いまや「子はかすがい」は逆

浜田敬子氏(以下、浜田):みなさん、長時間お疲れ様です。遠慮なく、立ってお子さんをあやしたりしてくださいね。朝日新聞社の浜田と申します。今日はよろしくお願いします。

私が着ているこの「WORKO!」というTシャツなんですけれども、「WORKO!」は朝日新聞社で去年から始めたプロジェクトで、Workと子育てを掛け合わせて、働くと子育てのこれからを考えるプロジェクトを立ち上げました。今日はその「WORKO!」と朝日新聞出版のAERAと、両方で1つのセミナーをやらせていただきたいと思っています。

私が浜田で、家事シェアに非常に詳しいNPO法人「tadaima!」の三木さんです。よろしくお願いします。

三木智有氏(以下、三木):よろしくお願いします。

浜田:一番端っこが金城珠代という『AERA』の記者です。金城は1月に復帰したばかりなので、要するに少しだけ先輩なんですよね。なので、いろいろと今日は聞きたいと思っていますので、みなさんぜひ参考にしていただければと思います。

先ほどから散々「パパは協力しろ」「協力しないと大変なことになる」と脅されていると思うんですけれども、さらにここでそれに輪をかけるようなデータも出てきます。

とにかく、私自身も10歳の娘がいまして、夫が出張なので連れてきてますけれども。なので、「夫の悪口は今日言えないな」みたいな感じなんですけど(笑)。

「子どもはかすがい」って言いますけど、今は逆なのでは、と思うんです。子どもが生まれた後、夫婦は絶対に前よりもギクシャクする。私もそうでした。それをいかに防ぐかということを、三木さんや、金城から『AERA』のほうでいろいろとやった企画を、みなさんのご参考になればと思って持ってきました。

今日は、4月から復帰の人がほとんどだったんですけれども、育休というとほとんどママのほうがとっていると思うんですよ。その間ママがほとんどの家事・育児をやっていますよね。専業主婦の方と同じような状態ですよね。そういう人、どのぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

浜田:ですよね(笑)。あと1週間で変えましょうね、この状況。このままいくと大変なことになりますからね。じゃあ、ママに聞きます。「子どもが生まれてから、すごく前よりもイライラするようになった」という人、どれぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

けっこうみなさん心穏やかに育休を過ごしていらっしゃるんですね。私、本当に自分が育休中つらい時があって、産後うつにもなったので。夫は新聞記者なので、仕事ばっかりやっていて早く帰ってこれなかったので、ブログに1回「夫に殺意を抱くとき」と書いて、会社の人にドン引きされました。そのぐらい大変でした。

そういう状況で育休から復帰すると、両立がどんどん苦しくなっちゃうと思います。

先ほどのアンケートの結果でもママのストレスって、仕事の職場の人間関係よりむしろ家庭のほうが、自分自身の経験としても大きいです。やはり夫に対する「なんでやってくれないの?」という不満。なので、そこが軽くなると、相当気持ち的に楽になるし、自分も楽しく両立ができるので、それをどうしたらいいかということをお伝えします。

家事のストレスと夫婦のコミュニケーションの関係

これはパパとママに両方に聞きましょうか。「子どもが生まれてから、家 事を負担に思うようになった」という方、手を挙げてもらってもいいですか?

(会場挙手)

そうですよね。大人2人の生活なんてそんなに家事はありませんよね。そんなに汚れないし、洗濯も毎日やらなくてもいいし。食事だって、共働きだとけっこう外で食べてきちゃうし。

でも子どもが生まれた途端に、やらなきゃいけない家の仕事がすごく増えるわけですよ。しかも、仕事と子育てもやらなくちゃいけないということで、たぶんみなさん、今「どうしたらいいんだろうな?」と思っていますよね。

三木さん、この家事のストレスを減らすということは、三木さんの持論ですけど、まずは夫婦がコミュニケーションをいかにとるかということが大事なんですよね?

