平成なんてない

乙君氏(以下、乙君):次行きます。がらっと話題変えますね。「2019年に平成が終了!? 平成とはどんな時代だったのか」ということで。終わりますね。

山田玲司氏(以下、山田):うん、そうね。さくさくっていくね。どんな気分ですか? あなたそういうの気になさる人でしょ。

乙君:俺はやっぱり、昭和が終わる時は小っちゃかったんで。

山田:あれ何才だったけ? 乙君って82年生まれ?

乙君:81年だから……。

山田:小学校2年くらいじゃない?

乙君:6? 7? くらい?

山田:そうですね。89年なんで10才、4年生くらいか。

乙君:まあそれくらいで、じいちゃんがまだ生きていて、じいちゃんの膝の上で相撲を観るのが好きだったんです。じいちゃんと。そんな感じでいたら葬式……、葬式っていったらあれですけど、崩御のシーンとかずっと、なんかじいちゃんがいつもと違うというか、なんか違うんですよ。

その感じはすごく覚えていて。みんな街が暗いっていうか、街っていうか家? なんでしょうね、あの感じ。昭和天皇の時はですけど。

山田:へーそう。

乙君:いつもと違うなっていうのは覚えていますね。それは物心っていうか、その大きさっていうのはわからなかったから、戦争の話とかぜんぜんはっきり入ってないし。だけど、平成が終わるってなった時にやっぱり……。平成なんてないじゃないですか。

山田:なんだって?

乙君:平成なんてないんです。

山田:なんの話?

乙君:平成ってものは、我々の共同幻想じゃないですか。今平成だけど西暦2017年。

山田:あーそういうことを言ってるのね。

乙君:だけど2017年も嘘、嘘というかこれはそういうことにしているって了解なだけで、平成も元号としてそうじゃないですか。昭和もそうだし。

それは、でも平成生まれとかゆとりとかもそうですけど、「平成生まれと昭和生まれは違うよな」とかなんとなく概念であるし。なんだろうな、本当は実態はないんだけど、心の中にはあるものが終わるっていうのが、置いてけぼりになるっていうか「俺の知らないところで平成になってまた終わるのか」みたいなの。

なんだろう、悲しくもないし、「次の時代どうなるんだろうな」とか期待もあるし、「陛下お疲れ様でした」みたいな感じもあるし、なんかこうふわっと「これなんだろな」って思ったのが侘しさだったなと思って、この感情は。どうしようもないじゃないですか。「平成のままがいい!」って俺が言っても、ねえ。

山田:(笑)。お前、言うの?

乙君:いや、俺がめっちゃ平成好きで仮にあれだとしても、そんなの誰も聞いてくれないですよ。平成終わりますよ。みんなそうじゃん。そのへんのどうしようもないんですよ、これは。それを見ているしかない、感じてるまましかないっていうこの「あー」って「んー」って。わかります?

しみちゃん:(笑)。

平成は「平凡に成った」時代

山田:89年って、すごいドバブル真っ最中でピーク直前みたいな、本当、山頂寸前みたいな。俺の実感でいうと89年から90年が一番めちゃくちゃ盛り上がっていたというか、日本がおかしくなっていたくらいのバブル経済の中で、「崩御!」みたいな、不思議な感じだったよ。

俺はその当時デビューはしたものの、4回くらいで連載うまくいかなくて打ち切られて、ノイローゼになりながら「資本主義」っていうバンドを組んでね。

(会場笑)

乙君:キャピタリズム。

山田:そう。資本が無い「資本主義」ってバンドをやりながら、途中で「リゾート計画」って名前に変えてね、「お前らをリゾートにしてやる!」ってバンドをしながら、崩御をむかえましたね。

(会場笑)

山田:そしたら『平成バンド天国』『イカ天』って番組が始まって、まさに祭りがバーッとなって。まあざっくり言いますけども、天皇の代が変わるごとによって年号が変わるみたいなことが一番定着していたのが、昭和30年代から40年代くらいで、そのころは昭和表記でみんな頭にしていたんだけど、多分昭和の後半くらいから何年代っていう時に西暦になるというチェンジがあったので、本当に平成表記で平成何年だって話しないよね。

つか本当にこれ忘れるんだよ。「今平成何年ですか?」って必ず聞くし。

乙君:忘れるよね。

山田:それくらい西暦で話すことに慣れちゃったな、。だからざっくりとわかりやすく言うと、西暦で考えると平成って30年間あったんだけど、最初の10年間っていうのは89年から99年まで。だから89年から99年ってバブル絶頂から崩壊混乱の、なんていうのかな、ジェットコースターで昭和からカンカンカンカンって上がっていって、平成に変わった瞬間ヒューンみたいな。

まさに最初の落下が最初の10年間。90年、すごい時代だなと思って。で、その次の10年間っていうのが2000年から2010年なんだよ、この時代ってゼロ年代だけどね、失われたなんだかんだ言うけどね、典型的なのが俺は『ハリーポッター』と『ワンピース』だと思うんだけど、とにかくファンタジーに逃げたんだよ。

この混乱を引き受けられないから平和が訪れるって、着地ができるんだって。よく俺が言っていた「湘南乃風」的な「一生一緒にいてくれや」的なヤンキーは地元に着地し、オタクたちはファンタジーの世界で生きることを決めるという。で、2007年に決定的にそうなるっていう。2000年代、ゼロ年代っていうかな。

