見城徹と押井守は似ている

山田玲司氏(以下、山田):なんかさ、それ、ひさしぶりに思い出しちゃって……っていう話なんだけど。それには、ちょっと続きがあってね。

乙君氏(以下、乙君):続きがあるの?(笑)。

山田:俺さ、幻冬舎の見城徹さんっているじゃん。あの人に俺、持ち込みしたことあるんだよ。昔。「銀色夏生っていうのを担当してる編集者に会いたいです」って俺、乗り込んだことあるの。昔(笑)。

乙君:なぜ?

山田:いや、すごく自由なやつやってたから。文章、ちょっとした絵とか、そういうのやってて、角川で当たってたんだよ。「これけっこう自由なことやらせてるな」と思って。「これに挑戦する編集者だな」「俺も挑戦したい」「俺も銀色夏生みたいに挑戦させて。ここでだったらできるんでしょ」って思って、見城さんに会いに行ったんだよ。

そうしたら、すげえ丁寧に優しくされて。だけど、漫画の雑誌『ASUKA』のほうに流されたので。預けられちゃったので。そこで話が終わるんだけどさ。

その見城さんがね。あの人さ、戦う親父じゃん。ちょっと(押井)守が入ってるんだよな。あれな。あの人ね。

乙君:えっ、そうなんですか?

山田:モテなくて死にそうだったんだよ、あの人。「モテなくて、モテなくてしょうがなくて、駿河湾の海を見てたんだ。俺は」って話を散々するんだよ。あの人。

乙君:駿河湾。静岡なんだ。

山田:静岡なんだって。「俺にはなにもないんだ」っていうさ、そのコンプレックスが「なにかあるやつを助けたい」っていう気持ちがあるから。村上春樹だったり、尾崎豊だったり、いろんなあの時代の人たち、スーパースターを引っ張り上げて、「俺がプロデュースしてやりたいんだ!」みたいな熱い編集者なんだよ。

だから言ってみれば、超うざい人なんだけど、俺はいいなと思ってて。

久世孝臣氏(以下、久世):うんうん。

見城徹の番組に坂本龍一と村上龍が登場

山田:あの人が、今AbemaTVでトーク番組をやってるの、知ってる?

久世:知らない。

山田:これがすげえ尺が長いんだよ。うちの番組ぐらいなの。

乙君:ほう、それは長い!

久世:それはすごい長いですね。

山田:それでね、すごいんだよ、何回目かのやつ見たら、ゲストがだよ、村上龍と坂本龍一だよ。

久世:はい、来ましたねえ。

乙君:ドラゴン好きですね。

山田:坂本龍一と村上龍を相手にしゃべってる。

久世:プラス、見城さんがいるってことですよね。

山田:それで、この2人を呼んじゃって、見城さんが浮かれてるの。浮かれてる上に、間が持たなくってふわふわしてるの(笑)。

要は「この人、プロなのに慌ててる」みたいな感じになってて。なんとか盛り上げなきゃいけないなと思って、俺たちの武勇伝話をね、「俺たちは昔は無茶やったよな」みたいなやつで盛り上げようとしてて。

そして、坂本さんは大人だから、それに合わせてるの。「いや、そうだよね」みたいな感じで。そうしたら、龍さんずっとぶーっとしてるの。ぶーっとして「もういいよ。見城さん、そういう話さ、言える話ないじゃん」。

(一同笑)

山田:めっちゃ不機嫌。

乙君:さすが、限りなく透明に近いね。

久世:すごいね。

山田:すっごいおもしろくて。そのやりとりみたいなのが。結局さ、血気盛んなオスどもなんだよ。やっぱりやつらは。

すごいよ、坂本さん。「俺、あの時もテーブルひっくり返したな」とか言って、キレてバーンってひっくり返して大暴れしたという話を坂本さんが延々する。それはそれでなかなかおもしろい。後半になると盛り上がってたんだけどさ。

角川春樹と北方謙三の登場回では少年2人のよう

すごいのがあったんだよ。角川春樹と北方謙三っていう回があるんだよ。

乙君:うわー。

山田:もうさあ。

久世:どっちかでいいんちゃいますの?

山田:どっちかでいいよな?

