2017年2月期 通期 営業概況

浦井敏之氏(以下、浦井):今日はわざわざありがとうございます。平成29年2月期の東宝株式会社決算の結果でございます。

お手元の決算短信の1ページ目にもございますように、営業収入2,335億4,800万。昨年の前期比で申し上げますと1.8パーセントの増収でございます。

営業利益が502億2,300万。こちらは23.4パーセントの増益。経常利益でございますけれど515億6,200万。21.4パーセントの増益。最終的に親会社株主に帰属する当期純利益でございますけれども、こちらが332億5,200万。28.7パーセントの増益となっております。

セグメント別業績

簡単に一言で表すと、映画事業が非常に好調な年でございました。とくに『シン・ゴジラ』と『君の名は。』。

私どもが製作から大きく関与した映画がヒットしたことにより、収入も伸びましたけれども、それ以上に利益の増益幅が大きくなりました。

その他にも、演劇事業は利益の面で若干、昨年に届いてないところございますけれども、これは公演費の関係で、原価の大きかった公演があったということですが、水準としては昨年が最高の水準で、ほぼそれに匹敵する水準で推移できたということでございます。

また不動産事業でございますけれども、こちらは新宿東宝ビル、札幌東宝公楽ビルといった建物が通期稼働しております。

他に道路事業もやっております。道路工事も非常に好調でございまして、こういったことにより収入・利益とも伸長しております。

セグメントは後でちょっと詳しく申し上げるとして、BSの方の話でございます。総資産4,175億2,600万円。純資産が3,204億4,200万円。

キャッシュフローでございますけれども、営業活動によるキャッシュフローが418億300万円キャッシュフローインでございます。

投資活動によるキャッシュフローは172億1,900万円のキャッシュフローアウト。財務活動によるキャッシュフローが142億1,600万円のキャッシュフローアウトとなっております。

業績予想

平成30年の2月期の業績予想でございますけれども、営業収入がまず上期8月までの段階で1,289億円。12.1パーセントの増収。

営業利益が249億円。2.0パーセントの増益。経常利益が258億円。こちらは3.0パーセントの増益。親会社株主に帰属する当期純利益が181億円。9.1パーセントの増益を予定してございます。

こちら、昔の言い方で言うと中間期の歴代の最高記録となる予定でございます。また通期の業績ですが、営業収入が2,292億円。こちらは終わった期に比べますと、1.9パーセントの減収を予定しております。

営業利益が409億円。こちらは18.6パーセントの減益。経常利益が428億円。17.0パーセントの減益。最終的な親会社株主に帰属する当期純利益は296億円で11.0パーセントの減益を予定しております。

ただし、これらの成績ですけれども、営業収入こそ歴代で3位になります。営業利益、経常利益、それから最終利益は、歴代2位の成績で非常に強い年を想定していると思っております。

終わった期が非常に特異に成績が伸長した期でございまして、これと比較すると減収、減益の予想になりますけれども、水準そのものはほぼ過去最高に匹敵するような水準だと、いうことだと思います。

お手元の短信の40ページにセグメントの注記がございます。

前のページに前年の数字を載せてございますので、これと見比べていただきますと、先ほどちょっと触れましたけれども、演劇事業こそ、昨年と比べると利益の面でちょっと届いてないのですが、それほど問題になるような水準ではございません。

他の映画事業、不動産事業については、増収増益で非常に強い年だったということが、事業別でも各セグメントで申し上げられると思います。

本日の開示で自己株式の取得の額を設定してございます。

通年、例年ですとだいたい1月の段階で取得額を設定していたんですが、当期はちょっと様子を見たいということもございました。

ただ最近の相場では、どんどん上がっているという状態ではないですし、枠を設定して備えると。適切なかたちで知能的な資本政策をとっていこうということでございます。

投資家の関心のある状況としては、短信の2ページ目にあります、映画館・スクリーンの数ですけれども、2月末の段階ではその前の2月と比べて5スクリーン増の660スクリーンでございます。

ただし3月に入りましてから一部閉めているところがございますので、本日現在で言いますと660スクリーンとなっております。

また、今年秋に上野に1つ、TOHOシネマズ上野というのがオープンする予定でございますので期末にはまた増えるということになると思います。

私の方からは以上でございます。

最高の1年だった

司会者:では質問がございましたらお願いいたします。

記者1:今期の業績について率直にどのようにお考えでしょうか。

太古伸幸氏(以下、太古):先ほど浦井からありましたように、基本的には最高の1年だったなと思っています。

何よりも映画、演劇、不動産という我が社の3本柱の事業がきちんと安定稼働した上に、『君の名は。』『シン・ゴジラ』という2本の大花火が打ちあがりまして、それがさらに上乗せされたと。

