避難所は既にゼロに

司会者:知事ありがとうございました。とても興味深いお話でした。スペシャルゲスト(くまモン)ともお会いできて幸いです。みなさん、質問はありますか?

蒲島郁夫氏(以下、蒲島):くまモンは話すことが出来ないので、私が通訳します!

(会場笑)

司会者:前に来て、名前と所属を言ってください。どなたでもご質問いただけます。レギュラーメンバー以外もどうぞ。

では、みなさんが質問をお考えの間に、私に質問させてください。一番最近の震災復興・再建の成果は何でしょうか? また、その成果を数字で教えてください。再建した建築物の数などのデータを教えてください。

蒲島:数字と言う意味では、避難所は既にゼロになりました。つまり、避難所にいた方全員がすでに仮設住宅に入居しています。これは1つの成果です。

しかし、これで終わりではありません。被災者すべてが、自分の家を手に入れる必要があります。2年以内には、被災者すべてが家を手に入れることができるようにします。80パーセントは自分で住宅を購入または建築するでしょう。しかし、20パーセントに対しては、安価な住宅または公営賃貸住宅を提供する必要があります。

現時点においては、こういった数字で震災復興を評価していただけると思います。震災から1年で避難所がゼロであるということです。これは、熊本地震の被災者の状況を表す指標だと言えます。

震災が原因の企業の倒産はわずか7件

もう1つは、人々は生活しなければいけないということです。

現時点で飢えている方はいらっしゃいません。十分な食料と水が供給されていますし、すでに仮設住宅に入居しています。しかし、彼らには生活のために仕事が必要です。会社の倒産等によって職を失うことを多くの方が恐れています。

震災から11ヶ月後の統計データによると、熊本地震が原因で倒産した会社はわずか7件となっています。これは驚くべき数字です。同時に過去50年において最小の数字となっております。この理由は、日本政府が会社再建費用の50パーセントを支援することを発表したからです。そして、熊本県庁も再建費用の4分の1を支援すると発表しました。つまり、会社再建費用の自己負担は4分の1で済みます。

これが功を奏して、人々はたいへん前向きに会社再建に取り組みました。その結果が、倒産した会社が7件のみという数字になりました。これは実に驚くべきことだと思いませんか?

これは1つの統計データです。被災者は十分な食料を手に入れ、仮設住宅が行き渡り、職を失うこともありません。しかし、私たちはここで満足するわけにはいきません。私たちが目指すところは、より良い形での復興です。より良い空港、港そして農業生産システムの構築を目指しています。

最後に、今から3年後に私の任期が終了します。現在まだ任期1年目ですので。今から3年後に、私がこの熊本地震にどのように対応してきたか、本当の意味での統計的成果をみなさんはご覧になると思います。それまでは最終的な統計データというものを提示することは難しいですね。

観光客を増やす施策

記者1:蒲島知事、本日はスピーチありがとうございました。インバウンド観光客(熊本を訪れる観光客)を増やすためにどのような施策を検討されていますか? もしありましたら詳細の説明をお願いします。

蒲島:はい、あります! だからこそ、先ほど八代港についてご説明いたしました。非常に多くのクルーズ船の入港を予定しています。私が知事に就任した時点ではゼロでした。ちなみに、私は2008年に熊本県知事に就任しています。

2015年には10隻、さらに10隻が2016年に。今年2017年は70隻の入港を予定しています。5,000人の乗客がクルーズ船とともにやってきます。つまり、ほぼ毎週5,000人の観光客が見込めるということです。これが、私たちが行っている観光客増加施策の1つです。

次に、阿蘇くまもと空港の増改築を行っています。特に、国際線ターミナルビルを増改築することで観光客増加を目指しています。

熊本を訪れるインバウンド観光客の数は急激に増加しました。しかし、震災の影響を受けて大幅に減少しました。2日前に香港を訪れ、香港航空の再就航を依頼しました。彼らは、香港政府に申請をすること、そして申請が下り次第、再び阿蘇くまもと空港へ就航することを約束してくれました。これによって、香港からの観光客の増加が期待できます。

また、チャイナエアライン(中華航空)の阿蘇くまもと空港への再就航を実現しました。現在、台湾の高雄から阿蘇くまもと空港へのフライトは、85パーセントから90パーセントの搭乗率となっています。台湾からの観光客も戻ってきています。

また、エアソウルも再就航を予定しています。これもまた多くの観光客を誘致するでしょう。来年には多くの観光客が熊本に戻ってくると思います。しかし、昨年は観光客が減少しましたので、現在、呼び戻すプロセスの最中だと言えます。熊本におけるインバウンド観光客については、現在以上のような状況です。

