ブランドの継続性と「門戸開放」の両立が理想

小林佑樹氏(以下、小林):ありがとうございます。では残りあと10分なんですけど、何人かの方に質疑応答をさせていただきたいたいと思います。なにか質問とかご意見のある方いらっしゃったら、挙手いただければマイクをお渡ししますので。どうぞ。

質問者1:すばらしいお話、おもしろいお話をありがとうございました。実は私、ファッション業界ではなくて、友達の知り合いというような感じで今日来たんですけど。さっき「ファッションの民主化」みたいな話がありましたけれども、個人的に思っていることとして、なんか大きい話になっちゃうかもしれないんですけど。

ファッションってオートクチュール的なことと、リアルクローズ、プレタポルテとか既製服があります。

さっき、欧米のいい方はどうかという話がありましたけども。ヨーロッパ中心の世界だと、まだそういったオートクチュールやハイブランドのプレタポルテにするような人たちが1つのストリームを作っていて。そうじゃないものとしてリアルクローズなどのプロダクトがあると思うんです。

クラウドファンディングは、もしかすると日本でなにか動きを、いろんな仕掛けをすれば変わるわけじゃないですか。ファッションの民主化は、オートクチュール的なことがある一方で、「突拍子もないものが出てきたらおもしろい」という話がありましたが、そういった新しい流れを創れることにすごく期待しているところもあるんです。こういった大きな流れを、どう考えているのかなと、お二方にお聞きしたいです。

遠峰正之氏(以下、遠峰):そうですね、ヨーロッパでは、大手メゾンや影響力のあるデザイナーがファッション業界全体に力を及ぼしているのは、事実ですし、日本でもファッションに関わる以上、そう言った流れも意識しないといけないと思っています。なので、弊社も、それこそ、最初のうちはアンリアレイジなど、影響力のあるブランドと取り組んだり、業界のしきたりとか、見えないヒエラルキーを意識して、慎重にブランドを選んで進めていく予定です。

ただ、今後は、徐々に門戸を広げるというか、色々なブランドに使ってもらおうと考えています。我々の目指す方向としては、「誰もが声をあげられる世界」で、理想としては、先ほども言った通り、作りたい人と、買いたい人が直接つながって、それぞれが納得し、取引が成立して、しっかりブランドが継続していくことを1つの目標としています。規模はそれほど大きくないけど、かっこいい、いけてるブランドが僕らを通じて、どんどん生まれていくことが一番の理想形です。

佐藤貞行氏(以下、佐藤):僕もまったくご質問自身には同感で、なんかこう、「これは違うよね」「このアプローチはちょっと古いよね」は、個人的になんですけど、あまり好きではなくて。

クラウドファンディングは、別に甘えを許す意味ではまったくないです。「なにがあってもいいんだよ」という、クリエイティブ領域ですね。クリエイティブとかプロモーションとかマーケティングとか、あとはコンプライアンスとかをちゃんと守れば、どんなアプローチでもいいよね、と。作り手の人が本当にやりたいようにやるのが、実は本当にいいクリエイションで。

それが生活者の方に刺さる、全員の方に刺さるわけじゃないけれど。まさにおっしゃられるとおり、そういうところにクラウドファンディングが貢献できるように、広まっていくといいなぁと思います。

質問者1:ありがとうございました。

クラウドファンディングは「想いを実現させる装置」

小林:ありがとうございます。他にいらっしゃるでしょうか?

質問者2:おもしろいお話をありがとうございました。

2つ質問があるんですけども。その前に簡単に感想というか。うちの会社が両国にあるもので、まわりに製造メーカーさんがけっこう多かったりするものですから、私が直接関わっているクラウドファンディングの案件というと、不況にあえぐ墨田区の町工場が「なんとかして」みたいな感じでお金を集めたり、「背中の曲がった女性の方向けのカットソーをやってみましょう」とかなんですね。

もっともっとこう、製造メーカーさん寄りだったり、ベタな発想のところでやって、それでもけっこう小さくお金を集めていたりするケースの方が多いので、2社ともファッションの、けっこうカッティングエッジなところに特化したイメージでやられていて、考え方も特徴も鮮明ですごくおもしろいなと思って伺いました。

