記者からの質疑応答

司会者:はじめに幹事社の方からの質問です。

記者1:幹事社の毎日新聞のタカヤマと申します。よろしくお願いします。先ほど冒頭でもおっしゃいましたが、この通常国会では、加計学園を巡る問題や森友学園を巡る問題などの論戦に注目が集まりました。

加計学園の問題では、とくに国会の最終盤、文科省の再調査で総理のご意向と明記された文書の存在が確認される一方、内閣府の調査ではそういう発言や文書はなかったという調査結果が発表され、食い違いも見られました。

野党は、閉会後もやっぱり説明を行うべきだとしていまして、森友学園についても疑念はやっぱり払拭されていないんじゃないかと主張しています。

この2つの問題について、もう十分説明責任を果たされたという認識でいらっしゃいますでしょうか。また、先ほど説明を積み重なるとおっしゃいましたが、どのように説明を果たしていくんですか。

さらに、テロ等準備罪を新設する法案の審議では、与党は委員会審議を省略する中間報告という異例の手法を使って成立させました。

当然、法案の審議は不十分だったという指摘もございます。国民の不安払拭に向けてどう説明をこれからも果たしていくおつもりでしょうか。

この週末の各社の世論調査では、10ポイント近く内閣支持率も落ち込みました。そうした状況も踏まえて、以上の点、お答えいただけたらと思います。以上です。

安倍晋三氏(以下、安倍):今、ご指摘をいただいた問題については、国会において、政府として説明を重ねてきたところでありますが、残念ながら必ずしも国民的な理解を得ることはできていない。率直にそのことは認めなければならないと考えています。

テロ等準備罪処罰法は、テロ対策について、国際的な連携を強化していく上において不可欠な法律であると考えておりますが、依然として国民のみなさまの中に不安や懸念を持つ方がおられることは承知をしております。

しかし、改めてこの機会にもう一度私からはっきりと申し上げておきたいことは、一般の方が処罰の対象となることはない、そしてまた、一般の方が被疑者として捜査の対象となることはないということは、改めてはっきりと国民のみなさまに申し上げておきたいと思います。

これらの法律を実施していくにあたって、国会でのご議論なども踏まえて、適正な運用に努めてまいります。しっかり適正に運用していくなかにおいて、今、私が申し上げたことについて、我々が申し上げていることは間違いなかった、そう確信していただけると思っています。

国民の命と財産を守るための法律であります。国民の命と財産を守るために、万全を期していく考えであります。

また森友学園への国有地の売却については、すでに会計検査院が検査に着手をしており、政府としては全面的に協力をしてまいります。

国家戦略特区における獣医学部の新設につきましては、文書の問題を巡って対応が二転三転し、国民のみなさまの政府に対する不信を招いたことについては、率直に反省しなければならないと考えています。今後なにか指摘があれば、政府としてはその都度、真摯に説明責任を果たしてまいります。

国会の開会・閉会にかかわらず、政府としては、今後ともわかりやすく説明していく、その努力を積み重ねていく考えであります。今国会の論戦の反省の上に立って、国民のみなさまの信頼を得ることができるように、冷静に、そしてわかりやすく、一つひとつていねいに説明していきたいと思います。

東京都議選は「あくまでも地方選挙」

司会者:それでは幹事社からもう1問いただきます。どうぞ。

記者2:幹事社のTBSのイワタと申します。今後の内政の課題について何点かうかがいます。

まず東京都議選まで2週間を切りましたけれども、自民党総裁としてはなにを争点に戦って、どの程度の議席の獲得を目標とするお考えでしょうか?

また憲法改正について、自民党は年内に原案をまとめる考えですけれども、そのあたりも見据えまして、夏に任期が切れる自民党の役員人事、さらには内閣改造については、タイミングも含めて、どのような方針で臨むお考えでしょうか?

さらに自民党内には、来年の通常国会で改憲を発議して、次の衆議院選挙と同時に国民投票を行うという案も浮上していますが、この国政選挙と同時に国民投票を行うことの是非も含めて、お考えをお願いします。

安倍:東京都議会議員選挙は、あくまでもこれは地方選挙でありまして、現在、東京都民のみなさんが直面しているさまざまな地域の課題、東京独自のテーマが争点になるものと思います。

自民党においても、東京都連が中心となって都民のみなさんに地域に根付いた身近な政策をしっかりと訴え、1人でも多くの当選を目指してまいりたいと考えています。

いかに暮らしやすい東京を作っていくか。安全な、そして子育てしやすい、すばらしい環境になる、そういう東京をどうやって作っていくか。そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてどう都政を進めていくかということも議論になっていくんだろうと思います。

いずれにせよ、まさに東京都民のみなさま方におけるさまざまな課題が当然争点になっていくんだろうと思います。

また憲法改正については、これは自民党立党以来の党是であります。先日、自民党総裁としての私の考え方をお示しをしました。これを受けて、党の憲法改正推進本部においてすでに衆参の憲法審査会に提出する具体的な改正案の検討が始まっています。

