Indeedの買収の評価

記者1:ご説明ありがとうございました。雑誌財界のキタガワと申します。今回の業績でもとても伸びているIndeedなんですけども、2012年に子会社化されてこれまで大きく成長をけん引されていると思うんですが。

グローバル化、テクノロジー化というところでも大きな影響を与えてると思うので、あらためてIndeedの買収の評価を聞かせてください。

あともう1つ、テクノロジー企業としての存在感もとても高まっていると思うので、現状の進捗具合といいますか、そういうかたちで他の企業と比べてこれだけリクルートはテクノロジー化が進んでるということがありましたら教えてください。

峰岸真澄氏(以下、峰岸):ありがとうございました。Indeedの買収の評価ということなんですけど、私どもは2012年の9月に子会社化いたしたわけです。

当時、2011年の段階の売上高は87億ドルでした。スタートアップまでは言わないものの、設立以来まだ10年経っていないような、本当にそういうベンチャー企業を当時約1,000億円で買収したわけです。

当時のリクルートは、海外の売上高でいうと、2012年3月期で約293億円程度でしたので、当時の海外の売上高比率は3パーセント前後。

そのような中で、この当社においてはベンチャー企業のような売上高がほんとに小さい、ただし相当魅力的な要素を持つIndeed社を当時の当社でいえば約1,000億円というたいへん高額な金額で買収する決断、意思決定をさせていただいたわけでございます。

当時から、我々の買収に対するIndeedの見立てと、Indeedの売上とか利益の見立てとか、その競争優位っていうものを長期的に考えていたわけですけども。

それそのものも本当にそうなるのかどうなのか、確信が持てない中で買収に挑んだということでしたけども。

それが今5年経ってみて、ある程度というかほとんど当時想定した通りの競争優位性を保ちながら、グローバルに彼らの、Indeed社の勢いが加速していったということになろうかと思います。

その意味で言うと、1つはファイナンシャルの側面で、当社に対して大きなリターンをすでにもたらしているということが1点ございます。

もう1点は、当社におけるグローバルでインターネット事業社として戦っていくいき方というものを、やはりIndeedという企業体、アセットをテコにして挑んでいけるということを、筋がついたというか、めどがついたという点で、グローバルでのインターネットビジネスに大きく展開する1つのアセットを持ったということがたいへん大きいです。

3点目が、このIndeedの強いアプリケーションのエンジニアリングの技術、技術集団を東京で開発拠点を持つことで、Indeed東京と言いましたり、リクルートからはエンジニアハブという言葉で言ったりしています。

Indeedの開発拠点を東京に持つことで、日本のなかでも本当にTop Tierのエンジニアがリクルートグループに入社して、Indeedに出向し、Indeedの開発をそのまま東京でやっていく。

そういった日本への、テクノロジーへのレバレッジもかけていく1つのハブになったというのも大きなポイントだったと思っております。

エンジニア採用への意識

2つ目、もう一度ご質問お願いできますか?

記者1:エンジニアの数も増やしていらっしゃると思うんですけれども、プログラミングであったりとか、そういったことへの意識が高い会社になっているのではないのかなという感じがしました。

峰岸:それはもちろんそうでございまして。Indeedによる日本における技術の逆流というところも、先ほど申し上げましたとおりあるんですけど、それに加えまして、国内事業におきまして、IT化の推進というのをビジネス上どんどんやってきておりまして。

これは2012年の段階で、例えばいわゆるIT人材と言われているエンジニア、プログラマーですとか、例えばビッグデータのアナリストを含めて、2012年当時、5年前で約300、400人でした。2017年は約1,700名前後ジョインしています。

ですから、いわゆるIT人材と言われる量の増強というものはさることながら、それらITの人材、とりわけ優れたITの技術の能力を持った人材が最大限自分の力を引き出して、楽しくチャレンジングなビジョンに向けて働ける環境をずっと整えてまいりましたので。

たいへん質の高いITのエンジニアの方々も入社できるようになったというのが、この数年間で大きな変化になっていると考えています。ありがとうございました。

オールアバウト株の一部売却について

記者2:東洋経済のヤマダです。現金がもう3,456億円も貯まってますけれども、このへんをどうやって有効に使っていこうかというようなところがありましたら教えてください。それが1点目です。

