の取り方

ヒラヤマ:もっともっと聞いていたいんですけれども、セミナーではなく、インタラクティブにコミュニケーションをしながらやっていければなと思います。ここからちょっと挙手いただいて、質問を受けさせていただければと思います。いかがでしょうか?

質問者:貴重なお話ありがとうございます。イベントなどのアンケートについて、今日登壇されている皆さまがアンケートをとる時、紙なのかデジタルで取られていらっしゃるかなど、アンケートについてこうしたらいいというのがあればお伺いしたいです。

アンケートっていうのは実はすごくイベントに参加した人の声が得られるものだと思うんですけれども、回収率であるとか、どうやったら書いてもらえるとか、企業様のイベントによって色々あると僕は思っていて。

例えばアンケートを書かないで、振り返りシートと書くことできちんと全部埋めてもらうというイベントもあったりするんですね。そういうのを含めてアンケートの実践例があればお話を伺いたいなと思います。

小島:最後の方は大変そうなので、はじめからいきます。

(会場笑)

アンケートは悩んでいるものの内の1つです。古くて新しい課題というか。結局そのイベントに来ていただいた、次のアクションでアンケートを起点にすることが多い。特に大規模になるとそうですよね。一人一人のお客様を把握できないので、アンケートの情報が起点になります。そこにどれだけ情報をいれてもらうか。

情報の、質問の項目を増やしていくと回収率が低くなったり、質問への回答がおざなりになると。簡単にするとスクリーニングが難しくなると。ということで、結構永遠の課題のような気がしますけれども。ウチが今やっているのは、実際に取り得るアクションからアンケートを設計しているというのはしてますよ。

デジタルよりも紙のほうが回収率が高い

小島:結局、色々議論できないことを聞いてもしょうがないじゃないですか。ということで、ウチだと分かりやすくいうと、プロジェクトとかがこの後、起こり得るかどうか。その人が決済のエリアに近いのかどうか。話を聞いてみたいかとか。そういったファーストコンタクト、相手を受け入れられやすいファクトをどうとるかに、割とフォーカスしています。

その後の情報は、コンタクトを取った後に取れば良いかなと。全部取りきらなくて今はいいかなと。まずはコンタクトを取ることが大事。コンタクトしても良いよっていうサインをもらうこと。

紙かデジタルかは、すごく良い質問で、デジタルだとほぼ回収が難しいですよね。追い立てられないので。紙だと出口で立って待っているじゃないですか、人が。皆がこう、出して行くじゃないですか、何となく出すんですよね。でもデジタルって他の人が出しているかどうか見えないので。あれ、見えるとなるとまた違うのかもしれないんですけど。その行動をフォローしてくれないんですよね。

今、データエントリーの口数はものすごく大変なんですけど、ほとんど紙です。この間の「AWS Summit」っていう我々独自のブースで出したんですけど、その時の来場者が8000人ぐらいいるんですけれども、アンケートは紙です。なぜ電子にしないのかって言われますけど、結局紙でとるのが今のところ一番良いですね。

でも、もっと良いソリューション、先程振り返りシートってすごく良いなと。早速使おうかなと(笑)。大きいイベントで、どうやって効率的に良質な情報をキャプチャするかは、すごい課題ですね。でもそこがないとイベントは意味がないはずなので、もし次のお2人から良い案があればいただこうかなと思っています。

なぜアンケートを取るのか、を考える

徳力:僕もアンケートは正直悩んでますね。あんまり良いアイディアはないです。ただ、小島さんと一緒で紙ですね。もう出口回収。何ならお土産と引き換え。そういうので出来るだけ回収するようにしています。

それと、ウチの場合には、アマゾンさんみたいに大量の人をソーティングする必要はなく、社名をみれば大体分かるので、もうアンケートはシンプルにNPSっていう顧客推奨度と自由記入枠一つぐらい。

出来るだけシンプルにして、でも出来るだけ書いてもらう時間をちゃんと取るようにしている、それぐらいですかね。本当、デジタルなアンケートは何でしょうね。そっちの方が便利だ思うし、僕はどっちかというと手書きがすごい嫌いなんで、デジタルの方が好きだったり。でも、一般的には手書きの方が回収できる印象がありますね。少なくとも僕がやっている周辺では。

高広伯彦氏(以下、高広):そもそも、なぜアンケート取るんでしたっけ。その前提が何のために取るのかによって色々と答えが変わりますよね。

質問者:実際に会ってウチの製品を、例えばスモールサンプルで使ってもらうとか。営業のために。

小島:でも、それは多分もうアンケートを取らなきゃならないっていう状況に陥っていて、顧客の獲得からは一歩後退している気がするんですよね。そもそもセミナーとかのタイミングで何らかのレジストレーションをさせようとはしているでしょ。

例えばレジストレーションが必要ないのであれば、その時点でメールアドレスはとれているわけだからアンケートを取る必要はないわけだし。そこからアンケートに書かれているチェック項目をそもそも信用してないんですよ。

質問者:なるほど。

アンケートありきの考えを捨てる

高広:それよりかは、イベントやった後に、例えばイベントに行って配ったスライドをダウンロードできるようにしましたとか、あるいはイベントのサマリーをここのページに置いておきましたっていうフォローアップのメールを送った時に、そのメールに反応した人、興味関心を持った人に、そこにスクリーニングをしてやれば良いわけで。

結局、そのアンケートっていうので判断する必要がないんじゃないのっていう。「Digital Body Language」って言葉があるんですけれど、アンケートでかかれた項目よりかはクリックされたとか、サイトを訪れたとかっていう、送ったメールを開いてるか、クリックされてるかといったデジタルなボディーランゲージを重視した方が、よっぽど質の高いリストにはなるかと思うので。

それを使って、次はどんな風な仕掛け方をしようか、ということを考える方がいい。なので、そもそもアンケートがアンケートありきの考えを捨てれば良いんじゃないんですか。

徳力:それはすごく思いますね。うちで一番アンケートを何に使っているのかと言いますと、平均値をNPSで取ってその勉強会が満足されたかどうかということですよ。今後の企画用の参考にどっちかというと取っているイメージ。営業活動のクロージングとして考えると、確かに高広さんのおっしゃっている通りだと思いますね。