長時間労働改革をした結果、多様な人材が活躍する世界になる?

小安美和 氏(以下、小安):浜田(敬子)さん、どうもありがとうございました。浜田さんのほうから「働き方改革ブームはなぜ起きたか」ということで、その背景を語っていただきました。

変えるべきこととしては、3つあります。「長時間労働改革」「女性のキャリア支援」「男性の意識改革」というのテーマを掲げておりますが、パネルディスカッションにおいては長時間労働改革をどのようにやっていくか。その結果として、多様な人材がどう活躍できる世界を作れるか。そんな観点から素敵なゲストのみなさんをお呼びしております。

「社員の仕事をどう減らすか」というタイトルは、『AERA』で有名なキャッチをつくり続けてこられた浜田さんにつけていただきました。消灯するなど残業を減らして、どうやって帰ってもらうか。実際に、電気を消したりパソコンを消したりするなどされている企業も多いと思います。

でも、それだけでは本質的な働き方改革にはつながりません。今日はそれよりもさらに踏み込んで、本質的に働き方を変えている企業の方、本業で新しい働き方を創出されている方をお呼びさせていただいております。

まず日本航空株式会社、調達本部調達第一部企画グループ長の埋金洋介さん。続きまして、グーグル合同会社、ブランドマーケティングマネージャー兼Women Willプロジェクトリードの山本裕介さん。株式会社リクルートホールディングスiction!推進事務局長の二葉美智子さん。最後に、株式会社新閃力代表取締役の尾崎えり子さんです。

みなさん拍手でお迎えください。

(会場拍手)

日本航空が経営破綻後に設立した「調達本部」

さて、ここからパネルディスカッションに入りたいと思います。最初にお1人5分ずつ、どのような取り組みをしているかをプレゼンテーションしていただきます。

埋金洋介氏(以下、埋金):みなさんこんにちは。日本航空の調達本部の埋金と申します。

先ほど浜田さんのお話の中にも出てきましたが、日本航空の調達部では、調達の改革とともにワークスタイルの変革を社内で先行トライアル部門というかたちで進めてきたということで、今日はお招きいただきました。

我々もまだまだ変革途上であり、みなさまの前でお話させていただく立場ではないのですが、そんな中、働き方改革をどのように進めてきたのか。具体的にお話したいと思っております。

私は日本航空、調達本部というところにおります。調達本部は、2010年1月19日の経営破綻後にできた本部であり、ここがワークスタイル変革の発端にもなっています。我々、調達本部は現在約130名おり、航空機から文房具まですべての物品、役務の調達を担っています。

実は、経営破綻前は調達本部というものはありませんでした。

航空会社ですので、航空機や原油を購買する部門はあったのですが、その他の経費については、すべてビジネスユニットがそれぞれの判断で、購入できるシステムになっていました。

日本航空社長の、変革への強い意思表明

我々の調達本部は、経営破綻以降、会社全体のガバナンスやプロセス変革、社員の意識改革を引っ張っていくために作られた組織です。

調達本部では、人件費と公租公課を除いたおよそ6,000億から7,000億の経費を約130名ですべてカバーしています。私は調達本部の中では組織のストラクチャーを構築したり、ビジネスプロセスを変えたり、タレントマネジメントということで組織の人財管理を担当していました。

調達本部では、そのカバレッジを広げるために、より多くの人財が必要でした。しかし、経営破綻したこともあり、人財は非常に枯渇していました。やらなければならないことはあるけれど、人を増やさなければいけないことを課題として抱えていました。

2014年、経営トップである社長の植木(義晴)から全社員に「ワークスタイル変革をやっていくぞ」という強い意思表明がありました。

実際には、この少ない人員の中で「働き方を変えていかないと我々は生き残れない」というメッセージはあったのですが、具体的に、なかなか進まなかったのです。

そこで調達本部は、まずはトライアル部門として、このワークスタイル変革をやってみようということで立候補し、進めることになりました。具体的には2014年の夏頃に制度を設計して進めました。

「どうしても会社に長居してしまう要因」を排除

調達本部は調達という仕事上、無駄なお金を使わないという自負もあったので、失敗も成功もすべてトライしてみようと思い、改革を推し進めました。

最初にやり始めたのは「どうしても会社に長居してしまう」「なぜか知らないけれどオフィスに来てしまう」といった我々をオフィスに縛り付けているものを解消することから考え始めました。

まずはペーパーレスに着目しました。紙がある、資料があるからそこに来る。もう1つは、パソコンです。Wi-Fiにして、ノートパソコンを貸し出しました。

そしてもう1つは電話。いろんな会社さん……例えばカルビーさんなど進んでいる会社の方にお話をお聞きしたところ「フリーアドレスと電話は切っても切り離せない」とアドバイスいただきました。固定電話をスマートフォン化し、そして最終的にはフリーアドレスを導入しました。

フリーアドレスに関しては、我々、調達本部ができて間もないということもあり、タレントマネジメントや人材育成の観点から、縦割りの組織に滞留しがちになっていた情報やナレッジを組織横断的に横に展開していくという目的でも導入を決定しました。

旧来の「がんばってなんぼ文化」をどう改革するか

また、環境改善や働きやすくするだけでなく、最終的にこれらをすべて実現すると同時に、勤務管理をやっていくことを目的にしました。

最終的なゴールは、実際に帰宅する時間とパソコンのログオフ時間をゼロにすること。そして1日8時間勤務の中でしっかりと成果を出していく。そういったことをやり始めました。

さらに在宅勤務についても制度を整えて実施しました。オフィスでなくても、どこでもしっかりとパフォーマンスを出せるように、また、オフィスで働く以上のアウトプットを出していくことを目標にやってきました。

実際にやってみるといろんな声がありました。そもそも我々は経営破綻したこともあり、這いつくばってでもやらなければならない気持ちでやっていた部分はあります。

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