質問は2点あります。1つは、どうしても今、Web上で訴求をしていく中で、言葉で訴えていく、支持・共感を得るために、という要素が大きいと思っていまして。

会社でもご相談を受けたりしますと、「こんなふうにちょっと文章をしっかり練り込んで書いていけばお金が集まるんじゃないか」とかアドバイスをさせていただいたりするんですけれども、どうしてもクリエイターの方は言葉で訴えるのが苦手な部分がかなり多いんじゃないかなと思うんです。

ビジュアルや映像であったり、言葉ではない部分でファンを増やしていくというか、もともと自分が知ってる人じゃない人に広げていくための見せ方やアピールの仕方のアドバイスを、CAMPFIREさん、パルコさんがどうなさっていらっしゃるかをうかがいたいのが1つとですね。

2つ目が、いずれにしても日本のクラウドファンディングは対象が利用者、エントリーされる側も日本の企業さんで、応援する側もやっぱり日本というケースが多いなぁと思っていまして。日本の方でもkickstarterに出て行けばいいんじゃないかなと思ってやってるような業種の方も、いっぱいいらっしゃると思うんですね。

探してみると、中国もそうですし、各国にそれぞれクラウドファンディングのサイトがあったりするんです。質問なんですが、とくにアジア中心に他国のクラウドファンディングとアライアンスを組んで、お互いになにかをやっていく、応援し合う、その国に進出するときの1つの足がかりを作っていくようなことをお考えでいらっしゃるのかどうか。

その2つについてご質問したく、挙手させていただきました。

遠峰:ご質問ありがとうございます。1つ目なんですけれども、あまり言葉を使った自己表現というかプレゼンテーションが得意ではないクリエイターさんの方もいらっしゃるというのはまさにそのとおりだと思っていて。

あと、そもそもそういったページを作るのが手間だったり、日常的に忙しい方も多いと思うので、CAMPFIREでは、CLOSSというファッション事業に関しては、基本的には僕らが全部ディレクションするといいますか。必要に応じて、ライティングもこちらで請け負いますし、「こういう構成で作ったほうがいいですよ」というお話もさせていただきます。

もしその本人に魅力があるのであれば、動画で実際に語ってもらうこともやってもらえるのかなと思ったりはしています。

苦手な方でも、ちゃんと芯となる想いがあればファンディングはできると思っているので、というか成功させるにはそこが一番重要だと思っています。それをどう見せていくかという点では、お任せください、ではないですけど、気軽にご相談いただければベストなかたちでご対応させていただきたいのが1つ。

海外との提携に関してなんですけれど、それはもう弊社でもずっと前から取り組みたいなぁとは思っておりまして。ただ今現状として申し上げられるのは、まだそこまで対応が追いついてないんです。

1つは決裁まわりで、海外の方からの送金だったり、そういうものに対応できていないので、その部分は今後の課題かなと思っています。

将来的にはどこかのクラウドファンディングと提携するのであれば、本当に直接海外から支援が集まるようなかたちにはしていきたいとは考えております。いずれリリースできるかもしれないかなとは思っていますが、具体的にいつできます、というのはお答えできないような状況ですね。

質問者2:ありがとうございます。

整ったPR文章は必ずしも必要ではない

佐藤:はい。1つ目については、けっこう悩むときがあって。クラウドファンディングって今10代後半の人とか、20代のとくに女性の方とか、そういう若年層の方に、もうちょっと広がってもいいんじゃないかなと感じていたりします。

そういう方って、どちらかというと、もうあまり長いテキストを読むんじゃなくて、動画だったりと、よくいわれてたりするものですので。ただクラウドファンディングの良さは、やりたい方の、青臭いかもしれないですけど、思いとか、夢とか、本気の情熱みたいなのがけっこう大事かなと思っているんです。

今私たちのチームでよく話しているのは、たぶんクラウドファンディングって売り方で大きく2つに分かれいて。1つは限りなくECに近いプロジェクトといいましょうか、そのストーリーとかいうよりもの自体がすごく魅力的なプロジェクト、リターンとかであったり。