三木:そうですね。「家事の負担をどうやって減らそうかな?」みたいなことを思うと、どうしても家事代行を活用したり、便利な家電を導入しようというところにばかり目がいきがちなんですけれども、「実はそれだけじゃないんだよ」というところを今日は少しお話をしていきたいなと思います。

浜田:今ママは1人で家にいる時間が長いと思うんですよ。そうすると、全部自分でやってますよね。その不満や不安を旦那さんに話しています? 話さないで、けっこう自分の胸の中に溜めていません? それが復帰した後も続くと、ものすごくイライラが募って爆発します。間違いなく。

三木:そうですね。

浜田:三木さんと話していてすごくおもしろいなと思ったのが、あとで調査結果が出てくるんですけれども、夫婦で、わりと復帰したあと共働き夫婦でうまくいってるケースは、家事を50:50にシェアしてる人たちよりも……ね?

三木:はい。もうほぼ言っちゃいましたけど(笑)。

浜田:たくさん話してる人たちなんですよ。私もうちの夫と「どっちがなにをやるか?」という日々の連絡も業務連絡、殺伐としたようなメールになるんですよ。「これやってるの?」「やってないの?」みたいな感じになって。

それで「私のほうばっかりがやってる……」みたいな感じで、どんどんイライラするんです。負担を50:50にすることに汲々としていたんですけど、それよりもむしろ、やはりいろいろなことを話している人たちは、たとえ分担が6:4だったり7:3だったりしても、仲良しなんですよね?

三木:そうですね。だから、今日のセッションのテーマも、今の家事って夫婦のコミュニケーションが大事なんだよということで進めていきたいなと思います。

円満な夫婦は1日58分会話している

やはり今、浜田さんからもお話があったように、夫婦のコミュニケーションというのは、家事とか育児のシェアということにおいてもすごく大切です。「じゃあ、それはなぜか?」というところを少しお話をしていきたいと思います。

(スライドを指して)これは、ファザーリング・ジャパンという団体さんがとった、夫婦の会話時間と円満にどういう関わりがあるかという調査結果になるんですけれども、「円満夫婦」と「不満夫婦」を分けて、「会話時間がどれぐらいか」ということを調査したんですね。その結果、円満夫婦だと、平日でだいたい58分ぐらい会話時間があります。

浜田:58分って、けっこう長いですね。

三木:けっこう長いですね。

浜田:朝はバタバタしていて、夜はたぶんママのほうが時短勤務で早く帰って子どもと一緒に寝てしまうと、夜、会話ゼロですよ。夜、会話ゼロ分だと、朝58分しなきゃいけないということですよね。

三木:朝58分ですね。なかなか大変ですね(笑)。

浜田:なかなか大変ですよ。今どれぐらい話してます?

三木:(会場に)聞いてみましょうか。「58分以上話してるかも」という方?

(会場挙手)

三木:わりと多いんじゃないですか。

浜田:でも、少ないですよ。

三木:少ないですか(笑)。

浜田:ええ。じゃあ30分ぐらいという人は?

(会場挙手)

浜田:いないですよね。30分以下は?

(会場挙手)

浜田:でしょ。ほら。

三木:そうですね(笑)。

浜田:やはり忙しいんですよ。本当に共働きになると忙しくて、子ども第一になるから、お互いのことは本当に後回しになる。不満夫婦の会話はだいたい18分ぐらいでしたが。もしかしたら平均はそのぐらいなのかなとも思うんですけど。

三木:1日58分の会話ってかなり大変だと思うんですが、実は夫婦の会話って3つの機能、役割があるんですよ。1つは情報伝達機能。「今日なにがあるよ」「明日あれがあるよ」とかの情報伝達。

浜田:そのためには、先ほどGoogleの山本さんが話されたスケジューラーというのは、情報の伝達機能としては楽になりますね。

三木:楽になりますね。そして、課題解決というのは、相談ですよね。「これどうしようかな?」「あれ買おうと思ってるんだけど」というような相談。この情報の伝達と課題解決機能というのは、わりあいどの夫婦でも、なんとかがんばって話はできると。

