minneは全国に作品を広げてくれる場所

塩谷舞氏(以下、塩谷):その頃から、Yoshiteruさんはテレビのディレクターをやられていた……?

片桐仁氏(以下、片桐):なんで、革をやろうと思ったんですか? よしおに勧められたから?

Yoshiteru氏(以下、Yoshiteru):いや、よしおに革を勧めたのは僕。

片桐:ああ、そうなんですか! なんでですか?

Yoshiteru:僕も美大でいろんな素材を触ってて、それで革がちょっといろいろやりやすそうだなと。僕はずっと金属をいじってたんですけど。

片桐:銅とかですか?

Yoshiteru:そうです、鉄とか指輪とかをずっと作ってたんですけど。指輪、けっこういるんですよ、作る人が……。

片桐:ライバルがね。

Yoshiteru:ライバルがたくさんいて。絶対、勝てないと思って。

片桐:ああ、そうですか。

Yoshiteru:それで、革ならいろいろおもしろくやれそうだなと。いろいろなバリエーションも出せそうだと思って、それで革作品を制作し始めました。最初はキーホルダーとかを作ってたんです。

まだ、ぜんぜんネットもハンドメイドマーケットもないときで。とりあえず、発表してみようと思ってデザインフェスタとかイベントに出ていました。

Yuka氏(以下、Yuka):そういった時に、ネットショップのほうから誘いを受けて。

片桐:そこでスカウトしてるんですね。デザインフェスタとかでやってるんですか? minneさんもスカウトを。

阿部雅幸氏(以下、阿部):やってた時期もありますね。

片桐:最初の頃?

阿部:作家さんにサービスを知っていただくために、最初の頃はイベントに出向いてチラシの配布などをしていました。

片桐:minneさんは基本、誰でも販売できるんですよね?

阿部:そうですね。

片桐:そうなんですよね。

Yuka:小さいところから始まった素人にとっては、minneさんのサービスのように、全国に作品を広げてくださる場所があるのは、ものすごくありがたいことです。

片桐:そうですよね。

最初のminneイベントは6畳スペースで開催

塩谷:次のスライドが、イベントですかね?

片桐:これは?

阿部:これはminneを立ち上げてすぐの頃に、作家さんと一緒に初めて出た販売イベントです。

片桐:え、自宅ですか?

阿部:これ、自宅じゃないんですよ。自宅じゃないんですけど、シェアスペースみたいな6畳くらいのところを借りて、イベントの中の一区画をminneのスペースとして販売をしたというのが最初ですね。

塩谷:今はもう、大きいところを借りて、minneさんのイベントをどーんとやってらっしゃいますけど。

片桐:ビッグサイトですよね。

阿部:はい、今年もやります。

片桐:広大な土地を使ってやってますもんね。

阿部:そうです(笑)。

片桐:有り余る土地ですもんねえ。「儲かってるな!」って(笑)。

(会場笑)

阿部:(笑)。ぜんぜんですよ。

片桐:ぜんぜんではないでしょ? 31万人から搾取できるわけですから(笑)。

阿部:搾取してない(笑)。マージン、マージン。

片桐:マージン? 手数料?(笑)。

阿部:ほんの少しのね。

塩谷:サービス提供開始してすぐの頃から、ユーザーさんが使いやすいようにアプリを作り始められたりしていますよね。

阿部:そうですね。わりと早い段階からアプリは提供を開始しましたね。

塩谷:ユーザーのためを思って作っていかれたという。

阿部:そうですね。はい。

作り手がスポットライトを浴びる機会がない

片桐:最初にminneさんがコンテストの審査員みたいなことで呼んでいただいて。これ3万点の中から選りすぐりの300点くらいを選んでくれと言われて。

阿部:その時は応募数が1万点くらいでしたね。

片桐:1万くらいだったか。それでもすごい物量で。光浦(靖子)さんとか、篠原ともえちゃんとかといっしょにね、選びました。

塩谷:こちらの写真は。

阿部:昨年開催した「minneのハンドメイド大賞2016」の授賞式の写真ですね。

Yoshiteru:この真ん中がよしおです。

片桐:あ、よしお!

Yoshiteru:顔がひどいのがよしおです。すごいキャラクターなんですよ。

塩谷:こういうハンドメイドマーケットのようなプラットフォームって、そのコミュニティを作ってる人たちが1回戦闘モードに入ったりするんですけど、それはどうですか?