2つ目は、相対的にリターンの魅力もあるんですけど、なにかその方がやりたい、チャレンジしたいことに対して、本当に共感をしたり共振したり応援したいといったもの。

後者であれば、やっぱりテキストとかがすごく重要だと思うので、画像にもすごく気を使うんですけども。前者であれば、どちらかというとテキスト云々というより、一文はなるべく短くして、そのものの良さがわかるような動画なりビジュアルなりに神経を研ぎ澄ませたほうがいい。

テキストでやる時は、例えば弊社の場合は、案件数が少ないというのもあるんですけど、ご希望の場合は、ライターさんを手配させていただきます。パルコはエンターテイメント業界や出版業界、演劇系ライターさんとのつながりがある。そこでライターさんを手配させていただいて、プロジェクトオーナーさんとのミーティング時に同席し、テキストライティングすることはやっているんですね。

ただ難しいところで。たどたどしくても、プロジェクトオーナーさんが一生懸命に思いを込めて書いたテキストのほうが、ライターさんがきれいに俯瞰してまとめた文章よりも響くときがやっぱりあるので。

でもそれは、けっこうケースバイケースで、適切であろうという方策を取っております。

2つ目の海外のやつは、そこまでは今手が回ってないんですけど、提携とかというチャンスがあればそれは積極的に検討したいと思います。

質問者2:ありがとうございました。

個人所得の多い世代を引き込めるかが鍵

小林:ありがとうございました。あと1人ぐらい誰か質問を、……あ、ではどうぞ。

質問者3:今日は、先輩でクラウドファンディングを実際にしている人たちがいて、自分がやる側の立場になったら、ここから先の5年10年ってどういうふうに変化していくのかなというお話をお伺いしたいのですが。

参入障壁として、クラウドファンディングで応募する側って、けっこう低くてどんどん増えていると思うんです。でも、提供する側の人って、けっこう限られているじゃないですか。そこらへんを、このまま続いていくとどんどん供給不足になって、ぜんぜんプラットフォームとしてうまく活きないじゃないかという懸念点があるんです。そこらへんは、どのようにお考えでしょうか?

佐藤:たぶんCAMPFIREさんも同じ思いで、お話ししたりするとあれなんですけど、やっぱりもっとクラウドファンディングが日本に広がってもいいなぁというのがあります。先ほど遠峰さんが、「誰でも声を上げられるようにするんだ」という家入さんの、まさにそれは私たちでも考えています。

なるべく、あまり甘えすぎたらあれなんですけど、敷居をなるべく下げていろんな方が気軽にチャレンジできる、そんなクラウドファンディングの広がり方が大事なのかなと思います。

遠峰:提供する方って、プロジェクトを上げる方という意味ですかね?

質問者3:資金だったり、出す側の人が足りなくなるんじゃないかと。総額と……。

小林:支援者ということですね?

質問者3:そうですね、支援者が。

遠峰:なるほど。支援者という意味では、実はまだポテンシャルはあるなぁと思っているのが正直なところです。

弊社の場合は今30代の方がメインで使われていて、次に20代と40代の方が使っている割合としては多いんですけど、実際は個人所得でいったらたぶん50代・60代の方が日本では一番持っている。ただ彼らは、インターネットにあまり馴染みがない年齢層ではあるんですけども、実際はお金は持っている。

例えば、うちはローカルエリアに対してネットワークを持っていて、『CAMPFIRE×LOCAL』もあるんですけれども、そういったところとファッションで組んで、地域活性とかそういったプロジェクトに関しては地域の方に協力してもらうなどを考えています。

ネットでやるのが難しいんだったら、なにか別のかたちで、そういった所得の多い、個人所得の多い50代・60代の方にアプローチをして、1つ援助してもらうというのはまだまだ可能性としてはすごいあるのではないのかなと思っています。

なので、まだまだポテンシャルのある事業といいますか、今後もっと伸ばせるサービスだなと思っているのが正直なところではあります。

小林:ありがとうございます。それでは、お時間になりましたので、第1部をこれにて終了させていただきたいと思います。

(会場拍手)