尿の色でなにがわかる?

ハンク・グリーン氏:みなさんは、摂取する水分の量により、尿の色が日々わずかに変わることにお気づきでしょう。でも、赤や緑など、驚くような色の尿を便器の中で見たことはありますか?

緑の尿は、ぎょっとしますよね。同様に、青、紫、オレンジの尿もありますし、黒のものまであるのですよ。

不思議な尿の色は、時に体の異常を教えてくれるサインです。一方で、単に特定の食品や薬品を摂取した時に現れることもあります。

では、どんなものを摂れば虹の七色の尿が現れるのか、順番に見ていきましょう。

まず最初は黄色です。これは正常な尿の色です。

尿の黄色は、赤血球を分解してできる老廃物であるウロクロム(ウロビリン)に由来します。黄色の濃度は、体内に含有される水分量により変わります。体内に水分が溜まっていた場合、尿は凝縮されウロクロム量が増えるので、より濃い色になります。

それが茶色のような濃い色であれば、もしかして肝臓や腎臓に問題があるのかもしれません。

しかし、抗生物質や抗マラリア薬のように、尿の色を濃くする薬品はたくさん存在します。また、そら豆やアロエ、ルバーブをたくさん食べても、尿の色は濃くなります。

ただし、蛍光色の黄色だった場合は、原因はウロクロムではありません。それがあなたの幻覚でなければ、単にリボフラビンかビタミンB2の過剰摂取で、尿として排泄しているのです。

ニンジンやジャガイモのような、ベータカロチンを豊富に含む食品や、ワーファリンのような抗凝固薬を摂取すると、尿はオレンジ色になります。また、尿路感染症の治療薬を使うと、尿は鮮やかなオレンジ色になります。

赤い尿は血液を連想しますが、実はそのとおりなのです。腎臓や胆のう、尿路に損傷や感染が起こったり、その他の原因で尿に血液が混ざると、尿はピンクになったり赤みを帯びたりします。

いずれにせよ、良くはないですね。

白や黒の尿も

ところで、原因は常に血液だとは限りません。ビーツ尿という現象では、ビーツを食べることにより尿が赤くなります。人によっては腸から赤い天然色素をたくさん吸収するため、余分な赤い色素が尿として排泄されるのです。

緑の色素を生産する、シュードモナスというバクテリアに感染することにより、緑の尿が出ることがあります。

しかし、緑の尿は、たいていは薬の副作用です。尿を野菜ジュースのエクトクーラーのような色にしてしまう薬品の1つは、手術中の麻酔薬としてよく使われるプロポフォールです。この薬品が肝臓で分解される時に生じる物質の1つが緑色であり、それが尿に排泄されるのです。

おもしろいことに、プロポフォールは尿を白やピンクに変えることもあります。生物学者たちには、その理由は完全にはわかっていませんが、プロポフォールにより尿酸が多く生成され、尿をピンク色に変えているのではないかと考えています。

尿を緑に変えうるもう一つの薬品は、人工染料やメトヘモグロビン血症の治療薬としても使われるメチレンブルーです。もう見当はつくと思いますが、メチレンブルーは青色です。これが黄色いウロクロムと結合することにより、尿はセントパトリックの日のような綺麗な緑色になります。

もともと排泄されるウロクロムのせいで、純粋な青い尿というものはなかなか見られません。しかし、アミノ酸の一種であるトリプトファンを吸収できない遺伝子異常を持つ人の尿が青くなることがあります。この疾患はごく幼いうちに発見されることが多く、「青いおむつ症候群」として知られています。

赤ん坊が吸収しきれないトリプトファンを、腸内バクテリアが分解し、結果としてインディカンという分子に転化します。このインディカンが空気に触れると、染料にもなるインディゴに変化し、おむつが青くなるわけです。

同様に、純粋な紫色の尿は存在しませんが、尿路感染症の治療にカテーテルを使用している人が「紫色採尿バッグ症候群」になることがあります。この場合の尿の紫色は、尿路のバクテリアが、尿中の分子を青いインディゴと赤いインジルビンに分解し、双方が混ざることによって発生します。

尿そのものは、排泄される際には紫色ではありません。これに化学反応が起こって紫に発色するには、高いpHとアルカリ度の環境が必要です。

尿路感染症の患者にはこのようなアルカリ性の尿が多く、採尿バッグは、尿が印象に残る濃い紫色になるには、うってつけの環境を提供するのです。

このように、不思議な色は多々ありますが、これらの虹の七色以上に不思議な、黒や白の尿も存在します。

白い尿は牛乳のように白濁しています。原因は複数ありますが、1つの可能性として、重症の尿路感染症からの膿で濁っていることが考えられます。稀に、リンパ液が尿に流入して白濁している例もあります。これは乳麋尿といわれる症状で、寄生虫(フィラリア)に感染することにより生じます。

黒い尿の原因はたくさんありますが、原因は尿が赤くなるものと共通している場合があります。アルカプトン尿症の患者には、特定のアミノ酸を分解する酵素が足りず、ホモゲンチジン酸が過剰に蓄積され、これが尿として排泄されると空気に触れて黒くなります。

問題は、尿がダースベーダー色になることだけではありません。ホモゲンチジン酸は細胞組織に軟骨状になって蓄積し、これを変色させ損傷を起こすのです。

しかし、ほとんどの場合の尿は、普通の黄透明です。服薬後にオレンジや緑に変色することもありますが、それほど心配することはありません。

とはいえ、異常な色の尿は、医師が体の異常を判断する最初の手掛かりとなります。ですから、便器の中を見て、尿の色の異常をチェックするのは、損ではありません。もしおかしいなと感じたら、医師に相談しましょう。