乙君:このあたりは通常放送の『ヤングサンデー』のアーカイブをご覧ください。

山田:あとは、まあノスタルジーだった。だから『三丁目の夕日』の時代でもあるわけ。だから昔とファンタジーっていうのに逃避し続けるっていうか、政府も逃避していた。あと小泉政権が改革の夢を語っていたの。だから「自民党をぶっ潰す」とか言って自民党を強固にした時代というかね。っていうのがその時代。

乙君:小泉構造改革とかね。

山田:それでごまかしがきかなくなって、そのあと民主党に政権が変わって、世の中混乱のふわーっとしたシュールレアリスムみたいな状態にになったところに一気に11年がやって来たの。「ドーン!」ともう1発殴られるわけだよ。

だから「バブル?」「不良債権あったのかな、なかったんじゃね」とか言ったら神様にバーンってそれが3・11ですよ。「まじか!」みたいな。だからそのあとの今に至る7年間、まあ絶望と墜落、暗黒の時代だよね、まさにね。

乙君:いいますね、今日。

山田:俺は暗黒の時代だと思う、なにに向かってるかというと、地獄に向かって一直線の時代。だからそれを……。

乙君:えー。ワンウェイチケットトゥヘルですね。

山田:そう。だからそれをごまかしていくか、着地するかはあなた次第って言われている時代であって、けっこうハードな時代だよね。だから目覚めとあきらめの時代なんだと思うんだよ。目覚めたやつは最後まで頑張るってやる。あきらめるやつもいるんだよ。あきらめたやつの選択っていうのもあって、みたいな、あとは内乱の時代だよなって思うね。

って考えて、平成って時代だったなっていうのがあるんだけど、これおもしろくって、昭和が終わる時、長い時間かけて戦後の復興して、どんどん経済大国になって、2位になって、ジャパンアズナンバーワンでバブル景気がくる。頂点までいくじゃん。全員が自分は特別だと思った時代なんだよね。

この話はやたらとしているけど、これすごく象徴的なのでまた言うけど、日本人って世界でも特別な存在だって信じられたのが89年。本当にそう、そこからの墜落なんだよ、今どうなったかというと、平成が終わったっていうのは、平和になるとか安息がくるとかいう意味での「平・成」になるって意味での平成ではなく、俺が思うのは「平凡に成った」ってね。

乙君:おー。うまい!

山田:平成。上手いこというね。

乙君:さすが噺家さん!

山田:きたねー(笑)。うるせーよ! (笑)。

乙君:論客!

昭和の幻想が崩壊した30年間

山田:だから平和になるとか、平安に成ったではない。

乙君:平凡に成っちゃったんだ。

山田:平凡に成るってことを認めるための30年間。だからこれは昭和の幻想が崩壊した30年間だったな。で、おもしろいこじつけいっちゃおうかなと思って。

乙君:ご機嫌ですね(笑)。

山田:明治はなにかなっていったら。

乙君:明治はなんですか?

山田:明治は外に向けてね、「明けましておめでとうございます」だから明治は。

乙君:あー文面開花のね。

山田:文明開化の開けての治めちゃうぜ。俺たち志士たちが。

乙君:軽いなあ(笑)。

山田:明治そういう感じのがあるわけっすよ。まじで、で大正行きますよ世界戦略ですよ。

乙君:いきますね。

山田:欧米列強になろうとすっから、もう大きいことが正しいんですよ。もう『ハイカラさんが通る』ですから。もうこの時代は。

そして昭和。あきらかに和すこれはアジア5国共存で、夢をみたんだよな、最初は前期は、八紘一宇だった。それをぶん殴られましてですね、家族仲良くみたいになったのが昭和。

(会場笑)

乙君:あっそうか前半はアジア。

山田:最初は俺たちアジアしめるから、ガーンって欧米列強に殴られて、「はーい」って言ってお茶の間みたいなこれぐらいになるの。「みんなで紅白」みたいな感じになったのが昭和って感じですね。だから昭和は2種類ありますね。

乙君:なるほど前半後半が、いやーうまいっすね。平凡に成ったかあ。

山田:そうなんだよ。

乙君:確かにそうかもしれない。

山田:特別だったんだよ、昭和までは。

乙君:確かにそうですわ。2000年代に入って急に、吉井和哉もそうだし、エレカシの宮本とかもそうだし、なんかロックとかでやっていたやつらがどんどん着地しようとしてたんですよ、生活に。

山田:そうそう。

乙君:「なんかよくない?」みたいな。なにもしない日常もいいよねみたいなさ、散歩して。

山田:2人でパスタ食おうよって。そうそう、タオル回しちゃうんすよ。

乙君:あれがすごい嫌っていうか、残念で、お前らがそうやってかぶいていたことを自ら「あれは違ったんだけどね」みたいなこと言うのかって思ったんだけど、これだったんですね。平凡にみんななんとなくそういうふうに時代がなっていたんですね。

山田:そういうことじゃない? はい次いきましょう。

乙君:平成とは平凡に成っていく。そういう時代でしたということで。

山田:(コメントにて)「さみしくなってきた」? ごめんね。いいよ地獄を楽しもうぜみんな。

乙君:次はどうなんですかね、次の元号考えましょう今度、恐れ多いですけど。

山田:元号? いやいや、考えられないよ。そんなこの先ほんと恐ろしいんで。

乙君:来週やります。来週。

(会場笑)

山田:楽しくやろう。次いこう。