我々は前年の営業利益を目標にしておりますけれども、407億というレベルもかなり中期経営戦略上も上を行っていたわけですけども、そこにさらに営業利益95億円を上積みにできたと。

これは大部分が自社で企画、製作、興行まで手掛けた『君の名は。』『シン・ゴジラ』両作の成功・成果が乗っかったということでございまして。

もともと、自社企画作品の充実というものが我々の重点政策でありましたので、その成果が結実して、去年の夏から下期に相当の利益をもたらしてくれたということでございます。

これを一過性のものにしないで、次期と今期、この進行期ですけども、同様の戦略で、またいろんなかたちで二次利用等の収穫もしつつ、新たな作品の、また花火をあげたいというふうに思います。

今年のラインナップいろいろ充実していますので、そういうかたちで前へ進んでいきたいな、というふうに思っています。以上です。

記者1:何が当たるかわからない中で、同様の戦略というのはどんなふうに考えて、狙いを込められていらっしゃるんですか?

太古:これは個人的な意見ですけれども、『君の名は。』が当たったからといって、まったく同じターゲットに同じようなものを用意したからといって、毎年当たるものではありません。

ゴジラだってそう毎年毎年つくっていたら飽きられてしまいますし、いろいろなお客様の動向といいますか、ニーズといいますか、嗜好というものはすごく移ろいやすいものであります。

なのでそれを少しだけ先を読みつつ、企画ラインナップを考えていく、というのが我々の課せられた使命で、そのPDCAを回していく。

失敗もあるんでしょうけれども、試行錯誤しながら前進していくというのが我々の企画・配給ラインナップをそろえるものたちの使命ですね。

なので、正解というものはなくて、将来的にはどこかでお客様の意思行動と我々の企画がずれてくることだってあると思うんですよね。そこを微調整しながらなるべく合うように、というようなかたちで我々はやってきているつもりですし。

それをやりながら、なおかつ安定した収益を稼げるような定番のアニメシリーズですとか、そういったことをベースにもって、しっかりとした年間のラインナップで勝負できるように頑張っているところです。

記者2:『君の名は。』は営業利益にどのくらい寄与しているんしょうか。

浦井:それはちょっとお答えできないです。契約上言っちゃいけない部分に触れてきますから「個別の作品でいくら儲かりました」っていうことは言いません。興行収入しか出せないですね。

記者3:『君の名は。』ですが、興行収入248億円という数字なんですが、これはいつ時点の数字になっておりますか?

太古:今発表している一番最新の248億2,000万という数字は、3月末時点です。

直近で我々の宣伝部隊がリリースしている数字は、9日までの集計で、10日に発表したということで、先週の土日が入っているっていうことですね。が、248億6,000万。

っていうことで、250までもうちょっとなんですけど。

記者3:現在の邦画の歴代興行収入ランキングでいうと、2位っていうことでいいんですか?

太古:はい、そうです。

記者3:1位は……。

太古:『千と千尋の神隠し』。

映画は景気とあまり連動しない

記者4:すいません、テレビ朝日のマツモトといいます。映画が大ヒットしたのはもちろん作品がよかったっていうこともあるんでしょうけれども、背景として景気が回復しているとか、お財布が緩んでいるとか、そういったところも影響はあったりするんでしょうか。

浦井:映画は景気とあんまり連動しないですね。景気がいい時に映画がヒットしているか、っていうと必ずしもそんなことはないですし。

今出た『千と千尋』もそうですし。最高の興行収入が出た作品が上映された年っていうのは失われた20年の真っ最中ですから、景気は悪かったです。

記者4:節約とかのときに映画が好まれるということですか?

浦井:やはり作品の力でしょうね。一番大きなものは作品の力だと思います。

記者4:ありがとうございます。

記者5:朝日新聞のマルヤマと申します。5つ質問がありまして、1点目が今季期待の映画と今期予定している映画の本数を教えてください。

浦井:本数はまだ固まらないですね。未発表も部分もありますから。

太古:本数といった時に、いわゆる本番宣っていうんですかね。東宝の映画営業部という部分で買っている、年間300館規模の番組ラインナップがあるんですけども。それがおおむね30数本です。30本強。これは発表しているところです。1年間で。

それでそれ以外に映像事業部という部門で、少しターゲットを絞って配給するっていう。これも配給なので、なかなか年間のスケジュールはまだ決まっていませんけど、10数本あるかな、というところでしょうか。

記者5:じゃあ、全体で40本強ぐらい?