その上で、自民党としての提案をいまだ国会の憲法審査会に提出をしていない段階でありまして、現時点においてはその後の発議などについて申し上げる段階ではないと考えています。

そもそも衆参両院の3分2を形成すること自体がそう簡単なことではない。容易なことではありません。まずは与野党を超えて建設的な議論を行えるような、そうした自民党提案となるよう、中身の検討を優先したいと考えています。

さらには、アベノミクスの一層の強化、働き方改革、人づくり革命など、さまざま重要政策において、大きな推進力を得るためには、人材を積極的に登用し、党においても、政府においても、しっかりとした体制を作っていくことが必要であります。

そうした観点も踏まえながら、党役員人事、内閣改造については、これからじっくりと考えていきたいと思っています。

世界的な脅威・北朝鮮に言及

司会者:これからは幹事社以外の質問をされる方、挙手をお願いいたします。私、指名いたします。指名を受けましたら、改めまして、所属とお名前を明らかにして、質問をお願いいたします。多くの方、質問を希望されてますので、お1人様1問でお願いいたします。

記者3:ロイター通信のスティーブンと申します。アメリカの大統領についてお聞きしたいんです。アメリカと中国の緊密な関係は、日本に悪影響をもたらすでしょうか。

安倍:日本に悪影響?

記者3:はい。

安倍:よく、米中関係が進展するとですね、日本が困るんではないかという指摘が、よくあることでありますが、私はまったくそうは考えていません。

米中の首脳同士がですね、信頼関係を築いた。緊密に協力していくことは、世界にとっても私は、また、日本にとってもプラスであると考えています。

世界の様々な課題に、大国である中国、米国とともに、取り組んでいかなくてはならないわけであります。これは例えば、気候変動の問題もそうでありますし、様々な課題をともに、手を取り合って取り組んでいくことが、今、世界で求められているんだろうと、そう思います。

例えば、北朝鮮問題への対応であります。北朝鮮に対して、最も大きなテコを有するのは、中国であります。そのためにも、日米、日韓、日米韓で協力を進めるとともに、中国とも緊密に、連携をしていく必要があります。

そのために日本が中国にも働きかけますし、米中が認識を同じくしていく。この北朝鮮の問題は、世界的な脅威であるという認識を同じくして、そして同じ方向に向かって進んでいくことがですね、この問題を解決していく上においても、必要だろうと考えています。

中国に対しては、先般、楊潔チ国務委員が訪日をした際、私からも働きかけを行いましたが、米国があらゆるレベルで中国と連携して、北朝鮮に圧力をかけていくことが、日本にとっても利益になると思います。

いずれにせよ、日本にとって、日米同盟。これは、外交安全保障の基軸であります。首脳レベル、大臣レベル、そしてあらゆるレベルにおいて、意思疎通を密にして、そして、サプライズがない関係を作っていくことも大切であろうと思いますし、今はそういう関係を作ることができていると考えております。

米中間においてもですね、日中間においても、それぞれの関係を発展させていくことが、日米両国ともにプラスになっていくという認識でですね、今後対応していきたいと思います。

司会者:それでは次のご質問。

記者4:NHKのハラと申します。加計学園の問題、森友学園の問題に戻らさせていただきます。国会では、公文書の扱いが問題となりまして、日本維新の会は、公文書の保存を義務付ける文書の範囲を拡大する法案を提出しましたし、民進党など野党側も、同趣旨の法案を出しています。

今回の問題を踏まえましてですね、公文書管理法の改正、あるいは公文書管理のあり方について、総理はどのようにお考えでしょうか。法改正に取り組むお考えはあるでしょうか。

安倍:公文書管理についてはですね、過去から現在、そして、未来へと、国の歴史や文化を引き継いでいくとともに、行政の適正かつ、効率的な運営を実践していく。

現在と将来の国民への、説明責任をまっとうする上においても、重要なインフラであると言ってもいいと思います。

今回の国会審議において、公文書の扱いについてですね、様々な議論がありました。そうした中で、このことの重要性について、改めて認識したところであります。

政府としては、その重要性を踏まえて、各行政機関における、公文書管理の質を高めるため、普段の取り組みをしっかり進めていく考えであります。

TPP、EPAなどの通商戦略について

司会者:それでは次の質問をいただきたいと思います。

記者A:日本経済新聞のシマダと申します。成長戦略に関連しておうかがいします。「構造改革が思うようなスピードで進んでいないのではないか」という指摘も少なくないなかで、先ほどキーワードとして挙げられた「人づくり革命」をもって、構造改革を加速させるためには、担当閣僚を置くべきではないかという指摘もありますが、そのような考えはございますでしょうか?