久世:俺はそう思うけど。

乙君:トルコライスですね。それもうね。

久世:お前、その例え好きやなあ(笑)。

山田:でさ、北方謙三と角川春樹さんがむちゃ仲良いんだよ。2人ともね、画面に映ってるのはおじいちゃん2人なの。でも話し始めるとね、少年2人がじゃれてるみたいな。「お前やめろよ」みたいな、ウェーイやってんだよ。それで「俺たち3兄弟だからさー」みたいなさ、見城さんと言っててさ。

そのなかで、これがまた春樹さん、俺、前1回会ってるけどさ。その時も半端ねえなと思ったんだけどさ。なんつーのかな、腹の括り方が違うというかさ。「それ言ったらまずいよ」というのがぜんぜんないの。もう、かつての愛人の名前を、実名でガンガンしゃべってる。

(一同笑)

山田:マジでこの人、超カッコいいなと思って。

久世:すげえ、すげえ。

山田:すげえんだよ。そんで、その過去の武勇伝もちらっと話す。そしたら「見城の奥さんというのがさ、けっこういい女なんだよな」つってニコニコしてしゃべってるんだよ。「だから、俺、見城にやらせろつったんだよね」。

久世:(笑)。

山田:「これ本当なんですよ。社長が俺のかみさんとやらせろって言うんですよ」みたいな。

久世:すげえな(笑)。

山田:横で北方謙三はゲラゲラ笑ってて。たまんないよね。むちゃくちゃすぎて。

久世:それ、おもしろいな。

角川春樹が潰して、潰して、潰して

山田:そこでさ、そこにいるMCの若い女の子。「すごいですね」みたいな感じの女の子、キャッキャ言ってる。この女に「俺たちのなかで誰がいい?」みたいに始まっちゃって。

(一同笑)

「奪い合い? おじいちゃんたちの奪い合い?」「これなにハラスメント?」みたいな。すげーおもしろい! 北方さんは、とりあえず会った人は全員口説くんだって。

久世:へえ。もう決まってるんですね。

山田:すげえなと思って。

乙君:それ、嘘ですけどね。

山田:えっ?

乙君:北方さんでしょ?

山田:いや、だから、それを言うんだっていう話をして。それでどうなるかというと、横にいるおじいちゃんが「またくだらないことを。こいつ嘘ばっかり言ってる」。

見城さんが一番熱くなって、「あの時のこれが……」「またお前デタラメ言ってるよ」とかって言ってみて、パンパンパンって。幻冬舎の社長だぜ、あれ。幻冬舎の社長パンパンパンつって、「お前……」。

それで、(番組の)途中でワインが出たの。高いワイン。ワインありがたがって、「これがボルドーの〇〇ですね」「甘さがどうの」とか「ちょっと飲んだら酸味がありますね」なんて話になるわけ。

「酸味が大事なんだ」とか見城さんが言い出して、「人生もね、酸味が背骨になって……」みたいな感じで。そうしたらさ、そこで角川さん、大爆笑。「ハハハハ。おめえくだらねえこと言うなあ(笑)」とか言ってて、台無し(笑)。

(一同笑)

まさにだから、偉い人がなにかにひっかけて人生とか語ろうとするのをピシって。

久世:潰して、潰して、潰して。

山田:ピシッ、ピシッ、ピシッ。

久世:すげえな。めっちゃめちゃや。

角川春樹は生き物としてのバイタリティがすごい

山田:すごいよ。エイベックスの社長まで現れちゃって。

乙君:なんの番組(笑)。

山田:いや、だから本当……。

久世:松浦(勝人)さんでしたっけ。

山田:あの松浦さん。「こいつらおもしれえんだよ」なんつって、角川さんといちゃいちゃしてて。それで、角川さんと一緒に歩いてる時に足がめっちゃめちゃ痛くなって。そうしたら角川さんがその近くにあった草をとってきて、祝詞を唱えて「タァー、タァー!」つって。そうしたら治っちゃったんですって。

乙君:はあ……?

山田:お前、知らないの? これが角川春樹マナーだからね。

久世:そうだよ。角川さんすごいんだよ(笑)。

乙君:それは知ってるけど……。

山田:春樹マナーだからね。それで、もうこの人は冷静にぶっ飛んでる。

久世:ああ、おかしい(笑)。

山田:ずっとぶっ飛んでる。本当にだから角川さん、最初から最後までずっとニヤニヤしながらずっとぶっ飛んでるの。やっぱりなんか格の違いつーのかな。オスとしてのすごさも感じるんだけど。生き物としてのバイタリティのパネェなというというのがあって。

乙君:パネェな?

山田:やっぱりこのおじいちゃんたちすげえなって……うるせーよ!(笑)。

久世:パネェなぐらい言わしてあげてーや!

乙君:初めて玲司さんから「パネェな」って。

久世:ええやん。「パネェな」使ったって!

山田:ねえ、言わせて?

久世:言わせて(笑)。

見たこともない角川春樹とか北方謙三に会える面白さ

山田:いやー、と思ってさ。でね、このネット番組、うちの番組もそうなんだけど、これだけの尺があるからこその変な間みたいな。

乙君:あるある。

山田:もうバレんじゃん。全部。

乙君:え?