浜田:でも、だんだんほぼ情報伝達機能だけになっていくので。メールで「今日どっちが帰るんだっけ?」みたいな会話だけが行き交う感じになってきます(笑)。

三木:そうなんですよね。僕たちは、情報の伝達と課題の解決の機能しか行われていない会話のことを「夫婦の会話のホウレンソウ化」と呼んでいるんです。報告・連絡・相談だけ。もう1個、会話の時間を伸ばすために大切なのが、最後の情緒的サポート機能というところなんですよね。これが要は、「どういうことがあって楽しかった」「なにが楽しかった」とか、そういう感情のやりとり。

浜田:家事や育児の分担を話すだけじゃないわけですね。例えば、子どもが生まれる前だったらきっと話していただろう、「今日会社でこんな嫌なことあってさ……」みたいなことですよね。

三木:そうですね。そういう会話が多くなればなるほど、会話の時間というのは増やしていくことができるというのが、まず1つですね。

「家事が得意か苦手か」ということよりも大切なこと

浜田:そうすると58分になる。要は、時間が長くても、内容的に情緒的なサポートの部分がないと、なかなかやはり2人がうまくいかなくなってギスギスした関係になってしまう。

さっきのリクルートのアンケートのように、「ママの10大ストレスのなかの半分ぐらいは、原因はパパ」というふうになってしまうのは、おそらくコミュニケーションをしていなくて、1人で不満をため込んじゃうということが大きいかもしれないですね。

三木:そうですね。なので、先ほど浜田さんもおっしゃっていたんですけど、じゃあ今、家事や育児をシェアをするという話になったときに、コミュニケーションが大事なんだぞと。

これはうちの調査なんですけど、「5:5のほうが家事の満足度高いのかな?」とか「パパが料理やってたら高いのかな?」とか、いろいろ調査をしたんですけど、そんなに大きな相関関係はなくて、5:5で満足している人もいれば不満な人もいると。9:1でも満足してる人だっているわけです。

じゃあなにが一番大きく関わってくるかと見ていったときに、「家事についての話し合い」と「満足度」というのをかけ合わせた調査結果が(スライドを指して)こちらのグラフになるんですけど、圧倒的に「家事をよく話し合う」というグループの人たちは「家事について満足度が高い」というデータが、このなかで出てきています。

なので、これは男性にとってはわりと朗報だと思うんですけど、家事が得意とか苦手とかそれほど関係ないんですね。家事の満足度というところでいえば。

浜田:むしろ朝に「おはよう」と言って、例えば「昨日夜帰ってきてから、子どもどうだった?」というのを聞いてあげるとか、そういうことがすごく大事になのかなと思いますね。

あとで出てきますけど、一番ママがムカつくことって……、みなさんも経験あると思いますけど、朝、自分がこれから保育園に送りに行かなきゃいけないというときに、着替えさせて、離乳食を食べさせて、自分の支度もして、化粧もして、会社に行かないといけないから職場の準備もしてバタバタしているときに、スマホを見ていたら絶対ダメですからね。それが「一番ムカつくこと」って、みんな言っていますから。

三木:そうですね。

浜田:スマホや新聞をバタバタしてる人の横で読むのだけはやめてください。今日はそれだけ覚えてください。本当それだけでいいよね(笑)。

三木:そうですね。はい(笑)。そのあたりもあとで少し。

浜田:その時にちょっとでもママに、「忙しそうだけど、なにかやる?」と声をかけてあげるとか、「昨日どうだった?」「お風呂どうだった?」「夕食よく食べた?」「保育園の連絡帳書こうか?」とか。朝、保育園の連絡帳もありますからね。これけっこう大変ですからね。

三木:大変ですね。

浜田:うちは保育園の連絡帳を夫が書いてたんですよ。それだけで助かりました。わりとこまめに書く人なので。送りも全部パパというふうに決めていたので、自分は髪の毛ボサボサでも、2人が出かけてしまいえさえすれば、そのあと自分の支度ができるので、かなり楽でした。