太古:その両方合わせますとね。それからさらに、グループでいえば、東宝東和っていう100パーセント子会社が、洋画の配給をやってますので、それも……正確な本数わからないですが、16本ぐらい。

記者5:全部合わせて50くらい……。

太古:そうですね、近くになりますね。

次の期待作は『メアリと魔女の花』

記者5:とくに期待の映画は、今挙げるとすると……。

太古:あんまり「これだ!」って宣伝的に言うと、会社で1つ決めてしまうと、「他の作品のことは見ていないのか」みたいな話しになっちゃうので、あんまり言いたくはないんですけれども、(浦井氏のほうを向きながら)どうしますか?

浦井:まず、夏に元ジブリの米林(宏昌)さんのアニメーションで、『メアリと魔女の花』。これは期待作として位置付けていいと思います。

今、言いましたように、それぞれの作品に注目しているわけなので、優劣つけるわけじゃないんですけれども、他の作品でいうと、『君の膵臓をたべたい』。

これは、東宝芸能の女優さんの初主演でいくので、なんとかヒットさせたいですよね。

あとは、正月の『ドラえもん』から始まって、定番のアニメーション。その間にやっていく実写の作品、それが延々と続いていくわけですよ。1本1本すべて期待していると言えます。

太古:それから、戦略的に申し上げるんであれば、先ほどのターゲットを絞った方の配給っていう意味では、もう発表していますけど、11月にゴジラのアニメーション映画をやります。

これが3部作になるのですが、それの第1作目が11月に公開ということで、これも社内的には期待をしています。

記者5:3点目なんですけれども、営業利益率が大幅に今期は伸びていますが、これはどういう施策をやられているんですか?

浦井:利益率の話でいうと、さっきもちょっと言いましたけれども、『君の名は。』にしても、まして『シン・ゴジラ』の場合はオール・ライツが東宝ですから、著作権が収益力の源泉ですからね、そういったものが高ければ、利益率は高まります。

太古:ですから、興業の客単価とか、そういうことの、多少上がりつつありますけども、そこで利益がとれたとか、そういうことではないんですね。

記者5:要するに自社制作で全部続けて当たれば好調になると?

太古:そうですね、すべての収入が入ってきて、外に出さなくていいわけです。そういう状況ですから、そこで利益が高いということですよね。

記者5:椅子が動いたりだとか、そういうスクリーンは基本的にちょっと高いですが、そういう費用とかもあるということですか?

浦井:もちろんありますけども、それだけじゃないわけですよ。特に我々のMX4Dというのはまあまあ広げてきてますけれども、それよりも圧倒的にほかの普通の座席の方が多いわけですから、それだけで会社全体の利益がどうこうってことはないですね。

記者5:寄与している?

浦井:寄与はしてます。

太古:業績に与えるインパクトはそこまでのものではないということです。

記者5:4点目が、中経は超えてしまったんですが……。

太古:たしかに2015年に作った中期経営戦略なんですが、当社は実はこういう業態ですので初めて作ったんですね。この、3カ年。

今から見れば保守的だったと言われるかもしれませんが、わりとこれでも張って作ったつもりだったのです。

それをコミットメントできるかどうかっていうのは非常に経営陣としても心配していたところなんですが、結果として非常に大きく上回っていると。

でもこれはむしろ数字というより、掲げた戦略のストーリーが正しかったと。その結果、利益が増えてるわけですから、戦略自体の中身、ストーリー自体を変更する必要はまったくないと思ってるので、目標数値を変える必要はないかなと思ってます。

なので、来年というか、今の進行期が最終年度でございますので、そこまではローリングしないでやりたいと。今年を終えたところで新しい新中経を作って発表したいなというふうに考えています。まだ中身は決めてませんけど。

『君の名は。』は驚きの連続だった

記者5:期首予想が前期に比べると強気な印象を受けるんですけど、その点はどういうふうにお考えですか?

浦井:前期のことを言いますと、ゴジラがどうなるかってまったくわからないんですよ。もうひとつは『君の名は。』っていうのは新海さんの今までの過去の成績からすると全然想像できない数字ですから。

この2本については前期は普通に見積もって、その予想を立ててますので、その時点では別に不自然ではなかったんです。

ただ、『シン・ゴジラ』を公開したら思っていた以上にお客様の支持を得られましたし、『君の名は。』に至ってはもう驚きの連続でしたから、そういう意味で非常に膨れたということだと思います。

今期はそれなりに力のある作品があるなということで、この予想値になっています。

太古:昨年の期首予想は330億、今年は409億。100億積んでますので発射台が高くはなってると。それだけ会社の自力と言いますか、収益力は徐々に、徐々に上がっているというふうに考えています。

もちろん結果は上下しますんで。去年の今はこの席で『君の名は。』の話はほとんどしてませんから(笑)。

期待される作品っていって『君の名は。』は出してなかったと思いますよ。そういう状況でしたから、今年も何が当たるかわからないですが、でもベースとなる自力は上がってるというふうに自負はできると思います。

記者5:『君の名は。』と『シン・ゴジラ』の好調という影響は、今期にも引き続き流れてくるんではないかという予想は?