2点目が、3月末にオールアバウトの株を一部売却されておられます。これ、日本テレビに売却されていますが、この経緯。日テレから話があったとか。

一方で、まだオールアバウトを7パーセントぐらいお持ちなんですかね。これ持っていらっしゃる理由を教えてください。

3点目が、今回、中間配をやられるということなんですけれども、このへんはどのような検討をされたのかということで、四半期配当とか、ほかの選択肢なども検討されたのではないかと思うんですけれども、中間配に落ち着いたと。

あと3倍分割というのも、このタイミングで決定された理由はなにか教えてください。以上です。

峰岸:現金に関しましては、ある一定程度の現金をどういうかたちで保有していくかという考え方が当社にありまして。1つはそういう考え方にもとづいてというのがあります。

やはりインターネット、当社、安定的な収益をあげる国内の事業、そして人材派遣事業を持っていますけれども、Indeedをベースとする、これからM&Aをやっていくようなグローバルのインターネットのベンチャーに近いような企業を買収していくということも想定していますので。

そのようなインターネット企業を買収していくためには、Indeed自体もそうでしたけど、まだまだ現段階では小さな規模であるが、優れた技術を持って、将来必ずいけそうなビジネスモデルをもっているような企業というのは、たいへん評価が高い企業(ユニコーン企業)になっていくわけですね。企業規模の割には。

そのようなある程度のリスクを抱えるような、インターネットの企業の買収に関しては、やはりデットではなく、当社の現金を活用しながら買収していくのかなというふうに、基本的な考えとしては持ってるんですね。

人材派遣のような、産業として数十年あって、基本的に当社買収そうですけど、ターンアラウンド、それなりに売上規模があるが、EBITDAマージンが低い、それを買収してEBITDAマージンを上げて利益を出していく。

というようなところに関しては、ある程度、当社のターンアラウンドの経験も磨かれてきたので、見えているというのもありますから、デットを活用しながら買収していくというようなふうに、基本的には考えております。

ですから、今の現金水準がとても多すぎるとは、むしろ思っていないというのが1点目。まあ適切水準のなかに入っているかなと思っています。

オールアバウトの件ですけど、もともと保有していまして、ヤフーさんも含めて。当社の中で、国内の事業のメディア事業とのシナジーをずっとここ数年追求してまいりましたが、大きなシナジーがとりわけないということもありまして、売却方向にいったということであって、それが1つでございます。

補足を佐川のほうから申し上げるのと、中間配当に関しても佐川が説明します。

中間配当に関して

佐川恵一氏:この中間配当分割等々の株主様へのいくつかの施策でございますが、昨年、売出というのを9月に行いまして。株主のみなさまもさらに多様な顔ぶれになってまいったということがベースにありまして。

やっぱり個人、それから機関投資家ということで、多様化が進んでいくなかで、やっぱり株主のみなさまへの還元の機会の提供というものをもう少し増やしていくということで、中間期での配当を作らせていただくということが1つであります。

分割につきましては、やはりさらに流動性を向上させたいということが1個と、さらにいろんな人にリクルートグループを支えていただきたいということもありますので。

よりお求めやすいと言ったら変なんですけれども、ご購入いただきやすいようなレベル感を考えたいということで、分割を行ったということであります。

オールアバウトにつきましては、先ほど峰岸からお話がありましたが、その後のことについては少し個社の話になりますので、コメントについては申し訳ございませんが、ご容赦いただければと思います。以上でございます。

M&Aチームの体制

記者3:日経新聞のナグモと申します。峰岸さん、先ほどM&Aの話で、リスクがあっても優れている技術があれば検討するとおっしゃいましたけど、M&Aしていくときに峰岸さんご自身がどういうところを、例えば経営陣とかほかの点で、ここを見極めてM&Aするという点があれば教えてほしいのと。

あと、株価が上場来高値圏で推移していますけど、そのご感想をちょっとお聞きできればと思います。

峰岸:M&Aに関しては、リクルートグループの中で、先ほどのセグメント。HRテクノロジー、メディア&ソリューション、人材派遣という。それぞれのセグメントが、当社の現在の組織が体制がストラテジック・ビジネス・ユニットと言いまして、SBU体制になっています。

そのSBUの中に、それぞれでM&Aチームがいます。そのM&Aチームが常に稼働して、我々とグループのジョインしている。先を探しながら、買収する際には買収に向けて動くということになってるんですけれども。

やはり1つはビジョンですね。私たちがそれぞれSBU単位で描いている中長期のビジョン、事業の考え方、そこに合致できるかどうか、お互いにそこが合致できるかというのが一番重要だと思っていまして。