三木:そうですね。そうやってルーチン化させていくということがすごく大切です。

負担と不満、両方とも解消していく

もう1個、次のスライド行っていただきたいんですが、家事を僕たちは「分担」ではなくて「シェア」という言い方をしています。それはなぜかというと、どうしても家事分担の話になると、時間的・肉体的な負担ばかりをどうにかしようという話になりがちなんですが、実は家事の負荷には「負担」と、もう1個「不満」というのがあります。負担のほうは、それこそ家事代行を活用したりとか、そういうところでわりと軽く解消はしていけるんですね。

浜田:物理的なところですよね。

三木:そうですね。だけど、それだけではなんだかモヤモヤするとか。自分がそのディレクションも全部しなくちゃいけないというので、ルンバを導入してもなにかモヤモヤするのはなんでかというと、実は家事・育児の「不満」というのがあるからなんです。

家事シェアというのは、この負担と不満、両方ともちゃんと解消していこうという、要は、メンタルの面もちゃんとサポートしていこうよ、というところになってくるんですが。

例えば、この家事の不満というところ。なにが起こるかというと、共働きのママが抱えがちな家事の不満って、例えば「自分ばっかりが時間を調整しなくちゃいけない」とか、「自分ばかりが家事とか育児とか回さなくちゃいけない」「自分ばかりが全部のディレクションをやらなくちゃいけない」とか。要は、共通するのは全部、「自分ばかり」というこの不公平感なんですよね。

浜田:そうですね。パパがけっこうやっていても、とくにまだ授乳していたりすると、ママの負担が大きいわけですよ。やはり仕事して、迎えに行って、ご飯食べさせて、入浴させて、夜に授乳ということになると、ママは本当に寝不足になっちゃうんですよ。

そこも含めて、パパがわかっておいてあげると、夜1回ぐらい交代で泣いたときに抱っこするだけでも違うし、やはり不満の部分ですよね。

三木:そうですね。

浜田:不満の部分もやっぱりわかってあげるということが非常に大事かなと思うんですよね。

三木:なので、不公平だなと思われないように、ちゃんとサポートをするとか。だから、「俺は言われたことはなんでもやってるぜ」というなんでもやるようなパパがはたして正解なのかというと、言われなきゃやらないというのは「自覚が足りない」と思われてしまいがち。

なので、そこは「家族ごとだよね」という認識をしていること。家事が得意とか不得意とか、洗濯物のたたみ方がきれいか汚いかというのは、正直、もっと先の話でいいと思うんですよね。自覚とか自意識をもってコミュニケーションをとっていくことで、わりと解消されると思います。

浜田:うちもそうだったんですけど、「復帰後にどうやってこの不満と負担を2人で解消していこうか?」という話を一度もしないままに復帰しちゃったんですよ。

むしろもう「保育園にやっと入れた」、その次は保育園でなに準備しなきゃいけないって。今みなさん大変ですよね。「お布団準備しなきゃいけない」とか、いろいろあって。あとは職場関係とかに気が回ってしまって、夫婦の間のことって一番後回しにしてほとんどの人がやっていないんですよね。

今年はたまたま4月1日、2日が土日なので、あと2週末あります。なので、「自分たちはどうする?」という、やり方を決めるとか話すとか、それだけやっておくだけでも、かなり違います。

三木:だいぶ違ってくると思いますね。

やりたくないことを夫婦で話す

浜田:金城さんのうちは話しました?

金城:私はこういう職場にいるので、結婚するぐらいからこの話を散々と。

浜田:そう。AERAの編集者をやっていて、AERAはこういう企画ばっかりやっているので。

金城:復帰後は大変だと聞いていたので、自分が実際やってみる時なにをやるべきなのかをいろいろ考えて「やりたくないことをやめよう」と思ったんですね。

私は「洗濯物をたたむ」というのが大嫌いだったので、それをしないで済む収納を一度夫婦で考えました。それがきっかけで、けっこういろいろなところに広がっていくんですよね。収納だけじゃなくて。

浜田:復帰前に部屋の模様替えをしたんですよね。

金城:そうなんです。

浜田:家事の動線をどうやりやすくするかとか、負担をどうやって減らすか、家のなかを整えるということも夫婦でやったんですって。

金城:やりました。

浜田:「どうしたらでたたまないで済むの?」って聞いたら、なんだっけ、洗ったものを……。

金城:洗濯物をハンガーに干しちゃって、そのままハンガーラックに。

浜田:乾いたらそのままかけるだけ。

金城:乾いたらかけるだけというのを子どもの分も自分の分も夫の分も全部やると、だいぶ時間が減りました。あとは、ソファにたたんでいないものがバチャってなっていると……。