浦井:二次利用の分は今期も流れてきますよね。映画が今日(こんにち)も同じような状態で伸びていくかっていうと、そういうことではないですから。

太古:よく言われている一般論ですけど、コト消費とかそういう意味でいうと、映画館がコト消費や体験型消費、参加型消費の代表的なものとして見直されつつあるというのは感じるところはありますね。

割と値段も安くて、そういう楽しめる娯楽としても。もともと我々はそれを業としているわけですけども。それがどこまで続くかどうかは、お客さんも気まぐれなところがありますので。

いい作品が続けば続くでしょうし、いい作品が提供できなくなったら、やっぱりまた冷めていくんではないかということで、常にそこは危機感をもって緩まないようにと考えているところですね。

記者5:わかりました。ありがとうございました。

SNSでの拡散が異次元のヒットにつながった

記者6:朝日新聞です。お客さんが移ろいやすいって話もありますし、何が当たるかわからない。じゃあ『君の名は。』は一体、今のお客さんのどういうターゲットに何がはまって、これだけの現象が起きているんでしょうか。これはやっぱり二度と繰りかえせることじゃないのかどうか。

太古:それには公式見解はもちろんありません。クリエイティブなものですから。ただ当社の社長が、先日の映画製作者連盟の公式記者会見の場で申し上げたコメントの中のことを引用して申し上げますと。

例えば『君の名は。』であれば、新海誠さんっていう極めて個性的で強力な才能を持ったクリエイターが、ご自分の持てる力を十分に発揮して、まずは素晴らしい作品に仕上げてくれたと。まずはそこに尽きると。

その上で、その企画の初動から宣伝、タイアップ、ブッキング、それからTOHOシネマズの劇場展開に至るまで、当社の持つ映画ビジネスのノウハウ、組織力、そういったものによって的確に新海さんをサポートできたと。

いわゆる「作り手と売り手の掛け算」という言葉を使ってましたけども、見事にそこがお客さんの求めるところに届いたんではないかなと。

なおかつ、前回の会見でも申し上げましたけど、SNSで何倍にも拡散をしたということで、そのことが異次元のヒットにつながったというような感じだというふうに考えています。

長年映画ビジネスに携わった方々にとっても、なかなか珍しい現象が起きたということかなと思います。

これも社長の島谷がよく言っていることですが、今までなかなか来てくれなかった、例えば中高生のお客様にドカンと最初に突き刺さったと、届いたというところが大きくて、そこから雪崩のようにいろんな層に広がっていったと。リピーターも含めてですね。

そういうようなことを振り返ってみて、我々はよく言いますね。そんな感じです。

記者6:仕掛けたってわけじゃないんですか?

太古:SNSっていうのは仕掛けの段階のSNSと、口コミとして勝手に広がるもの。「バズる」って、そちらのほうのがありまして。もちろんある程度は、公開直前の仕掛けとかはあったと思うんですけれども、大きかったのは公開されてから勝手に広がっていく方。

拡散してくっていうのはそういうことなんじゃないでしょうか。ちょっと僕は詳しくないんでよくわかりませんけど。

記者6:結果的には素晴らしい作品と評価したということですけども。ということは、去年はまだ素晴らしい作品って実感が皆さん、なかったんだろうなと。そこらへんの、何が素晴らしいかどうかってお客さんで変わってくるんですか?

太古:新海誠監督が素晴らしい作品を短編映画でお作りになってることは、ずっと以前から我々を目をつけてアプローチもさせていただいてたので、これはもう、すごいかなり前の段階から、才能としては認めてさせていただいてたわけですよね。

それを商業映画に仕立て上げる。全国300スクリーンで何十億もの興行収入を得られるようなところに仕立てるってことっていうのは、非常にまだ距離がある話でありまして。去年はチャレンジをしたわけですよね。

最初のチャレンジだから、皆さんそれほど、こんなに大きくなるとはもちろん思ってなくて。「まあ、このくらいいけばいいよね」っていうふうな予想を立ててたわけです。それはごく穏当なものだったはずなんです。その段階では、見立てとしては。

これは東宝のプロデューサーが見立てようが、他の会社のプロデューサーが見立てようがたぶん同じだったと思いますよ。業界の中では。

記者6:ちなみに予想は?

太古:それはちょっと申し上げられません。

記者6:ありがとうございました。

司会:では、そろそろ終了させていただいてよろしいでしょうか。それでは、本日はどうもありがとうございました。これにて終了させていただきます。