震災におけるくまモンの活躍

記者2:スピーチありがとうございます。くまモンさんにおうかがいしたいのですけど、熊本地震からもうすぐ1周年を迎えようとしています。私自身も熊本地震があった1週間後に現地に入りまして、ボランティアの体験をしたりですとか、実際にルポを書いたりとか、現場を見ながら熊本の取材をさせていただきました。

1周年を迎えるにあたって、知事そしてくまモンさんのお二人から1周年に寄せてのコメント、というか全国からいろんな支援もあったと思うので、全国のみなさんへのコメントですとか、そういったものちょっといただければと思います。

蒲島:ありがとうございます。私とくまモンの答えは同じはずです。くまモンもそうだと言っていますね。私たちが昨年この震災に直面した時、くまモンはたいへん衝撃を受け、どうしていいかわかりませんでした。外に出ることも出来なかったのですが、5月5日の子供の日には再び仕事を開始しました。避難所や学校を訪問し、熊本の再活性化に尽力しました。

熊本の人々をハッピーにし、再び元気を取り戻すために、くまモンは活動を行いました。これだけではなく、先ほど申し上げた通り12.8億アメリカドルものお金をもたらしました。

また、私の代わりにくまモンが様々な都道府県を訪れ、各知事に会見して震災支援に対するお礼を伝えています。私が非常に多忙ですので、くまモンだけで訪れて、熊本への支援ありがとうございますとお礼を述べてきました。くまモンは素晴らしい活動を行ってくれています! これからも続けていく予定です。

知事の直属として、熊本県営業部長や「熊本県しあわせ部長」を務めるのみでなく、様々な国を訪問しています。つまり、素晴らしい熊本県外交官でもあります。1つの例は、私とくまモンは駐日中国大使にお会いし、同日にアメリカ合衆国のケネディ元駐日大使にもお会いしました。くまモンは両大使にたいへん気に入っていただきました。また、フランス観光親善大使にも任命いただきました。

くまモンが言いたいことはこれでいいかな?

司会者:ありがとうございます。きっと、くまモンはジャーナリストにもなれますね。

(会場笑)

蒲島:彼は話せない、だからこそ国際的に受け入れられるのです。彼がもし、日本語を話したら、きっと国際的に受け入れられることはなかったでしょう。

くまモンは億万長者になった?

記者3:私の妻は、栄誉ある都市八代市の出身です。私自身、天草などを巡り、熊本の大変素晴らしい景色を堪能しました。私がおうかがいしたいのは、くまモンが生み出した膨大なお金はどのように使われたのでしょうか? 10億アメリカドル以上だとおっしゃいましたね? くまモン自身もなんらかの恩恵を受けたのでしょうか? マンションを購入したり、スポーツカーを購入したり、そういうことがありましたか? 詳細にお願いします。

蒲島:くまモンは膨大なお金を稼ぎました。しかし、彼自身が何かを得ることはありません。熊本県自身も何も得ていません。私たちがここにいる理由は、人々を幸せにする、それだけです。くまモンの宇宙を構築するにあたって、世界中から一切のロイヤルティを得ていません。それぞれが考え、行動し、有名になり、これによってくまモンひいては熊本への好感度が上がり、熊本を有名にします。私たちが望むのは、ただそれだけです!

これは、マーケティング戦略の一環です。そして大変成功したマーケティング戦略だと思います。

みなさん、織田信長をご存じですか? 歴史的な「楽市・楽座」という施策を行いました。完全に非課税だったので、戦国時代においては地方都市に過ぎなかった岐阜という地に多くの商人たちが集まりました。そして、これによって、織田信長は名を上げ、強くなっていきました。

くまモンは人々を幸せにする、ただそれだけです! ちなみに、彼の給料はそれほど多くはありません。でも、人々を幸せにできればそれでいいのです。彼が給料アップを要求することはありません。しかし、くまモンを使用する人々が幸せを感じることがとても重要なのです。だからこそ、くまモンはこれほど愛されるのです。

もし、みなさんが、ただお金のためにくまモンを使用したいというのであれば、あまり良い社会だとは言えません。人々がくまモンを愛するがゆえ、人々は利益を得ることができます。そしてくまモンも幸せになり、熊本も幸せになるのです。これが理想的なコミュニティだと思いませんか? 私が望むのはこれです。

観光客は戻ってきている

記者4:2点、お聞きしたいことがあります。1年前の熊本地震の後、どれほど観光客が減少したのでしょうか? パーセントまたは数を教えてください。また、なぜバリ州と基本契約を締結したのでしょうか? 私は2月にバリに行きましたが、たいへん素晴らしい観光地だと思います。しかし、なぜ熊本県はバリを選んだのでしょうか? そして、MOU(基本合意書)の内容を教えてください。以上2点です。