浜田:ソファがタンスになりますからね。

金城:帰ってくると「うわー」みたいな気分になるのが嫌だったので、そこだけ改善してみたんですね。それでいろいろな会話をして、けっこう広がってきています。

浜田:旦那さんは、今、奥さんがどの家事が嫌いだとか、どれを一番負担に思っているかとか知っていますか? たぶんそれだけでも話しておくと、「じゃあそれを楽にするために、家の動線変えようか」「なにか家電1個買おうか」とか。なにを買ったらいいかということも人のうちによって違いますからね。みんな「ルンバがいい」って言うんですよ。だけど、床にたくさんものが置いてあるとルンバ使えないし、家によっては使えないので。

「どれが一番苦手なんだろうか?」「どっちもやりたくない家事なんだろうか?」ということを話すだけで、だいぶ違いますよね。

金城:そうですね。

家事には期待値のグラデーションがある

浜田:次のスライドお願いします。三木さん、これは不満のところですね。

三木:そうですね。家事の不満や負担というところで、これは「お母さんがお父さんに日常的にしてほしい家事ってなんですか?」というランキングです。よくあるランキングなんですが、1位はゴミ出しで、2位が風呂掃除で。3位が食器洗いで、部屋掃除、という感じでつながっていくんですけれども。

ちょっと聞いてみようかな。このなかで、「ゴミ捨てを担当している」というパパさんってどのぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

三木:けっこう挙がりましたね。

浜田:でも、ゴミ捨てって「分担してる」って威張っていいの?

三木:それがですね、今手を挙げた方は思い出してもらいたいんですけど、「最後のゴミ捨てをした週末に、すごく褒められた」という方はどのぐらいいらっしゃいますか? 妻からものすごく感謝されたという方。

(会場挙手)

三木:いないですよね。それはなぜかというと、このランキングをつけるときのママの心理的なものを想像してみるとわかると思うんですが、上のほうにくる家事ほど、mustな事項なんですね。つまり、やって当然だと思われているものになります。

なので、やることで感謝されるのではなくて、やらないとめっちゃ怒られます。たぶん「燃えるゴミを出し忘れた」なんて言ったら、すごく怒られますよね。

浜田:『AERA』で、「ゴミ出しは家事とは言わない」という特集をやったんですよ。ゴミ出しだけやっても、エセイクメンですから。

しかもゴミ出しをやるときは、ゴミが溜まったら自分でまとめるところからやってくださいね。そこはママがやって、置いてあるのを捨てるだけでは、ダメですよ。まとめて、ちゃんと違うゴミ袋をセットするところまでやるのがゴミ出しですね。

三木:そうですね。やはり家事をやっている人って、部分的なサポートよりも、ちゃんと完結させてほしい。

浜田:そこのディレクションをママがやるのが、ママのストレスになるんですよね。

三木:そうなんですよ。なので、ゴミ捨て担当だとなれば、「何曜日になにを捨てる」というところもちゃんと自分で把握をしておいて、責任を持ってやるということですね。

(ランキングの)下のほうにいくほど、can、「時間的もしくはスキル的にできるでしょ」という期待値が上がっているもの。そして最後、wantになってくると、「期待はしてはいないけど、やってくれたら助かる」というママが負担に思ってるもの。このランキングはたぶん家庭によって違うとは思うんですけれども、家事にはそういうグラデーションがあるんだというところを、ぜひ意識をしておいてもらいたいなと思います。

全部を完璧にしなくてもいい

浜田:では、次のスライドですね。今日はみなさんのコミュニケーションのきっかけになるものとして、1枚紙をお配りしたもののなかに入れています。これは『AERA』で特集を組んだ時に作った「家事タスク表」というものですね。