片桐:どうなんだろう?

阿部:もともと、ものづくりされてる方ってなかなかスポットライトを浴びる機会がないなと感じたことから始まったので、それはないですかね。

イベントに出されたりとかで、ご自身は活動されてるんですけど、第三者が「その作品、すばらしいよね」と言う機会がなかなかなかったので、その機会をつくりたいなと。その結果として、作家さんの活躍がさらに広がればいいなと思ったんです。

片桐:そうですよね。有名になりますもんね。

阿部:そうです。そうやって展開していけばいいなという想いで作りました。

2013年度で受賞したのはペンギンバッグ

塩谷:2013年の受賞作家は、Fish Born Chipsさんだったんですよね?

片桐:そうです。

Yuka:このペンギンバッグが受賞させていただいた作品なんですけど。

塩谷:ちょっとご覧いただきたいんですけど。

Yuka:まだこういう大きいイベントとして開催されていなくて。翌年からは、大賞の方に50万円の賞金が出るという……。

片桐:もらったんでしょ? 50万って言ってたもんね。

Yuka:それが私たちの年だけ、なにもないんです。

片桐:え⁉︎(笑)。あげます、じゃああげます! 僕からじゃないです、minneさんからね。

阿部:minneから?

Yoshiteru:minneさんから……ありがとうございます!

Yuka:ありがとうございます!

阿部:話の流れ的には、片桐さんからじゃなく?

片桐:minneさんからです。僕、審査もしてないし。

阿部:審査されていたじゃないですか。

片桐:審査してない年ですから(笑)。まあ、そういう時があっても、なにももらえない時があったとはいえ、そこで頭角をあらわしていっぱい注文が来たんですね。

Yuka:そうです。注目度は一気に上がって。

片桐:そうですか!

Yuka:毎日のようにお問い合わせをいただいたり、お客様から注文が入ったり。

受賞後に注文が殺到、1年で100個以上を生産

塩谷:どんなお問い合わせ、どんな注文が入ったんですか?

Yuka:ペンギンバッグは、注文自体もコンスタントに入るようになって。今ではバイトさんに手伝ってもらっているんですけど、当時は、私たちだけで作っててけっこう大変でした。

片桐:追いつかない?

Yuka:そうですね。

塩谷:グロースされたというか……。

Yuka:そうですね(笑)。

Yoshiteru:そんな、たいしたあれじゃないですよ(笑)。

片桐:いやいや、生産してる限りですよ。ちなみにそのペンギンのバッグって、何個くらい売れたんですか?

Yoshiteru:1年で100個? 100弱か。

Yuka:100個以上。

片桐:100個以上作ったんですね。

塩谷:すごい。

Yoshiteru:すごいですよね(笑)。

片桐:その作品だけで100個以上ですよね。

Yoshiteru:ほかにもありますけどね……。

片桐:きっかけになるんですね。

塩谷:受賞をきっかけに、その後完全にディレクターを辞めて作家活動だけに専念していったというかんじですか?

Yoshiteru:いや、実は僕今も美大の予備校で講師もしているんです。片桐さんも美大だと聞いてたんですけど。

美大出て、作家活動って、本当に地獄なんですよ。なにを目的にしていいかわからないし、誰に見てもらえばいいかわかんないから、みんな辞めてくんです。でも、作りたい気持ちはあるんですよね。そういう時に、今はこういうサイトがあるから、バイトとかをしながら作り続けて作家を目指せるというのが、道としてあるのはいいなと思います。

塩谷:当時こういうね、サイトみたいなのがあったらね。

片桐:ほんとですよ。

Yoshiteru:そのぶんライバルも増えますけどね。切磋琢磨しないといけないですし。「こういうのが売れる」とか。

塩谷:それはライバルのみなさんだって。

Yoshiteru:そうですね。

雑貨のほか、お菓子や植物も販売

塩谷:これは、みんなminneの作家さんですか?

阿部:はい、minneの作家さんです。

片桐:お菓子みたいなものもあるんですか?

阿部:お菓子もあります。2016年から「食べ物」の取り扱いが可能になったんです。

片桐:食べられるんですか、あれ?

阿部:はい、食べられます。あと電子機器的なのとか。その、おもちゃとか。革の製品もあったりしますね。

片桐:いろいろな作品があるんですね。それは革ですか?

