くすぐったさのメカニズム

ハンク・グリーン氏:世の中でもっとも偉大で残酷な喜びのうちの1つに、「くすぐること」があります。みんな、ほかの人を笑わせたいですよね? とくに相手がたまらずに笑ってしまうのを見るのは最高です。

しかし、「くすぐる」ということを改めて考えてみると、これは奇妙なことではありませんか? 一体「くすぐる」とはなんなのでしょうか? どうして存在するのでしょうか?

「くすぐる」という言葉は2つのことなる現象を表す包括的用語です。まず、「knismesis(軽いくすぐりの刺激)」という現象についてお話ししましょう。

この現象は、誰かがあなたの繊細な皮膚を鳥の羽でくすぐってきたときに感じる、ぞくっとするようなくすぐったい感覚を指しています。その感覚は皮膚を擦ったり、引っ掻いたりしたくさせますが、笑いたくなることはないでしょう。

笑いたくなるようなくすぐりは、「gargalesis(強いくすぐりの刺激)」と呼ばれ、もっと強い接触やストロークにより引き起こされるもので、脳に痛みと快感の混ざった感覚を引き起こします。

「knismesis」は道理にかなっているように思えます。もし虫や蜘蛛が足を登ってきたらくすぐったい感覚を覚えますから、振り払うことができます。

「knismesis」は哺乳類の中に多くみられます。馬は背中にハエが乗ってきたら、尾を振って振り払いますし、猫の耳も触ればピクピクと動きます。

私の好きな言葉、「gargalesis」は反対に、人間を含む霊長類の中にしかみられません。もしチンパンジーをくすぐると、声を出さずに喘ぐのです。これは人間の笑いの前進です。それに霊長類みんなが同じ場所をくすぐったいと感じます。脇腹、脇の下、顎の下、脚の大腿骨付近など、これら全ては身体の弱点となる部位です。

それゆえに心理学者の中には「gargalesis」が、子供の猿や人間が仔犬のようにじゃれ合う中で、襲われたときにどのように身を守ることができるのかをお互いに教える、進化的メカニズムかもしれないとする人もいます。

私たちはくすぐられると、本能的に身体を丸めて避けようとしますし、蹴ったり身をよじったりもしますが、同時に笑顔で笑ってしまいます。それはくすぐっている人に「もっとやってくれ!」というメッセージを伝える表情です。もしくすぐりが、ネガティヴな表情を引き起こすなら、人がお互いにくすぐり合うことはなくなるでしょう。それにそれから身を守ることも学ぶことはないでしょう。

ですから次回、自分の兄弟をくすぐりまくる機会があれば、「お前に生きるスキルを教えてやっているんだ!」とできるでしょう。