男の人は世の中の家事って、掃除、洗濯、料理ぐらいだと思っているでしょ。でも家事って、例えば朝カーテンをあける、窓を開ける、新聞を取る、コーヒーをいれる、朝食を作る、と細かく分解されるんです。ママは、これを全部やっていかないといけない。

これは未就学児バージョンです。小学生になると、また違うものがたくさん入ってきて、学校のプリント整理とか、すごくめんどくさいんですけど。これをみなさん参考にしていただいて、裏が白くなっていますのでご自身の家の家事を100個ぐらい分解して出してみてください。そしたらまず、旦那さんは「こんなにやることがあるんだ!」とびっくりするはずです。細かいんですよ。家の雑事って。

それを日々回していかなきゃいけないというストレスは、仕事でマルチタスクをするのと同じぐらい大変なことなので、仕事のToDoをすべて書き出してみるというのをやってほしいなと。

金城家、やりました?

金城:やりました。

浜田:100個埋まりましたか?

金城:意外と、この表のなかで自分の家に合わないものを変えていくと簡単です。

浜田:なるほど、なるほど。ゼロから考えるんじゃなくてね。

金城:お子さんが2人いる場合は、また別のことが出てきたりすると思うので。

浜田:そうですね。家によってお子さんの数も違うと思うので、それをやっていただくと。それと、どっちがやるかを色分けしていくんですよね。

金城:そうなんです。この使い方としては、まずは棚卸しですよね。自分のうちにどんな作業があるのかというのを書き出すこと。

そして、それぞれのマスに円を書いて、例えば分担が50:50だったら、半分は赤色、もう半分は青色とかで色分けをしてみると、全体の家事をどちらがどのぐらいやっているのかという割合がなんとなく見えてくるという仕組みになっています。やってみてください。

浜田:ぜひぜひ。まずこれをやってみてください。まずは旦那さんに、家のなかでこんなにたくさんの仕事があるということをわかってもらうのが一番いいのかなと思います。

iction!のパートでも触れましたけれども、なにかを諦めるということも大事ですよね。だから、例えば今まで育休中は家にいて時間もたっぷりあったから、お花を飾ったりする余裕がもしかしたらあったかもしれないんですけれども、仕事から復帰したら、やはりなにかを全部やろうと思わないで諦めるということも大事ですよね。

三木:そのとおりですね。全部が全部を自分たちだけでやりたいという気持ちはあると思うんですけど、やはりできなくなってくる部分がある。

僕は家事や育児ってすごく楽しい。とくに育児なんて、うちも娘がいるんですけど、すごく楽しくて、自分の気づきになることも成長のきっかけになることもあると思うんです。でも、それを楽しいと思えるかどうかは1つだけ条件があって。「気持ちにゆとりがあるかどうか」というところなんですよね。ゆとりがなくなってしまうと、やはり育児1つとっても楽しいと思えなくなってくる。

なので、「夫婦で協力しあいながらがんばろう」というところ。そして、「全部が全部を完璧にしなくてもいいんだよね」というボーダーラインを夫婦で決めるということがすごく大事なことだと思っています。

家事代行をコストではなく投資と考える

浜田:みなさんはたぶん、家事代行を頼んだり、家電を買ったりということはコストだと思うんですよ。でもコストだと思わないで、それを投資だと思ったほうがいいです。うちは、たまたま私が掃除がすごく苦手で、家のなかが放っておくとぐちゃぐちゃになっちゃうので、週1回、お掃除の人を頼んでるんですよ。すごく贅沢だとも思ったんですけど、AERAの後輩たちには全員勧めました。

シルバー人材センターでもいいし、家事代行サービスでもいいし、なんでもいいから、もう掃除を頼むだけでどれだけ気持ちが楽になるかと。2週間に1回来てもらい始めた子も、「もう帰ったら窓がピカピカで!」とか言って。もうその感動は、自分にとってのご褒美じゃないですけど、自分の時間を楽しむ。