また、その成長戦略の観点から、TPPなど通商環境の変化への期待も聞こえてまいります。目下交渉中の、EUとのEPA交渉について7月のG20首脳会議の頃までに大筋合意をする考えはありますでしょうか?

TPP11についても、例えば「年内だ」と、早期に合意可能だと見てらっしゃいますでしょうか? あわせて将来近々にアメリカのTPPの枠組みに戻る可能性は高いとお考えでしょうか? よろしくお願いします。

安倍:安倍内閣において、各省庁に渡る重要な国家的な課題。例えば地方創生、あるいは一億総活躍社会、そしてまた働き方改革。そうした政策を前に勧めていく上において、有識者会議を設けるとともに、担当の大臣がリーダーシップを発揮していく。

そしてわかりやすく国民のみなさまに発信していくことによって、政策を推進することができたと考えておりますので、今回の「みんなにチャンス!構想会議」におきましても人づくりを進めていく上においても、考えていきたいと思っています。

そしてまた、通商戦略についてになりますが、日本は自由貿易によって高度経済成長を遂げてきたわけであります。国境を越えて物が行き交う、人が行き交うことによって、さまざまな知見があり経験が交わることで新しい知恵が生まれ、そして国際社会の荒波の中で競争する中において、技術は進歩してきたと言ってもいいかと思います。まさにこのダイナミズムこそが世界の繁栄や、そして平和の礎だろうと思います。

そしてそれは、基本的な考え方として誰にでも開かれていなければならない。そして公正なものでなくてはならないと考えています。日EUのEPA交渉はまさに21世紀にふさわしい自由で公正なルールを作り上げる作業であります。

現在東京で詰めの交渉が行われております。できるだけ早期に大枠合意を実現したいと思います。TPPについてはアジア太平洋地域を発展させるために必要なルールはなにか。参加国が長い時間をかけて真剣に話し合ってきた結果が、まさに成果として結実したものだと思っています。

11ヶ国はこの成果をなんとか活かそうとする点で、一致をしています。来月我が国が主催する高級事務レベル会合で、TPPの早期発行のための方策の本格的な見当が始まります。われわれは議長国として各国との緊密に連携し、スピード感を持って11月のAPEC首脳会合に向けた議論を前進させていきたいと思いますし、そのためにも日本がリーダーシップを発揮していかなければならない。その責任も感じております。

日米間においては新たな経済対話を立ち上げました。日米でアジア太平洋のモデルとなるルール志向の枠組みを作りたいと考えています。日本はあらゆる手段を尽くして、自由でルールに基づく公正なマーケットを世界に広げていく。これからも自由貿易の旗手としてリーダーシップを発揮していく考えであります。

北方領土問題「有意義な現地調査を」

記者5:イシガキです。お願いいたします。北方領土問題についておうかがいします。まあ、平和条約締結交渉と……。

先般の山口への首脳会談から半年経ちましたが、当時言っていた元島民の方の初の航空機による墓参というのは、昨日今日と天候の関係で中止になっているわけで、手続きが進んでいるという部分もあるかもしれません。

一方で、共同経済活動はですね、現地での実地調査などそういった具体的な北方四島の手続きが滞っているように見えるわけなんですけれども、この現状と今後これを進めていくための首脳会談を交えたり、なんらかの手法、見通しについておうかがいします。

安倍:昨年12月の長門における日露首脳会談、プーチン大統領との間で合意した事柄については、実行については、次々と実現に向かって進んでいると思います。

今ご質問があった航空機による特別墓参であります。これは、島民のみなさんもご高齢になって、「飛行機でいければ」という強い想いがあるなかにおいて、ロシア側もこれは了解したところでありますが、昨日か今日のいずれかに実現する予定でありましたが、国後島の空港が濃霧で航空機が着陸できないため残念ながら延期となってしまいました。

今後、元島民の方々とご相談しながら天候の許すできるだけ早い時期に墓参を実現したいと考えています。

また、共同経済活動についてはですね、先月、官民調査団がサハリンを訪問しました。そしてサハリン州知事をはじめとする関係者と詳細な協議を行うなど準備を進めてきています。今月下旬に官民の調査団が北方領土を訪問し、現地調査を行う予定です。

前回はサハリンでありましたが今度は北方四島の現地調査を行います。

関心の高い漁業や観光と言った分野でプロジェクトが具体化できるよう、有意義な現地調査を行いたいと考えています。

プーチン大統領とは7月上旬のG20サミットの際に、首脳会談を行うことで一致をしております。

これまでの進展を踏まえて、プーチン大統領と率直な意見交換を行い、今までの信頼関係の積み重ねの上に議論を進めていきたいと思いますが、この特別墓参や共同経済活動の実現に向けて弾みを与え、平和条約締結に向けたプロセスを前進させたいと考えています。

司会者:みなさまありがとうございました。以上をもちまして記者会見を終了いたします。ご協力に感謝申し上げます。

安倍:どうもありがとうございました。