多細胞生物は16億年前に生息していた?

ハンク・グリーン氏:地球上の生命の起源を理解することは、たくさんの岩石に埋められて地上のいたるところに散りばめられたピースをはめ込む大きなパズルのようなものです。

科学者は化石細胞が細菌であるか植物であるかを決めるにも、とても小さな構造上の手がかりや古き良き当て推量に頼らなければなりません。そして本当に古い化石の身元を、決定的に割り出すことですら難しいのです。

しかし先日刊行された『PLOS Biology』誌では、スウェーデン自然史博物館の研究者が16億歳の紅藻類を発見したと考えているという記事が載っています。多くの古代化石には、細菌のように原核生物の痕跡が含有されているものの、原子核にはDNA情報は書き込まれていないようです。

しかしながら植物や私たち人間を含む動物はみな、真核生物なのです。

私たちの細胞には核があり、特殊化した細胞があります。そしてある時期において、私たちには共通の祖先がいました。問題は、最古の化石を見つけたり識別したりするのが難しいがために、真核生物が初めて地球上に登場したのがいつのことなのか知るのは難しいということです。

2000年に刊行された雑誌によると、カナダ北極圏で12億年前の古い化石から紅藻類の種が確認され、科学者はそれがもっとも古い真核類であると確信しているとのことです。また、それはたまたまもっとも古い複合体の多細胞生物になり、私たちも知っているような多細胞類や三界体制に発展したのでしょう。

そして科学者は、中央インドの堆積岩から16億年前の2種の多細胞紅藻類を発見した、と考えているようです。

化石の一部は細い繊維状のものから成っており、科学者が細胞と考える部分に分裂しています。なぜならこの細胞は他の生物のものと比べて大きく、その細胞には独特な構造をしている部分があり、とくに紅藻類に関してこういったものが真核生物と考えているからのようです。

正直、化石から細胞内構造を見分けるのは難しいです。なぜなら科学者は構造の形や位置が実際に生きている生物のそれと同じであるか否かがわからないからです。しかしこれらの細胞はどれも、基本的には同じ位置にあり、おおよそがダイアモンド形です。

科学者はこれを藻の葉緑体にみられるタンパク質のかたまりであるピレノイドであり、光合成の間に炭素を蓄積するためのデンプンを作る小器官と考えています。

2つ目の化石はより輪郭がぼやけた形をしています。異なった葉をもつたくさんの細胞のかたまりで、葉狀体と言われる構造のようです。この葉状体には繊維束のような領域があり細胞噴水などと言われていて、いくつかの紅藻類や茶藻類にはありふれた構造となっています。

なので完全に確かではないにしろ、研究者は複合体の多細胞生物は16億年前に生息していたという説明がつくとしており、私たちが考えるよりもはるか昔のことなのです。

彼らいわく、昔の生物が地上に生存していたという歴史的年表に手を加えるにたる、明らかな証拠があるということを示唆しています。もしも多細胞真核生物が16億年前に生存していたのなら、動物のように他の多細胞生物も私たちが考えるよりもはるか何百万年前に登場し始めていたはずだからです。

クマムシの異常な生命力の秘密

その他の多くの生命体は生命の樹以降の時代に誕生しました。そしてそこには私たちの古き仲間であるクマムシが含まれています。

クマムシは小さくかわいらしい極限微生物ですが、生物を殺してしまうような極寒地帯や大量の放射線量に照射されても死なない生物です。科学者はいったい何がクマムシに、この生物学的に異常な力を与えたのかということも解決を試みていました。

今週刊行された『Molecular Cell』誌には、この異常な力は乾燥や干からびることから命を守る一種のタンパク質が関係していることを発見したと書かれていました。

クマムシ以外の生命体は細胞内物質を別の抗乾燥策を用いて対処しています。例えばトレハロースという糖分や熱から守るタンパク質、そして抗酸化物質というものです。

しかし緩歩動物に特有の天然変性タンパク質、略してTDPsを生み出すために活性化された一定の遺伝子を発見したと、研究者は言っています。この細胞から水分を吸い上げるとTDPsはガラス状になっていき、化学用語では、ごた混ぜの無定形の個体を形作るためにタンパク質が結合するためにそうなるとしています。

どのように細胞内に内在するあらゆるものを守るのか、ということに関して2、3の意見があります。

1つの可能性として、このガラス状の構造は物理的に他のタンパク質や無駄な物質が結合したり拡散することを防ぎ、膜組織が融合することを防ぐ役割があるということです。まさにハン・ソロを炭素冷凍するかのようです。

別の仮説では、TDPsは典型的に水との強い相互作用を持っています。TDPsは水を発生させる水素結合を、細胞障害から身を守ることのできる異なる細胞部分に置き換えることができます。

正確な仕組みはわかっていませんが、TDPsが干からびた生物学的物質を生命維持に結び付けられるかどうかは実験することができました。結果として彼らは成果を出しています。

TDPsをイースト菌、細菌、そして乳酸脱水素酵素に加えたところ、乾燥させて再度水分を補給すればこれらの物体は機能しました。

なので私たちはクマムシ生存の秘密解明に近づいただけでなく、この知識が人間にも応用できることになったのです。砂漠を何週間も水なしで横断できる、というわけではないですが、そうできれば最高ではありませんか。

クマムシについてもっと知れば、農業でも耐乾性のある作物を作ったり、潤いのある状態にしておかなければならない薬を保存したり輸送したりことに役立つかもしれません。

また、まったく水を飲まなくてもいいというわけではないですが、壮大な計画性としてはかなり有益なものとなるでしょう。