先頭集団だけで考えると、すぐ終わってしまう

村本大輔氏(以下、村本):ちょっと時間がないところで恐縮なのですが、AbemaTVは、Twitterでのコメントとリンクさせたりするんですよね。

フジテレビの『バイキング』『ノンストップ!』などを見ていても、「ネット上の意見はこうです」と伝えていて、そういう番組も多かったりしますよね。そういった声、大事だと思うんです。

今日いらしている方々もTwitterをやっていると思うんですが、僕、自分の知り合いや地元・福井県の友達でTwitterをやっている人ってそれほどいなかったりするんです。だから「ネットはすごい」と言われますが、蓋を開けたとき「あ、たったこれだけにすべてを頼っていたんだ」となり得る気もしています。先頭集団だけでものを考えすぎて、みたいなことですね。

藤田晋氏(以下、藤田):IVSへ来ている方は、よくあることだと思うんですけど、我々の会社もそうなんですよね。やはり、先頭集団で考えてしまう。

僕は麻雀のプロの方と仲良くしているんですけど、そういう人たちと話していると、Amazonで買い物をしたことがない人が多いんです。

サイバーエージェントの社員だったら100パーセント、Amazonで買い物をしたことがあるはずです。だから「えっ!」とびっくりしたのですが、でも、そちらのほうがむしろ世の中のマジョリティかもしれないとも思ったんです。そういう世界を無視して事業企画をすると、なんというか……。最初だけ一部の人にもてはやされて、すぐに終わってしまうのではないか。これは、よくあるパターンです。

では、最後にもう1問だけいいですか? もう、自分たちの立場などを忘れて「お金をいくらでも出すから、AbemaTVで好きなコンテンツを作ってください」もしくは「事業をやってください」となったとき、素直にやりたいと思うものを1つ教えてもらえますか? 秋元さんからお願いします。

秋元康氏(以下、秋元):それは……、大変だよね(笑)。大変というのは……企画を本気で考えなきゃいけなくなるよね。それ、今だよね?

(会場笑)

大多亮氏(以下、大多):ふだんから本気じゃないんですか?(笑)。

秋元:いや、すごい難しいなと思って。本気で考えなきゃいけないのか……とか。僕もプロだし、大多さんも村本くんもプロだから。なんというか、これは糸井重里さんに「ちょっと、このミネラルウォーターで、今この場でコピーを考えてくださいよ」というようなもんです。それは、プロに対して失礼じゃないかなとかね?

(会場拍手)

藤田:言った瞬間、質問を間違えたと思いました。

秋元:すごく間違えていて。ここですごくおもしろいことを言って、それがうまくいけばいいけれど、話だけではつまらないしね。だから、どれくらい本気なのかという……。

「自分のやりたいこと」が時代に合うか・合わないか

藤田:では、切り替えて(笑)。締めのひと言をなにかいただければと思います(笑)。

大多:(笑)。

(会場笑)

秋元:僕は非常におもしろい会だったと思います。藤田さんのキャスティングの妙というか、ここに大多さんが来るのはなかなかおもしろい。ふつう、テレビ朝日の誰かがくるのかなと思っていたら、あえてここに大多さんをね。

大多さんの考えは、ブレてないし、僕もしょちゅういろいろ話をさせてもらうんですけど、非常にテレビが抱えてる問題と、ネットとの共存について考えています。それは、もう非常にパラドックスな部分があるんですけど、「まぁ、そういうことなのか」といろいろ改めて考えるきっかけにもなりましたし、とても意味のある会だったと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

藤田:じゃあ、大多さん。

大多:僕、7年前にドラマからデジタルの方へ異動したんです。そのとき、こういった会に何回か出たんですけど、当時はまだテレビとネットの二項対立だと言われていて、融合なんてねぇよ状態だったんです。

その会にはいろんなパネラーが出ていて、ネット系の方から「もうこれから、ニュースは一般の人があげて、それで事足りるんですよ。キュレーションでいいんですよ」「YouTubeの犬猫の滑った転んだで、おもしろいのがたくさん出てきています。ロングテールにたくさんいろんなものが現れて、テレビはどんどん終わるんですよ、残念ですね、大多さんも働いてるところが苦しくて」と、散々いじめられました。

僕はそういった会の〆のときに言うんです。今日もあえて言いますけれど、「もういい」「やってりゃいいじゃないか、君たち」「その代わり僕たちは二度と『北の国から』『踊る大捜査線』『東京ラブストーリー』、もっと言えば『ゴッドファーザー』も『風と共に去りぬ』も、一切作らない」と。

「それで人生が豊かになると思っているなら、どうぞそっちでやってくれ」と言って、ひんしゅくを買って終わっていたんですけどね。

(会場笑)

