売買ルールの改良とは?

中原良太氏:こんにちは。株式予報の中原良太です。今回は「売買ルール改良のすべて」というテーマで、ビデオ講座を始めさせていただければと思います。

今回の内容は、システムトレードをやっている方が、売買ルールや投資戦略と呼ばれている自分の投資法やトレード法をどうやって改良していくのかをお話ししていきたいと思います。

この講座の目的は、売買ルールを改良するために、私たちが使えるすべての方法を理解していただくことです。もしあなたがシステムトレーダーだったら、この講座の内容を聞いていただければ、ひととおりの手法を自分で作れるようになるんじゃないかと思います。

ここにすべての方法を詰め込んでありますので、自分で売買ルール作ってみたいとお考えの方は、ぜひ見てください。すごく大事な話を詰め込んでいますが、基本中の基本のお話をします。

誰でもご存知のことだとは思うのですが、本当に大事な、すべての基礎になる一番下の土台の部分をご紹介していく予定ですので、ぜひ繰り返し見ていただければと思います。

まず、売買ルールを作る、改良するにあたって、多くのシステムトレーダーの方が勘違いしていることからご紹介していきたいと思います。

多くのシステムトレーダーがしている勘違い

多くのシステムトレーダーの方は、このような勘違いをされています。

まず1つ目が、「アイデアがないから売買ルールを改良できない」という勘違い。

2つ目は、実際にうまく運用している上級者のトレーダーには、「なにか秘密がある」とか「きっと初心者には無理なんだ」と思っている方がいらっしゃいますが、これらはすべて間違いです。

アイデアやルールを知らなくても投資法は作れる

事実はこのようになっています。アイデアがなくても売買ルールは改良できますし、上級者は基本を押さえているだけであって、なにも特別なことはしていません。

秘密はありません。経験量はほとんど関係ないです。まったく関係ないということはないのですが、多少の経験量があったところで、結果には大して変化がないのがシステムトレードの特徴です。

ですので、「自分にアイデアがないから、いい投資法が作れないんだ」とか、「自分がなにか秘密を知らないから、いいルールが作れないんだ、いい投資法が作れないんだ」と悩むのはもうやめましょう。

私は、本当に基本を押さえるだけで、いいルールは作れるようになると考えていますし、秘密どうこうの話ではないんです。どちらかというと、いかに基本に忠実に、その基本をきちんと網羅していくかが大事だと考えています。

それで私自身、「じゃあ、売買ルールを改良するためにはどんな方法があるのか?」を考えてみたところ、このような結論に至りました。

売買ルールを改良する5つの方法

「全ての売買ルールは、たった5つの方法で、誰でも簡単に改良できる」という結論に至りました。

あなたがシステムトレーダーであれば、ものすごく役に立つ内容です。この5つの方法を網羅すれば、たいていの売買ルールは、実運用に足るだけのルールに仕上げることができると思います。

これを裏返すと何が言えるかというと、1つでも知らない方法があると、再現性の高い売買ルール、利益につながりやすい売買ルールは、誰にも、絶対に、開発できないと考えてます。

売買ルールを改良する方法は、すべてで5つあるとお伝えしました。「じゃあ、その5つは何なんだろう?」というのを、これからご紹介していきます。

売買ルールを改良するすべての方法は、ここに表示されている5つの方法しかありません。それぞれ何かというと、1つ目は削除、2つ目が置換、3つ目が追加、4つ目が調整で、5つ目が分岐。この5つの方法しかないです。

それぞれどのようなものなのかというと、1つ目の削除は、条件式を減らすこと。

2つ目の置換は、条件式を入れ替えること。

3つ目の追加は、条件式を増やすこと。

4つ目の調整は、パラメータを変更すること。

5つ目の分岐は、状況に応じて戦略を使い分けること。この5つの方法があります。

この5つを網羅するだけで、いいルールは作れる。というよりこれ以外の選択肢がないんです。この5つで、今はどのように改良しようとしているのか。

例えば、「改良の初期だからこの改良方法を使いましょう」とか、「終盤だから、こういう改良方法を使いましょう」とか、「こういうことをしたいから、この改良方法が合ってるんじゃないか」と考えながらこの5つを使い分けていくのが、非常に大事なポイントだと思います。

じゃあ、この5つの改良法にそれぞれどのような特徴があるのかをご紹介していきたいと思います。

売買ルールの改良法①削除

1つ目は削除、条件式を減らすという改良方法です。この改良方法にはどういう特徴があるかというと、まずカーブ・フィッティング、過剰最適化の可能性がもっとも低い改良方法として知られています。

カーブ・フィッティングとは何かというと、自分の投資法を過去の相場に合わせすぎて、将来のことをあまり見ていないという改良方法です。この可能性が、もっとも低い改良方法だと考えています。