阿部:紙ですね。ペーパークラフトなんですよ。

片桐:これ、布?

阿部:布です。

片桐:これなに? 植物(笑)? 植物のなにがminne?

阿部:フラワー・ガーデンのカテゴリーがあって、多肉植物を販売している作家さんもいらっしゃいます。

片桐:なんでも売れますね!

塩谷:次はなにを売りますか?

片桐:手形? バーンとやって(笑)。相撲取りみたいな、勝手に色紙的な? 

阿部:作るの、ものすごい大変ですもんね。

片桐:月1個作るので精一杯ですね!

塩谷:手形なら、ポンポン作れますしね。

映画『TOO YOUNG TOO DIE』で生まれた鬼Phone

塩谷:これはiPhoneケース?

片桐:そうです。さっきのサイの後の鯛フォンですね。これはね、鱗が痛いんですよ、ヒレが。

塩谷:「イタイイタイ!」みたいな。

片桐:これは、もう海外へ行ったらすごいですよ? 「なんだ、それ!」「なんだ、それ!」と言って、警備さんにいっぱい囲まれましたから。「It’s my phone!」て言ったら、爆笑してましたから。

塩谷:(笑)。

片桐:「Come on!」「Amazing!」って。向こうのほうが俄然ウケますね。

塩谷:海を超えて……。日本だとどうですか?

片桐:見て見ぬふりですね。「やべえやつ」みたいな。

(会場笑)

塩谷:おばあちゃんとかも?

片桐:おばあちゃんとかは話しかけてくれる。子供とおばあちゃんか海外の人ですね。

阿部:海外の人ってわかりやすい物に反応してくれるんですよね。

片桐:すごいですよ。

塩谷:ほかにこういうシリーズがございますけれども?

片桐:そうですね、歴代のiPhoneで使ってますから。これは『TOO YOUNG TOO DIE』という映画に出た作品ですね。

塩谷:映画の小道具ですか。

片桐:そうです、小道具で最初に僕を呼んでいただいて。

塩谷:小道具で? 俳優業は?

片桐:宮藤(官九郎)さんの特命ですよ。「出させてください」て言って(笑)。

塩谷:それが……。

片桐:それが鬼Padと鬼Phone。

片桐氏「iPhoneをつるっとさせてたまるか」

塩谷:一番手がかかってそうな、iPadケース。

片桐:そうです。これはもう片桐ですね。片Padですね。ちょうど、初代iPad で銀座のApple Storeに並びましたからね。

阿部:そうなんですか⁉︎ 

塩谷:並んだんですか?

片桐:iPhoneも持ってないのにiPadを買って。これ、入ってます。僕のリアルiPadです。

塩谷:片桐さんとしては、使いたいから買うのか。それともケースに入れたいから買うのか……。

片桐:両方ですね(笑)。粘土を盛りたい感はあります。「つるっとさせてたまるか」というね。iPhoneを落として、みんなバリバリになって。

阿部:落としたことないですか?

片桐:落としてもヒレが割れちゃうから(笑)。みんな、割れないと思ってるんですよね。みんなiPhone割れてるじゃないですか?

阿部:割れてますね。

片桐:割れた瞬間、僕、2回くらい見てますから。それを考えると、これくらいやったほうがいいですよ。iPhoneに対するリスペクトがみんな足りないんですよね。

塩谷:リスペクトがそのヒレになり……。

片桐:そうです。あと、家に忘れない。

塩谷:家に忘れない……。

片桐:あと、人のものと間違えない。いいことしかないですよ。あとは、とてつもなく恥ずかしいってこと(笑)。

阿部:目立ちますよね?

片桐:目立ちたくないですよ。電車の中で目立ちたくないですから。

阿部:目立ちたくないですか?

片桐:電車の中でヒレ付きのスマホを操作している人、やばいじゃないですか。

(会場笑)

満員電車で人にはさまれて持ってかれたりとかしちゃって。

塩谷:片桐さんも満員電車に乗ってらっしゃるのですか?

片桐:乗ってますよ、たまに。

塩谷:でも乗って行かれたその先には……危ないかもしれませんね。

片桐:そうですよ。これがこう人前ではさまっちゃって、ノコギリみたいになっちゃったりすると、申しわけない。それはまあしょうがないとして、リスペクトです。いろいろ失礼なことを言いましたけど、憧れのAppleです。憧れが半端ないですから。