Indeedもそうでしたけど、我々も国内の中でずっとHRを長い期間やってきて。Indeedはベンチャーで、当時小さい会社でしたけれども、これを世界に広げていきたいと意欲もあって。

HRに対する我々の思想とか考え方とか、世界において求職者がより良い求職活動をできるように、このプラットフォームを活用していこうとか、そのビジョンがたいへん我々と共感できたというのが一番大きいんですね。

例えば人材派遣でいえば、我々のメソッドがあるわけなんですけれども。ユニットマネジメントというメソッドがあって、EBITDAマージンを向上させていく。

要するに派遣登録者と派遣社員を欲している企業のマッチングの効率を高めると。そのことによって就業機会を増やしていくというコンセプトが人材派遣のSBUにもありまして、そういったコンセプトの下、買収候補の会社にそのようなお話をして、ぜひそのような取り組みを一緒になってやってみたいと。

そういうビジョンがあるから、買収したあとに、我々が提供するようなノウハウを積極的に取り入れて、その買収側の経営マネジメントチームが試して、それで試してみて成果が出て「いいな」というふうに思ってきて、ポジティブなサイクルが回っていくと、そういったことが一番大きいと思います。

その手前には、自社ですね。我々でいうと、中長期のストラテジーというのを本当に真剣に探求して考えて、それぞれのSBU単位でM&Aの対象領域というものを定めていくので。

そのときに我々が提供するノウハウは何で、強みは何で、逆にいうと我々が持っていないアセットとかテクノロジーは何かということをかなり突き詰めてM&Aの戦略を描きますので。

その戦略の下、ソーシングをして、探して、そして探した相手と交渉の際には、ビジョンが一致すること。その2つが一番大きいかなと思っています。

株価に関しましては、需給の問題で一致することなので、私はコメントできませんけれども、ある種の当社の潜在的な能力を見ていただいたのかなと。

昨年来、株価上昇が起きているのは、当社の潜在的な能力の理解が深まっているということが大きいのではないかと思っておりまして。

それ以上のコメントはとくにないんですけど、企業価値を上げていくということは、我々としてもとくに、企業のミッションとしてあるということなので、株価が上がっているということはその結果の表れなので、好ましいことだと思っております。

Indeedの成長要因

記者4:日経新聞のトクダと申します。よろしくお願いします。まず1つは、Indeedの2019年3月期の売上高見込みを2倍か3倍にということですが。

この急成長、成長の加速。想定以上だということだと思うんですけれども、そこの要因をどのように見ておられるのかというのが1つと。

もう1つ、先ほど、グローバルなテクノロジーカンパニーというようなところに企業自体がシフトしていこうとしているところで、成長もすごく今していると思うんですけれど、そこで逆に、社内・外合わせて課題みたいなみたいなものが、峰岸さん、考えられているものがあれば教えてください。以上、2点です。

峰岸:ありがとうございます。Indeedの成長要因ということですね。まず1つは、このHRという、まあバーティカルと呼んでますけど、カテゴリーにおけるマッチング、求職者と企業をマッチングするプラットフォームとしてのビジネスモデルがたいへん競争優位性が高いということだと思います。

2つ目が、その強力なエンジニアリング、テクノロジーにもとづくこのビジネスモデルに対して、リクルートが買収したことによってマネタイゼーションの力がたいへんついたという、この2点がすごく大きいと思っています。

HRの、人材のインターネット広告サイトは、要は広告のサイトなんですね。ジョブボードと呼ばれますけれども、基本的には広告枠を企業が買って、そこに対してインターネットの求人サイト側がそれを表示して掲載していくという考え方で、広告課金モデルなんですけれども。

IndeedはHRにおけるジョブボードではなくて、HRの検索エンジンなんですね。ですから、HR領域におけるGoogleといってもいいかと思うんですけれども。

ご覧いただければわかるんですが、検索窓に職種とエリアを入れれば、情報がクロールされて、そこに世界50ヶ国ぐらいの情報であれば出てくるということで、課金モデルは広告課金ではなくて、CPCというクリック課金モデルになってるんですね。

そういう意味でいうと、ひと月何十万のお金、採用の広告の料金のお金を出さないとそのプラットフォームには掲載できないというモデルから、Click per 課金という、「1クリックいくら」からこのプラットフォームに企業さんが参画できると。