システムトレーダーの多くの方が、この改良を非常に軽視してらっしゃるのですが、この改良方法は非常に大事です。

具体的にこの改良法はどのように使うかというと、バックテストの対象を増やすことが目的の改良法です。例えば、「Aという指標とBという指標を組み合わせて、すごく利益につながりやすい株を探しましょう」といった売買ルールを作っていくわけですが。

「これと、これと、これと、これと、これを確認していきましょう」と、いろいろな判断材料を増やして、条件式を増やして、改良していくわけなのですが、その改良の途中でいらない条件式、つまり改良効果の薄い条件式が出てくると思います。

結果的にその条件式を外したほうが、将来的には優位性が保たれやすいとか、利益が増大するとか、トレードのチャンスが増えることがけっこうあります。

そういったことを最終確認するために、この条件式を減らす、カットしていくという改良です。

この改良は、バックテスト対象を増やすことが目的です。ただ、このテクニック単体での改良、売買ルールの改良は不可能で、あくまで開発の終盤で本領発揮する改良法です。

ということで、一番最後、売買ルールを作った一番最後に、「余計なもの、余計な判断材料がないかな?」、「これを見ることで、運用成績悪化してるんじゃないかな?」みたいなものを削除していく、余計なものを省いていくという改良方法が、こちらの方法です。

売買ルールの改良法②置換

2つ目は置換、条件式を入れ替えるという改良方法です。これもまた、カーブ・フィッティングの可能性が低い改良方法として挙げられます。

カーブ・フィッティングが低い改良方法の中でも、もっとも改良効果が大きい、そしを条件式を削除するという改良法とは違って、こちらは改良の初期の段階で使える特徴があります。

置換、条件式を入れる改良法はどのような時に使うかというと、どんな指標を見てトレードしていくのか、どの指標を使えば利益が出しやすいのかを確認するためによく使います。

つまり、Aという指標とBという指標のどちらが本当に使えるのかを、入れ替えながら見比べていく時に使います。

この改良法の特徴としては、指標別の相関の強さ、どれが一番使えるのか、指標別に見極めることができる。一番使える指標って何なんだろうかがわかるのがこの改良法の特徴です。

そして、バックテストの対象が狭まらないので、カーブ・フィッティングの可能性が非常に低い特徴があります。

この改良方法は、条件式を追加したりするわけではないんです。バックテスト対象が狭まらないとか、相関の強さが比較できる、と。「どの条件式がいいのか?」や、「どういうパーツを自分の投資法に追加すれば、利益の出しやすい投資ができるんだろう?」などを、考えるための改良法なんです。

つまり、情報収集の時に使いやすい改良法です。ですので、開発の初期段階で、「今の自分のルールにフィットした条件式は何なんだろう?」、などを探すためのリサーチに使う条件式です。

この置換という改良法、もちろん、いいところだけではなく、弱点もあります。それは何かというと、条件式の組み合わせが検討できない、というのが1点。もう1つは、即効性のある改良効果は期待できないという点です。

この置換の改良法を使っていれば、リサーチはできるんですが、改良はあまりできない。という弱点があります。ですので、この置換という改良は、ひたすら条件式を入れ替えて「どれが本当に一番いい条件式なんだろう?」かを探っていくために使うのが一番効果が大きいかなと思います。

はい、以上が置換です。

売買ルールの改良法③追加

3つ目、条件式を追加する、条件式を増やす改良法です。これは、カーブ・フィッティング、過剰最適化の可能性がもっとも高い改良方法として考えられます。システムトレーダーのほとんどの方が重要視しているのですが、もっとも扱いに注意が必要な改良法だと考えられます。

カーブ・フィッティングしちゃう理由、可能性が高いのはなぜかというと、判断材料が増えれば増えるほど、危ない株を避けられたりとか、より利益につながりやすい株を見つけやすくなったりとかの利点がある一方で、過去の相場に過剰なまでに利益を求めてしまう。

「昔だったら年利100パーセント出せた」とか、「昔だったら年利200パーセント出せた」とか、改良の効果が大きすぎるがゆえに、統計的に優位でないところまで改良してしまうおそれがあるんです。なので、この追加という改良を行う時には、十分な注意が必要です。

この追加、条件式を増やすことの特徴としては、著しく運用成績が改善できる、そして、バックテストの対象が狭まる、というポイントが考えられます。バックテストの対象が狭まりますので、対象が狭まることは視野が狭くなることなので、それこそカーブ・フィッティングをしやすくなります。

ですので、いきなり最初から条件式を追加するのは、できるだけ避けたほうがいいんじゃないかなと思います。売買ルールを改良する時では、中盤から終盤にかけて、実際にこの改良法を使うのがいいんじゃないかなと思います。

順番としては、置換をして、リサーチをした後に追加する、そんなイメージの改良方法です。

売買ルールの改良法④調整

次が4つ目、調整、パラメータを変更するという改良法です。これは、先ほどの追加と同じように、カーブ・フィッティングの可能性が高い改良と考えられています。

先ほどと一緒で、改良効果が大きく、扱い勝手がいいんですが、過度な調整は禁物という注意点もあるのでご注意ください。

この調整という改良の特徴なんですが、これ、何やるかというと、条件式の数値を入れ替えるだけなんです。例えば、25日移動平均線と終値の乖離率が0パーセントがいいのか、5パーセントがいいのか、10パーセントがいいのかを一つひとつ、数字を変えながら確かめていき改良をしていく方法なんですが、簡単に売買ルールに改良できます。