蒲島:まず2点目のご質問から回答します。なぜ、バリかということですが、熊本もまた素晴らしい観光地だからです。多くの観光資源を保有しています。しかし、もっとバリから学ぶことがあります。バリは世界で最も有名な観光地だからです。

バリから、彼らの観光業のやり方を学ぶと同時に、バリのように美しい自然保護にも努めていきます。バリ州政府は、熊本の農業を学びたいと考えています。いかに安全で美味しい農作物を生産するか。それをバリ州政府にお伝えしたいと考えています。

観光と農業がまず1つ。そして、もう1点は教育です。熊本には素晴らしい大学が存在します。もちろん、バリにも素晴らしい大学がありますので、双方で知識を交換していきます。

観光客の減少についてですが、熊本地震後32万人が熊本のホテルをキャンセルしました。32万人です。これはたいへん大きな衝撃を与えました。徐々に戻ってきつつあります。震災直後は45万人が熊本に滞在していましたが、現在はその10倍となっています。急速に観光客は戻っていると言えます。

2019年には天守閣は修復する

記者5:1967年からこのクラブの会員です。おうかがいしたいことは、熊本城再建に後どれくらいかかりますか? 偶然ですが、いとこが日本の歴史的建造物の教授をしておりまして、とくに城と書院造を専門としています。後に昭和女子大学の学長に就任しました。現在は、熊本城跡保存活用委員会委員も務めております。彼の父親も戦後に熊本県知事を務めていました。戦争中は石川県知事だったと聞いています。

蒲島:先ほど申し上げた通り、2019年に熊本城天守閣の修復を完了します。これが第1のゴールです。まずはこれを達成しなければいけません。なぜなら、2つの重要な国際スポーツイベントが控えているからです。ラグビーワールドカップとレディーハンドボールワールドカップの開催を熊本で予定しています。

今から2年半後には熊本城天守閣の修復を完了します。残りの周辺建築物については、中央の巨大な天守閣以外に小さな建築物がいくつか存在します。これらについては、20年をかけてすべて再建します。どのようなプロセスで再建するかを公表する必要があると考えました。そこで、行政の支援による再建計画として、3年ルールを天守閣に、残りの建築物を20年で再建するとしました。

くまモンはもともと「おまけ」だった

記者6:フリーランスで日本のスポーツニュースを取材しています。ハンガリーから来ました。くまモンに関する質問です。何かスポーツをしていますか? または好きなスポーツがあれば教えてください。

(会場笑)

蒲島:くまモンの好きなスポーツはくまモン体操です。くまモン体操はいつも踊っています。それから、ダンスも上手です。ダンスもケネディ元駐日大使と一緒にダンスするのを、そこで見られると思います。ちょっと出してみてください。YouTubeで見ることができます。

いまから、YouTubeをお見せします。くまモンとケネディ元駐日大使が一緒に踊っているところです。

司会者:誰がこのキャラクターを作ったのですか?

蒲島:今ご覧いただいたのが、くまモンがケネディ元駐日大使と踊っているところです。もう1つご質問いただきましたが、誰がくまモンをデザインしたのか? これはとても重要な質問です。くまモンのデザインは世界最高です! まずシンプルですね。黒、赤、白。

著名な小説家で脚本家の小山 薫堂氏がくまモンのプロデュースを行いました。小山氏の友人であり、有名なデザイナーの水野学氏がくまモンをデザインしました。とても重要なことは、くまモンは「おまけ」でした。びっくりマークが元々のデザインでした。シンプル過ぎたので、水野氏は「おまけ」を提案しました。それがくまモンでした。それ以来、くまモンは急速な成長を遂げ、億万長者になりました。そして営業部長に就任しました。

もし、みなさんが、くまモンの使用権を購入したければ、無料です! しかし、くまモンが生み出すお金は無限なのです。

司会者:最後の質問をしたい方いらっしゃいますか? では、私から。熊本地震の後、多くの余震があったと聞いています。現在も続いているのでしょうか?

蒲島:余震はとてもひどく、4,200回を超える余震を経験しました。ご質問は今も続いているのかということですが、はい。しかし、今ではごくまれです。もし運が良ければ、余震を経験するかもしれません。余震を経験したら、あなたは熊本の友人だと言えるでしょう。

司会者:ありがとうございます。知事に1年間の名誉会員権を差し上げたいと思います。くまモンももちろん一緒にお越しいただいて、熊本県の最新情報を記者たちに話していただければと思います。ありがとうございました。良い夜を。

蒲島:ありがとうございました。