山田:だから、どんな人間かもう一瞬でバレる。

乙君:バレる、バレる。

山田:隠せないみたいな。

でさ、テレビの番組がなぜつまらないかって、ディレクターが作るからなんだよ。プロデューサーがいて、ディレクターがいて、ディレクターが「こういう世界観でこういう役を演じてくださいよ」つって、さも今やってますみたいな雰囲気でやるから、全部虚構に見えるからなにもおもしろくないんだけど。

AbemaTVで、テレ朝が出資して始めたネットの番組で、見城さんにあれだけの枠で。出したやつ出しちゃえつって、気が向いたら日曜日やってるって感じなんだよ。

そうするとさ、やっぱりその長い尺のなかで、見たことない角川春樹とか北方謙三に会うわけ。これは可能性を感じるよね。あっちがああ来られちゃうと、こっちやべえよなっていう(笑)。

乙君:ああ。

山田:という話なんですけどね、それだけじゃないんですよ。

久世:おおっと!

乙君:なに? なんの話なの!? これ。

久世:何段構えの話なんですか?

乙君:うん。いいけど別に。

久世:どんでん返すわ。

ノーガードで『涼宮ハルヒの憂鬱』を見たら

山田:あのね、エヴァンゲリオンが終わったじゃない?

久世:終わりましたね。

山田:そのまま録画モードにしておいたらさ、「〇〇ハルヒ」って番組が始まっちゃってさ。

(一同笑)

乙君:あれ?

久世:うそー!?

山田:マジで。

久世:マジ? 決めてんの?

山田:「〇〇ハルヒってこれか!?」って。憂鬱なんだ。ぜんぜん憂鬱っぽくないけど。

久世:うん。俺、手触ってない。触ってる?

山田:触った?

乙君:いや、なんにも。

久世:俺、手、触れてない。

山田:いや、俺だから、ノーガードでいきなり喰らっちゃって。「始まっちゃったよ」と思って。「これも0年代を代表するやつだ」って。初めて見たよ。

キョンは村上春樹のキャラクター?

久世:どうでした?

山田:そうしたらさ、腹立ってさー。

久世:やらないで大丈夫? 「君は」って。涼宮ハルヒの。

山田:いや、やらない、やらない(笑)。その話は後半で。だから、そのね、なにがムカつくかってさ。

乙君:ムカつくの?

山田:いや、ていうか……なんていうのかな。

久世:なんでそわそわしてるんですか?

乙君:どうしたんですか?

山田:キョンですよ、キョン。

乙君:キョン?

山田:キョン!

久世:なにキョンって?

山田:なんなんだよ、あいつ!

久世:だから、俺ら触ってないって。

山田:え、触ってないの?

乙君:いや、それは聞いたことあるで、俺。キョンっていう。

山田:村上春樹のキャラクターだろ。あれ。

乙君:そうなの?

山田:「やれやれ」みたいな。だからさ、主人公がなんか巻き込まれ型なの。とくになんらかの問題は抱えてないけど、斜め上からすべての人を見下してる感で、「やれやれ」って言いながらツンデレ女に巻き込まれていって、「こんなことになった。しょうがねえな」みたいな。「パスタでも茹でるかみたいな」。

久世:春樹じゃないですか。

山田:春樹だよ、春樹。

久世:ハルヒじゃないですよ。春樹ですよ。

山田:そうそう。そっちになってて。「0年代ってこっちにのってたのか」と思ってびっくりして。もうさっきまでの春樹がどっか行っちゃって。「俺の春樹を返せよ、お前」って。

「お前らキョンにライドしてたのか」

乙君:春樹がハルヒになったってこと?

山田:そう。それを言いたかったんだけど。

しみちゃん:言うな、言うな(笑)。

乙君:え?

(一同笑)

山田:それが言いたかったわけじゃねーよ!

乙君:なになに、じゃあ?

山田:あれだけセクシーで魅力あふれる日本人がいっぱいいたのに、岡村ちゃんぐらいまでは。「なに、キョンって」って思って。

乙君:おお?

久世:オスとしての力を感じない?

山田:つーかなんか、「なんにもしてないのに見下すなよ!」っていうさ。人を。

(一同笑)

久世:めっちゃ怒ってるやん。

山田:っていうね、「この温度だったよな」と思い出して。0年代が。

乙君:ああ、はいはい。

山田:そうなの。だから「お前らキョンにライドしてたのか」と思うと、「目を覚ませ! 春樹さん呼ぶぞ!」みたいな気持ちになりまして(笑)。今週は。

乙君:(笑)。

山田:ハルヒを見るとは言っていないですよ。

久世:言ってないですか。