しかも、みなさん共働きなわけですよね。そしたら、そこは、変な話、パパが家事をしないんだったら、パパの飲み代を浮かせてでも掃除に回したりするだけで、土日がすごく気持ちよく過ごせる。土曜日の午前中に掃除しなきゃいけないと思うだけで、ママには負担になるわけですよ。でも、土曜日の午前中に家族みんなで過ごせる時間を買うと思ったら、あまり惜しくはないなと思っていて。そういう考え方で、どんどんお金を使うところもあるし。

あと、私は家計簿を付けるのをやめました。育休中はけっこう真面目にやっていたんですけど、とても時間がないので「これをやめる」と言ってやめたんですけど。なにかあります? 三木さんの家でやめたこととか。

三木:うちでやめているのは、洗濯物をちゃんとたたむこと。さっきの金城さんと同じです。たたんでしまうというところはやはりある程度諦めています。

浜田:それはソファーに置きっぱなしなの?

三木:そんなことない(笑)。でも、今日うちの妻が来ているので、なんとも言い難いんですが、うちの妻の名言がありまして。「乾燥機はクローゼットだ」と。

浜田:なるほど(笑)。こういう家もあります。

三木:でも、うちはそこから出して各々がしまったり、娘のものはちゃんと出しやすいようにしまったりとか、個人管理にしています。

浜田:自分のものは自分でたたむ。

三木:そうですね。100パーセント自分。

浜田:最近始めたのでよかったのは、クリーニングのリネットでした。クリーニングを持っていくのはすごくめんどくさいんですけど、あれを一式送れるんですよ。なので、季節の変わり目がすごく楽になりましたね。普通に出してもそんなにお金も変わらないので。

だから、みなさん働いていらっしゃったら情報感度も高いと思うので、使えるものはどんどん試してみて、自分のおうちに合うやり方を見つけてくれたらと思います。

おすすめは「パラレル家事」

では次にいきましょうか。パパ必見。これはパパにぜひ持ち帰っていただきたいところなんですけど、三木さん、スキルがない場合、どうやってシェアをすればいいんでしょうか?

三木:これもうちである調査をしたんですが、「妻が家事をしてる間の夫の過ごし方」という(調査)。「テレビを見てる」「読書している」「スマホを見ている」みたいな回答が圧倒的に多いんですよね。

浜田:ありえないですよ!

三木:これ、やっぱり一番むかつくんですよ。自分が帰ってきて、一生懸命忙しくご飯を作ったりしているところで、横で「あー疲れた」ってソファーでぐったりしてスマホとか見て、子どもの相手も適当な感じでやられると、「お前なにやってるんだよ」と思うんですよね。

僕たちが一番おすすめしていたのは、「パラレル家事」と言って、パラレルって平行という意味なんですけれども。

これは朗報だと思うんですが、例えばママがご飯を1時間作っています。その1時間パパも一緒に家事をやらなきゃダメかというと、そんなことはなくて、そのなかの10分でも15分でもいいので、1歩2歩先の家事に手をつける。ご飯を作っているのであれば、お風呂掃除を少ししておいて、お風呂の準備をするとか。

浜田:食器並べてくれるとかね。

三木:という、次の一歩を1つか2つするだけで、先ほど言った家事の不満という部分はかなり解消されるんですね。

浜田:そうですね。うちも、夫が料理が好きなので、2人でキッチンに立つことが多いと、娘が1人で寂しいので「手伝う」と言って来て、それで3人で作ったりするようになるので、わりとどちらかがなにかをしていて、どちらかがほかのなにかをやるというのは不満がたまりにくいですよね。

三木:そうですね。なので、○○していないほうが××すると。ご飯を作っていないほうが食器を並べるとか。

浜田:スマホを見ないことと、これ。今日パパはこれを覚えていてくださいね(笑)。

三木:そうですね(笑)。やはり夜の12時に帰って、そこから「皿洗え」とか、朝5時に出るのに「朝飯作っていけ」とは思わないわけですよ。なんだけど、「一緒にいるその時間、私が動いているその時は、家事をみんなでやる時間なんだ」という認識を持てば、先ほどの「自分ばかりが全部負担している」という不公平感ってかなり解消されていくのかなと思って。