こういう事を言うと「テレビは上から目線だ」と、それでまた叩かれるんですよ。でも、なにが人生を豊かにするのか、テレビはそれなりに考えて作っているわけです。ただ、嫌いなのは、ユーザー目線とか視聴者目線という言葉。ユーザーファースト。それは、大事なんですよ。そんなのは、テレビをやる上でも当たり前です。

そうじゃなくて、いつも秋元さんも言っていますが「自分がやりたいことがなんなのか」が、時代に合うか合わないかだけのゲームを、クリエイティブにやっていると思っているんです。今、僕は作らないですけれど。

秋元さん、なんで答えないんですか!? 僕は、今、あの質問に真面目に答えようと思っていたのに。

(会場笑)

僕は、単なるサラリーマンですから、答えます。僕は、ラブストーリーしかやったことないんです。だから、ラブストーリーを作りたいですね。たぶん、AbemaTVはそういうのがないから、作ってくれって前に言っていましたね。飲んだときにね(笑)。

「テレビ朝日さんと結婚したのに、すぐフジテレビと浮気はないんじゃないですか」と言って、2人で大笑いしましたけど、でも個人的には、他に手がないんですよ。

僕は、そんなに器用でもないので、もしもやるなら、ラブストーリーで作りたい企画があります。実際には作らないですが、思うものはいくつかあります。真面目に答えましたよ。いいですよね、これで。ありがとうございました。

藤田:ありがとうございます。

(会場拍手)

自分の熱量を伝えることが、一番いい出し方

では、村本さん。バシッと締めてください。

村本:これはずっと疑問だったというか。今日はネットの方々が集まっていて、藤田さんもネットの番組をやっていたり、SHOWROOMさんがいたり、双方向にいろんなものがあるじゃないですか。そういったいろんな方向性を持っているもの同士が会話をすることが、これからの新しい形になってくると思うという話を、今日の打ち合わせでも話していたんですね。

でも結局、最終的にはみんな熱量がありすぎる。双方向ではなくて、自分の熱量を伝えることが、一番いい出し方であって。当初は最後に時間が余ったらみなさんからの質問に答える予定でしたが、そうならなかったんですよ。双方向で話し合っていくという話を聞いて、僕は、結局は一方通行で与えていくものなのかなと思ったりもしました。双方向とは、あくまでもテイなのかなと。

あと1つだけ。AbemaTVで好きなことをさせてもらえるなら、僕も素人なんで、これで答えさせていただきます。東京ドームで3デイズ、僕の漫談をよろしくお願いします。

(会場笑)

そう言ってらっしゃったんで。3デイズでお願いします。サクラも集めて。

(会場拍手)

藤田:サクラも集めて(笑)。ありがとうございます。この間、漫才の舞台を見せてもらったんですけど、マイク1本で、かかるコストと言ったら会場だけかなと思うと、これは儲かりそうだなと思ったんですけど。

村本:でも、不思議なんですよ。センターマイク1本でお金かからないのに、吉本は赤字にしかならないという謎。不思議なね。

(会場笑)

藤田:不思議ですね。

ネットとテレビは今、大きなイノベーションが起きている

村本:難しいですよね。さんまさんやダウンタウンさんが出て、僕らはこうなりたい、こういう笑い取りたいと思って、バーッと見るんですけど。ふと中学生の姪っ子を見たら、ぜんぜん笑っていなかった。僕のおもしろいと、この人のおもしろいは違う。

秋元先生と大多さん、藤田さんも、それぞれおもしろいと思うものは違うし、合わせることはできないから、ここで走っていくことが、少数を喜ばせることにつながるかどうかもわからない。価値観が全然違う。

YouTuberなんて、個人的には全然面白いと思わないですけど。YouTuberに人がバッと集まっていくから、怖いと思うものもありますよね。後ろ振り向かずに走っていかないと、難しい。「終了となりました」と、文字が出てる。もう、大丈夫です。

藤田:ありがとうございました。

村本:はい、すみません。

藤田:みなさん、今日はありがとうございました。こんなに盛り上がるんだったら、モデレーターじゃなくて、自分ももっと喋りたかったと思いますが、本当に勉強になりました。

おそらく、今日ここに集まっている方々は動画に関係している会社の方ばかりではないかと思いますが、インターネットとテレビ、動画、映像といった分野は、本当に今、大きなイノベーションが起きている時期で、とってもおもしろいと思います。

AbemaTVみたいな競合として参入してほしくはないんですけど、この分野にぜひ注目していただきたいと思います。

みなさん、本当に今日はどうもありがとうございました。

村本:ありがとうございました。

(会場拍手)