ただ、バックテストの対象が狭まる可能性があったりとか、あるいは、細かく指定しすぎるとカーブ・フィッティングになってしまいやすいという弱点もありますので、あくまで統計的な優位性を確認するために使うんだ、とわきまえて使う必要のある改良テクニックだと思います。

よくやる間違い、よくシステムトレードの初心者の方が間違えるんですが、例えば、数字を小数点以下までものすごく細かく決めるとかをやっている方がいるんです。

「移動平均との乖離率が5.38パーセントよりも小さいほうがいい」とか、「4.49パーセントより上のほうがいい」とか、すごい厳密に決める方いらっしゃるのですが、そんなに厳密に決めたところで、まあ、「本当に投資家の人はそれが理由でトレードするのか?」とか、「それが理由で、そんな細かく見るから利益が出せるのか?」というのは、また別の話です。

そんな細かく見たところで、本当にそれが利益の源泉になるとは考えづらいわけです。ですので、そこまで細かく設定するぐらいであれば、もっと別の指標について調べるとか、あるいは、バランス調節、別の観点からの改良を目指すとかしたほうが、よっぽど未来の利益を出しやすいルールが作りやすいんです。なので、過度に使わないっていうのに、ご注意いただければと思います。

この調整という改良は、開発の中盤から終盤、どちらかというと、条件式を追加した後です。終盤に近いところで使うテクニックじゃないかなと思います。この改良法は、かなり終盤で使うものです。終盤に使うもので、過度な利用は禁物。

改良効果としては、ルールを追加する時ほど大きな改良効果は出ないです。ですので、そんなにがんばる必要はない、という改良法でもあります。以上が調整でした。

売買ルールの改良法⑤分岐

最後に5つ目、分岐です。状況に応じて戦略を使い分ける改良法です。どのようなものかというと、分岐は状況に応じ戦略を使い分ける改良方法で、カーブ・フィッティングの可能性がもっとも高い改良です。傾向のつかめない条件で分岐すると、明らかなカーブ・フィッティングに陥る、という弱点があります。

「分岐って何なの?」かというと、状況に応じて戦略を使い分ける、単純な改良法なんですが、例えば、そうですね、「TOPIXが上昇相場の時はこの投資法を使おう」、「TOPIXが下落相場の時はこの投資法を使おう」と、状況に応じて使う投資法を変えていくのがこの分岐という改良です。

これは、非常に上級者の方がよく使う改良方法であって、いきなり使う必要はないです。

この分岐という改良を使うことで、限界まで運用成績を改善できる強みがあります。ただし、売買ルールが非常に複雑化するんです。まあ、場合分けすることは、2通りに投資法を分ける。2倍に複雑になるという見方もできるわけです。

いきなりこの分岐の改良をやってしまうと、自分が何やりたいのか、わからなくなっちゃいます。ですので、一本筋通ったいいルールを作って、シンプルなルールを作った後に分岐するように改良していくのが、一番ベーシックな改良のステップになるかな、と思います。この改良法は開発の最終段階で使い込む改良法です。

以上が売買ルールを改良する5つの方法でした。もう1回、振り返ってみましょう。

まとめ:最適なルールを最適なタイミングで使う

本講座のまとめ。売買ルールを改良する方法は、すべてで5つあります。1つ目が削除、2つ目が置換、3つ目が追加、4つ目が調整、5つ目が分岐です。この5つのポイントさえ押さえれば、誰でも売買ルールを改良できるようになる。そして、かなりいいルールにまで仕上げることができます。

この5つを使ってもいいルールができなかったら、その人はちゃんとバックテストしてないだけ。あるいは、ちゃんとデータを分析してないのだと思います。

私自身、この5つしか使っていないですし、この5つ以外を使って売買ルール作っている方は、今まで見たことがないです。ですので、この5つが一番大事な改良法なんじゃないかなと思います。

それぞれどういったタイミングで使うかというと、一番最初に使うのが、おそらく置換です。一番最初に使うべきなのは置換です。その次が追加。3つ目が調整で、4つ目が削除。5つ目が分岐です。

順に改良法を使っていくと、一番最初、シンプルなルール、あんまり使えそうにないルールから実運用に足るようないいルール。あるいは、もっと、実運用に足るどころか、ものすごい大きな利益をもたらすようなルールに仕上げていくことができると思います。

ぜひ、あなたもこの5つのポイントだけですので、抜け漏れのないように。売買ルールを改良する時にこの5つのポイントを意識しながら改良に励んでいただければと思います。

ということで、今回は以上で終了といたします。最後までご視聴いただきまして、ありがとうございました。