そのことで、これまでインターネットの求人広告サイトに掲載できなかった、いわゆるロングテールと言われているような、たいへん小さな企業さんがIndeed社のプラットフォームをご利用いただくようになったと。それで累計300万社のお客様が今、活用していただいていると。

それが、Indeedのたいへん高い技術を持った人たちのエンジニアリング集団の力によって、マッチングの能力がたいへん高いアルゴリズムが生み出されて。

そこでたいへん便利だということで、今、世界で2億人のjobseekerが、indeedのプラットフォームを月間2億の人が使っているということになりますので。

そういった強いビジネスモデルがあって、そこに対してより強固なマネタイズのモデルをリクルートが提供して、そこでうまく回っていると、簡単にいうとそういうことかなと思っています。

インターネットのこのグローバルの領域での課題なんですけど、それは言ってみれば、課題は満載で。

このインターネットの世界の領域にはたいへんなジャイアントのみなさんがたくさんおりますし、そのなかで当社が参入して戦っていくわけなので、そういう意味ではすべてが課題だとは思いますけれども。

やはりHRという領域に関しましては、日本国内で築き上げてきたノウハウもありますし、Indeedがいまのところたいへん順調で、月間2億人のユニークユーザーをHRの領域で使っていただくようになりましたので。

このアセットをベースにしながら、自前の成長とM&Aを通じて、拡大していければなと思っておりまして。HRの世界でとにかくがんばっていくということかと思っております。ありがとうございます。

次の経営者候補の育成

記者5:NewsPicksのサトウです。2012年から峰岸社長が社長就任されて、グローバルなテクノロジーカンパニーとして経営の舵を切られて、企業価値を高められたと思うんですが、次の経営者というものの育成というのは進んでいるのかとか。

そういった候補みたいなもののプールというか、があって、どういうふうに育成を進めていらっしゃるのかとか、次代のリクルートの経営者の条件というのはなにになるのか。このあたりについて教えていただけたらと思います。

峰岸:人材のサクセッションというか、育成のプログラムというのはいくつも走らせています。日本国内はこれまでも走らせていましたし、今後もそのやり方は変わらないんですけれども、次世代人材の育成のプログラムというのがありまして、そこに向けて回転させていくということであります。

海外については、先ほどご紹介したように、人材派遣、HRテクノロジー、国内中心のメディア&ソリューション。

SBUごとにそれぞれ人材の育成の手法が違いますので、旧来のリクルートでずっと築き上げてきた人材育成のプログラムというのは、メディア&ソリューションのSBUで今後もずっと踏襲されていくと思います。

Indeedや人材派遣のSBUにおいては、SBU単位で人材の育成をしていくわけなんですけれども、やはり海外の場合は、基本的にはたいへん日本だけが逆にいうと特有で、ジェネラリスト集団みたいなことなんですけど。

海外というのはたいへんスペシャリティの集団なので、逆にいうと経営者を育成するというのはむしろ難しいんですね。

ただ一方では、経営者はいっぱいいるわけですよ。例えばアントレプレナーとか。そもそも買収した企業のCEOはみんな、そういう意味ではCEO経験者ですから、逆にいうと、買収した企業のCEOが未来の経営陣の候補になってくるわけですよね。海外のSBUの場合は。

そこのジャンルがHRのテクノロジーと人材派遣では違うということなんですけど、やはり買収した企業の中のSVPクラス、役員クラスもそうですけれども、CEOこそが有力なサクセッションの候補になってると考えています。

インターネットとかテクノロジーにシフトしていくということですので、もちろんいわゆるITの知見というものは必須になってくると思っています。

ただ、経営者におけるITの知見というものは必ずしも、例えばプログラミングの経験だったりとか、そういったエンジニアリングのなんらかの経験ということではなくて。

やはりITがもたらす変化を本質的に理解して、自社のビジネスをマネタイズ可能なモデルに仕立てていく能力だと思っています。ITの必要な能力というのはまず1点目がそれと。

2点目が、そういった高度な技術を持つ、いわゆるIT人材ですね。アプリケーションのエンジニアでもそうですし、ビッグデータのアナリストでも、UXデザイナーでもなんでもそうですけれども。

そういった高度な技術を持つ人材に対して、彼らの力を最大限引き出し、切磋琢磨しながら、チャレンジングなビジョンに立ち向かっていく魅力的な組織を作っていく。

その能力もたいへん重要かと思っていまして。その2点というのは、これからマストになってくるんじゃないかなと思います。ありがとうございました。