浜田:ママがイライラしていないことが、絶対パパの幸せにつながります。だって、帰ってきてママがわけもわからずイライラしているだけで、もう気持ちが萎えますからね。家に帰る気がなくなるから、これをやるだけでいいですからね。やってくださいね。

家事に対する共通の理解を持つこと

ちなみに、次は三木家のパラレル家事のやり方が書いてあるので、ご参考にしてください。

三木:うちはもう朝が全部ルーチン化してしまっているんですけれども、起きるのはだいたい5時半とか6時ぐらい。

浜田:早い。

三木:そう、娘に起こされるんですよ。「朝だよ」って起きてくるので。それで、娘が起きると同時に僕たちも起きて、僕が娘の朝ごはんを作ります。その間にうちの妻が娘のおむつを替えたりしてくれます。それが終わったら、妻が娘にご飯を食べさせてくれて、その間に僕が自分の着替えをしたりとか、出かける準備をしたりします。

そのままご飯を食べたりしている間に、うちの妻が保育園の連絡帳を全部記入してくれて、僕が全部支度を終わって出てきたら、娘のご飯をタッチして、今度は妻が着替えや準備を始めるんですね。

保育園のお出かけの準備を僕がやって、そのあと、これは家を先に出るほうになるんですけれども、保育園の送りを、例えば僕なら僕がやるとか。うちでは保育園の送りをしていないほうがゴミを捨てるという感じになっています。

浜田:すごいですね。これ。みんなで揃ってご飯というのはなかなか難しいかもしれないですけど。

三木:そうですね。

浜田:食べさせてるほうが連絡帳を書くとか、作りながら食べてもしまうとか。

三木:これがもうバチッと決まっているので。逆の場合もあります。うちの妻が先に出るときは、逆になったり。だからうちは入れ替えは別に好きにできるし、組み替えができるんですね。

浜田:朝ごはんってそんなに料理と言われるほどのものを……。パンを焼いて、コーヒーを淹れて、みたいな朝食を作るぐらいだったら、パパでもできる人もいるかもしれないし。料理はどうしてもできないというのであれば、保育園の準備をしてくれて、連絡帳を書いてくれるだけですごく助かるので、そこはぜひ意識してみてください。

次、最後のパートです。何度も言いますけれども、今日のリクルートの調査のなかでもあったように、とにかく家でのストレスというのが意外と高いわけです。とくにママ側に。それをなくすことが、やはりパパの幸せにもなるし、家族の幸せにもなると。

三木:そうですね。なので、「家事苦手だからできない」「子どもがコミュニケーションをとれるようになるまではパパの出る幕はないな」ということじゃなくて、まずは夫婦で話し合いをしてもらったりすることで、家事や育児というものが2人で一緒に協力しながら楽しめるようになってくると思うんですよね。

やはり、これからの仕事に復帰した生活のなかでは、ここの負担感と不満感というものをいかにシェアし合えるかというのがすごく大事になってくると思うので、そこの部分で、パラレル家事だけでもいいので、ぜひ実践してもらえたらなと思います。

浜田:金城さんからも最後。金城さんはAERAにいて、かなり耳年増になっていると思うんですけれども、耳年増じゃない夫との意識のギャップをどうやって埋めていったのかだけ、最後に。

金城:そうですね……やはり取材をしていると、なかなか妻の不満と夫の不満って、うまく噛み合っていないところがあるんですね。夫のほうは自分がやっていると思っている。でも、妻のほうからすると足りないとか、時間に偏りがあるとか、いろいろな不満があるんです。タスク表を使って「家事ってなんなのか?」ということをお互いに共通の理解として持っていただくというのは、すごく今後役に立つのではないかと思うので、ぜひ活用してみていただければと思います。

浜田:そうですね。そんなに料理や洗濯をやったことがなくてもできる家事って、書き出してみると意外とあったりするので。家計管理とか、家を回すというような仕事は、わりと仕事に近くてパパのほうが得意だったりするので、いろいろ夫婦で話し合って、ぜひあと1週間ありますので、コミュニケーションをとっていただければと思います。長時間、本当ありがとうございました。

三木:ありがとうございました。

(会場拍手)